【監修:青山健一】
目 次
矯正治療技術の進歩で治療していることが周囲にわかりにくい、矯正治療は健康面においても大切だという認識が広まり治療を始める人も多くなっています。
しかし、矯正治療は長い治療期間を要するとことから「歯並びを治したい!」と思ってもすぐには治らないのが現実です。
この問題に対し、「スピード矯正」という治療が行われています。このスピード矯正とはそのような治療なのか、そしてそのメリット・デメリットについて歯科医が解説します。
一般的な矯正治療の期間
一般的に大人の矯正治療は約2~3年程度かかり、部分矯正の場合は数カ月から1年程度かかるとお考えください。
矯正治療の手順はまず簡単なカウンセリングから始まり、患者の歯の並びや骨格をレントゲン撮影など精密検査し、どの部分に問題があるか歯科医が診断します。
その後、患者に治療期間や費用についてお話して、矯正治療の計画を立てて承諾後に治療を開始します。
実際の治療では、歯はすぐには移動してくれないため、ゆっくりと時間をかけて動かしますが、虫歯などがあればその治療を優先させなければなりません。
このように矯正治療は多くの検査と治療時間が必要なため、完治するまで治療期間が長くなってしまいます。
矯正治療の方法
矯正治療の方法にはどのような種類があるのでしょうか。まずは一般的な矯正治療の方法について紹介します。
ワイヤー矯正
矯正治療と聞いて一番初めに思いつくのがワイヤーをつける治療ではないでしょうか。
ワイヤー矯正とは動かす歯に対しブラケットと呼ばれるワイヤーを固定する器具をつけ、ワイヤーをブラケットに通して歯に固定する方法です。
このワイヤー自体を曲げることで歯もその形に動き、理想の歯並びに近づけることができます。
通常は歯の表側にワイヤーを装着しますが、裏側に装着する裏側矯正という方法もあり、見た目では矯正治療を行なっていることがわかりにくいのが特徴です。
ただし、裏側矯正は技術を要するため費用が高くなります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正とは患者さんのお口に合ったマウスピースを作成し、毎日一定時間装着することで矯正治療を行う方法です。
使用するマウスピースは数個に及び、1週間ごとに付け替えるなどのルールがあります。
また、使用する器具に金属は含まれず、透明な素材であることから治療していることが分かりにくいというメリットがあります。
着脱が簡単なマウスピースは食事のときなどは便利ですが、1日20時間以上は装着しなければ効果が薄くなり、矯正期間も長引くため注意が必要です。
床矯正(しょうきょうせい)
床矯正とは上顎に対し、左右に広げるように力をかけて歯並びをよくする方法で、理想とする歯並びに対し左右の幅が小さい方に行うことが多いです。
上顎の口蓋骨という骨の繋ぎ目(正中口蓋縫合)を開くことで、歯を骨ごと動かします。
他の治療法と違い器具が大きいため、治療装置をつけると違和感を覚えやすいこと、一定の頻度(1週間に1度など)でお口の中でネジを回す必要があり、慣れるまで時間がかかることなどがあげられます。
しかし、一般的に抜歯してスペースを作る矯正方法に比べて抜歯せずに顎を広げて歯を並べるため患者の負担が少ないです。
矯正を最短で済ませるスピード矯正
スピード矯正とは一般的な矯正治療に対し+αの治療を加えることで矯正治療を促進させる方法です。
歯列矯正は数年単位かかるのに対し、スピード矯正は短期間で矯正ができるためメリットが大きいといえます。
例えば結婚式や成人式を控えているなど、その人に合った目標の期間内に治療ができるいわゆるオーダーメイド的な治療方法です。
一般的な矯正治療では長い治療期間を必要としますが、スピード矯正ではその期間を短くするため素早い効果が実感できます。
スピード矯正について詳しくお聞きになりたい方は、下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
スピード矯正治療の方法
では、スピード矯正治療にはどのような方法があるのでしょうか。ここではスピード矯正の代表的な方法を紹介します。
インプラント矯正
インプラント矯正とは、歯茎に当たる部分に対し小さなネジ(歯科矯正用アンカースクリュー)を埋め込み、歯を移動させる方法です。
ネジは骨にまで達するため、埋め込む際は外科手術が必要となりますがゴムでネジと歯を結ぶことで骨と歯を引っ張り合わせてより早く歯を移動させることができます。
ただし、小さいとはいえ骨に対しネジを埋め込むため、骨が異常に反応し歯根が吸収してしまうなどのリスクがあります。
また、インプラントと骨が結合するまでに約2ヶ月かかり、術後も3ヶ月に1回程度のメンテナンスが必要です。
コルチコトミー
コルチコトミーとは歯槽骨皮質骨切除術とも呼ばれ、歯肉(歯茎)を切開したのち歯槽骨に切れ目を入れ、歯を動かしやすくする方法です。
インプラント矯正のように外科手術が必要となりますが、歯の土台となる歯槽骨に直接手を加えることで歯が動きやすくなり治療期間を短縮することができます。
さらに歯根吸収や歯の後戻りを防止する作用もあり、治療終了後の後戻り防止期間(保定期間)を短縮できます。
オルソパルス
オルソパルスとは、近赤外線を上顎と下顎に対し照射する方法で、近赤外線を照射することで細胞内に存在するミトコンドリアを活性化させ歯を移動しやすくします。
外科手術は苦手という方におすすめで矯正による痛みやストレスもほとんどなく、インビザラインと併用すれば自宅でも治療ができるというメリットもあります。
セラミック矯正
