【監修:青山健一】
目 次
奥歯の歯並びが噛み合わせに影響を与える事は当たり前のように思えますが、見えにくい場所のため蔑ろにする人も少なくありません。
正常咬合(せいじょうこうごう)と呼ばれる正しい歯の噛み合わせは、奥歯がきちんと正しい歯並びになる事が必須条件です。
悪い噛み合わせの影響は口腔内だけではなく、体全体にも影響を及ぼしてしまう事はあまり知られていません。
ここではどのような噛み合わせが悪いのか、さらに自分でできる噛み合わせのセルフチェックや問題があった場合の治療法をご紹介します。
奥歯の歯並びは噛み合わせに影響する?
奥歯の歯並びは噛み合わせに影響します。これは、歯並びと噛み合わせの関係がわかると簡単に理解できるはずです。
歯並びというのは、文字通り歯がどのように並んでいるかの事で、歯の位置がまっすぐに並んでいると見た目が美しくなります。
噛み合わせというのは、上の歯と下の歯の位置以外にも上下左右の顎の動きと口周りの筋肉、さらに歯槽骨(しそうこつ)が関係します。
つまり、歯並びの悪さは噛み合わせの悪さに繋がりますが、歯並びがいいからといって噛み合わせがいいとは限りません。
歯列と正常咬合のどちらも正常な状態が、理想の歯の位置といえます。
奥歯の歯並びが悪くても正常咬合であれば問題ありませんが、殆どの場合噛み合わせにも問題が起こっている場合が多いです。
理想の噛み合わせの条件
理想の噛み合わせの条件とは、大きく分けて顎と歯が関係します。それに伴う口腔内の筋肉や骨の位置も重要なポイントです。
1つ目は、顎関節が正常である事です。顎の関節は噛み合わせに非常に影響を及ぼし矯正治療の中には外科手術を必要とするものもあります。
2つ目は、歯列の位置が上下ともずれがないことです。歯並びは上下ばらばらでは噛み合わせになりません。
噛み合わせが正常な場合は、上の歯が1本に対して下の歯が2本接合するようになっています。
3つ目の条件は、歯の本数です。永久歯は合計28本で上下同じ数ですが、上の親知らずが生えて一本多かったりすると噛み合わせに影響がでます。
最後に舌の位置や咬合筋(こうごうきん)と呼ばれる口の周りの筋肉が正常である事です。
悪い噛み合わせが与える影響
前歯の歯並びがどんなに綺麗でも、悪い噛み合わせが与える影響は想像以上に体に負担をかけます。
審美的な部分だけ矯正治療を行っても、噛み合わせが悪くなれば元も子もありません。
矯正歯科医は機能的な歯列状況を基本に、審美的にも美しくなるように矯正治療計画を作製しますが、あくまで優先順位は正常咬合です。
どんな体への負担があるか、みていきましょう。
歯周病の進行
歯周病とはプラークと呼ばれる歯垢に存在する歯周病菌の感染によって、歯肉が下がってきたり歯槽骨がもろくなるなどの症状の総称です。
噛み合わせが悪いと、歯周病の進行が加速する可能性が高くなることはあまり知られていません。
というのも歯周病の原因は他にもあり、複合的な原因である噛み合わせの悪さは、あまり取りざたされないからです。
悪い噛み合わせの状態の場合、正常な状態よりも歯を食いしばってしまうため、過剰な圧力が歯にかかります。
長期間歯を食いしばっていたり、歯ぎしりをしていると歯周組織や顎の骨に大きな負担となり、痛みや損傷も起こる可能性が高いです。
歯周病の原因の1つは歯周組織の脆弱化で、噛み合わせが悪い事が間接的に関係している事は間違いありません。
消化不良による胃腸への負担
消化不良による胃腸への負担も、噛み合わせの悪さが関係します。
奥歯は噛みあうことで食べ物をすりつぶし、だ液と混ざり合い消化を行いますが、奥歯の歯並びによっては未消化になることも少なくありません。
口腔内のだ液には、食べ物を消化する消化酵素が含まれており、咀嚼力とだ液の量によって食べ物の消化の半分が決まるといえます。
奥歯の機能が正常に働かないと負担は消化器官すべてにかかり、結果胃腸に問題が生じる可能性が高くなります。
顎関節症
顎関節症(がくかんせつしょう)とは顎の骨の接合に不具合がある疾患で、口を開けると痛みを生じたり音がなったりする症状があります。
悪い噛み合わせが原因で顎関節症になっている場合、顎の治療ではなく矯正治療をする事が先決です。
噛み合わせが悪いと歯の問題だけではなく、骨や消化にまで影響を及ぼす事がこれでわかっていただけたと思います。
噛み合わせのチェック方法
噛み合わせのチェック方法は、自分の家で鏡をみながら行う事ができます。
もちろん歯科医院での検査を受ければ自分の噛み合わせがどういう状態かわかるため、不安な方は診察をうけてみましょう。
自己診断は、正確な指標ではありませんが1つの目安としてお考えください。
正面
正面を向いて、鏡とまっすぐに向き合います。
まず口を真横に開き、歯が見えるようにしてください。上の歯と下の歯の位置との重なりが噛み合わせのチェックポイントです。
1つ目は正中線(せいちゅうせん)という歯の中心の縦の線が、上の歯と下の歯で同じ位置にあるかどうかを確認してください。
2つ目は、上の歯が下の歯と2mmぐらい重なり、下の歯と歯肉がみえているかをチェックします。もしみえてなければ過蓋咬合の可能性が高いです。
