【監修:青山健一】
目 次
子どもが1歳になり乳歯が生えそろう過程で、噛み合わせや受け口が気になりはじめる親は少なくありません。
ご両親自身が受け口で悩んだ経験があれば、なおさら子どもの受け口を早いうちに治してあげられないかと悩みますよね。
受け口の治療方法で悩んでいるご両親に向けて、治療に適した年齢や主な治療方法を紹介します。
受け口を早期に治療するメリットも解説しているため、参考にしながらお子様の治療について考えていきましょう。
1歳児の受け口の治療はいつから始めればよい?
乳歯の段階で受け口がみられる場合は3~6歳、遅くとも10歳までには治療を始めることをおすすめします。
なぜなら成長途中の顎の方が動かしやすいからです。10歳くらいで顎の成長が完了するため、その前に治療を始めることで矯正がスムーズに進みます。
また矯正治療とともに正しい舌の運動を習慣づけることで、正しい顎の成長を促し矯正後も受け口に戻りにくい状態を作れます。
早いうちに治療を始めることが早期改善につながるため、子どもの受け口が気になっている親御さんは早い段階で検討してみてください。
子どもの受け口の症状
受け口は上の前歯より下の前歯が前に出て噛み合わせが逆になっている状態で、「反対咬合」や「下顎前突」、「しゃくれ」などともいわれています。
受け口が原因で起こりうる症状やトラブルは、「歯並びが悪くなる」「滑舌が悪い」「奥歯がすり減りへる」などです。
受け口だと食事の際に十分な咀嚼運動が行われず、前歯ではなく奥歯ばかりを使って噛みちぎることが多くなります。
奥歯に負担がかかりすぎると、すり減りが起こり歯にヒビが入ることもあります。また顎関節に負担がかかり顎を痛める原因にもなります。
受け口の方の多くは噛み合わせが合わないことによって特定の音が発音しにくかったり、滑舌に悪影響を及ぼしている可能性があるため注意が必要です。
1歳のお子様の場合滑舌を確認することは難しいかもしれませんが、食事の際の咀嚼運動など注意深く観察してみてください。
子どもが受け口になる原因
受け口になる原因は主に3つあります。乳児や幼児特有の癖などによって受け口になる場合もあるため、思い当たる行動をしている際には注意が必要です。
下記のような習慣があるからといって全員が受け口になるわけではないため、神経質にならない程度に注意しながら見守ってあげてくださいね。
指しゃぶり
指しゃぶりを長期間続けていると、指を吸う力で「歯列狭窄」という幅の狭い歯並びの状態が起こりやすくなります。
歯列狭窄になると、上顎と下顎の噛み合わせが悪くなり受け口になる可能性があります。
3歳以降の指しゃぶりは歯並びや顎のずれに大きな影響を与えるため、お子様に指しゃぶりの癖がある場合は徐々にやめていけるように見守ってあげましょう。
口呼吸
口呼吸をするときの舌の位置によって、下の歯や顎を前に押し出す形になってしまうことがあります。
口呼吸になると通常上の口蓋につくはずの舌が下がります。舌が下がると息がしづらくなり、気道を確保するために下顎を出そうとする動きにつながるのです。
受け口の骨格になってしまう前に、口呼吸を改善する方法を見つけてあげましょう。
遺伝
歯だけではなく、上下の顎のバランスが合わない状態は遺伝の場合が多いです。
顎の骨格は遺伝性が高く、親のどちらかが受け口であれば子どもに遺伝する可能性は大いにあります。
遺伝の心配がある場合には、歯科医院で骨格を定期的に見てもらうことをおすすめします。
小児矯正のメリット
子どものうちに矯正をすることで子どもの自然な顎の成長を促したり、負担をかけずに治療できる場合が多いです。
小児矯正のメリットを知って、早い段階での治療を検討してみてください。
抜歯する可能性が低い
子どものうちに顎を広げる矯正によって永久歯が生えるスペースを確保できると、抜歯する必要がなくなります。
子どもは顎が発達途中にあるため、矯正によって顎を広げやすいのが特徴です。
なるべく抜歯はせずに矯正治療をしたいという方は、早めの矯正治療をおすすめします。
顎の成長を整えられる
成長過程にある子どもの骨格を調整していくことで、自然な顎の成長を促します。
矯正装置などで少しの力を加えてあげるだけで、子どもの自然な発育能力によって正しい方向に顎を発達させていけるのです。
なるべく幼いときに矯正をすることで顎の発達が定着しやすくなります。
治療期間を短くできる
子どもの矯正治療は、大人の矯正治療より短い期間で完了するのが特徴です。
子どもの骨や歯は成長過程にあり、大人に比べて動かしやすいからです。
