【監修：青山健一】
目 次
オープンバイトは、奥歯を噛みしめても前歯が噛み合わない状態です。ごくまれに、奥歯が噛み合わない症例もあります。
どちらも咀嚼や発音に悪影響があると考えられています。
軽度のオープンバイトの場合は周りが気が付かないことが多く、本人が「ラーメンが噛み切れない」などで大人になってから気が付くケースが多いです。
「たいしたことない」と思われがちなオープンバイトですが、実は「将来歯を失うリスクの高い歯並び」といわれています。
しかし、オープンバイトは矯正治療が難しく、手術が必要なケースも少なくありません。ここでは、オープンバイトの手術が必要なケースを解説します。
オープンバイトの特徴
オープンバイトとは開咬ともいい、奥歯は噛んでいるのに前歯が噛み合わない状態を指します。
先天的に骨格に問題がある場合も多く、下顎の成長が悪い人に多くみられる傾向があります。オープンバイトの大きな特徴は、前歯で物が噛めないことです。
その他「発音が悪くなる」「口呼吸になりやすい」など、さまざまな特徴があります。ここでは、オープンバイトの特徴を紹介します。
前歯が噛み合わない
奥歯をかみしめても前歯が噛み合わない状態をオープンバイトといいます。オープンバイトになっていると、前歯で食べ物を噛み切ることができません。
普通、自分の噛み合わせの悪さを自覚することは少ないのですが、前歯で麺類が噛めないことでオープンバイトを自覚することが多くあります。
話し中の息漏れ
前歯が噛み合わないということは、常に上下の歯の間に隙間があるということです。そのため、話し中の息漏れが生じます。
発音しにくいこともあり、滑舌や発音が悪くなる傾向があります。また、常に口が開いているため、口内が乾燥しやすいというのも特徴です。
口内の乾燥は、歯周病を引き起こすこともあります。また、口臭の原因ともいわれています。
奥歯に負担がかかる
オープンバイトの場合は、前歯が噛み合っていない状態です。そのため、奥歯にかなりの負担がかかると考えられます。
長い間奥歯に負担がかかり、奥歯の劣化を招きます。実際、オープンバイトの影響で「歯が割れる」などの問題も少なくありません。
オープンバイトで手術が必要なケース
オープンバイトを治すには、歯列矯正治療や手術が選択肢としてあげられます。
特に、歯の傾きを矯正するだけで改善できる軽度の開咬の場合は、矯正装置を用いて治療するのが一般的になっています。
しかし、骨格自体に問題がある場合には手術が必要です。手術は顎の骨を切って、前歯が噛み合う状態で骨を固定します。
ここでは、オープンバイトで手術が必要なケースを紹介します。
骨格に原因がある
軽度のオープンバイトならば、歯列矯正治療だけで改善が可能です。しかし、骨格に原因がある場合は、手術が必要になります。
あるレベルを超えた重症のオープンバイトならば、外科手術と歯列矯正の併用が一般的です。手術を併用するメリットは、改善の度合いが高いことです。
骨格に原因のあるオープンバイトなら、見た目も受け口や出っ歯、もしくは口元が歪んでいるなどの状態と考えられます。
手術では、オープンバイトの改善だけでなく見た目の改善も可能です。しかし、入院が必要になり心理的にも負担になります。
費用も高額になりますが、健康保険を適用できるケースも多くあります。担当医に相談してみましょう。
顎変形症の診断が出た
オープンバイトの根本的な原因が、顎変形症という場合もあります。
顎変形症の診断が出れば、保険適用で外科手術と歯列矯正治療が受けられます。外科手術は口の中からメスを入れるため、顏に傷痕が残る心配はありません。
顎変形症にはオープンバイトだけでなく、受け口や出っ歯を伴うケースが目立ちます。
それらの見た目も改善されるため、顎変形症の診断が出たら手術することをおすすめします。しかし、2週間程度の入院が必要です。
手術なしで治療できるケースも増えている
オープンバイトは手術をすれば、ほぼ完璧に治せる可能性が高いです。顎変形症などの診断があれば、保険適用で外科手術と矯正治療を受けることができます。
費用は少なくて済みますが、入院や外科手術の心理的な負担は大きいものです。入院は2週間以上かかり、その後の歯列矯正も1年程度はかかります。
手術は見た目を改善する審美的要素も大きいため、見た目を気にしていない人は手術を嫌う傾向があります。
また、手術しない「矯正だけのオープンバイト治療」をすすめているクリニックも少なくありません。
手術なしでオープンバイトを治療する方法
手術なしでオープンバイトを治療する方法は、装置を使っての歯列矯正です。
しかし、従来の矯正方法では、噛み合わせの高さを調節するのは難しいといわれています。奥歯を動かす矯正も困難です。
そのため、従来の矯正方法とは異なった新しい技術を導入する矯正クリニックが増えています。
ここでは、手術なしでオープンバイトを治療する方法を紹介します。
MEAW矯正
MEAWはマルチループアーチワイヤーと呼ばれる特殊な矯正装置です。ワイヤーに屈曲を入れていくことで、従来のワイヤーよりも、２～３倍長いワイヤーを折り込んで作られるので、弱い力が持続的に発揮できます。
MEAW矯正では、歯を3次元的に動かすことが可能です。MEAWを使うと、すべての歯を最短距離で移動させることができます。
