MFTトレーニング(口腔筋機能療法)の効果を歯科医が解説|トレーニング方法や注意点もご紹介します

【監修:青山健一】

MFTトレーニング(口腔筋機能療法)の効果を歯科医が解説|トレーニング方法や注意点もご紹介します

歯並びを悪くする原因はさまざまですが、口の中の悪習慣もその1つです。
口の中の悪習慣には、指しゃぶり・頬杖・よく噛まないで食べる・口呼吸・舌癖などがあり、不正咬合の原因となります。

これらの悪習慣を改善するのがMFT(口腔筋機能療法)で、矯正クリニックにおいて歯科矯正治療の一環として行われています。
口元を美しく整える、審美的効果が高いといわれている注目のトレーニングです。

トレーニング自体は難しくはありませんが、矯正歯科医の指導のもとで、MFTを理解する必要があります。
今回は、MTFトレーニングについて詳しくご紹介します。

MFTトレーニング(口腔筋機能療法)とは

MFTトレーニング(口腔筋機能療法)とは

MFTとはOral Myofunctional Therapyの略で、口腔筋機能療法のことです。舌や口まわりの筋肉バランスを整えるトレーニングのことを指します。

矯正治療の一環として取り入れられており、口まわりの悪習慣を取り除くことで不正咬合の予防に効果的です。
舌の位置が正しくなかったり口呼吸をしていたりすると、歯並びや噛み合わせに影響する可能性があります。
特に、正しくない位置に舌を置く癖は、子どもの出っ歯や受け口の原因の1つです。

成長途中の子どもの場合は、歯列矯正をしなくともMFTトレーニングで舌癖を治すことで、歯並びが改善することもあります。
そのため、多くの矯正歯科クリニックでは、装置を使う矯正治療とMFTとを併用しています。

MFTトレーニングの方法

MFTトレーニングの方法

ここでは代表的なトレーニング方法を紹介します。
矯正歯科医が患者さまの状況に応じてプログラムを作成し、ほとんどの場合は2~3年で終了です。
通院は1か月に1回程度で、自宅で毎日続ける必要があります。

あいうべ体操

MFTのトレーニングとして有名なのが「あいうべ体操」です。方法は簡単で、まず「あー」と大きく口を開けます。
声は出しても出さなくてもかまいません。「いー」は口を横に大きく開けます。口をすぼめて「うー」、次に「ベー」とあっかんべーをします。
このときには、舌を大きく下に伸ばしてください。「あいうべ体操」を1日30回で1セットです。

スポットポジション

スポットポジションとは正しく舌を置く位置のことで、このスポットポジションを意識するトレーニングを行います。
上の前歯のふくらみの後ろが舌を置く正しい位置で、無意識に舌の先が、スポットポジションに来るようにするトレーニングです。
リラックスしているときや物を飲み込むときには、舌の先がスポットポジションに位置するように癖をつけます。

まず、用意したスティックをスポットポジションに押し付けます。口まわりの筋肉を意識しながら、スティックをはずして舌先を押し付けて5秒です。
これを5~10回繰り返します。家でトレーニングをするときには、アイス棒などをスティックの代用にしましょう。

スティックティップ

スティックティップも、リラックス時に舌をスポットポジションに置く癖をつけるためのトレーニングです。
まず、口の前にスティックを垂直に持ちます。舌を突き出してスティックを押して3秒です。
力を抜いて口を閉じて休みます。これを5~10回繰り返してください。舌の機能が悪い場合は、舌で強くスティックを押せないことがあります。

子どもと大人でMFTには違いがある

子どもと大人でMFTには違いがある

子どもと大人では、MFTを行う目的が異なります。
子どもの場合には、将来の歯並びや噛み合わせを良くするための予防歯科として捉えられています。

骨や歯が出来上っていない子どもの場合、MFTを行うことで歯並び自体も改善することが可能です。
対して大人の場合には、MFTを行っても限定的な効果しか期待できません。歯や骨の成長が終わっているため、大きな改善が見込めないのです。

子どもの場合

子どもの場合

MFTは子どもの頃、特に10歳以下の子どもの場合は大きな効果が見込めます。
特に指しゃぶりや舌癖が見られる子どもの場合には、早くにMFTを行うことで不正咬合を防ぐ効果が期待できます。

また、歯並びだけでなく口呼吸や発音の悪さなども、改善が可能です。ポカンと口を半開きしている子どもの多くは、鼻呼吸でなく口呼吸です。

口呼吸をしていると見た目が悪いだけでなく、疲れやすいなどの悪影響があります。また、口を開けていることで唾液が減り、虫歯のリスクも高くなります。

MFTで口まわりの筋肉を鍛えることで、鼻呼吸に導くことが可能です。舌や口の癖は、気をつけてもなかなか治りません。
専門医にかかって、MFTトレーニングをするのが最善策です。

大人の場合

大人の場合、MFTトレーニングの効果は限定されます。骨や歯の成長が止まっているため、MFTだけで歯並びが改善することはないのです。

しかし、舌癖が原因で歯並びが悪くなった場合は、そのままにしておくと矯正後の後戻りをおこす可能性があります。
舌癖を放置しておくと、いつまでもリテーナーが外せません。そのため、大人でも矯正治療とMFTを併用することがあります。

