【監修:青山健一】
目 次
パナシールドは、お子様用の矯正装置です。治療するのはお子様のため、パナシールドに関する不安や疑問を抱える親御様が少なくありません。
今回は、パナシールドの特徴やメリットを紹介します。パナシールドについて把握し、お子様と一緒に治療をスタートさせてください。
パナシールドで治療できる症例も解説していきます。
パナシールドの特徴
パナシールドは、反対咬合や前歯の被蓋改善に用いられる矯正器具です。
お子様用の矯正装置のため、装着にあたって不安や疑問を抱える親御様もいらっしゃると思います。
ですが反対咬合や前歯の被蓋は、あごの骨が成長しきった大人になってからだと治療が大掛かりになってしまうこともあるため、早期の治療が理想的です。
まずは、パナシールドの2つの特徴をみていきましょう。
マウスピース型の装置
パナシールドは、取り外しが可能なマウスピース型の矯正装置です。食事・歯磨き・お出かけ中などは外せるため、日常生活に支障をきたすことはありません。
また、ソフトエラストマーという柔軟性のある素材でできているため、装着感がよく使用中の痛みが少ないのが特徴です。
口腔内に装着するため、取り外したときパナシールドには、唾液や歯垢などの汚れが付着しています。
使用していないときは、水で汚れを落とし専用のケースに入れて保管しましょう。
パナシールドの仕組み
パナシールド機能は、下記の通りです。
- 舌の位置を上げてくれる
- 下あごを後ろ側に誘導
- 上唇の圧を下げる
- 上あご前歯を前側に誘導
パナシールドは、筋肉機能を改善しながらあごを正しく成長させてくれます。
下がり気味の舌を上げ、舌と唇が歯を押す力のバランスを整えるため、反対咬合や前歯の被蓋改善が期待できるのです。
パナシールドによる治療を行う年齢
お子様の反対咬合や前歯の被蓋改善でパナシールドでの治療を検討していても、何歳から治療できるのか疑問を抱えている方もいると思います。
パナシールドは長時間装着しなければいけないため、装着してもすぐに外してしまう小さいお子様には不向きです。
パナシールドによる治療を行う年齢について、みていきましょう。
3~5歳で始めることが多い
パナシールドは、3~5歳で始めることが多いです。
幼少期の反対咬合の原因は、筋のズレが多いため早期に治療を行えば改善が見込めます。
また、永久歯が生え揃ってからだと骨や筋を移動させるのが困難なため、治療期間が長くなるだけでなく抜歯するパターンもあります。
パナシールドによる治療は、マウスピースを口腔内に装着しなければいけません。そのため、言葉がわかり治療に協力してもらえる3歳ごろからの治療があります。
3歳未満には使わない
パナシールドは、3歳未満の使用は控えましょう。
反対咬合や前歯の被蓋改善は、早く治療を始めるほど効果が得られます。ですが、3歳未満のお子様は大人の言葉を理解できなかったり、マウスピースの装着を嫌がったりします。
また、装着時間が長いほど効果が得られますが、3歳未満のお子様だと嫌がって自分でマウスピースを外してしまう可能性が高いです。
反対咬合や前歯の被蓋改善は、3歳を過ぎてから治療を始めても遅くはありません。
3歳未満で「反対咬合かも」という症状がみられた場合や前歯の被蓋改善を考えている方は、まずは歯科医へ相談しお子様の成長に合わせて治療開始することをおすすめします。
パナシールドで治療できる症状
パナシールドで治療できる症状は、反対咬合や前歯の被蓋改善です。マウスピースを装着した矯正方法ですが歯並びを整える治療はできません。
パナシールドで治療できる、2つの症状について解説します。
反対咬合
パナシールドは、反対咬合の改善に効果があります。
反対咬合は上の前歯より下の前歯が出ている状態の歯並びをいい、原因は下記の通りです。
- 遺伝
- 上下のあごのバランス
- 歯の生え方
- 指しゃぶり・爪を噛む・口呼吸などの癖
反対咬合だと咀嚼が不十分になるため、消化不良を起こし成長に影響を及ぼす可能性が高くなります。
また、反対咬合は通常とは逆の噛み合わせのため、発音が悪くなりがちです。また、歯と歯の間に隙間ができやすく、サ行やタ行が言いづらくなります。
容姿や言動に影響が出てしまうため、お子様だと周囲にからかわれてしまうことも。そのため、劣等感を抱える子も少なくありません。
反対咬合の早期治療は機能的な改善に加え、お子様の心の負担を軽減できます。また、大人になってからの治療は、長期間にわたり治療費もお子様に比べて高額です。
お子様が反対咬合の場合、早めに歯科医へ相談し治療の検討をおすすめします。
前歯部の被蓋改善
パナシールドは、前歯部の被蓋改善ができます。
前歯部の被蓋は反対咬合とは逆に、上の前歯が下の前歯を覆っている状態の歯並びです。
下の前歯が見えない状態のため、次のようなトラブルが生じます。
- あごの動きが限られる
- あごの関節に痛みを生じる
- 噛むときに下の歯ぐきを傷つける
前歯部の被蓋はあごへの負担が大きいため、顎関節症の原因になりかねません。また、歯ぐきを傷つけてしまうため、歯周病や口内炎を引き起こします。
歯周病は虫歯の原因でもあり、ひどくなると抜歯しなくてはいけない怖い病気です。
前歯部の被蓋は生活に影響が出るだけでなく、大人になってからだと治療が困難な症状です。
パナシールドによる治療は、前歯部の被蓋改善が見込めます。自分のお子様の歯が「前歯部の被蓋かもしれない」と思ったら、まずは歯科医へご相談ください。
パナシールドのメリット
パナシールドによる治療には、さまざまなメリットがあります。どんなメリットがあるのか、みていきましょう。