セラミック矯正とは、歯を少し削りその上からセラミックの被せ物を被せることで歯並びを揃える方法で数回来院すれば治療が終了します。
歯の色をお好きな白さに調整することができるため、ある意味ホワイトニング効果もあるといえます。
しかし、健康な歯を削ることでエナメル質の下にある象牙質が露出するため知覚過敏を起こしやすくなるのがデメリットです。
また、少なからず歯の神経(歯髄)にも影響するため歯の寿命が短くなる可能性があることだけは認識しておきましょう。
スピード治療方法のメリット
スピード矯正の方法について紹介しましたが、ここではスピード矯正のメリットついて紹介いたします。
矯正治療の期間を短縮できる
スピード矯正のメリットは矯正治療期間が短くなることです。
それぞれの治療方法で説明しましたが、スピード矯正は治療に対し必要な歯を動かす力を促進させる効果が期待できます。
矯正治療を受けたい方の中には、近々結婚式などのイベントがあるからという理由の方もいらっしゃいます。
そのような治療終了の期限が差し迫っている方にスピード矯正はおすすめです。
例えばセラミック矯正であれば、歯を動かすことなく歯に被せものを装着することで治療が完了するため、通常の補綴治療(ほてつちりょう)いわゆる被せ物や入れ歯治療と同じくらいの短い期間で終了することができます。
歯を抜くリスクを軽減
矯正治療で不安な部分といえば健康な歯を抜くことではないでしょうか。
虫歯になっていない健康な歯を抜くということは、高齢になった際に残る歯の本数を自ら減らすことになります。
8020(80歳で20本歯を残す)運動というものがあるように、高齢になった際に歯はできる限り多く残している方が健康によいとされています。
矯正治療において抜歯が必要な理由は、歯を大きく動かす必要があるからです。
しかし、スピード矯正では歯ではなく骨に対して外科治療をすることで歯を大きく動かすことができます。
通常は上下左右一本ずつ(多くは第一小臼歯と呼ばれる真ん中から4番目の歯)を抜歯しますが、スピード矯正ではその抜歯のリスクが少なくなります。
抜歯することが不安な方には歯を抜くリスクを軽減できるスピード矯正がおすすめです。
スピード矯正のデメリット
通常の矯正治療より治療期間が短縮できるスピード矯正のメリットはお話しましたが、それではデメリットについて具体的に解説します。
手術による負担
先ほど紹介した通り、インプラント矯正やコルチコトミーには外科手術が必要となります。
一般的には必ずしも全身麻酔が必要というわけではなく、局所麻酔で行うことが多いです。
通常の歯科治療では歯を削るのみですが、この外科手術は歯茎(歯肉)を切ったり、歯槽骨を削ったりなど大がかりな処置が必要です。
そのため、外科手術にストレスを感じる方にとっては辛い治療になります。
また、担当医の高度な技術と経験が大きく影響するため信頼できる歯科医を見つけなければなりません。
費用が高い
外科手術が必要であったり最新の機材を使用したりするため、どうしても費用が高額となってしまいます。
そもそも矯正治療は自費診療のため高額となりますが、スピード矯正となればさらに+αの治療を加えることとなるため料金が上乗せとなります。
特に外科手術となればメインテナンス(治療後の経過観察など)も含むため、より高額になりがちです。
学生の方やできるだけ安く矯正治療を済ませたい方にはスピード矯正は金銭的な負担となるかもしれません。
歯科医院によってはデンタルローンもありますからぜひ相談してみましょう。
治療できる歯科医院が少ない
スピード矯正は最新の方法であり高度な技術と経験が必要なため、対応できる歯科医も日本ではまだ少ないといえます。
職場や自宅から通いやすい近隣の矯正歯科医院で治療しようと思っても、その歯科医がスピード矯正を行なっていないこともあるため、通院に時間がかかるケースも少なくありません。
わざわざ遠くの歯医者に通うのが苦労と感じない方はよいですが、治療費も高額な上に交通費もかかってしまうのは負担に感じるかもしれません。
最短で矯正治療を終わらせたいなら歯科医に相談
スピード矯正にはさまざまな方法、メリット・デメリットが存在します。
しかし、どの治療方法を選択したらよいのか、自分の歯並びに対し最適な方法はどれなのか、まずは歯科医に相談してみましょう。
実はお口の状態や全身の状態から希望するスピード矯正が適応できないケースもあります。
また、歯並びの乱れ具合や顎の骨の状態によっては治療期間が長くなることも少なくありません。
矯正治療で一番大切なのは最終的にあなたにとって最良の治療方法を信頼できる歯科医師と計画して着実に進めることです。
信頼できる歯科医ならあなたのお口の状態や不安な部分に寄り添い、最適な方法を提案してくれます。
矯正治療について相談してみたい方は、下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
まとめ
今回はスピード矯正の治療方法とそのメリット・デメリットについて紹介いたしました。
矯正治療方法は日々進歩しており従来に比べて治療方法も増えており、自分に合った最善の治療方法を選択できるようになりました。
スピード矯正は画期的な矯正治療ですが綿密な検査と診断が要求される高度な治療方法です。
長期にわたる治療方法にストレスを感じたり、イベントを控えて時間がない場合にスピード矯正はおすすめです。
矯正治療について悩んでいる方も、矯正治療に興味を持った方もぜひ参考にして専門知識と経験のある矯正専門医を見つけて、気になることを何でも相談しましょう。
皆様の矯正治療が思い通りに進むよう、心から願っております。