【監修:青山健一】
目 次
一般に子どもの歯は6歳から12歳頃までに乳歯から永久歯に生え変わります。
生え変わりの際、乳歯と乳歯の間に隙間がないと、永久歯が正しい位置に生えてこないことも少なくありません。
きれいな歯並びにするためには、永久歯がしっかりと生えてくるスペースを作る必要があります。
永久歯が生える隙間がないことでどのような影響があるのか、主な症状・隙間を作る方法を解説していきます。
子どもの歯について悩む親は多い?
子どもが小さい頃であれば、親御さんが歯磨きをしてあげて歯の健康を保つことができます。
しかし、歯の生え方・歯並びに関してはメンテナンスが簡単ではなく、悩んでしまう親御さんが多いです。
子どもの歯についてはそれぞれ歯並びが異なるため、1つの方法がすべての子どもに対応できるというわけではありません。
そのため定期的に歯科医に診てもらうことをおすすめします。
ある程度大きくなると、親御さんにあまり自分のことを話さなくなる子もいるため、歯の生え変わりのタイミングを親御さんが把握できません。
親御さんが意識して日頃からコミュニケーションをしっかり取り、子どもにとって話しやすい環境を作ってあげることも健康な歯を保つためには大切です。
永久歯が生える隙間がないことによる影響
子どもがまだ小さいときは乳歯と乳歯の間に隙間がありません。5~6歳くらいになると顎が発達してくるため、だんだんと隙間が生まれてきます。
しかし、まれに顎が発達してきても隙間ができない場合があります。永久歯が生える隙間がないとどのような影響があるのか詳しくみていきましょう。
乳歯の内側に永久歯が生える
乳歯が抜けないうちに永久歯が生えてくることが5~6歳の子どもにはよく起こります。
この場合、永久歯が正しい位置ではなく乳歯の内側に生えてしまいます。まだ顎が発達しておらず小さいため、永久歯が正しく配置されないためです。
しかし、いずれ乳歯が抜ければ永久歯は舌の押し出す力によってだんだんと正しい位置に誘導されます。
このときに噛み合わせが悪くなってしまったり、内側の永久歯で舌を傷つけてしまったりする恐れがあるため、子どもの歯の状況を把握するようにしましょう。
また、歯並びを悪くする舌癖(ぜつへき)が始まるのもこの頃からです。
舌で歯を押し出す癖がつくと不正咬合(ふせいこうごう)と呼ばれる噛み合わせの問題も起こりやすくなります。
乳歯がまだある状態で永久歯が生えてきたときは、親御さんは気をつけて経過観察してあげてください。
犬歯が他の歯と重なるように生える
乳歯に隙間がないと永久歯が乳歯の内側に生えてしまうだけでなく、他の歯と重なった状態で犬歯が生えてくることがあります。
こちらは一般的に「八重歯」と呼ばれているものです。八重歯は幼く見えるため、かわいいと思っている方もいますが、これは日本人独特の感覚です。
海外では歯並びが悪いため八重歯が生えてくるという認識を持っており、ドラキュラを連想させるため忌み嫌われます。
また、歯も磨きづらいため、虫歯・歯周病・口臭の原因になりやすいというデメリットがあります。
さらに犬歯は尖っているため口内を傷つけやすく口内炎の原因の1つです。
最悪の場合、八重歯が口腔内を刺激し続けることで口腔がんになるケースもあります。
永久歯が生える隙間がない場合に起こる症状
乳歯が生えているときに、永久歯が生える隙間がないとどのような症状が起こるのか詳しく解説します。
叢生
「叢生(そうせい)」は、歯が均等でなくでこぼこに生えている状態のことをいいます。
別名では乱杭歯(らんくいば)とも呼ばれ、乳歯と乳歯の間に隙間がなく永久歯が本来の場所ではないところに生えてしまい、歯並びがガタガタになってしまう症状です。
日本人はもともと顎が小さいうえ、若者を中心とした柔らかいものばかり食べる食習慣がさらに拍車をかけています。
それ以外にも顎の大きさと歯の大きさのバランスがとれていないと起こりやすくなります。
上顎前突
