監修:青山健一
はじめに
矯正治療をご希望されてご相談にいらっしゃる患者さまの9割は、前歯の見た目の改善を主訴でご来院されますが、1割の方は噛み合わせを治したいという希望でご相談に来られます。
矯正治療は前歯の見た目をきれいにするための治療だと思われがちですが、奥歯の噛み合わせを正しく治していくことで、頭痛、肩こり、首の痛みなどの不定愁訴が改善する方が多数いらっしゃいます。
矯正治療を美容目的で考えられている方と、噛み合わせ治療として医療目的で考えられている方によっておすすめの治療方法も違ってくるものなのです。
目 次
1、矯正治療と審美治療の違い
歯並びをきれいにしたいときの患者さんの選択肢には、歯を動かす矯正治療で歯並びを変える方法と、歯を削ったり抜いたりして、セラミックの被せ歯で歯並びをきれいにする審美治療の二通りがあります。
この2つは、一般的には「矯正治療」と「審美治療」と分けて考えられていますが、最近では「セラミック矯正」という表現を使って、矯正治療でないものを矯正治療のように見せかける表現を使用して、患者さまから誤解を招いている歯科医がいるので要注意です!!
テレビに出演しているタレントの八重歯がいつの間にか治って、きれいな歯並びになっているのが、歯を削って治す審美治療です。
審美治療のメリットは、人に気づかれずに治療が完了し、治療期間も二~四カ月ぐらいで治ってしまうことです。簡単で他人に気づかれないでできるということが最大の売りでもあります。
一方、デメリットとしては、歯を削ったり、抜いたりするために、年月を経るとともに、歯が弱くなりダメになりやすいことです。
とくに、若いうちに歯の神経をとったり、歯を大きく削ることは、20~30年たったときのダメージが大きくなります。
矯正治療のメリットは、歯を削ったりするダメージが少ないため、治療後には自分の歯がより長持ちすることです。
そして、全体矯正の場合は審美治療と違って、前歯だけでなく噛み合わせが悪くなる根本原因である奥歯を正しく治療できるので、体調の改善も期待できます。
矯正治療のデメリットとしては、一般的には治療中には見た目に目立つこと、違和感が大きいこと、治療期間が長くかかることなどがあります。
しかし部分矯正では、治療期間も約半年ですし、インビザラインではマウスピースによる矯正なので見た目にも気づかれません。
短いスパンで考えれば、審美治療のメリットを多く感じるかもしれませんが、長いスパンで考えれば、矯正治療のメリットのほうが断然多いでしょう。
2、「被せ物」で前歯のデコボコ(出っ歯)を治す
3、噛み合わせは前歯よりも奥歯が大切
従来の矯正治療は前歯の見た目をきれいにするために、小臼歯を抜いて前歯を奥に引っ込めて並べていました。
しかしここにきて、そういう治療方法に対する疑問が投げかけられています。
それは、矯正治療後に不定愁訴という体調不良が生じたり、見た目はきれいに見えてもよく噛めない、どこで噛んでいいのかわからないといった不満が出たり、治療後に大きな後戻りがあるなどといったトラブルがたくさん出てきているからです。
歯科医の中にも、矯正治療でこうしたトラブルを何度か見てしまうと、必然的に矯正治療に対して不信感を抱くようになってしまいます。
今まで、歯並びが悪くなるのは歯と顎の大きさのバランスが悪いからだと考えられていましたが、実際は、奥歯が前方や内側に傾斜して倒れ、前歯がデコボコに並んでいるから歯並びが悪いのです。
わかりやすい例で言えば、ニキビができるからといってニキビ周辺にばかり薬を塗っても、根本的な原因を取り除いたことにはなりません。
規則正しい生活や正しい食生活によって免疫系を正常に反応させたり、ストレスを取り除くことが根本的な治療といえるのではないでしょうか。
目に見える事柄よりも、その根底に含まれる本当の原因を見つけ出さないと根本的な解決にはならないのです。
前歯の悪い歯並びもその原因を突き詰めると、実は奥歯にその解決のヒントが存在していたのです。
奥歯を正しい位置に並び替えることによって体調もよくなりますし、前歯もきれいに並ぶことができるのです。
4、意外に知られていない 噛み合わせと体調不良の緊密な関係!!
5、不定愁訴が多い人はスプリントで予測できる
頭痛、肩こり、首の痛みなどの不定愁訴が多い方は、スプリントと言ってマウスピースのような物で、矯正後の体調の改善をシミュレーションすることが可能です。
いきなり矯正治療をしても、「体調改善が治らなかった」ということを防ぐ意味で、スプリントを使用して体調改善を体感することができるのです。
不定愁訴の原因が噛み合わせの不良からきている方にとっては、スプリントを装着して1週間から1ヵ月ぐらいで体調の改善を体感する方が多いです。
体調改善のためのスプリントはホワイトニングで使用する均等な厚みのマウスピースとは違うものなので、クリニックによって噛み合わせの考え方が違いますので、スプリントを作成される際は、噛み合わせ治療に力を入れているクリニックでの制作をお勧めいたします。
☆まとめ
長年矯正治療に携わってきて、噛み合わせ治療による体調改善をたくさん目にしてきて、噛み合わせの大切さを日々感じています。
見た目は誰でもわかりますが、奥歯の噛み合わせは普段なかなか意識しないので、ついつい大きい問題になるまで手を付けない方がほとんどです。
大きな木は大きな根っこがあってこそ、しっかり生きていくことができます。
同様に歯を維持しているのも、奥歯の正しい噛み合わせがあってこそのことなのです。
頭痛、肩こり、首の痛みなど不定愁訴の多い方は、一度自分の噛み合わせを調べてもらうのが、改善への近道かもしれません。