また、MEAW矯正では基本的に非抜歯治療ということもあり、矯正期間は格段に短縮されます。
GEAWシステム
GEAWシステムは、矯正のワイヤーがチタン合金でできており、ゴムのように柔らかいのが特徴です。
GEAWシステムでは、従来の矯正では難しかった「奥歯の位置自体を移動」させることが可能になりました。
また、とても柔らかい素材でできているため、従来の半分の力で歯を移動させることも可能です。
そのため、GEAWシステムは矯正の痛みが少なく、治療期間も短くなります。
歯科用アンカースクリューの併用
従来の矯正治療では、歯を動かすために奥歯など複数本の歯を固定して引っ張ります。しかし、自分の歯を固定源としているため、動かす範囲に限界がありました。
歯科用アンカースクリューを歯茎の骨部分に埋め込み固定源とすることで、今までは難しかった方向へ歯を動かすことが可能です。
高さを合わせる開咬の治療も、従来より治療期間が短くなると報告されています。
従来では不可能だった、奥歯をさらに奥に動かすことも可能です。ただし、矯正治療後にアンカースクリューを取り除く必要があります。
このように、新しい技術が導入されているため、1度クリニックで相談することをおすすめします。
矯正治療で不安のある方は、無料の矯正相談を活用してください。下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
オープンバイトの治療の費用相場
オープンバイトは高さを調節する必要があるため、矯正治療のなかでは難しいとされていました。完全に治すためには、手術が必要なケースもあります。
しかし、新しい技術も導入され、手術しなくても完治する可能性が高くなっています。その費用は通常の矯正治療と大差ありません。
さらに、外科手術をする場合も、顎変形症と診断されれば保険適用が可能です。ここでは、オープンバイトの治療の費用相場を紹介します。
手術ありのケース
顎変形症の診断を受けたのなら、矯正治療と入院手術には健康保険が適用されます。一般的な自己負担額は3割になります。
保険を適用して矯正治療費用は平均20～30万円、入院手術は総額30～50万円程です。また、医療費控除も利用できます。
しかし、健康保険適用で矯正治療が受けられるのは、届け出をだしている医療機関に限られます。事前に矯正クリニックに問い合わせてみましょう。
また、外科手術を受ける場合は、口腔外科となります。歯科クリニックに口腔外科があるか、提携している口腔外科病院があるかもチェックしてください。
手術なしのケース
オープンバイトの歯列矯正治療は、健康保険適用でなく自由診療のため、一律の定価のようなものはありません。
症状やクリニックによっても費用は異なります。かかる費用は通常の矯正治療と同じく80～100万円程度が目安と考えましょう。
上記のアンカースクリューやMEAW矯正、GEAWシステムを採用すると、費用は多少アップすることがあります。
オープンバイトの治療には悪習癖の改善も大切
オープンバイトは、舌の位置が正常でない「舌定位」や舌で歯を押す「舌癖」、指しゃぶりなどの悪習慣が原因のものもあります。
また、舌は隙間に入っていきやすいため、オープンバイトの患者さんの多くは舌癖がみられます。
この舌癖を治さないことには、矯正で噛み合わせを治しても後戻りをするリスクは大きいです。
そのため、オープンバイトの患者さんの多くは、矯正治療の一環としてMFTトレーニングを取り入れています。
多くの矯正クリニックでMFTトレーニングを指導しています。
MFTトレーニングとは、舌癖・指しゃぶり・爪噛み・口呼吸など、すべての悪習慣をなくすためのトレーニングです。
オープンバイトの治療は信頼できる歯科医に相談
オープンバイトを矯正するためには、歯の高さを調節する必要があります。そのため、従来の矯正方法では難しいとされてきました。
また抜歯を伴うことも少なくありません。しかし近年では、歯科用アンカースクリューを併用するなど、歯を3次元に移動する技術も進化しています。
従来の技術では無理だった症例も、技術の進化によって治療が可能になっているのです。そのため、オープンバイトの治療は、信頼できる歯科医に相談をしましょう。
また、顎変形症などが原因のオープンバイトは、完治させるためには外科手術が必要です。そのため、口腔外科病院と連携が整っている歯科クリニックにかかる必要があります。
矯正治療で不安のある方は、無料の矯正相談を活用してください。下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
まとめ
軽度のオープンバイトなら、気にならずに矯正治療を考えない方も少なくありません。
しかし、オープンバイトは「奥歯を失うリスクの高い歯並び」と考えられています。オープンバイトは奥歯に大きな負担を強いる歯並びだからです。
また、呼吸・姿勢・発音などに問題が生じます。そのため「前歯で物を噛み切れない」と感じたのなら、ぜひ矯正治療を検討しましょう。
以前は高さを調節するため、奥歯を削って低くするという矯正もありました。
しかし新しい技術も導入されて、難しいとされていたオープンバイトも矯正治療できれいに治せる可能性があります。ぜひ、信頼できる歯科医に相談しましょう。
1965年 広島県呉市生まれ