3つ目に上下の歯の重なりで下の歯が上の歯の外側になっていれば受け口の可能性もあり、下顎前突の場合も同様になります。
4つ目は口を閉じても上下の前歯が重ならず、口が開いたような状態は噛み合わせに問題があるため、治療が必要です。
横
次に鏡に横顔をうつしてみましょう。鏡に対して横顔をまっすぐにうつすか、または携帯で写真をとってチェックします。
首をまっすぐにしたまま鼻先と顎の先端を結んだ線をひき、口元がその線を越えなければ正常です。
もし、その線を唇が超えた場合は出っ歯の可能性があります。
横顔の判断は自分で目視するのは難しいため、不安な場合は下記の無料相談で噛み合わせや歯並びについて相談してみましょう。
主な不正咬合と奥歯との関係
主な不正咬合と奥歯の関係は、とても密接で矯正方法も状態によって異なります。
奥歯は歯並びがよいだけでは不十分で、噛み合わせがきちんとしてなくてはなりません。
一つ一つの不正咬合の特徴と奥歯の関係をみてみましょう。
叢生
叢生(そうせい)は、乱杭歯(らんぐいば)とも呼ばれていて、歯列が乱れている状態の総称です。
奥歯は歯列混合時期に最も遅く生えてくる歯ですが、上下の顎が発達せず歯の生えるスペースが足りないと歯並びがでこぼこになります。
叢生の矯正治療は、上下の顎の骨を拡大したり抜歯をする事でスペースを確保する事が必要です。
受け口
反対咬合(はんたいこうごう)、下顎前突(かがくぜんとつ)とも呼ばれる受け口は、下顎が前にでている状態を指します。
奥歯の噛み合わせが悪く下顎が前にずれている状態、又は奥歯の高さが不揃いです。そのため部分的にしか奥歯を使えていません。
下顎が前に発達してしまい、口を閉じると前の下の歯が上の歯を覆うため、拡大床やマウスピース矯正などを使い、顎の矯正を行います。
過蓋咬合
過蓋咬合(かがいこうごう)は口を閉じたときに、上の歯が下の歯を覆い被せすぎてしまい前の歯が見えない状態の事です。
上の歯の裏に下の歯が当たってしまったり、前の歯が内側に倒れて生えている症状です。
奥歯の高さが低く生えてしまったり、奥歯がひどい虫歯になってしまうと、過蓋咬合になる可能性が高くなります。
顎の骨が未発達でも過蓋咬合になるため、その場合は矯正拡大装置を取り付け、顎の拡大を促すかもしれません。
矯正治療の方法
奥歯は噛み合わせが悪いと多くの支障をきたし、他の歯に悪影響を及ぼすだけではなく、体の疾患の原因にもなりかねません。
不具合が見つかったら、早急に治療するのが賢明です。
自分の奥歯の歯並びに不安を感じる方は、できるだけ早く一度診察を受けましょう。
何歳になっても矯正治療は遅いということがありませんし、奥歯の歯並びは将来の患者様の健康にも左右しますため、治療をおすすめします。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正治療は、一般的な噛み合わせを改善する治療としてよく用いられる治療方法です。
ブラケットと呼ばれる留め金を特殊な接着剤で歯に取り付け、ワイヤーと接合します。
接合部分には、飲み込んでも害のない特殊ゴムを用いてワイヤーと接合すれば完成です。
奥歯の歯並びを矯正するには、上下の噛み合わせも考慮して歯を移動させなければなりません。
そのため歯の大きな移動はワイヤー矯正を使い、微調整にインビザラインなどのマウスピースを用いることもあります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、インビザラインやキレイラインなどの名称でも知られている取り外しできる矯正治療の総称です。
ワイヤー矯正と異なり、矯正器具を取り外せるのがメリットですが、一方で矯正器具の装着時間が短いと歯が動かないなどのデメリットもあります。
インビザラインで過蓋咬合や受け口の症例が増えているため、治療としては可能です。
しかし、奥歯の歯並びはワイヤー矯正の方がより適切な場合もありますため、矯正開始前に、きちんと治療計画を確認し、歯科医と話し合いましょう。
治療方法の相談や、奥歯の歯並びの疑問は、下記の無料矯正相談を利用してみましょう。
奥歯の歯並びに悩んでいるなら
見えにくい場所に生えている奥歯の歯並びは、自分では意識することが少ないかもしれませんが、全体の歯並びを左右する大切な歯です。
子供のときは学校で歯科検診がありますが、成人してからは歯科医院へは行く習慣がないかもしれません。
奥歯の歯並びを矯正する事で、多くの恩恵を受けることが証明されているため、これを治さない理由はありません。
奥歯の歯並びが気になって受診するか悩んでいる方は、今すぐお問い合わせ下さい。
まとめ
奥歯の歯並びが悪い事で、噛み合わせや消化器官に影響を及ぼす事はあまり知られていません。
気になる歯列の悩みを出来るだけすぐに解消する事で、さまざまな弊害を予防できます。
痛みや問題が起こっていなくても、奥歯の歯並びや噛み合わせに異常があるかどうかは診察して初めてわかることも多いため、まずは専門家にご相談下さい。