【監修:青山健一】
目 次
「ビーバー歯」とは上あごの前歯2本がビーバーのように見える歯並びのことです。
ビーバー歯については特に日本では審美面ではあまり問題とされず、むしろチャームポイントと捉えられることもあります。
しかしながら歯の健康という面からみた場合はやはり問題点も多くあるため、歯列矯正の方法も含めて詳しくご紹介します。
ビーバー歯の特徴
ビーバー歯とは、中切歯がなんらかの理由でビーバーのような見た目となっている歯並びの状態を指します。
ビーバー歯となるにはいくつかの原因があります。それはどういったものなのか、次の項目で少し詳しく解説していきましょう。
ビーバー歯の原因
ビーバー歯となる原因の主なものは下記のとおりです。
- 中切歯が大きい
- 中切歯の周囲の歯が小さい
- 中切歯が前に出ている
これらの要素が影響してビーバー歯となってしまうのですが、ではなぜそのような状態となるのか解説していきます。
栄養が行き過ぎてしまったため
歯の成長の過程で特定の歯(この場合は中切歯)に栄養が集中してしまったために、その歯だけが他の歯よりも大きくなってしまうことがあります。
実際にはその状態は中切歯に限らず発生し、その成長度合いのアンバランスさにより乱杭歯などさまざまな歯並びの問題を引き起こすものです。
これが中切歯に特異的に発生することにより、ビーバー歯と呼ばれる状態となってしまいます。
栄養がいきわたらない
これは上で触れた原因とは対照的な理由となりますが、ある特定の歯に栄養が行き渡らないために矮小歯といわれる歯が形成されることがあります。
それが中切歯の隣の側切歯で起こった場合に相対的に中切歯が大きく見えてビーバー歯となってしまうというものです。
遺伝的要素も関係する
それとは別に遺伝的な要素もビーバー歯の原因となり得ます。
両親のどちらかがビーバー歯の場合、お子さんにも同じような形態でビーバー歯の症状がでることもあるのです。
その他にも幼児期の指しゃぶりなどで中切歯だけが出っ歯のような状態となってしまい、ビーバー歯となる場合もあります。
ビーバー歯を放っておくリスク
このビーバー歯を放置することによってどのようなリスクが考えられるのかについて詳しくみていきましょう。
虫歯・歯周病になりやすい
ビーバー歯の場合は中切歯と側切歯の間が歯磨きしづらく、虫歯や歯周病になりやすいということがあります。
前歯の目立つ場所が虫歯で黒くなってしまうと見た目にもかなり影響がでますし、歯周病となった場合は赤く腫れた歯茎がむきだしになり、これもまた見た目にかなり影響がでます。
咀嚼が十分にできない
ビーバー歯だけであれば咀嚼にはさほど影響を及ぼさない場合もありますが、これに翼状捻転やオープンバイトなどが重なると咀嚼にも影響がでるリスクがあります。
前歯でうまく食物を噛み切れず奥歯で無理やり噛むようになると、噛み合わせにも影響がでてしまい、ひいては全身の不調を引き起こしてしまうということもあるのです。
歯を失うリスクがある
先の項目でも触れましたが、虫歯や歯周病となってしまった際にこれを放置していると最終的には歯を失ってしまうことがあります。
「なにをそんなオーバーな…」と思われるかもしれませんが、歯を失う原因の1位2位は歯周病と虫歯となっており、全く無視できないものなのです。
ビーバー歯も放置してしまうと場合によってはこういった事態を招く可能性があるため、不都合がないからと軽く考えずに歯科医に相談していただくことをおすすめします。
ビーバー歯の矯正治療方法と費用
そんなビーバー歯を治療するためにはどのような方法があるのか。おおよその費用面と併せて解説します。
ワイヤー矯正
まずは既にご存じのかたも多いワイヤー矯正です。
装置が目立ってしまうため敬遠するかたもいらっしゃいましたが、目立たない色の器具の普及や、歯の裏側に器具を装着する方法も開発され見た目の問題は減ってきています。
費用の相場は表側矯正の場合で550,000円から660,000円程度です。裏側矯正で1,000,000から1,100,000円程度となっています。
マウスピース矯正
透明のマウスピースを常時装着することによって歯並びを改善するマウスピース矯正もビーバー歯の治療には有効です。
現在の歯並びからゴールの歯並びまで器具を交換しつつ少しずつ歯を動かしていく方法のため時間は多少かかりますが、身体的な負担や見た目のよさから人気の治療法となっています。
費用は期間や作成するマウスピースの数によっても変動がありますがおおよそ880,000円程度からが相場となっています。
部分矯正
これまで述べてきた治療方法はそれぞれ歯の一部分のみに適用することも可能です。
ビーバー歯の場合、問題となっているのは中切歯とその周辺の一部の歯であることが多いため、この部分矯正でも治療は可能です。
部分矯正での治療の場合は口腔内全体に及ぼす影響も少なく、期間も比較的短く済む場合が多いためこの治療法を選ぶかたも多くなっています。
