【監修:青山健一】
目 次
上の歯よりも下の歯のほうが前に出ている状態は「受け口」と呼ばれています。
ものが食べづらい、発音がしにくいという機能面での問題はもちろんのこと、外見的な特徴によるコンプレックスも大きな問題です。
受け口は、美しさの定義の1つとされる「Eライン」にも大きく影響します。
今回は受け口の特徴やその原因、治療法や治療を受けるメリットなどについて解説します。ぜひ、美しい横顔を得るための参考にしてみてください。
受け口の特徴
受け口とは、下の歯が上の歯よりも前に出ている通常とは噛み合わせが反対になった状態のことで、専門用語では「反対咬合(はんたいこうごう)」や「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼ばれるものです。
体調面への影響として考えられるのが、上下の噛み合わせが合わないと咀嚼がうまくできず胃腸への負担が増えてしまうという問題です。
また受け口の場合は口がうまく閉じず、さらに舌が前に出ている状態になります。そのためサ行・タ行などがスムーズに発音できず、俗にいう「舌ったらず」の話し方になるといった不具合も生じるのです。
そして受け口は、口元の美しさにも大きく影響を及ぼします。
下顎が出ていることを「顎がしゃくれている」と表現するように、一般的に受け口は美容的にマイナスの要素です。
自分が受け口であるという見た目を気にすることによる精神的なストレスも、心身の健康にとって大きなマイナスとなります。
受け口になる原因
反対咬合や下顎前突になる原因として考えられるのは、両親からの遺伝や、顎の成長期や生え変わりの時期における悪い癖です。
上下の顎のバランスが合わないケースは遺伝的な要因が強く、歯の生え方のみが原因の受け口には生え変わり時期の癖が関係しているといわれています。
ここでは、反対咬合や下顎前突の主な原因について解説していきます。
先天的なもの
下の顎が大きい、または上の顎が小さいなど、上下の顎のバランスが合わないというケースの受け口には遺伝的な要素が大きく関わっています。
両親のどちらかが受け口である場合、子供にも受け口が遺伝する確率は高くなります。
先天的な要因で受け口になってしまいそうな場合は、骨格的な受け口に移行しやすいという特徴があるため、できるだけ早い時期から矯正する必要があります。
歯の生え変わる時期の癖
幼児期の癖も受け口の原因になります。指しゃぶりは3~4歳頃までにはやめていた方がよいとされています。
指しゃぶりをすると前歯で指を噛んでいる状態になり、これを続けていると指に押された前歯が前に出て受け口になりやすいのです。
指しゃぶりだけでなく、舌で前歯を押す癖・上唇を噛む癖・頬杖など、歯に余計な力がかかるような癖は受け口の原因となります。
乳歯から永久歯に生え変わる時期などの、下顎を突き出す癖や爪をかむ癖なども受け口の原因になります。
また、口呼吸にも注意が必要です。鼻ではなく口で呼吸をすることで、無意識のうちに舌で下の前歯の裏側を前に押していることがあり、これによってだんだんと受け口になっていく場合もあるのです。
永久歯の前歯が生える方向
永久歯が生えるときに、何らかの理由で前歯の生える位置が逆になってしまった結果、受け口になる場合もあります。
上顎の前歯が内側に傾斜し、下顎の前歯が外側に傾斜することで、下の前歯が上の前歯よりも出た状態のままで成長して反対咬合になってしまうのです。
早い段階で矯正治療をして反対咬合を改善することによって、顎は正常に成長するようになっていきます。
受け口の横顔はどのようなラインになる?
