【監修:青山健一】
目 次
「子どもの歯並びが気になるけど定期検診に行くべきか?」と悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。乳歯が生え出すと誰しもが検診について考えるのは当然です。
一方まだ乳歯だけで永久歯は生えていない時期であり、乳歯が抜けると歯並びに影響しないから大丈夫だと油断しがちの方もいらっしゃいます。
今回お話するお子様の年齢は3歳です。まだ小さいのに矯正治療は痛そうでかわいそうと考えたり、子どもが歯医者さんを怖がったりしそうだと色々と考えてしまいますよね。
お子様の歯並びの原因は、遺伝だけだとは必ずしも限りません。永久歯がキレイに生えるよう普段からの習慣を変えることでお子様の歯並びを整えられることを知っておきましょう。
そこで今回は3歳児の歯並びの特徴・歯並びに影響しやすい習慣・3歳で治療を検討するケースについてお話していきます。
3歳児の歯並びの特徴
3歳頃の子どもは乳歯が全て生えそろい上下10本ずつ、合計20本ある状態です。この頃から歯に隙間ができず歯が詰まっているケースがあります。
このことが原因で歯が生えてくるスペースがなくなり、歯がガタガタになるお子様が多いです。他には、上顎前突(出っ歯)や受け口になっていることが判明する時期でもあります。
乳歯が生えそろう時期
赤ちゃんの乳歯が生え始めるのが、6~8か月くらいと個人差があるように、乳歯が生えそろう時期も人それぞれです。
一般的に乳歯は3歳頃に生えそろいます。なかなか乳歯が生えてこず心配になる方もいらっしゃいますが、少し様子を見てください。
しかし、あまりにも成長が遅く1歳過ぎても乳歯が生えてこない子どももまれにいます。その場合は、歯科医院で相談してみましょう。
習慣が歯並びに影響しやすい
歯並びは遺伝だけだから仕方がないと悲観している方もいます。しかし歯並びの悪さは遺伝だけでなく、普段の生活習慣に影響しているのはご存じでしょうか。
大人になると習慣化していてリセットするのがなかなか難しいです。例えば歯磨きをしないで寝てしまう・タバコ・飲酒もよくない習慣です。
しかし、小さい子どもなら周りの大人が注意して見ていれば癖が直る可能性があります。子どもにとって悪影響のある習慣はどのようなことか下記で解説していきます。
歯並びに影響しやすい3歳児の習慣
歯並びの悪さに影響する原因の1つであるのが生活習慣です。大人であれば姿勢の悪さや頬杖をつくことなどがあげられます。
体のバランスが崩れると歯の噛み合わせもずれていくからです。特に3歳児は周りの大人が気をつけなければなかなか治りません。
下記では3歳のお子様のよくない生活習慣のポイントを4つ説明しています。乳歯から永久歯に生え変わる前に適切な準備をしましょう。
食生活
歯並びは遺伝だけでなく生活習慣にも影響を及ぼします。例えば、食生活が昔と違いパンやパスタなど洋食が主流になりつつあることです。
固いものを噛む機会が減ると顎の成長が発達しにくくなります。
そして顎が小さくなると永久歯が生える場所が確保できず、前歯が出てしまうなどの原因になるため食生活を見直しましょう。
口呼吸
3歳の子どもはテレビなど何かに集中しているときに、お口がポカンと開いた状態になることが多いです。この際に口呼吸をしているためさまざまな悪影響を及ぼします。
お口を開けた状態が長く続くと下顎が通常よりも下の位置にきて上顎の筋力が弱くなり、成長過程で上顎の歯列が狭くなるのです。
その結果、成長途中の乳歯や今後生えてくる永久歯が生えるスペースがなくなり、歯並びに影響することになりかねません。
また、お口の中が乾燥状態になり虫歯になりやすくなります。お子様の虫歯治療は嫌がって大変な思いをする方も多いです。近くにいる方が様子を見て声かけしましょう。
指しゃぶり
お腹の中にいるときから赤ちゃんは指しゃぶりをしていて、その名残なのか生まれてからも安心感を求めて無意識に指を吸い続ける子どもが増えています。
この指しゃぶりは大人でも引き抜けないくらいの力が加わっているのです。歯にもその圧力がかかり、上の前歯は前の方へ下の前歯は後ろへ押さえつけられます。
そして出っ歯や上下の噛み合わせが逆になる反対咬合になる可能性が高くなります。3歳くらいまでは様子を見つつ、不安であるのなら一度歯科医に相談しましょう。
うつぶせ寝
子どものうつ伏せ寝は、呼吸が浅くなりよくないことだとご存じの方は多いです。しかし、歯列にも影響が出てくることはあまり知られていないかもしれません。
うつ伏せ寝は片方の顔に圧力がかかり、子どもは大人よりも寝ている時間が長いためさらに影響を受けやすいといえます。頭の重さは体重の10%です。
その重量が片側の顔にかかり歯列に歪みが生じたり、顎がずれたりする傾向が高いため注意してください。お子様が就寝した後に仰向けに向きを変えてあげましょう。
3歳になったら乳幼児歯科健診を受けよう
