【監修:青山健一】
目 次
日本では、好印象を持たれることも多い八重歯。笑ったときに八重歯が見えると愛嬌を感じ、憧れをもつ方もいます。
八重歯は犬歯と同じ歯を指す意味で使用されることがありますが、正確には異なるものです。また八重歯をそのまま放置しておくと、さまざまなトラブルを引き起こします。
八重歯は、従来であれば治療が必要となるものです。ご自身に八重歯がある方は、治療すべき理由や治療方法について理解を深めておきましょう。
犬歯と八重歯の違いを解説
犬歯と八重歯は、混同されることがよくあります。しかし犬歯は歯の名称であることに対して、八重歯は歯の状態を示すものです。
犬歯が八重歯になることが多いため、誤解されがちですが正確には違います。まずはそれぞれの特徴、および役割を理解しておきましょう。
犬歯の特徴
犬歯とは、ひし形のような形をした尖った歯のことです。動物では牙に相当するもので、犬のものが特徴的なことから犬歯と呼ばれています。
犬歯は他の歯と比べ歯根が長いため、強度があることが特徴です。高齢になり他の歯が抜けても、犬歯は残りやすいとされています。
なお犬歯は裁縫の際に糸を切るのに用いることから、「糸切り歯」と呼ばれることもあります。
犬歯の位置
犬歯は、前歯から数えて3番目に位置する歯です。上下と左右に各1本ずつ、合計で4本生えています。
犬歯の役割
犬歯は、食べ物を切り裂くことが主な役割です。前歯で噛みちぎった食べ物を、切り裂いてさらに細かくします。
また、犬歯は他の歯にかかる負担を減らす役割も担っています。強度があるため横に働く力にも強く、食べ物を噛むときに前歯や奥歯の働きをサポートしてくれます。
加えて奥歯の保護も役割のひとつです。奥歯は縦の動きに対する負荷には強いですが、横から加わる力にはあまり強くありません。
歯ぎしりなどで奥歯に横から強い力が加わると、歯を傷める恐れがあります。しかし犬歯があると、歯ぎしりをしても犬歯のみが当たります。
奥歯には隙間ができることになるため、歯を傷めるリスクを減らすことが可能です。これを専門的には、「犬歯誘導」といいます。
八重歯の特徴
八重歯とは、歯と歯が重なり合った状態のことです。歯の状態を表す言葉であるため、犬歯以外の歯が重なり合うときにも使われます。
八重歯は、歯が生えるスペースが足りないときによく見られる症状です。顎が小さい方や先に生えた歯が大きい場合には、歯がきれいに並ぶスペースが不足することがあります。
生え変わりのときに十分なスペースが確保できないと、歯は適切な位置に並ぶことができません。
歯が生えるスペースが足りないため、歯列から飛び出すように斜めに生えてしまうことがあります。
飛び出した歯が、他の歯と重なってしまった状態が八重歯です。八重歯は口内に悪影響を与える場合もあるため、状態によっては矯正治療が必要となる場合があります。
なお八重歯と呼ばれるのは、八重桜が由来とされています。歯が重なり合う様子が、八重桜の花びらが重なる姿に似ているためです。
犬歯が外側に飛び出ている状態
八重歯は、犬歯が外側に飛び出している状態のケースがよく見られます。このように犬歯が八重歯になる症例が多いことから、犬歯と混同されるようになったと考えられます。
犬歯は、近接する歯と比べて生えてくるのが遅い歯です。個人差はありますが、一般に歯は6歳のころから永久歯へと生え変わり始めます。
はじめに前歯(切歯)から生え変わっていき、犬歯は最後に生え変わるのが一般的です。生え変わりのときに、顎が小さい方などは歯が並ぶスペースが不足することがあります。
特に犬歯は最後に生えるため、スペースが不足する状況に陥りやすい状況です。そのため適切な位置に並ぶことができず、八重歯などになりやすい傾向にあります。
放置すると身体に影響も
八重歯を放置しておくことには、さまざまなリスクがあります。まずは口内環境の悪化です。八重歯は他の歯と比べ高さが異なるため、口が閉じにくくなるケースがあります。
