【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正を検討する際に、抜歯をすることに不安を抱く方は多いのではないでしょうか。
抜歯をした歯は戻ってくることはありませんので、不安に思うのも仕方ありません。
しかし、必ずしも抜歯が必要という訳ではなく、全体的なバランスや歯の生え方によって抜歯の判断をします。
歯科矯正で抜歯をするのには理由があり、メリットがあるのも事実です。
今回は、歯列矯正で抜歯をする理由について詳しく解説します。
歯列矯正で抜歯をする理由
できれば抜歯をせずに歯列矯正をしたいという患者様は多いです。
必ず抜歯をしなければならないという訳ではありませんが、治療が困難なケースでは抜歯をすることも少なくありません。
ここでは、歯列矯正で抜歯をする理由を2つの視点から解説します。
理想的な歯列に整えるため
歯列矯正で抜歯をする理由は、理想的な歯列に整えるためです。
矯正装置を使って歯を動かし歯列を整えますが、それにはスペースを確保しなければなりません。
必要なスペースが確保できなければ、装置を使っても歯列を整えることが困難です。
そのため、矯正装置だけで治療が難しいケースでは抜歯を検討することになります。
噛み合わせを良くするため
噛み合わせを良くするために、歯列矯正で抜歯をすることがあります。
見た目だけでなく噛み合わせのような機能性を高めることも、歯列矯正の目的の1つです。
しかし、上下の顎がズレている場合は矯正装置のみの治療では改善できない可能性があります。
そこで、抜歯をすることで噛み合わせが良くなると判断した場合に、歯列矯正で抜歯を行うのです。
抜歯するメリット
歯列矯正で抜歯を行うのにはきちんと理由があり、抜歯を行うことによるメリットもあります。
ここでは抜歯をする最大のメリットをみていきましょう。
口元を引っ込めることができる
歯列矯正で抜歯することで、歯並びだけでなく口元の骨格も改善することが出来ます。
笑ったときの歯並びだけでなく、自然な状態の口元も内側に引っ込むので、口元がスッキリするのが抜歯矯正の最大のメリットになります。
抜歯をするデメリット
どのような治療にもメリットがあればデメリットもあるものです。
デメリットを知っておくことで、治療への理解を深めることができるでしょう。
ここでは、歯列矯正で抜歯をするデメリットを2つ解説していきます。
歯が減ることに対して大きな不安を感じる
抜歯によって、歯が減ることに大きな不安を感じる患者様は多いです。
削ったり抜いたりした歯は、後悔しても戻ってくることはありません。
歯は一生ものといいますが、一生付き合っていく大切な身体の一部なのです。
そんな大切な歯が減ることに対して、「本当に抜いてもいいのだろうか」という不安を抱くのは無理もありません。
また、抜歯した後のイメージが分かりにくいことや機能面への影響など、歯が減ることへの不安は多いでしょう。
不安があるからこそ、しっかりと歯科医に相談しながら治療を進めて行くことをおすすめします。
抜歯後に痛みや腫れが現れる
歯列矯正で抜歯することのデメリットに、抜歯後の痛みや腫れの出現があげられます。
抜歯をするときには麻酔をするため痛みはほとんどありません。
しかし、麻酔が切れてから痛みや腫れが現れる方も多くいらっしゃいます。
このような症状に対して痛み止めや化膿止めが処方されることが多く、長く続くという訳ではありません。
抜歯後の痛みや腫れは、個人差はあるものの数日程度で治まることが多いでしょう。
化膿してしまうと長引く可能性もありますが、その際は歯科医で適切な診察を受けることが大切です。
歯列矯正で抜歯する歯
歯列矯正で抜歯するケースは多いですが、どの歯を抜くのか気になる方も多いでしょう。
スペースを確保するために抜歯が必要であり、抜歯することが多いのは小臼歯という歯です。
歯の中央から4本目の第1小臼歯が多く、次に5本目の第2小臼歯となります。
食べ物をかみ切るときに必要な犬歯は残し、機能的に抜歯しても大丈夫な歯を抜歯するのです。
抜歯をするときに知っておいていただきたいのは、「どこか1本だけ抜くことはない」ということです。
第1小臼歯も第2小臼歯も、上下左右の計4本ありますが、1本だけ抜歯するとバランスが悪くなってしまいます。
そのため、歯列矯正で抜歯をする場合は4本抜くということを押さえておきましょう。
また、親知らずが横向きに生えているなど、問題がある場合には親知らずを抜歯するケースもあります。
親知らずが横向きに生えていると他の歯が全体的に中央に向かって押されるため、歯並びへの影響が大きいからです。
一般的に小臼歯か親知らずを抜歯することになりますが、どの歯を抜歯するかは歯科医の判断になります。
歯列矯正で抜歯が必要なケース
できれば抜歯せずに歯列矯正をしたいという方は少なくありません。