さまざまなサイズがある
パナシールドはさまざまなサイズがあるため、お子様に合うパナシールドを見つけられるのがメリットです。
パナシールドには、S・M・L・Aの4サイズがあります。
- Sサイズ→3歳ぐらい~
- Mサイズ→6歳ぐらい~
- Lサイズ→9歳ぐらい~
- Aサイズ→大きいサイズ
治療前に歯科医で、年齢や歯列に合わせてサイズを選択し、成長や治療過程に合わせて取り替えながら治療を進めます。
サイズが豊富なため、お子様にぴったりなパナシールドを見つけられます。
筋肉のバランスを整えられる
パナシールドは「筋肉のバランスを整えられる」のがメリットです。
パナシールドを装着すると下あごへの舌圧を軽減できるため、舌と顔面の筋肉のバランスを整えられます。筋肉のバランスが整うと、あごの位置や噛み合わせの改善に繋がります。
反対咬合や前歯部の被蓋は、あごの位置のズレが原因の1つです。
あごの位置がズレると噛み合わせが悪くなり、咀嚼がうまくできません。
また、あごの関節がうまく働かないため、あごの痛み・口が開きにくいなど顎関節症を引き起こします。
あごの位置のズレは反対咬合や前歯部の被蓋の他に、生活への影響も生じます。
パナシールドによる治療は、筋肉のバランスを整え反対咬合や前歯部の被蓋の原因の1つである「あごの位置のズレ」を修正してくれるのです。
舌の位置を改善できる
パナシールドは、舌の位置が改善できる点が1つのメリットです。
舌の正しい位置は上あごで、舌先が上の前歯にピッタリくっついている状態です。
舌の位置が低く下あご側にあると、舌が下あごを押し付け歯列や骨を前側に誘導します。そのため、下あごが突き出し、反対咬合になってしまうのです。
舌の位置が低くなるのは、舌の癖や口呼吸などの悪習慣が原因で引き起こされます。
パナシールドは、舌を正しい位置へ誘導してくれるため、下あごが突出するのを改善できるのです。
就寝時のみの装着
パナシールドは就寝時のみ装着するため、お子様が無理なく治療を行えるのがメリットの1つです。
大人でも、長時間にわたり口腔内に異物があると、違和感を感じてしまうと思います。我慢するのが難しいお子様だと、すぐにパナシールドを取り外したくなってしまいます。
ですが、パナシールドは就寝時のみの装着で治療が可能です。
そのため、食事や歯磨きのときはもちろん、外出や通園・通学時はパナシールドを外しても大丈夫です。
パナシールドは長く装着するほど効果が得られます。治療を理解し早期に治したいと協力が得られる年齢であれば、就寝時以外の時間に装着し早期治療を行いましょう。
パナシールドの治療期間
パナシールドによる治療は、スタートする時期や口腔内の状態により変わりますが、8ヶ月~1年半ほどです。
お子様の治療のため、どのくらいの期間が必要なのか、いつまで装着しなければいけないのか疑問に思う方もいると思います。
特に年齢が小さいお子様だと、パナシールドを装着するにあたって苦労する方も少なくありません。
ですが、大人になってからの反対咬合の治療は1年~2年かかり、外科手術や抜歯など困難な治療を伴うパターンもあります。
また、治療費も高額なため経済的な負担も避けて通れません。そのため、大人になってからの治療は、お子様の治療より大変です。
お子様にパナシールドを装着させるのは大変ですが、遊び感覚で装着するなど工夫しながらの早めの治療スタートをおすすめします。
パナシールドの費用相場
パナシールドの費用相場は、治療期間・口腔内の状態・歯科医院によって異なります。
パナシールド自体の価格は1万円前後が相場です。その他に診察料や検査料などがかかりますが、歯科医によって料金形態が違うため事前に確認しておきましょう。
歯科医院によって費用にばらつきはありますが、トータルで10万円前後かかると考えておきましょう。
10万円前後と聞くと高額費用と思ってしまいますが、大人になってからの反対咬合などの治療は、50万~80万円とさらに高額です。
また、歯並びの状態によっては治療が困難になり期間が長期化するケースもあります。そのため、反対咬合や前歯部の被蓋は、早期治療が望ましいです。
パナシールドを希望するなら歯科医に相談しよう
パナシールドによる治療を希望するなら、信頼できる歯科医へ相談しましょう。
反対咬合や前歯部の被蓋は、歯の生え方やあごの状態の確認が必要なため、自分で治療するのは困難です。そのため、専門知識のある歯科医での治療をおすすめします。
反対咬合や前歯部の被蓋の改善は、歯並びやあごの骨などが関係しています。
永久歯が生え揃う前だと骨が柔らかく、あごの骨などの修正も可能です。ですが、永久歯が生え揃うとあごの骨も固定されてしまうため、治療は難しくなります。
パナシールドはお子様の治療方法のため、不安や疑問があるのは当然です。歯科医は歯に関する相談は快く聞いてくれるため、遠慮なく相談してください。
まとめ
パナシールドの特徴やメリットを解説してきました。
パナシールドによる治療は、お子様の反対咬合や前歯部の被蓋の改善に効果的です。
反対咬合や前歯部の被蓋は、噛み合わせが悪い・発音が悪くなるなど、生活に影響を及ぼします。
小学生ぐらいだと、あごが突き出ていたり発音が悪かったりすると、周りにからかわれたりするため、精神的なダメージを受けてしまいます。
また、大人になってからの治療は、外科手術や抜歯が必要になるケースもあるため、パナシールドによる早期の治療がおすすめです。
お子様の歯並びが気になったら、まずは歯科医へ相談してください。