ご家庭でお子様の乳歯の状態を見ただけでは、歯並びや虫歯の判断をすることは難しいです。成長が早い子どもだと4~5歳くらいで乳歯が抜け、それから永久歯が生えてきます。
3歳になると乳幼児歯科健診を自治体で受けられるため、ぜひ活用してお子様の歯の状態を専門家にチェックしてもらいましょう。
また、歯科医・歯科衛生士から歯磨きトレーニングの指導もあり子どもの虫歯予防にもなるため、乳幼児歯科健診は大切です。
もしお子様の歯並びで気になることがあれば、「かかりつけ医院」か「小児歯科医院」に相談するという方法もあります。
注意したい3歳児の不正咬合の種類
子どもが小さい時期に不正咬合かもしれないと指摘された方は多いと思います。3歳以前なら医師から「様子を見ましょう」と言われるかもしれません。
しかし3歳過ぎても指摘があるならば、不正咬合は成長とともに自然に治るのが難しいため、医師から矯正を勧められることがあります。
それでは、どのような不正咬合の種類があるかを下記で4つのポイントに絞って分かりやすく解説しており、お子様がどの歯並びなのか知っておきましょう。
上顎前突
下顎が小さく前歯が飛び出した状態を上顎前突といいます。聞き慣れないかもしれませんが、一般的にいわれている出っ歯のことを指します。
お口を開けたときに目立ちやすく、子どもが大きくなれば見た目ですぐ分かるため気にする人が多いのが上顎前突です。
さらに、お口を閉じたときでも横から顔を見たときに鼻先と顎を結んだEラインが不自然な状態になってしまいます。
開咬
奥歯を噛んでいても前歯に隙間がある状態を開咬(オープンバイト)といいます。指しゃぶりや舌で前歯を押すなど、子どもの癖でなることが多いです。
前歯に隙間があることで麺類を噛みちぎれず、奥歯ばかりを使う傾向が高くなり奥歯がすり減ったり、虫歯になりやすかったりします。
受け口
通常、お口を閉じた状態は上顎が下顎より前に出ていますが、受け口はその逆です。上顎より下顎が突き出ており、しゃくれて見えてしまいます。
見た目ですぐにわかってしまうため気にする人が多いです。原因としては上顎の何らかの問題があり、成長が遅れていることなどが挙げられます。
交叉咬合
上の歯が下の歯にかぶさるのが普通の噛み合わせですが、途中で上下逆にかぶさって交差しているのが交叉咬合(クロスバイト)です。
交叉咬合を放置すると食べ物が噛みづらく、食欲が減少するかもしれません。成長途中の子どもは、顔が歪んだり発音しづらくなったり日常生活に支障が出てくる可能性もあります。
3歳から治療を開始するケースも
3歳児健診で歯並びについて指摘された場合や、周りの大人から見て上記で説明したような歯並びであるなら一度診察してから矯正治療するかもしれません。
お子様のこれからの将来のことを考えて矯正するか、またどのような矯正方法にするかよく医師と話し合って決めましょう。
子どもの不正咬合の治療の特徴
3歳のお子様であれば乳歯が生えそろっている人がほとんどです。一般的にはムーンシールドなどの矯正装置を使い治療していきます。
ムーンシールドは子どもの歯列に合わせて型取りをして緻密に作られ、透明なプラスチックでできていて寝るときのみ装着するだけです。
歯磨きやご飯のときに取り外しする手間が必要なく、お手軽さが魅力的です。乳歯を定位置に固定することで永久歯が正しい位置に生えるように導きます。
様子を見てもよいケース
矯正装置を作るのにお子様のお口の中を見せてもらう必要があり、治療は型取りやお口の掃除を行います。
まだ小さいため、医師や衛生士さんに囲まれて「何をされるんだろう」と不安に思い怖がるのはよくあることです。
治療がまだ難しかったり矯正装置をつけるのを嫌がったりするのなら、もう少し大きくなってから矯正を考えましょう。
3歳の時点ではすぐに治療の必要がなく、様子を見てもよいケースも多いため歯科医と相談しながら決めてください。
生え変わり期に治療を開始するケース
子どもの永久歯の生え変わり時期は一般的には7~8歳といわれています。生え変わりの際、スペースがないと交叉咬合になる可能性が高いため早期発見が大事です。
永久歯が生えそろったケースと違い、生え変わり時期はスペースを確保しておけば抜歯をせず矯正でき、お子様の負担を軽減させます。
また、歯にワイヤーをつけるブラケット矯正をせずに済むこともあり、治療期間や費用を減らせるのが最大のメリットです。
3歳児の歯並びの不安は信頼できる歯科医に相談しよう
3歳のお子様はまだ歯医者にかかったことがないかもしれません。しかし、初めて来院して矯正を考えた方がよいと説明された人もたくさんいます。
周りの大人では気付けないことでもあり、小児歯科専門医に診てもらうことが大切です。不安なことは何でも相談できる歯科医を見つけましょう。
まとめ
3歳児の歯並び・よくない習慣・矯正の必要性などについてお話してきました。
早期に来院することで顎や歯の成長を使って治療できるメリットがあります。さらに今まで気付かなかった虫歯が見つかるかもしれません。
まずは、治療は行わずお子様のお口の状態をチェックすることから始めていきましょう。