受け口といわれる反対咬合や下顎前突のほかにも、特に横顔のラインに影響しやすい不正咬合があります。出っ歯といわれる上顎前突や口元がもっこりと突き出している上下顎前突などです。
横顔の鼻先と顎先を直線で結んだ線はEライン(エステティックライン)と呼ばれ、横顔の美しさを測るバロメーターとされています。
受け口の場合は、このEラインから下唇が出た状態となってしまうため、美しい横顔の範疇には入らなくなってしまうわけです。
美しいEラインの定義
横顔の鼻先と顎先を直線で結んだEラインを美の基準として提唱したのは、歯科矯正医のロバート・リケッツで、1954年のことでした。
上下の唇がこのEラインよりも1~2mmほど後ろに位置していることが理想的な美しさの基準とされ、矯正治療が当たり前の欧米ではそれを目指して矯正治療が行われています。
しかし、一般的な日本人は欧米人に比べると鼻が低いということもあるため、Eライン上に上下の唇が接していることが美しさの基準とされることが多いようです。
Eラインを美しくする受け口の治療法
横顔の美しさのポイントは、Eラインのバランスです。
鼻先が一番高く、下顎に進むにつれて奥へと引っ込んでいく、それがバランスの取れたEラインの条件とされています。
受け口を治療することによって下顎が引っ込めば、Eラインのバランスも自然と良くなります。そのための受け口の治療法について主なものを3つご紹介します。
矯正治療
受け口の場合は、なるべく顎が発達する前の子供の頃に顎の調整を行っておくと、よりきれいな歯並び・咬み合せになり顔つきまで改善できます。
受け口の程度が軽度の場合は、外科手術ではなく装置を使った矯正方法での治療が考えられます。
「上顎前方牽引装置(フェイスマスク)」は、上顎の骨を前方に引っ張り出して下顎ときちんと合わせるというもので、骨格が成長する前の幼少期でなくてはできない治療方法です。
一般的な矯正治療で使われる「リンガルアーチ」は、口の中に装置を設置して後ろから前歯全体を前に押し出すという方法です。
リンガルアーチは大人でも治療できますが、成長期であればより効果が高い矯正方法です。
リンガルアーチで前に歯を移動させた後は、「マルチブラケット」という器具で歯列をきれいに矯正します。
上下にマルチブラケットを装着した場合、大人であれば治療期間は平均2年程度が必要となります。
抜歯
受け口の程度が中程度の場合は、抜歯を伴う矯正治療となります。
歯並びの治療として、下顎前突で傾いている前歯を下顎の骨にまっすぐ立たせなければなりません。
そのためには下顎の前歯を後ろに下げる必要があり、抜歯でそのスペースを確保するのです。
前歯の奥にある小臼歯を抜歯して5㎜程度のスペースを作り、矯正器具によって前歯を後方へ移動させていくという方法が一般的です。
外科手術
矯正治療だけでは改善が難しい場合や、骨格そのものに原因がある場合は、外科手術を選択することになります。
「下顎骨切り術(セットバック法)」という方法で、下顎の骨の一部を削り、削った分のスペースだけ後方へスライドさせるというものです。
全身麻酔を使った手術となるため、入院におよそ10日間を要します。また術後には腫れなどが生じるために、社会復帰までには術後3~4週間ほどが必要となります。
顎の位置異常などが認められる場合には、外科手術に健康保険を適用することも可能なため、医師に相談してみてください。
治療について気軽に相談できる「無料相談」も参考にしてみてください。
受け口の治療のメリット
受け口の治療を行うと、下記のような身体的なメリットがあります。
- よく噛めるようになったことによる消化不良の改善
- 偏った噛み癖がなくなることによる体の歪みの矯正
- 顎への余計な負担が減ることによる肩こり・頭痛の軽減
しかし一番のメリットは、何といっても見た目が美しくなることです。そのほかにも考えられる、受け口の治療のメリットについてご紹介します。
滑舌が良くなる
上下の歯が噛み合わない受け口では、常に上下の歯の隙間ができて息が漏れてしまい、舌の位置も正常ではないため、滑舌が悪くなりがちです。
例えばサ行の発音は、歯を擦り合わせて上下の歯の隙間に息を通す「歯擦音(しさつおん)」と呼ばれるもので、受け口で上下の歯が噛み合っていない場合は正確な発音が難しく、声がこもって聞き取りにくくなってしまいます。
さらに、日本語よりも発音がシビアな英語の「s・th」などは、受け口では正しく発音することが非常に困難です。
矯正治療で受け口を改善することによって、歯の噛み合わせや舌の位置が正常になると、滑舌も発音も良くなっていきます。
歯磨きしやすい
反対咬合は歯並びの異常の1つであり、虫歯や歯周病の原因にもなりやすいものです。
プラークと呼ばれる汚れが歯ブラシの当たりにくい部分に溜まりやすいため、同じ部位の虫歯治療を繰り返してしまうほか、歯周病にもなりやすいという傾向にあります。
矯正治療をすることで歯並びが改善されると、とても歯磨きがしやすくなります。
美しい歯を保つことができるという美容的なメリットだけではなく、口の中が衛生的になることによって虫歯や歯周病のリスクも低減するということも大きなメリットです。
受け口を治療して美しい横顔を手に入れたいなら
美しい横顔のために、一日も早く受け口の矯正治療を受けてみてはいかがでしょうか。
しかし、いざ治療を受けようと思った場合でも、どのクリニックにすればよいか迷うということもあると思います。
クリニックを選ぶ際には、
- 矯正歯科の専門医がいる
- 矯正専門医院である
- さまざまな治療法の選択肢がある
- 料金体系が明瞭である
という4つのポイントを満たした「矯正歯科」をおすすめします。
気軽に相談できる「無料相談」を利用するのもよい方法です。
まとめ
受け口の特徴やその原因、治療法とメリットなどについて、おわかりいただけましたか。
受け口を矯正治療した人がよく口にするのが「人生が変わった」という言葉です。
見た目が美しくなることで、性格が明るく積極的になり、それまでとは別人のような雰囲気に変わることもあります。
特に、美しさの基準とされるEラインには受け口が大きく影響してしまいます。矯正治療で美しい横顔を手に入れることは、人生を変えるチャンスなのです。
近年では治療の選択肢も増えていますから、ニーズやライフスタイルに合った治療方法など、歯科医と相談しながら進めてみてください。