上顎前突「じょうがくぜんとつ」は、横から見たときに上の前歯が下の前歯より前に突き出ている状態のことをいいます。
一般的には「出っ歯」と呼ばれており、この歯並びにコンプレックスを抱えている方も多くいらっしゃいます。
遺伝的なものもありますが、永久歯が生える隙間がなく、歯並びがずれてしまいそれによって内側から舌で前歯を押す癖が原因です。
上顎前突になると口を閉じにくくなるため口内が乾燥しやすく、唾液の作用が薄まることで虫歯・歯周病になりやすくなります。
埋伏歯
埋伏歯(まいふくし)は、本来であれば歯は自分の力で生えてくる力を持っていますが、埋伏歯は自力で生えることができない歯のことを指します。
これは歯が骨の中で作られる過程で何らかの原因で起こってしまう症状で、乳歯に隙間がないことも原因だと考えられています。
放置したままにすると噛み合わせが悪くなり、体のバランスにも影響を与えかねません。
このような場合、埋まっている歯に矯正装置をつけて適切な位置まで引っ張る治療をし、噛み合わせの問題も一緒に治療します。
埋伏歯は他の歯の根っこにも影響があるため、早急に治療することをおすすめします。永久歯が生える隙間がなくお困りの方はぜひ専門の矯正歯科医にご相談ください。
永久歯が生える隙間がないときの治療法
乳歯から永久歯への生え変わりは5~6歳頃から始まり、13歳前後までにはすべての永久歯が生え揃います。
しかし、人によっては乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこないといった症例もあります。
永久歯が生えてこない原因はいくつかありますが、ここでは永久歯が生える隙間がないときの治療法について解説しましょう。
床矯正
成長期の子どもの場合、上顎が十分成長できないために歯と歯の隙間がなく、永久歯が生えたくても出てこられないケースがあります。
こうしたときに活用される方法として床矯正(しょうきょうせい)があります。
床矯正は取り外しができる装置を使用して顎を広げ、デコボコした歯並びを矯正する治療方法です。
床矯正装置を使用し、顎を広げることで歯が生えてくるスペースを作ります。
床矯正装置はマウスピースの形をしており、ネジを回転させることによって少しずつ顎を大きくしていく治療方法です。
床矯正は装置の取り外しが簡単にできることが大きなメリットで、1日に14時間以上装着することで治療が可能です。
ヘッドギア
ヘッドギアは奥歯の位置の調整・顎の成長をコントロールする治療法で主に子どもの矯正で使用されます。
口の中にフェイスボウを装着し、ヘッドキャップあるいはネックストラップをつけて行います。
1日12時間以上装着すれば高い効果が期待できるため、お子さんの在宅時や睡眠時など無理のない時間帯に使用しましょう。
近年技術も進み、口の中のみに装着する目立ちにくい矯正装置が増えているため、ヘッドギアが使われることは少なくなりました。
ヘッドギアは成人の方の矯正治療において、上顎の奥歯の位置を固定する治療方法に使用されるケースもあります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正はさまざまな歯並びの方に有効な治療法です。
歯の並び方を細かく調整できるため、ひとりひとりに合った矯正をすることができるのが特徴です。
以前は歯に装着したワイヤーが目立ってしまうなどのデメリットもありましたが、目立たないワイヤー矯正もあるため、この治療法を選択する方が増えています。
また、日本の中で症例数が多い矯正方法で、初めて矯正する方も安心感があります。
しかし、人によっては治療中に痛みがあったり不快感があったりするため、何か違和感があればすぐに歯科医に相談してください。
歯の間に隙間を作る方法
永久歯が生えてくる前に乳歯と乳歯の間に隙間を作る方法があります。
どのような方法があるのかを詳しく解説していきます。
側方拡大
側方拡大とは側方拡大装置を使用して顎の幅を大きくする治療方法です。