また、口まわりの筋肉バランスを整えることで、口まわりが美しくなる効果が期待できます。
口元のたるみやほうれい線の改善に、MFTトレーニングを取り入れている方も少なくありません。

MFTトレーニングの効果

MFTトレーニングの効果

MFTトレーニングには、さまざまな効果が期待できます。
特に子どもの場合、MFTトレーニングは不正咬合を改善するだけでなく、健康的な体に導いてくれる優れものです。

口呼吸から鼻呼吸に変えることで疲れやすい体を改善し、舌の位置を正すことで発音が良くなります。
ここでは、MFTトレーニングのさまざまな効果を紹介します。

口腔の筋肉バランスを整える

MFTトレーニングによって、口腔の筋肉バランスを整えることが可能です。顏の筋肉の半分以上が口まわりに集中しているため、顔のイメージを変える効果があります。
MFTトレーニングで口まわりの筋肉を整えると、フェイスラインがスッキリとしてアンチエイジングにも効果的なのです。

矯正効果の促進

矯正効果の促進

MFTトレーニングをすることで、歯列矯正効果の促進が可能です。
子どもの場合では、軽度の不正咬合ならばMFTトレーニングだけで改善することもあります。

大人においても、不正咬合の原因に舌癖がある場合には、装置を使っての矯正治療とトレーニングを併用することがあります。
併用することで、矯正治療自体の時間や費用を軽減することが可能です。

また、このトレーニングは矯正の後戻り防止には欠かせません。舌癖をそのままにしておくと、矯正しても後戻りをする可能性が高くなります。

以前は固定式のリテーナーを何年も用いることで、後戻りを防いでいました。それが、取り外しできるリテーナーを用いて、MFTを併用する治療が一般的になっています。

歯並びの改善

舌癖や口呼吸、指しゃぶりなどが原因で、歯並びが悪くなることもあります。
成長途中の子どもならば、MFTトレーニングをすることで歯並びを改善することが可能です。
10歳以下の場合なら、出っ歯や受け口といった骨格自体の症例でも、MFTで軽減できると考えられます。

MFTトレーニングは不正咬合の予防にもなる

MFTトレーニングは不正咬合の予防にもなる

MFTトレーニングは本来、予防歯科として捉えられています。
悪い歯並びや噛み合わせを治すのではなく、MFTトレーニングをすることで不正咬合の予防をするということです。

不正咬合の原因である指しゃぶり・頬杖・口呼吸・舌癖などの悪習慣を改善することで、不正咬合を起こさないという考え方です。
また、すでに悪くなってしまった歯並びも、このトレーニングをすることで矯正期間が短くなると考えます。

MFTトレーニングの注意点

MFTトレーニングの注意点

ほとんどの矯正歯科クリニックでは、矯正治療の一環としてMFTトレーニングを取り入れています。専任スタッフがいるクリニックも少なくありません。

MFTトレーニングはインターネットでも紹介されており、自己流で行う方もいます。しかし、このトレーニングを行うときには矯正歯科医師の診断を受けましょう。
自己流でのトレーニングはおすすめできません。ここでは、MFTトレーニングの注意点を紹介します。

間違った方法では効果が得られない

MFTトレーニングは自己流でするのではなく、専門のスタッフによる指導のもとで行いましょう。
間違った方法では効果が得られないからです。

矯正歯科クリニックでMFTトレーニングを始めた場合は、定期的に専門のスタッフからチェックを受けることとなります。
専門家のチェックを受けることで、より効果的なトレーニングが可能になります。

長期間継続して行う必要がある

MFTトレーニングは、ときどき実施するだけでは意味がありません。毎日実行して長期継続して行う必要があります。
MFTトレーニングは口まわりの筋トレです。一気に治ることはなく、持続しておこなうことで、徐々に効果が現れます。

ほとんどの患者さまは、2年程度はクリニックの指導のもとでのトレーニングを続けます。長くトレーニングをすることで、無意識に正しい筋肉の使い方が身につくはずです。

MFTトレーニングは専門医のアドバイスを参考にしよう

MFTトレーニングは専門医のアドバイスを参考にしよう

矯正装置による歯列矯正と、MFTなどの生活習慣改善法を併用している矯正クリニックは多くあります。
矯正装置だけでは、不正咬合の根本治療とはいえないからです。

特に子どもの場合は、MFTトレーニングで口腔内の悪習慣を改善することは大切です。
このトレーニングをすることで、結果的に矯正治療にかかる時間と費用も軽減できます。

まとめ

まとめ

MFTトレーニングは、矯正治療には欠かせないと考えられています。歯並びが悪くなった原因を取り除くことが、矯正治療において重要な要素だからです。
子どもだけでなく、大人でも矯正治療後の後戻りを防ぐためには、MFTは必須となっています。

また、MFTは審美的にも注目されているトレーニングです。口まわりの筋肉を整えることで美しい笑顔を得られます。
MFTトレーニングは口まわりの筋トレです。自己流に走らず、気になったときには専門医に相談することをおすすめします。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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