【監修:青山健一】
目 次
きれいな歯並びは、その人の印象を決める重要なポイントです。スマイルが一段と輝きます。
実は「良い歯並び」とは見た目の美しさではありません。「全ての歯がきちんと噛み合っているか」が肝心なのです。
歯並びと噛み合わせにはどんな関係があるのか。よく噛めることは、心と身体の健康にも良い影響があります。
あなたの歯並びは良い歯並びでしょうか?改善策とは?
それでは、これから歯科医が考える理想的な歯並びについて詳しく見ていきましょう。
理想的な歯並びとは
理想的な歯並びは、正しく噛み合う歯並びです。それでは、上の歯と下の歯がどのような状態になれば正しく噛み合うのでしょうか。
歯並びを確認する際には、以下のポイントに注目してください。
- 上の歯が下の歯と噛み合う時、上の歯が下の歯に覆い被さっている
- 覆い被さっている量は2~3ミリ程である
- 上の前歯の傾斜角度は2~3ミリ程である
実際に自分で歯並びを確認する方法があります。鏡をご用意ください。
歯並びの確認方法
歯並びを自分で確認する簡単な方法があります。外側から確認する方法と、直接口の中を確認する方法です。
さっそく、鏡の前に立って実践してみましょう。
顔の外側から口内を確認
最初に顔の外側から歯並びを確認していきます。準備は簡単。口を閉じて唇を軽く合わせるだけです。
この時、以下の問題がないかをチェックしてください。
- 歯が見えてしまう
- 下唇を前歯で噛んでしまう
- 上の唇で下の唇が隠れている
このような状態が確認された方は注意が必要です。
今度は奥歯をしっかりと噛み合わせてみましょう。そのまま人差し指を口内に入れ、頬を広げて歯を見えるようにします。
この時、以下の問題が無いかチェックしてください。
- 上の歯が下の歯よりも内側にある
- 上下の歯の間に広めの隙間がある
さらに気をつけていただきたいことは、上の歯が下の歯より外側にあっても、下の歯がまったく見えない場合は注意が必要です。
また、歯の下端がそろわない場合、さらに歯間の幅に大きなバラツキがある場合も問題です。
加えて、上下の歯の間にはある程度の隙間があるのが正常ですが、舌が見えてしまうような隙間は問題です。注意しましょう。
左右のバランスを見る場合には、割り箸を一膳用意して、前歯で横方向に噛んでみるのも良いでしょう。
傾きがないかどうかを確かめてください。
直接口内を確認
次に口の中の歯並びを確認します。成人の理想的な歯並びには以下の要件がありますので、あてはまっているかどうか見てください。
- 中心から左右に7本ずつ、上下の顎に14本ずつの永久歯がそろっているか(親知らずを除く)
- 親知らずがあるか
- 歯と歯の間に隙間があるか
- 歯がきれいな歯列弓(しれつきゅう)を描いているか
成人の永久歯は合計28本です。そして、それらがスムーズな弧を描く(歯列弓)ことが理想的です。
隙間が広く空いていたり、歯列がデコボコしていたりする場合は問題です。注意しましょう。
歯並びが悪くなりやすい人の特徴
歯並びが成長過程でどのような影響を受けるのか、今までにさまざまな研究が発表されてきました。
先天的な歯並びの特徴は、親からの遺伝によって大きな影響を受けます。歯の大きさから歯の生える時期まで左右されるのです。
一方、後天的な歯並びの特徴は、成長過程で起こりうるさまざまな要因が関係しています。乳歯の時から注意が必要です。
ここでは、後天的な歯並びの特徴を決定する以下の3つの要因について取り上げます。
- 頬杖をつく
- うつ伏せで寝る
- 口で呼吸する
これらの要因が具体的に歯並びにもたらす影響について考えてみましょう。
頬杖をつきやすい
テレビを見ている時や勉強中、頬杖をしていることはありませんか?癖になっていると無意識に頬杖をついてしまいます。
同じ方向を向いて長い時間顎に手を当ててしまうので、下顎の位置が手を当てていない頬側へ押し込まれます。
この状態を保っている時間や回数が多い人は、顎関節に負荷がかかり左右のバランスが崩れてしまうのです。
この歪みが歯並びの悪化を招きます。
うつ伏せで寝ることが多い
うつ伏せに寝てしまっていることはありませんか?入眠時には仰向けの人も寝返りを打ってうつ伏せになってしまうことがあります。
うつ伏せの状態で顎が枕などの段差に押しつけられてしまうと、頬杖と同じように下顎に負荷がかかってしまうのです。
その結果、顎関節の歪みを招き歯並びの悪化に繋がります。
口で呼吸していることが多い
アレルギーや扁桃腺肥大などのため口で呼吸をするしかない、あるいは口をうまく閉じられないため口呼吸をしてしまう人もいます。
口を閉じていれば唇と舌部で歯が挟まれるのでバランスがとれますが、口を開けっぱなしにしているとバランスがうまく保てません。
口が開いた状態では、舌の位置が前に出てしまう傾向があります。つまり、歯の裏に舌が押し当てられ、その圧力で前歯列が崩れます。
その結果、歯並びの悪化をもたらし噛み合わせがうまくできなくなってしまうのです。
良い歯並びがもたらす影響
良い歯並びの人は噛み合わせもうまくいき、食べものをよくかみ砕けます。
