【監修:青山健一】
目 次
一般的に矯正治療は長くかかるものです。治療期間が長引けば、矯正装置をどうしても外したいという日が1日くらい出てくることがあります。
たとえば結婚式や成人式などの人生の節目となるイベントで、装置を外したいという方も少なくありません。
本記事では、大切な日に1日だけ矯正装置を外せるのかという点について解説します。あわせて、外す場合の注意点・対策もご紹介します。
大切な日に矯正を1日だけ外せる?
一般的には1日だけならば矯正装置は外せます。実際に、結婚式・入社式・学校のセレモニーなど、大切な日にだけ外すという方もいます。
ただし外せるかどうかは、歯の状態や医師の治療方針によって異なります。
つまり外してよいとはいっても、自己判断で勝手に装置を外すのは望ましくありません。
特にワイヤーの矯正装置は、自力での脱着は難しいものです。正しく対応するためにも、まずは担当医に相談してください。
矯正装置を毎日付ける理由
そもそも矯正装置は、なぜ毎日装着しなければならないのでしょうか。その理由を3つの観点からご説明します。
計画通りに歯を動かすため
治療計画に沿って歯を動かすためです。勝手に外すと、十分な効果を得られないことがあります。
そもそも矯正治療とは、歯を一気に動かすものではありません。矯正装置がごく弱い負荷をかけることで、少しずつ歯列を整えていきます。
では、なぜ一気に歯を動かせないのでしょうか。答えは、強い負荷をかけると歯や歯肉の状態が悪化するためです。
痛みが出たり、かえって歯並びが悪化したりするケースが代表的です。最悪の場合は、健康な歯が抜ける可能性も否定できません。
歯列矯正に時間がかかるのは、弱い力で少しずつ歯を動かすためです。いわば毎日の地道な積み重ねによって、歯列を整えていくのです。
毎日の積み重ねを怠れば、当然ながら満足のいく結果は期待できません。つまり、矯正治療の効果が出にくくなるわけです。
具体的には、治療期間が延びたり、治療そのものが失敗したりする恐れがあります。
治療の効果を十分に得るためも、矯正装置を勝手に外すことはやめましょう。
歯や周囲組織にダメージを与えないため
矯正装置を頻繁に付け外しすると、歯や歯肉には大きなダメージがかかります。矯正治療中の歯周組織は、非常にデリケートです。
矯正治療は、歯肉組織に働きかけることで歯を動かします。そのため治療中の歯肉組織は、非常に変化しやすくなっています。
この状態で装置を頻繁に付け外しするのは危険です。通常よりデリケートになっている歯肉組織が、負荷の変化についていけなくなるためです。
歯・歯肉の状態を安定させるには、矯正装置は付けっぱなしか、外しっぱなしにしなければなりません。
もちろん外しっぱなしにすれば、矯正治療の意味はなくなります。歯・歯肉を守りながら矯正治療を成功させるには、毎日装着し続ける必要があります。
後戻りしないようにするため
外してはいけない理由として最も代表的なのが、後戻りを防ぐためです。後戻りとは、矯正が終了した歯が元の位置に戻ることです。
矯正中・矯正後は、歯周組織がめまぐるしく変化しています。それに伴い、歯も動きやすい状態になっています。
この期間は、些細な刺激で歯が思わぬ方向に移動することも少なくありません。刺激とはたとえば、食いしばりや咀嚼などがあてはまります。
よって、歯を矯正後の位置に留めるには、歯が動きづらくなるまで固めておく必要があります。
つまり歯の位置が固定されるまで矯正装置は外せません。固定前に外すと、後戻りだけでなく、歯がねじれたり傾いたりするリスクも高まります。
そのため、歯の位置がしっかり固定されるまではマウスピースなどを装着し続けることが大切です。
矯正を1日外したときの影響
矯正中に矯正装置を外すと、どのような影響があらわれるのかを紹介します。矯正中はたった1日外すだけでも、何もしないでそのまま放っておけば大きな悪影響があります。
ただし矯正装置を外した後にマウスピースで固定していれば大きな問題にはなりませんが、できる限り外さないのがベストです。
治療計画がズレてしまう
矯正治療の終了が先延ばしになる可能性があります。矯正装置を外す時間が長ければ長くなるほど、矯正の効果を得にくくなるためです。
結果、矯正治療に要する期間が長くなります。
装置を外したことで治療効果がリセットされ、また一から治療を始めなければならないケースも否定できません。
後戻りしてしまう
矯正装置を外すと、歯が元の位置に後戻りすることがあります。あるいは、歯がねじれたり、歯と歯の間に隙間ができたりするケースも少なくありません。
理由は、矯正中・矯正後の歯は非常に動きやすいためです。歯がしっかり固定される前に装置を外すと、思わぬ動き方をするかもしれません。
矯正装置を外す場合の注意点
1日程度であれば、矯正装置を外せるケースが多いです。ただし外す際には、気を付けるべきポイントがあります。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の各注意点をみていきましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正の注意点は、付け忘れに気を付けるという点です。
たとえばセレモニーなどが終わった後は、なるべく早めにマウスピースを装着してください。
そもそもマウスピース矯正は、普段からご自身で取り外すことを前提にしています。たとえば食事・歯磨き時には必ず外さなければなりません。
