口唇口蓋裂と歯並びの関係を解説|口唇口蓋裂の治療方法や時期ごとの矯正方法もご紹介します

【監修:青山健一】

口唇口蓋裂と歯並びの関係を解説|口唇口蓋裂の治療方法や時期ごとの矯正方法もご紹介します

口唇口蓋裂のお子さまがいらっしゃる親御さんは、どのような治療をしたら良いのかそれはいつ頃が良いのか、費用はどうなるのかなど心配が絶えません。

また、口唇口蓋裂によって顎・歯茎・歯列にも影響が出るといわれています。
この記事では、口唇口蓋裂と歯並びの関係を詳しく解説しています。また、口唇口蓋裂の治療方法や歯科矯正についてもご紹介しているため参考にしてください。

口唇口蓋裂と歯並びの関係

口唇口蓋裂と歯並びの関係

口唇口蓋裂では上顎が十分な発育ができないため、反対咬合や受け口になりやすいといわれています。
上顎が小さいことや上下の顎のバランスが悪いことなどから、歯の生える場所が悪い・歯がねじれて生える・歯の数が不足などの症状もみられます。

また歯胚がないこともあり、歯が生えてこないことや歯並び・噛み合わせが悪いことが多いです。
口唇口蓋裂の患者さまは、口唇口蓋裂の治療とあわせて年齢に応じた歯科矯正が必要になります。

口唇口蓋裂の治療方法

口唇口蓋裂の治療方法

口唇口蓋裂のお子さまは生まれた直後から治療が必要です。口唇口蓋裂の症状がある場合は、母乳やミルクを吸う力が弱いためすぐにも治療を始めなければなりません。

口唇口蓋裂は成人を迎えるまで長い治療が続けられます。その間には口腔外科・矯正歯科・形成外科・耳鼻咽喉科・小児科などの医師が関わる総合的な治療が必要になるのです。
口唇口蓋裂の代表的な治療方法をご紹介します。

術前鼻歯槽形法

術前鼻歯槽形法

術前鼻歯槽形法は生まれて最初に行われる治療で、全身麻酔が必要な口唇形成術を行う前に上顎の形を改善する治療法です。
ホッツレジン床というプレートを上顎に装着して、顎の成長を促し上顎の形をなるべく良い形にして手術しやすいように調節します。

口唇口蓋裂の症状は赤ちゃん一人ひとり異なるため、ホッツレジン床はお口の型をとってカスタムメイドで作ります。
また、ホッツレジン床を入れることで口と鼻が遮断され、母乳やミルクを吸いやすくなるのです。ミルクを飲む量も増えて栄養補給の心配もありません。

口唇形成術

口唇形成術は口唇の裂を閉じて自然な口唇をかたち作る治療です。全身麻酔が可能になる生後3ヶ月頃に行われることが多いです。
一般的には「Millard法+小三角弁法」という術式が行われます。手術による傷跡が目立ちにくく、術後の口唇形態がバランスよく自然な状態に近いのが特徴です。

また、口唇裂では鼻が変形していることが多いため、鼻の手術を行うこともあります。鼻の状態にもよりますが、同時に行うこともあれば数回に分けて行うこともあります。
口唇形成手術の所要時間は約2時間です。入院は10日間程度予定してください。

口蓋形成術

口蓋形成術は上顎の天井部分の裂によって失われた鼻咽腔閉鎖機能を改善するために大切な治療です。
通常は1歳から2歳までに行われます。2歳頃になると発話が始まるため、この頃までに治療することで正常な構音機能の発達が期待できるためです。
口蓋形成術は施設や症例によって異なりますが、一般的にはPush back法や二段階法が適用されます。

手術は口と鼻がつながっている部分を遮断し、口蓋帆挙筋などの左右に分かれた筋肉群を再建します。
口蓋形成の手術も2時間ほどかかり、入院は7日から10日間程度です。

口唇口蓋裂の障害

口唇口蓋裂の障害

唇に列がある口唇裂と上顎の天井に列がある口蓋裂では、その症状のために別の障害が起こります。
哺乳障害・歯の欠損や歯並びの障害・顎の発達障害・構音障害・耳の疾患などです。

顎や歯茎の成長が遅れているために、口腔内のスペースが狭いことなどの影響も考えられます。
現在では訓練や治療によって障害を少なく抑えられるようになりました。ここでは、代表的な障害についてご紹介します。

哺乳障害

哺乳障害

口唇口蓋裂の赤ちゃんは口と鼻がつながっているため空気が漏れて、口の中を十分に陰圧にできません。そのため吸う力が弱くなるのです。

また、赤ちゃんが母乳を飲む際には舌で乳首を上顎に押し付けるようにして母乳を押し出します。口蓋裂がある場合は、上顎に裂があるため十分に乳首を圧迫できません。

ミルクを飲むのに時間がかかったりミルクが鼻から漏れることがあります。うまく飲めない場合は、口唇口蓋裂用乳首や口唇口蓋裂用哺乳びんが利用できるため医師に相談してみましょう。

言語障害

口蓋裂のために咽頭を閉鎖する機能(鼻咽腔閉鎖機能)がうまく働かず、鼻から空気が漏れることが原因して発音に支障がでます。
口蓋裂特有の言語障害では、カ行・サ行・タ行・パ行などの発音が難しいです。

言葉を発する頃になったら空気が鼻から抜けていないか検査を受け、会話ができるようになる頃には構音検査を受けましょう。
構音訓練を行うことで改善する場合もありますが、構音訓練で改善されない場合は小学校入学前までに咽頭弁移植術など外科治療を行うこともあります。

