【監修:青山健一】
目 次
家族や知人から顎がしゃくれていると言われたことはありませんか。
顎が出ていることが原因で自分の顔に対してコンプレックスを抱いてしまう人もいるほどデリケートな問題です。
生まれつき顎が大きい人もいますが、顎がしゃくれる原因は1つではありません。
ではなぜ顎がしゃくれてしまうのでしょうか。
顎がしゃくれてしまう原因と解決方法について見ていきましょう。
しゃくれの特徴
しゃくれとは下あごが前に突き出している状態のことをいいます。
下あごが出ていると発音がしにくくなり、かみ合わせや子供の場合歯並びなど顎の成長面に影響を及ぼすのです。
ひと口にしゃくれといっても、2つのタイプが存在します。
骨格的な問題から起こるタイプ・歯並びの問題から起こるタイプに分かれます。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
下顎前突
下顎前突は下顎のかみ合わせが逆になっている状態のことをいいます。
下顎の位置が悪い、もしくは下顎の大きさに異常がある場合に起こるものです。
下顎の骨が前に突き出している状態のためにかみ合わせなども前方にずれてしまいます。
反対咬合
反対咬合は歯並びが原因で起こるしゃくれのことです。
反対咬合は元々骨格に原因があるものと、骨格の問題がではなく歯並びが原因で起こるものに分けられます。
通常歯並びというのは、上の前歯が下の歯を少し覆うような形が正常な状態です。
しかし、反対咬合では前歯が内向きに生えていたり、下の歯が外向きに生えていたりする状態です。
しゃくれの原因
しゃくれというと、生まれつきのようなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
確かにしゃくれは生まれつき顎が大きい・顎の位置が悪いといった理由でしゃくれている方もいらっしゃいます。
しかし、しゃくれは必ずしも生まれつきだけが原因というわけではありません。
生まれたときはしゃくれていなくても、日常生活のちょっとした癖が原因で子供だけではなく大人でも顎がしゃくれてしまう可能性はあります。
顎がしゃくれてしまうと、発音・咀嚼・嚥下だけではなく、外見面でも悩んでしまうものです。
では、なぜ顎がしゃくれてしまうのかその原因を解説します。
先天的な原因
先天性な原因とは、骨格的な理由でしゃくれてしまうことをいいます。元々下顎の骨が大きく上の顎骨が小さいことでしゃくれてしまうのです。
先天性な理由でしゃくれてしまう大きな原因は遺伝的な要素だといわれています。
後天的な原因
後天的な原因でしゃくれてしまうのは、指しゃぶり・舌を前に突き出す行為・顎を前に突き出すなど日常生活のちょっとした癖によるものです。
子供の頃なかなか指しゃぶりをやめられなかった子供が、指しゃぶりが原因で顎が前に出てしまったという事はよくあります。
また、口呼吸をしている人も要注意です。口呼吸は顎をしゃくれさせる原因の1つになっています。
寝ているときに口呼吸をしている人は、なるべく鼻呼吸で眠るように意識しましょう。
どうしても口呼吸になってしまう人は、口元に専用のテープを張り、寝ている間に口が開かないようにして強制的に鼻呼吸させる方法もあります。
しゃくれ治療の種類
しゃくれには矯正治療と外科矯正などがあります。
矯正というと痛みを伴い、長い期間治療しなければ効果がないイメージを持たれている方もいるかもしれません。
しかし、きちんと治療をすれば1年前後で症状が改善される方がたくさんいます。
それではしゃくれ改善に効果的な治療方法を紹介します。
矯正治療
歯並びが悪いことが原因で顎がしゃくれている、あるいはかみ合わせが気になる場合、矯正歯科でしゃくれを治療することができます。
ただ、小児の場合と成人の場合では治療方法が異なります。
小児の場合、インビザラインという取り外し可能なマウスピース矯正、もしくはワイヤーを使った矯正方法が一般的です。
マウスピース矯正は近年注目されている矯正方法で、ワイヤー矯正は矯正していることが分かって恥ずかしい・違和感があって嫌だという子供から人気があります。
取り外し可能なものもあれば、昼の1時間もしくは就寝時だけ取り付けるタイプなど様々です。
マウスピース矯正は歯型を取って自分の歯に合うマウスピースを作ります。
マウスピース矯正を行う前に歯周病や虫歯がないか口腔内の精密検査を行い、虫歯があればマウスピース矯正よりも虫歯治療を先に行います。
ワイヤー矯正もマウスピース矯正も装着することによって上下顎の成長バランスを整えながら、かみ合わせを改善していく治療方法です。
成人の場合は、ワイヤーを使って上顎歯列を前に出して下顎歯列を後ろに下げる治療方法が一般的です。
この治療では抜歯が必要になる可能性もあります。それでも改善が難しい、または骨格的なアンバランスをどうしても改善したい場合は外科的手術が必要になります。
先天的な外科矯正
顎変形症と診断された場合、外科的治療方法という手術によってかみ合わせの改善・顎のずれなどを改善していきます。
この治療の対象は次の通りです。
- 下顎が出ている下顎前突
- 顎が横にずれている若しくは顔が曲がっている顔面非対称
- 顎が小さく後ろに下がっている下顎後退や上顎前突
- 上下のかみ合わせが合わない隙間が空いている開咬
- 笑うと歯茎が目立つ・かみにくい・発音しにくい
これらの症状があると、食べ物を噛んだり飲んだりするときや、発音したり呼吸したりするときに影響が出てしまいます。
矯正治療ではあまり効果がなかった、もしくは不十分だった場合外科的な治療を行います。
上下の歯がかみ合うように顎の歯に対してまっすぐ歯を並べ変えるのです。
手術前は歯の傾きを変えたり、顎の骨の位置関係を変えたりするため一時的に噛みにくくなるかもしれません。
入院期間は通常10日から2週間ほどです。
手術で骨の位置関係を変えたときに上下しっかりかみ合わせが合うようにマルチブラケット装置を使用して歯を動かします。
退院後は月に一度の通院が必要になりますが、手術から通院が不要になるまでおよそ1年から2年かかります。
治療を行う上でどんなリスクがある?