理由は、マウスピースの破損を防ぐためです。裏を返せば、外してよいのは食事・歯磨きのときだけです。
必要時以外にもマウスピースを外すと、矯正効果を得にくくなります。自由に外せるといっても限度は守りましょう。
大切な用事があるときは、半日までであれば、マウスピースを外しても矯正治療に深刻な悪影響は出ませんが、さすがに丸1日外しておくと、再度装着する際は相当きつく感じるはずです。
そうはいっても、念のため事前に担当医に確認しましょう。また、用事が終わり次第、できる限り早く再装着するのを忘れないでください。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正を外すときのポイントは、必ず歯科医師の指導のもとで行うことです。
ワイヤー矯正はマウスピース矯正と異なり、自力での脱着が難しいためです。
自力で無理に外そうとすると、矯正装置を破損したり、口の中をケガしたりする恐れがあります。
思わぬ事故を防ぐためにも、処置は必ず歯科医院で行ってください。なお、歯科医の指導を受けることは、矯正治療を円滑に進めるうえでも重要です。
ワイヤー矯正は自力で付け外しできないぶん、一度外すと一定期間は外しっぱなしになることもしばしばです。
たとえば歯科医院の予約がすぐ取れないなどのケースが該当します。
1日外す程度であれば深刻な影響はありませんが、外す時間が長引けば治療に支障が出る恐れがあります。
そのためワイヤー矯正を外すときは、歯科医と治療計画について十分相談したうえで、安全かつ確実に取り外すことが重要です。
装置を外す予定が分かった時点で、早めに担当医に相談しましょう。
矯正装置を一時的に外す場合の対処法
1日だけ矯正装置を外すときには、代替案を取らなければならないケースがあります。代表的な方法をみていきましょう。
裏側に装置を付ける
矯正装置を外す代わりに、歯の裏側に保定装置を取り付けることがあります。特にワイヤー矯正中の方は、保定装置を用いることが多いです。
一時的な利用を前提としているため、保定装置は簡素な構造であることが多いです。そのため、口元の印象をさほど損ないません。
装着中の違和感やしゃべりづらさも少なめです。なお、保定装置を歯の裏側に取り付ける理由は歯の後戻りを防ぐためです。
矯正中の歯は動きやすくなっているため、矯正装置を外すと歯が思わぬ方向に動く可能性があります。
裏側から歯を固定することで、歯の移動を防ぐわけです。
リテーナーを付ける
リテーナーも保定装置の一種です。歯の後戻りを防ぐために装着します。
リテーナーは透明のマウスピース型をしています。透明かつ薄手であるため、ワイヤーの矯正・保定装置ほど目立ちにくいのが特徴です。
そのため、大切なセレモニーなどでも違和感なく装着できます。またリテーナーは、歯の裏側に取り付ける保定装置と異なり、自身で取り外せます。
写真撮影などの際には完全に取り外せる点もメリットです。ただし外す時間が長いと歯が後戻りするおそれがあります。
リテーナーを装着するときは、装着時間をしっかり守りましょう。
担当の歯科医に相談
どのような対策を取るにしろ、まずは担当医に矯正装置を外したい旨を相談することが大切です。
自己判断で外すと、今までの矯正治療が水の泡になりかねません。円滑に治療を進めるためにも、担当医との相談はしっかり行ってください。
歯科医院によっては、処置費用が無料のところもありますが、余分な治療になるため、有料になる医院の方が多いでしょう。大事なセレモニーに合わせて急いで矯正治療を完了できるケースもしばしばです。
どのような選択肢になるかは、歯の状態などによって異なります。
いざというときの対応方法や費用を知るためにも、矯正装置を外す相談は、矯正開始前にしておくのがベストです。
あるいは、予定が分かった時点でなるべく早めに担当に相談しましょう。くれぐれも歯科医への相談なしに装置を外すことだけはやめてください。
矯正装置の付け忘れにも注意
1日程度であれば矯正装置を外してもどうにかリカバリーは可能です。ただし、「そのまま付け忘れて1週間経過…」となると話が別です。
1週間前後も矯正装置を外すと、歯の動き方に大きな影響があらわれます。
矯正治療に支障を出さないためにも、用事が終わったら再装着を忘れないでください。
特にマウスピース矯正の付け外しは自己管理となります。うっかり付け忘れた、という事態を防ぎましょう。
付け忘れを防ぐには、スケジュール帳に書き込んだり、PC・スマートフォンのリマインダー機能を使ったりする方法が有効です。
一方、ワイヤー矯正は自力での再装着は困難です。安全かつ確実に装着するためにも、必ず歯科医院を受診しましょう。
矯正治療について悩みがある場合は専門の歯科医に相談しよう
矯正治療は一般的に長くかかります。治療期間中に思わぬ予定や事態が発生することも少なくありません。
治療中だからといって、なにもかも我慢する必要はありません。たとえば大切な用事で矯正装置を外したい場合は、担当医に相談しましょう。
もし矯正治療開始前に予定が分かっている場合は、カウンセリングや初診時に相談するのがベストです。
なお、下記リンクから無料相談の予約ができます。矯正治療に関する悩み・不安がある方はぜひ活用してください。
まとめ
矯正装置は1日くらいであれば取り外してもリカバリーは可能ですので、大切なセレモニーなどがある場合は、遠慮なく担当医に相談してください
ただし、自己判断で外すのは危険です。治療を成功させるためにも、付け外しは必ず歯科医の指導の下で行いましょう。