歯磨きもうまくできるので、口内の細菌の増殖を抑えられ虫歯などになりにくいです。
また、歯並びを意識することなく人と話したり笑ったりすることができます。
発音にも障害がありませんので、社交的な生活ができてストレスもたまりにくいのです。
このように、歯並びは私たちの精神面・健康面に影響します。具体的にどのような影響なのでしょうか。
精神面への影響
歯並びが悪い人の中には、それをあまり気にしない人もいれば、とても気にしてしまう人もいます。
その深刻さは、歯並びがどれだけ悪いのかにかかわりません。少し気になるところがあれば人前で笑うことすらためらわれるのです。
つまり、歯並びはその人その人の精神的な問題といっても過言ではないでしょう。歯並びを改善することは心の治療でもあるのです。
健康面への影響
良い歯並びの人は歯磨きがうまくいきますし、口呼吸もしないで済みますので、口内の細菌が繁殖しづらくなります。
つまり、歯並びが良いと虫歯や歯周病になりにくいわけです。
良い噛み合わせでしっかりと咀嚼でき、問題なく飲み込むことができるので胃腸への負担は軽めです。
咀嚼効率が上がると顎周りやこめかみの血流を促進し脳内に良い循環が生まれます。認知機能・視力の低下を防ぐことが可能です。
悪いかみ合わせがもたらす影響
歯並びや噛み合わせの問題があると、以下のような悪影響が及ぶ場合があります。
- 虫歯や歯周病
- 顎関節症
- 視力低下
どのようにして歯並びの問題がこれらの症状を引き起こすのか、以下に詳しく解説します。
歯周病や虫歯
歯並びや噛み合わせが問題で、歯磨きがうまくできないと細菌が除去できないため虫歯や歯周病になりやすいです。
特に噛み合わせがうまくいかない人は咀嚼効率が低下し、食べたものを胃腸で消化する際に負担がかかります。
この場合、舌の動きが悪くなり飲み込みもうまくできません。舌が歯の間から出てしまう、唇や頬に力が入る人は注意が必要です。
この問題は、噛み合わせが悪いので口呼吸をしてしまう人にも見られます。唾液が減り口内が乾燥するからです。
歯並びを改善することで、虫歯や歯周病の原因を取り除くことができます。
顎関節症
歯並びが悪いと噛み合わせがうまくいかないため、ものを食べるときに咀嚼がうまくいかないというお話をしました。
咀嚼ができても、今度はうまく飲み込めないことがあります。このような問題があると、胃腸への負荷に注意が必要です。
顎の関節に問題があって噛み合わせが悪い人は、口がうまく開かないうえ肩周りが凝り顎関節症にまで悪化することがあります。
この顎関節症ですが、精神的なストレスのため歯ぎしり・くいしばりがあると発症することも。
歯並びを改善して精神的ストレスが軽減することは、結果的に顎関節症を予防することに繋がるでしょう。
視力の低下
顎関節症になるほど歯ぎしり・くいしばり・噛みしめが癖になっている人は、視力の低下を招くことがあります。
これは、噛みしめることでこめかみ部分にストレスがかかり神経疲労を引き起こすことがあるためです。
目・耳に関連する神経が密集しているこめかみ部分の神経疲労は、めまい・耳鳴りも併発します。
これは噛み合わせがうまくいっている人でも、くいしばり・噛みしめの癖があれば発症する場合がありますので注意しましょう。
歯並びを改善するためにできること
歯並びを悪くする要因には先天的なものと後天的なものがあるという話をしました。後天的な要因は生活習慣の改善で対策できます。
頬杖をつかないようにすることや、うつ伏せで眠らないようにして、顎に負担をかけないように意識してください。
歯磨きをしっかりと行い、虫歯や歯周病を予防しましょう。歯茎の健康に特に注意して歯がぐらつかないよう注意が必要です。
また、口呼吸を避けて唾液をよく歯と歯の間にめぐらせましょう。鼻づまりが原因の場合には、早めに鼻の治療を受けてください。
歯並びが気になる方は歯科矯正を検討
歯並び悪化の原因が先天的なものの場合、あるいは後天的な原因で歯並びが悪くなってしまった場合には歯科矯正をご検討ください。
子どもの治療では歯の生え替わりの時期や発達過程に合わせた適正な時期がありますが、大人の治療には特定の時期はありません。
思い立ったらいつでも開始できます。いつまでに完了させたいかによって計画しましょう。
歯科矯正には数年かかるものから数ヶ月ですむものまで、歯並びの状態によってバラツキがあります。
矯正費用も高額になる場合がありますので、専門家の医師によく相談して治療計画を練ってください。
まとめ
理想的な歯並び・噛み合わせについて詳しく解説してきました。良い歯並びがもたらす影響についてご理解いただけたでしょうか。
歯並びが良いということは見た目が美しいだけでなく、精神的・健康的なメリットがあります。
先天的な歯並びの問題や、後天的な原因で歯並びの問題が悪化する場合は、歯科矯正で改善すると良いでしょう。
口内環境を健全化し、顎関節を保護するだけでなく、見た目のコンプレックスが解消されて人との関わりが積極的になります。
歯並びを改善して、あなたの輝くスマイルで長い人生の道のりを明るく歩んで行きましょう。