ご自身にはどの治療法が合っているかについては個々の状況によっても異なるため、判断に迷うこともあるかもしれません。そんな場合は無料相談を利用することをおすすめします。
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ビーバー歯を矯正するメリット
先にも述べましたが日本では海外に比べて審美的には比較的問題とされないこともあるビーバー歯ですが、矯正することによってどんなメリットがあるのでしょうか。
美しい横顔が手に入る
ビーバー歯の場合は中切歯が前に出ていることも多いため、横から見た場合に出っ歯のように見えてしまうことがあります。
翼状捻転を併発している場合はさらにそれが顕著になるため、横顔がどうしても気になってしまうというかたは多いです。
実際のところは自分自身で横顔を見ることはできないため、写真やスマホのビデオなどで撮影したご自身の顔を見て初めて気づくかたもいらっしゃいます。
治療を行い歯並びがきれいになると、前からの見た目だけでなく横顔も綺麗になり、より自分自身に自信が持てるようになるのです。
歯の手入れがしやすい
実際的な問題としては日々の歯のお手入れがしやすくなる、というメリットもあります。
地味なようですがこれは非常に大事なことで、ビーバー歯の場合は毎日の歯磨きでどうしても落としきれない歯垢や食べかすが残ってしまうのです。
これが積み重なることにより虫歯や歯周病を発症する確率が高くなってしまうのですが、矯正することによりそういったリスクも減らせるためメリットといえます。
口内の乾燥を防げる
ビーバー歯の場合は出っ歯であることも多く、また一部分だけ歯が出てしまっているために口が閉じづらくなってしまうことがあります。
そうなると自然と口呼吸するようになり、結果として口内が乾燥してしまうのです。
口内の乾燥が与える悪い影響としては、口臭がきつくなる・唾液の減少により虫歯のリスクが増える・口呼吸により感染症のリスクが高まる、などというものが挙げられます。
矯正することにより口が自然と閉じて鼻呼吸がしやすくなるため、いつも無意識にポカンと口が開いていたのが閉じて見た目にもよい印象となります。
脱臼・破折・脱落のリスクを減らせる
歯の脱臼、あまり聞きなれない言葉ですが、実際にはよくある症例です。
歯を顎の骨に固定してる組織(歯根膜)が断裂してしまうことにより起こる症状で、歯が完全に脱落してしまう完全脱臼や歯根膜が一部剥がれた状態の不完全脱臼があります。
ビーバー歯だと歯根膜への力の伝わり方が不均等となり、一部にのみ負荷がかかりすぎてしまうことがありそれで脱臼してしまうのです。
またその他にも同様の理由により歯が折れてしまったり、最悪の場合は抜け落ちてしまったりということも起こってきます。
いずれの場合も矯正することにより負荷が均一化されればリスクはかなり減らせるため、こういった見地からも矯正をすることは一考に値するといえます。
矯正治療に伴うリスク
ここまでは矯正することで得られるメリットについて説明してきましたが、この項目では矯正治療中に考えられるリスクとはなにがあるかについて解説していきます。
虫歯になりやすくなる
特にワイヤー矯正の場合ですが、矯正中は歯が磨きづらくなるため虫歯になりやすくなります。
これは丁寧に歯磨きをしていただくしかないのですが、矯正治療中は定期的に診察を受けるため、虫歯になってしまっても比較的早期に発見して治療が可能です。
またマウスピース矯正であれば着脱が可能なため、そういったリスクは低減できます。
器具による口内のトラブル
これもワイヤー矯正の場合に多いのですが、歯にブラケットと呼ばれる金属製の器具を装着するため、慣れるまでは口内炎などの口内トラブルを起こしやすくなります。
装着後しばらくすると慣れて解消することが殆どなのですが、あまりにも継続して発生する場合には器具が合っていない可能性があるため主治医に相談することをおすすめします。
ビーバー歯で悩んでいるなら歯科医に相談しよう
ここまでビーバー歯とその及ぼす影響について解説してきました。
それでもどうしても自分は治療が必要な程度の症状なのか分からない、そういった場合はぜひ一度矯正専門医院に相談することをおすすめします。
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まとめ
今回はビーバー歯というあまり聞きなれない症例について解説してきました。かわいらしく見えることもあるこの症例ですが、放置すると意外なリスクも多いものです。
ビーバー歯に限ったことではありませんが、明らかな病気といえないようなものであっても、何もないうちから予防的に治療を始めることが大事なこともあります。
今のところは問題がないからと先延ばしにせずに、積極的に歯科医にご相談されることをおすすめします。
今回の記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。