口をきちんと閉じることができない場合、口内が乾燥してしまい細菌が繁殖しやすくなります。細菌が増えてしまうと、虫歯や歯周病になるリスクが高まるため注意が必要です。
また八重歯のせいで噛み合わせが悪いと、周囲の歯に大きな負担をかけてしまいます。あまりにも負担が大きい場合には、歯のぐらつきや歯が割れることがあります。
さらには口内炎にも注意が必要です。八重歯があると口内の粘膜を傷つける恐れがあるため、口内炎になるリスクが高くなります。
日本ではチャームポイントの1つ
日本において八重歯は、チャームポイントとして人気があります。特に若い女性の八重歯に対しては、かわいいという印象をもつ方も多いようです。
また八重歯があると童顔に見えるとされており、親しみやすさを感じる方もいます。このように日本では好印象として認知されていることもあり、そのまま放置しておく方もいるようです。
八重歯を放置しておくと、虫歯や歯周病などを引き起こす可能性があります。
場合によっては肩こりなど他の症状を併発する恐れもあるため、早めの治療を検討しましょう。
なお八重歯に関して、海外でのイメージは日本と異なるようです。海外での八重歯は「悪魔みたいで怖い」などのように、マイナスなイメージをもつ方が多いとされています。
ビジネスでは、「仕事ができない人」と認識されることもあるようです。そのため八重歯がかわいいと思うのは、日本特有の文化といえます。
八重歯矯正の種類
八重歯を改善するときは、矯正治療が必要です。八重歯の矯正を図るときは、主に下記のような治療が用いられます。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、金属の矯正装置を用いた治療方法です。ブラケット装置と呼ばれる器具を装着し、ワイヤーを使って少しずつ歯並びを整えていきます。
ワイヤー矯正は矯正する力が強いことが特徴です。細かな調整も可能であるため、さまざまな症状に幅広く対応できます。
一方でワイヤー矯正は、矯正装置が目立つことがデメリットです。装着した装置が外から見えてしまうため、見た目を気にする方も多くいます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを用いた治療方法です。事前に型取りしたマウスピースを歯に被せ、徐々に歯並びを矯正していきます。
マウスピース矯正は、目立ちにくいことが特徴です。装着するマウスピースは透明なため、ワイヤー矯正のように目立つことがありません。
ただしマウスピース矯正は、適用できる症状が少ない点に注意が必要です。ワイヤー矯正と比べると矯正する力が弱いため、八重歯の状態によっては対応できない場合があります。
セラミック矯正
セラミック矯正とは、セラミック製の被せものを使用した矯正方法です。もともとの歯を削り、上から被せものをして歯並びがきれいに見えるようにします。
セラミック矯正は歯を動かすわけではないため、治療期間が短いことが特徴です。他の矯正治療のように、年単位の治療が必要となることはありません。
ただしセラミック矯正は、歯の一部を失うことになります。失った歯は戻ってくることはないため、慎重に検討することが大切です。
八重歯矯正で抜歯が必要なケース
八重歯の矯正を行う際には、抜歯が必要となるケースがあります。まずは抜歯によって、噛み合わせの改善が捗る場合です。
八重歯が歯列から大幅にずれるときなどには、抜歯をした方が良いと判断されることがあります。
他の歯にかかる負担も減らせるため、打診があった際には検討してみましょう。
また歯周病のリスクが高い場合にも、抜歯が必要となる可能性があります。八重歯は歯が重なっているため食べ物が詰まりやすく、磨き残しも起きやすい状態です。
口内環境が悪くなると細菌が繁殖してしまい、歯周病や虫歯になるリスクが高くなります。あまりにもリスクが高いときは、八重歯の抜歯を検討する必要があります。
