【監修:青山健一】
目 次
子どもの歯並びに関して、些細なことでも気になるご家庭は少なくありません。
実は、子どもの歯並びは遺伝や先天的なものだけではありません。日頃からなんとなくしている癖も歯並びに影響することがあります。
今回は、乳幼児の歯並びで気になる症状・悪影響を与える癖について歯科医が解説します。
子どもの歯並びが気になっている保護者は、ぜひ参考にしてください。
乳幼児の歯並びが気になる保護者は多い
保護者にとって子どもの歯並びはどうしても心配になります。
保護者自身も矯正の経験があったり、歯並びに悩んだ過去があったりすると、子どもの歯並びがなおさら気になる保護者は多いといえます。
子どもの歯並びに不安があっても、どの段階で歯医者に相談すべきか分からず悩みを抱えている保護者は少なくありません。
矯正治療を検討するなら少しでも早めに歯科医に相談しましょう。
特に成長期の子どもは顎の骨がまだ柔らかいため、歯列矯正も大人と比べると矯正期間が短くてすみます。
また、歯並びや癖を治せば子どもの顎の成長にプラスにもなります。
乳幼児の歯並びで気になる症状
乳歯の歯並びが悪いと虫歯や歯周病になりやすいだけでなく、これから生えてくる永久歯の歯並びにも大きな影響を与えます。
ここでは乳幼児の歯並びで保護者が気になる代表的な症状の解説をします。
すきっ歯
乳歯は永久歯よりも小さいため、乳幼児のすきっ歯は様子を見ても大丈夫なものがあります。
実際に子どものすきっ歯は永久歯への生え変わりで改善されることが多いです。
そのため過度な心配は必要ありませんが、自己判断はせずに念のために歯科医を受診して経過を診てもらうことをおすすめします。
子どものすきっ歯は、永久歯に生え変わったあともあごに対して歯が小さい場合にすきっ歯になることがあります。
また、歯の大きさが正常であったとしてもあごが大きい場合もすきっ歯になる可能性が高いです。
すきっ歯がある子どもを持つ保護者は、歯科医に相談して歯列矯正を検討しましょう。
受け口
受け口とは、上下の噛み合わせがずれている状態で、下の顎が前方向に出ている歯並びのことです。
上顎の前歯よりも下顎の前歯が前方に出ているため、歯科では「反対咬合」と呼ばれます。
受け口のまま過ごしてしまうと、噛み合わせがずれているため咀嚼がうまくできず、胃や腸に負担がかかり消化不良を引き起こす原因になります。
また、あごや身体の成長・身体全体のバランスにも影響を与え、骨格に問題が生じることも少なくありません。
受け口は早い段階での治療が大切です。気になることがあれば年齢に関わらず、歯科医に相談してみましょう。
口ゴボ
口ゴボは、口を閉じた状態でももっこりとした印象の口元のことをいいます。横から見ると鼻と唇の高さがほとんど同じくらいのため、見た目を気にする方が多いです。
口ゴボになる要因はさまざまですが、大半は出っ歯が原因です。上あごの前歯だけ突き出ている場合もあれば、上下の前歯が突き出ている場合もあります。
唇が分厚い場合も口ゴボになりますが、その場合は年齢と共に薄くなることが多いです。
叢生
叢生(そうせい)は、歯がきれいに並ばずガタガタとしている状態の歯並びをいい、乱杭歯(らんぐいば)ともいいます。
その特徴は歯が前後に重なったり八重歯になって生えてきたりします。
叢生の大半は、あごがうまく発達せず小さいため永久歯がきれいに並ぶスペースが不足していることが原因です。
柔らかいものばかりを食べていると、あごに刺激が加わらずあごが発達せず叢生になりやすいです。
あごや歯の大きさは遺伝的な要因が強いですが、食生活や生活習慣が原因で叢生になるケースが少なくありません。
不正咬合の中でも、日本人に最も多いケースが叢生だといわれています。
乳幼児の歯並びに影響する癖
乳幼児の歯並びや噛み合わせが悪くなる原因は、歯やあごの大きさの遺伝・先天的なものばかりではありません。
日常生活のちょっとした癖が原因で歯並びが悪くなることが多いです。
小さい頃の悪習慣・普段の食生活が歯並びに影響するため保護者は日頃から子どもの様子に注意する必要があります。
ここでは乳幼児の歯並びに影響する癖について具体的に解説していきます。
指しゃぶり
赤ちゃんの頃からの習慣で指しゃぶりを続けていると、前歯に圧力がかかり出っ歯やすきっ歯になる可能性が高くなります。
歯並びのことを考えると、乳歯から永久歯に生え変わる5歳頃までには指しゃぶりを止めさせるのが望ましいです。
子どもの指しゃぶりを見かけたら、色塗りや指遊びなどの手を使う遊びをさせて気を引き、癖を止めさせましょう。
しかし、いきなり指しゃぶりを否定してしまうと、子どもがストレスを受けてしまうかもしれません。
子どものペースに合わせながら様子を見て改善を見守りましょう。
口呼吸
お口をぽかんと開けた状態の子どもは、口呼吸をしていることが考えられます。
口呼吸を続けているとあごがうまく発達せず噛み合わせが悪くなってしまい、将来的に上下の歯がきちんと噛み合わない「不正咬合」になる可能性があります。
また、アレルギーや鼻炎のために鼻が詰まっているときも口呼吸になりがちです。こまめに鼻づまりを解消させ、ひどい場合は耳鼻科で医師に診てもらうようにしましょう。
うつぶせ寝
うつぶせ寝も片側のあごや歯に圧力がかかるため注意が必要です。