咀嚼・嚥下障害

口唇口蓋裂では咀嚼・嚥下障害を起こすことが多いです。これは、鼻咽腔閉鎖機能不全が起こり、軟口蓋で口から鼻への通路を塞げないことによります。

上顎の発達不全や裂が原因で舌の動くスペースが確保できず舌がうまく動かないことで食べものをうまく咀嚼できないのです。また、歯並びが悪いことでも噛みづらくなります。

口と鼻が閉鎖されない状態では、飲み込んだものが鼻から出ることもあります。誤嚥の危険性もあるため注意が必要です。

歯並びの障害

口唇口蓋裂では上顎の発達不全で歯並びが悪くなることがあります。上顎への影響だけでなく、上下の顎のバランスが悪いことで噛み合わせも悪くなるからです。

そのため、一般的には上顎を横方法に拡張する治療が行われます。また、歯の欠損や受け口の治療も必要です。
上顎が小さいことで、歯の生える場所が悪い・歯がねじれて生える・歯の数が不足などの症状もみられます。

口唇口蓋裂の方が歯列矯正を始める時期

口唇口蓋裂の方が歯列矯正を始める時期

口唇口蓋裂のお子さまが歯列矯正を始める時期は、乳歯が生えそろって噛み合わせが完成する3歳頃が適切です。
口唇口蓋裂のお子さまには、歯並び・噛み合わせ・受け口・臼歯部交叉咬合・歯の数の不足などの歯の障害がみられます。

歯の障害は一人ひとり症状が違います。歯の状態もいくつか組み合わさって現れることもあるため、治療を始める時期や治療が完了する時期には個人差が大きいです。

口唇口蓋裂に関わる矯正治療は一度で終わることは少ないです。治療を始める前に歯科医とよく相談して長期スケジュールを立てて臨みましょう。

時期ごとの矯正方法

時期ごとの矯正方法

口唇口蓋裂がある場合は、口唇裂や口蓋裂の治療を進めながら矯正治療を行うことになります。
上顎の発達が悪くて裂もあるため、口唇口蓋裂の治療の進捗や顎・歯茎・歯の成長に合わせて治療を行うことが必要です。

矯正治療の対象や治療内容は成長時期によって異なります。乳歯列期・混合列期・永久歯列期で行う矯正治療をご紹介します。

乳歯列期

乳歯列期

生後3ヶ月で口唇の手術、生後1年から2年で口蓋の手術が行われます。そのころには口唇口蓋裂治療の効果が現れ、矯正治療が可能になるからです。
顎の形や歯列の形などから将来的なイメージを考えながら長期的な治療計画を立てます。

この時期は顎が大きく成長する時期のため、上顎の矯正治療に効果があります。そこで、一般的に行われるのが拡張矯正や前方への牽引矯正です。

混合列期

混合列期になると外見的な口唇口蓋裂はなくなりますが、歯槽骨には裂が残っているため骨移植で裂を埋める手術が必要になります。

骨移植によって作られた新しい歯茎に歯を移動させて、移植した骨と歯を安定させます。このときにはマルチブラケット矯正で治療が行われることが一般的です。
永久歯が生えてくるこの時期に多くなるデコボコの歯や八重歯など歯並びの異常があればこの時期に治療を行います。

永久歯列期

永久歯列期は永久歯が生えそろうため、全体的な歯並びと噛み合わせを調整するのに最適な時期です。
一般的には、上下すべての歯にブラケットを装着するマルチブラケット矯正が適用されます。

また、乳歯列期に行った上顎の拡張や受け口の矯正で、上下の顎のバランスが矯正できていない場合は外科的治療が行われることがあります。

口唇口蓋裂の矯正治療の費用は保険適用

口唇口蓋裂の矯正治療の費用は保険適用

一般の矯正治療は保険適用外ですが、口唇口蓋裂の矯正治療は病気の治療として認定されているため健康保険が適用されます。

ただし、指定自立支援医療機関で治療することが前提になります。指定機関以外では自費治療になるため、治療を始める前によく確認してください。

また、乳幼児医療費助成制度(2歳まで)や自立支援医療制度(育成医療・厚生医療)を利用することで一定額以上の自己負担分の軽減が受けられます。

指定自立支援医療機関は治療経験のある歯科医師の常勤や口唇口蓋裂の矯正治療に必要な設備の設置が義務付けられているため、安心して治療が受けられます。

口唇口蓋裂で悩んでいるなら

口唇口蓋裂で悩んでいるなら

最初にご紹介したように、口唇口蓋裂は口腔外科・矯正歯科・形成外科・耳鼻咽喉科・小児科など診療科が多岐に渡っています。
口唇口蓋裂は赤ちゃんのときに症状が現れるため、最初の治療は産科の医師から紹介されることが一般的です。

それでも、これからやらなければならないことや治療費のことなど不安なことばかりです。
口唇口蓋裂のお子さまがいらっしゃる親御さんは、どこに相談してよいか悩んでいることが多いと思われます。

日本口腔外科学会や日本口唇口蓋裂協会にも相談窓口があります。口唇口蓋裂の歯並びで悩んでいるなら歯科医に相談してみてください。

まとめ

まとめ

口唇口蓋裂はご紹介しましたように生まれてから成人するまでの長期に亘る治療や訓練が必要な病気です。

患者さまには体力的にも精神的にも大きな負担がかかることになります。口唇口蓋裂のお子さまがいらっしゃる場合は、治療や歯科矯正について十分な情報と心構えが必要です。

また、口唇口蓋裂は赤ちゃんが生まれたときからすぐに哺乳障害への対応が必要な病気です。妊娠中にエコー検査で症状があるかどうかの判断もできるようになっています。

エコー検査で口唇口蓋裂の疑いが指摘されている妊娠中の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
当法人は、指定自立支援医療機関ではないため口唇口蓋裂の治療は行っていません。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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