加えて八重歯自体に問題があるときも、抜歯が必要です。八重歯に虫歯があるときや歯根が割れているときなどには、抜歯が必要と判断される場合があります。
気になる症状が現われたときには、早めに歯科医へ相談しましょう。下記のリンク先より、無料相談の予約が可能です。歯科医への相談を考えるときは、ぜひご利用ください。
八重歯矯正の注意点
八重歯の矯正を行うときは、理解しておくべき注意点があります。きちんと理解しておかないと、日常生活に支障をきたす可能性もあるため注意が必要です。
痛みが生じることがある
八重歯の矯正を行うときは、痛みが生じる場合があります。痛みにもさまざまなものがあり、主には下記のようなものが挙げられます。
まずは歯が動く痛みです。矯正治療では歯を動かすときに、痛みを感じることがあります。特に治療初期には、痛みを感じることが多い傾向です。
ただ歯が動く痛みは時間が経つにつれ、少しずつ和らいでいきます。どうしても痛みが強いときには、歯科医に相談しましょう。
また、食事のときに痛みが生じるケースもよくあります。特に硬いものを食べる際は、痛みが生じやすいため注意が必要です。
傷みが強いときには、リンゴやステーキのような硬い食べ物は控えましょう。
顔つき・口元の変化
八重歯の矯正治療を行うと、顔つきや口元に変化が現われることがあります。全体矯正や抜歯をした場合、歯列が大きく動く状態です。
歯列が大きく動いたときには、肌のハリや骨格に影響を与えます。場合によっては、口元や顔つきに変化が生じることがあります。
例えばフェイスラインの変化です。八重歯が改善されると、口元の周りがシャープになります。
望ましい変化としてよく挙げられるのは、ほうれい線が目立たなくなることです。それに対して悪い変化には、肌のたるみやシワが目立つようになることが挙げられます。
なお現われる変化は、個人によって異なります。変化が気になる方は、施術を受ける前に歯科医へ相談してみましょう。
後戻りのリスク
八重歯の矯正を行った後には、歯の「後戻り」に注意する必要があります。後戻りとは、矯正した歯がもとの位置に戻ってしまうことです。
矯正治療が終わったばかりの歯は、安定しておらず動きやすい状態にあります。
矯正した歯を安定させるためには保定装置を使って一定の期間、歯を固定することが必要です。
保定装置にはいくつかのタイプがあり、取り外しが可能なタイプも存在します。ただし取り外している時間が長くなると、保定の効果が得られません。
歯が後戻りしないように保定装置は、歯科医の指示に従い適切な期間きちんと装着しましょう。
八重歯の矯正を検討しているなら歯科医に相談を
八重歯は好印象を持たれることも多いため、治療をしない方もいます。しかしそのまま放置しておくと、さまざまな口内トラブルを起こしかねません。
症状によっては、他の歯にも悪影響を及ぼすため注意が必要です。すると八重歯だけでなく、他の健康な歯まで治療が必要になってしまいます。
結果的には治療費も膨らんでしまうため、できる限り早めに矯正治療を行うことが大切です。ただし八重歯を矯正すると、顔つきに変化が生じる場合があります。
そのため八重歯の矯正を検討するときは、はじめに歯科医への相談をおすすめします。なお下記のリンク先では、無料相談予約が可能です。
歯科医への相談を行うときに、ぜひご利用ください。
まとめ
犬歯は、食事の際に重要な役割を担う歯です。しかし八重歯になってしまうと、役割をきちんと果たすことができません。
加えて口内環境を悪化させる可能性もあり、虫歯や歯周病になるリスクを高めます。そのような事態を防ぐためには、矯正治療を行い歯並びの改善が必要です。
近年では、目立ちにくい矯正装置も提供されています。そのため矯正期間中の見た目が気になる方でも、治療が受けやすくなっています。
八重歯はチャームポイントになる一方で、口内トラブルを引き起こす可能性もあるものです。気になる症状が現われたときは、早めに歯科医へ相談しましょう。