就寝中に装着し1週間から2週間に1回のペースでネジを回しながら、少しずつ装置の幅を広げて顎を広げます。
就寝中以外にも装着は可能ですが、うまく発音ができなくなるというリスクがあるためおすすめできません。
顎の幅を広げても、顔自体が大きくなることはありませんからご安心ください。
臼歯部遠心移動
臼歯部遠心移動とは顎の幅を広げる側方拡大とは大きく異なり、奥歯を移動させることで歯にスペースを作ります。
歯が生えてくる角度は均一ではありません。そのため遠心移動を上手く利用し、角度をつけた矯正が必要になります。
臼歯部遠心移動でしっかりと治療することで歯の移動できる範囲が広がるため、無理なく歯の位置を調整できます。
抜歯する必要がないのもメリットの1つです。
前方拡大
前方拡大は上顎前方牽引装置を使って行う方法で、上顎の骨が上手く成長していないときに発達を促す働きがあります。
毎日使用することで効果を発揮するため、在宅時や就寝時に装着します。
骨の成長に合わせて治療していくため、装着期間は1~2か月といった短いものではなく、1~2年間といったように持続的に使用しなければなりません。
時間はかかりますが、横から見たときバランスよくすっきりとした表情になることが期待されます。
子どもの歯を矯正する場合に注意すること
子どもの歯を矯正治療するためには、子どもの歯の成長期を利用しなければなりません。
成長期の子どもの歯は常に動いていて上顎や下顎が成長することで上下の歯の当たり方・押され方が変わり歯の位置も動きます。
そのため親御さんは子どもの歯並びを見て一喜一憂する必要はありません。
しかし、矯正を開始する時期というのは子どもによって異なり、男の子は7~11歳、女の子は6~10歳というように開始時期に差があります。
成長している子どもにとって今すぐ治療をはじめた方がメリットがあるのか、それとももう少したってから治療した方がよいのか成長全体の中で考えなければなりません。
また、矯正治療は年単位で行う時間のかかる治療になるため親御さんも、お子さんもそれなりの覚悟が必要です。
子どもの歯の矯正は、しっかりとした実績のある矯正治療が専門の歯科医院で行いましょう。
開始時期についても歯科医に相談することをおすすめします。
子どもの歯並びで悩みがある場合は歯科医に相談しよう
子どもから歯が痛いというように虫歯の申告はあっても、歯並びのことは子どもからなかなか申告されず、親御さんも気づきにくいということが多くあります。
定期的に歯のメンテナンスをしていれば早期に発見できますが、虫歯になって初めて歯医者に行くというケースもあります。
歯並びは子どもの頃に治療をすることで、噛み合わせや舌癖もなくなるため定期的に歯の検診に行くことが大切です。
親御さんでは気づかない問題点を歯科医なら見つけ出してくれる可能性が高いです。
また、すでに子どもの歯並びに問題があると気づいている親御さんは早めに歯科医に相談しましょう。
下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
まとめ
永久歯が生える隙間がないことでどのような影響があるのか・主な症状・隙間を作る方法について解説しました。
永久歯が生えてこないというのは親御さんとしてはとても心配です。
歯並びが原因だと知らない方も多く、結果的に治療が遅れてしまうケースが多くあります。
普段から子どもとしっかりコミュニケーションを取れるように心がけましょう。
子どもにとって話しやすい環境ができれば、何気ない会話の中で「変なところから歯が生えてきた」と気づけることもあります。
歯並びに影響があると噛み合わせに癖ができてしまい、顔の形が均等ではなく歪んでしまうことも少なくありません。
子どもの将来を考えるなら早急に対応することをおすすめします。判断に迷った場合は歯科医にすぐに相談しましょう。
子どもの成長に合わせて矯正方法も異なるため、自分の子どもに合った最適な方法を見つけることが大切です。