しかし、抜歯をした方が治療がスムーズかつメリットが大きい場合、抜歯をすることになるでしょう。
ここではどのようなケースで抜歯が必要なのか解説していきます。
顎が小さい場合
顎が小さいケースでは、抜歯が必要になることがあります。
人間に生える歯の本数は決まっていますが、骨格は人それぞれです。
上下の顎は歯の受け皿になる部分ですので、その顎が小さいと窮屈になってしまいます。
もともと歯列が整うためのスペースが確保できていない状態ですので、矯正しても窮屈ということに変わりありません。
そのため顎が小さい場合は抜歯をして歯列を整えるためのスペースを確保するのです。
出っ歯の場合
出っ歯の矯正治療は困難なケースも多く、抜歯によってスペースを確保することも少なくありません。
前に出ている歯を後方に移動させなければならないため、それに合わせて隣接する歯の移動も必要です。
しかし、前歯が収まるだけのスペースがない場合、抜歯をしてスペースを確保することになります。
軽度の出っ歯なら歯を削って対応できる可能性がありますが、重度の場合は抜歯も検討しなければなりません。
受け口の程度が大きい場合
受け口の程度が大きい場合も、歯列矯正で抜歯が必要になることがあります。
受け口(反対咬合)とは、上の前歯よりも下の前歯の方が前方に出ている状態のことです。
顎の大きさに原因がある場合と、上の前歯が後方に向かって生えてきたという場合があります。
いずれにしても、見た目へのコンプレックスや滑舌の悪さなどから、治療を希望される方は多いです。
受け口が軽度の場合は奥歯を動かすことでスペースの確保ができますが、程度が大きい場合は抜歯が必要になります。
歯列矯正で抜歯をしない治療法
ここまでは歯列矯正で抜歯をすることのメリット・デメリットや、抜歯が必要なケースについてご紹介しました。
必要に応じて抜歯をするとはいっても、できれば抜歯をしたくないと思う方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、歯列矯正で抜歯をしない治療法を2つ解説します。
マウスピース矯正
抜歯をしない歯列矯正の方法に、マウスピース矯正があります。
抜歯を必要とするようなケースにはワイヤー矯正が向いていますが、一般的に抜歯を必要としないケースにはマウスピース矯正が向いているのです。
そのため、抜歯を避けたいからマウスピース矯正にするというよりも、マウスピース矯正の適応となる歯並びであるかどうかという判断になります。
矯正治療に用いるマウスピースは取り外しができますが、1日20時間以上の装着が必要です。
食事と歯磨きのとき以外は装着していると思ってください。
インビザラインというマウスピースが広く知られるようになり、マウスピース矯正を希望する患者様も増えています。
それに伴い、抜歯をしない歯列矯正への注目度も高まっているのです。
歯を削る
歯列矯正を行うにあたり、スペースの確保という問題はどうしてもクリアしなければなりません。
スペースを確保するために抜歯をするのですが、抜歯するほどではないというケースでは歯を削るという方法があります。
あと少しのスペースが欲しいという場合は、抜歯よりも削る方が患者様の負担も軽くなるでしょう。
ただし、削る歯が多い場合や虫歯になっている場合は、抜歯をせざるを得ないこともあるので注意してください。
歯列矯正で抜歯をして後悔しないために
歯列矯正は部分矯正の場合は数か月~1年、全体矯正の場合は1年~3年かかります。
困難なケースでは治療に4年かかることもあり、それだけ長期間矯正装置をつけることになるのです。
歯列矯正で抜歯をすると、スペースの確保ができて治療期間を短縮できるケースもあります。
また、歯並びによっては抜歯が必要といわれることも少なくありません。
しかし、できれば抜歯をしたくないという患者様が多いのも事実です。
最近では、抜歯をしない「非抜歯」の歯列矯正を行う歯科医も増えています。
歯列矯正のために抜いた歯は、後悔しても戻ってくることはありません。
もし抜歯をする歯列矯正に不安があるようでしたら、抜歯を希望しないことを歯科医に相談してみることをおすすめします。
非抜歯の実績がある歯科医なら、これまでの経験から様々な症例に対応できる可能性があります。
まとめ
今回は歯列矯正で抜歯をする理由について解説しました。
歯列を整えたり噛み合わせを良くしたりするために、矯正治療で抜歯を行う場合があります。
しかし、メリットがある一方で歯が減ることへの不安から、抜歯を希望しない方も少なくありません。
抜歯してしまった歯を戻すことはできませんので、矯正治療を開始する前に歯科医に相談することが大切です。
非抜歯をかかげる歯科医もいますので、相談しやすい医師のもとで不安を解消しながら歯列矯正を受けてください。