歯科矯正治療には次のリスクが起こる可能性があります。
- ワイヤーやマウスピースなど矯正装置の違和感によって舌や口唇など口腔内の粘膜に口内炎ができる可能性がある
- 歯肉退縮や歯根吸収が生じてしまう可能性がある
- 固定装置を装着した場合、歯磨きが不十分だった場合そこから虫歯や歯周病になるリスクが高くなる
- 矯正治療をした後にリテーナーの使用を怠ってしまうと、また歯や顎などが後戻りしてしまう可能性がある
これらのリスクを軽減するためにも歯磨きは時間をかけて丁寧に行い、リテーナーの使用を怠らないようにしましょう。
しゃくれ治療の費用相場
気になるしゃくれ治療費用の相場ですが、ワイヤーを使用して全体を矯正する場合の費用はおよそ80万円〜100万円前後です。
マウスピースを使用した矯正の場合も80万円〜100万円ほどでどちらの治療も保険適応外となります。
しゃくれを放置するリスクは?
治療費も高く、矯正に対して怖いイメージがある場合、なかなか治療に踏み込めないという方もいます。
しかし、しゃくれを治療せず放置してしまうとさまざまなリスクが高くなるのです。
それを回避するためにも、できれば早めに治療をすることをおすすめしています。
先天的な咬み合わせが悪くなる
子供の場合、思春期を迎えると体の発達とともに顎の骨も成長します。
その結果、成長とともにしゃくれが目立ってしまう可能性が出てきます。
しゃくれてしまうと、上下の歯がずれてしまうので、食べ物を咀嚼する際に顎に負担がかかり、将来的に顎関節症になるリスクも高くなってしまうのです。
滑舌が悪くなる
顎がしゃくれると、滑舌も悪くなるので発音が不明瞭になってしまいます。
特に「さ行」がしゃべりにくくなってしまうので、コミュニケーションを取るうえで苦労するかもしれません。
しゃくれを自力で治す方法は?
先天的にしゃくれていなくても、日常生活のちょっとした癖でしゃくれは起こってしまいます。
そうならないためにも、日常的に顎を出すような行為や頬杖を突かないように心がけましょう。
また、軽いしゃくれであれば、次のトレーニングで改善できます。
軽い下顎前突症はトレーニングで改善できる可能性がある
軽い下顎前突症なら、歯医者へ行かなくても次のようなトレーニングで改善が期待できます。
- 口を閉じて舌を左奥歯と頬の間に置く
- 舌を右下奥の歯と頬の間までゆっくりと動かす
- 舌を右上奥の歯の内側に置き、左奥の歯の内側まで動かす
このトレーニングを朝5回夜5回に分けて1日5~10回ほど行います。
大人になってからは自力で治すことは難しい
子供のうちはまだ骨も柔らかく、歯も移動しやすいためトレーニングや矯正などでしゃくれを治療することができます。
痛みも子供の方があまり感じないことが多いのです。
しかし、大人になってしまうと自力で治すことは難しくなるため、しゃくれを治したい場合は早期治療が大切です。
しゃくれを治したいなら専門の歯科医に相談
しゃくれを治したい場合、専門の歯科医に相談しましょう。
専門の歯科医なら徹底的に口腔内から顎まで調べてどの治療方法がいいか決めてくれます。マウスピースやワイヤーで治る場合もあれば、外科手術で治る場合もあります。しゃくれは放置せず専門医に相談をしましょう。
まとめ
顔貌面でも気になるしゃくれですが、成長とともに顎も発達してしまうので、どんどんしゃくれが目立ってしまうこともあります。
特に思春期になると自分の容姿を気にする人も増えてきますので、しゃくれがコンプレックスになってしまうこともあるのです。
顎への負担も大きく、将来的に顎関節症のリスクも高くなるのです。
今は様々な治療法がありますので、専門医に相談して自分に合った治療法を見つけましょう。