特に、うつぶせ寝は顎関節症というあごの病気になることもあり、あごや歯並びだけでなく体全体の歪みにつながることもあります。
しかし、お昼寝タイムや保護者が起きている時間では、寝返りをうたせてあげるなどの対応ができますが、家族が寝静まったあとの対応は難しいです。
こうした場合は、仰向けで寝やすい枕や寝返り防止クッションなどを活用して子どもの様子を観察しましょう。
頬杖
歯並びには直接関係のないようにみえる頬杖も歯並びを悪くしてしまう原因の1つです。
頬杖をつくことによって、片側のあごに継続的に力が加わり歯並びが変わってしまうことがあります。
また、頬杖は利き手と反対側でしてしまうことがよくあり、一方の歯並びだけに影響が出てしまうケースが多いです。
頬杖を改善させるのは大変かもしれませんが、姿勢を正して座らせる・机や椅子の高さを調整してあげるなど工夫してみましょう。
また、見つけるたびに注意して頬杖が常習化してしまう前に食い止めることも大切です。
乳幼児の歯並びは永久歯にも影響する
乳幼児の歯並びに少し問題があっても、「乳歯はどうせ生え変わるから」と考えている方が少なくありません。
実は、その考え方は大変危険であり、乳幼児の頃の歯並びは生え変わったあとの永久歯にも影響します。
乳歯の歯並びが悪いと、将来的に下記のような影響が出るため注意しましょう。
- 将来虫歯や歯周病になりやすい
- 見た目にコンプレックスを感じる
- 永久歯の歯並びに影響が出る
- 咀嚼や発音に問題が出る
乳歯の悪い歯並びをそのままにすると、高確率で永久歯に影響が出るといわれています。
将来的に虫歯や歯周病にかかりやすく、歯周病は口臭の原因につながります。
また、叢生や出っ歯などは見た目への影響も大きいため、コンプレックスを持ってしまいがちです。
まだ乳歯だから大丈夫と油断していると、結果として将来的に歯を失ってしまうことになりかねません。
子どもが自分で判断できない間は、保護者がしっかりとケアしてあげましょう。
永久歯の歯並びを改善するために
歯並びや噛み合わせは、早期に原因を知りきちんと対処することで歯並びの改善が期待できます。
大人になってからも健康的な歯で過ごすためには、小さい頃からのケアが大切です。
子どものきれいで健康的な歯並びや口内環境を守るために、永久歯の歯並びを改善する方法を紹介しましょう。
お口まわりのトレーニングを行う
永久歯の歯並びを改善するために行うお口まわりの筋肉トレーニングがあります。
先ほど紹介した悪習慣などの改善も期待できるトレーニングで「口腔筋機能療法(MFT)」といいます。
口腔筋機能療法(MFT)で代表的なトレーニングは、舌の定位置を正すもの(スポットポジショニング)・正しい飲み方を覚えるもの(スラープスワロー)・あいうべ体操などです。
歯科を嫌がる子どもが多いですが、こうしたトレーニングを行うことで少しずつ歯科へ通うことに慣れさせる狙いもあります。
トレーニングは歯科医の指導のもと一緒にするのが理想ですが、どうしても嫌がる場合などは、自宅でできる方法を指導してもらいましょう。
歯列矯正を検討する
乳歯の歯並びが悪いと、永久歯の歯並びにも影響することをお伝えしました。歯並びの悪さは、見た目の問題もありますが、全身の健康にも悪影響を及ぼします。
子どもの歯並びに違和感があれば、早めに医師へ相談して治療が必要かどうか判断してもらいましょう。
乳歯のうちから矯正治療をはじめると、抜歯が必要なかったり比較的短期間で終わったりすることもあります。
子どもの歯列矯正はタイミングが大切
注意点として、子どもの歯列矯正は症状によっては早ければ早いほうがよいというわけではありません。
早期に原因を知り、適切なタイミングでスタートさせることが大切です。
歯並びが悪くなっている原因によっては歯列矯正を開始するタイミングが異なります。
矯正方法によっては、あごの成長を利用するため最適な歯並び・永久歯が生えそろうまで待つ治療もあります。
いずれにしても早い段階から検診などで医師に相談しておけば、適切なタイミングで最適な治療法を用いた治療が可能です。
乳幼児の歯並びが気になったら専門医に相談を
歯医者の中には、小児歯科専門医・小児矯正歯科専門医など専門分野に特化した歯科医が存在します。
矯正歯科医は一般歯科をメインに行っている医師よりも専門的で最新の知識・技術を身につけています。
可能であれば、こうした小児歯科専門医が在籍しているクリニックを選ぶのがおすすめです。
インターネットの口コミなどを参考にして矯正専門の歯科医院を見つける方法もあります。
子どもの歯について悩んでいる保護者は、気軽に相談できる歯科医院を探しておくと安心です。
まとめ
乳幼児の歯並びで気になる症状・悪影響を与える癖について解説しました。
乳歯の歯並びは永久歯にも影響を与えるため、できる限り早期の受診がおすすめです。
無料相談を行っている歯科医も多くあり、1度相談してみると保護者の心配も少なくなります。
乳幼児の子どもは定期的に歯科医院で診てもらうことで、先天的な歯並びだけでなく、あごの発育に影響を与えている何気ない癖や習慣も改善が可能です。
子どもの歯並びが気になる方は、この機会にぜひ小児歯科医院で相談してみることをお勧めします。