治療期間が短ければ子どもにかかる負担を最小限にし、治療費も高額にならない可能性があります。
虫歯や歯周病のリスクを減らせる
受け口を矯正することで歯列が整い歯磨きがしやすくなるため、虫歯や歯周病になりにくい口内環境を作れます。
噛み合わせが悪いと磨き残しが生じたり、均等に力が入らずどうしても汚れが落ちにくくなるのです。
噛み合わせが整うだけで、すべての歯に均等に力を入れられるため磨き残しも少なくなります。
コンプレックスを解消できる
受け口は顔の印象を大きく左右するため、早めに治療することでコンプレックスになることを避けられます。
見た目を気にする年齢になると、子ども自身が受け口を気にし始めたり、矯正装置をつけることに抵抗を感じる子どももいます。
「将来コンプレックスになるのでは」と不安を感じる親御さんは、早めの矯正治療を検討してみてください。
受け口の治療方法
代表的な治療方法は3つあり、いずれも子どもが無理なく受けられる治療方法です。
年齢や歯の状態によって適している治療法が異なるため、お子様にはどの方法が適しているか考えながら参考にしてみてください。
マウスピース矯正
永久歯へ生え変わる前であればマウスピース矯正がおすすめです。自分の歯に合わせたマウスピースを作り、歯を正しい位置へ矯正します。
見た目に影響がなく、違和感が少ないため小さいお子様でも扱いやすいのが特徴です。
ただし就寝時に使用するため、無意識にマウスピースを外してしまう可能性があります。効果的な治療ができるよう親がこまめに見てあげることが大切です。
費用は約10万円~35万円で、矯正治療にかかる期間は半年~2年程度です。
ムーシールド
ムーシールドとは寝ているとき専用のマウスピースで、子どもの受け口を治すことを目的に作られた矯正装置です。
3歳ごろから着用可能で、矯正に適しているのは乳歯列の時期です。痛みが少ないため子どもに負担がかからずに使用できます。
ムーシールドを装着することで舌や口内の筋肉状態を整え、正常な顎の発達を促すのに効果的です。
治療費用は15~20万円程度で、矯正期間は1年程度です。
上顎前方けん引装置
上顎の骨を成長させるための装置です。受け口になる原因のひとつとして、上顎の成長が十分でない場合が考えられます。
上顎前方けん引装置は「口腔外装置固定源」・「上顎口腔内装置」・「けん引用のゴム」でひとつのセットとなり、フェイスマスクのように顔にかぶせて上顎をけん引します。
上顎前方けん引装置を使った矯正治療は、乳歯期から顎の発達が活発な時期に使用すると効果的です。
治療費用は30~50万円程度で、矯正期間は1~2年程度です。
子どもの矯正治療の注意点
お子様の矯正治療を始める際は、子どもにかかる負担と矯正期間を考慮した上で進めていきましょう。
普段装着し慣れていない矯正装置は、お子様にとってストレスになる場合があります。
装着を嫌がることもあるため、慣れるまではお子様に寄り添い共に矯正治療に取り組みましょう。
小さいお子様の矯正治療は主に顎の骨格を調整することがメインとなるため、歯列にも乱れがある場合には矯正治療が長引く可能性があります。
長期にわたる矯正治療を考慮した上で、治療に取り組むお子様を支えてあげてください。
子どもの受け口の治療法で悩んでいるなら歯科医に相談しよう
歯科医に相談することで、矯正に適した年齢やひとりひとりに合う治療方法を提案してもらえます。
まだ矯正を始める年齢に達していなくても、定期的に歯や顎の成長を見てもらうことで適切な時期に治療を始めやすくなります。
定期的に歯科医院へ通うと環境に慣れて、お子様の治療への抵抗が軽減できるためまずは歯科医への相談がおすすめです。
まとめ
受け口の矯正治療は3歳から始められ、顎の成長が完了する10歳ごろまでに行うと効果的です。
歯や顎が成長過程にある成長期に治療することで、骨を動かしやすく短期間で治療を完了できる可能性があるからです。
受け口になってしまう原因は遺伝だけではなく、指しゃぶりや口呼吸などの日常的な癖が原因の場合もあります。
癖が習慣化している場合は、徐々に改善していけるよう注意深く見てあげましょう。
受け口の矯正方法は「マウスピース」「ムーシールド」「上顎前方けん引装置」があり、いずれも就寝時に装着するため、子どもの負担を軽くできます。
乳歯が生えてくる段階で受け口が気になり始めたら、まずは歯科医に相談してみてください。適した治療時期や方法を提案しながら、経過を観察してもらえます。
歯科医とともにお子様の歯を見守り、将来お子様が困らないような方法を考えていきましょう。