【監修:青山健一】
目 次
尖った犬歯が生えている人の中には、歯並びが気になるけれど、治療が必要なのかどうか悩む、という人は多いことでしょう。
今回は犬歯が尖る理由や治療すべきなのかをはじめ、犬歯の役割や治療に必要な費用などをご紹介します。
尖った犬歯が気になる人は多い
10代なら尖った犬歯は「八重歯」として、あどけなさや可愛さを感じさせます。
一方で、年齢を重ねるうちに歯並びの悪さが気になってしまう方も多いことでしょう。
中には歯並びの悪さから、笑顔に苦手意識を感じたり、口元に自信を持てなかったりする方もいます。
しかし、自信がないからと、悩みを抱えたままにするのは辛いものです。
尖った犬歯が気になるという場合は、まずは歯科医師に相談してみましょう。
犬歯が尖る理由
犬歯が尖るのは、遺伝や噛み合わせが主な理由です。
しかし、なぜ犬歯が尖るのでしょうか。犬歯が尖る理由を詳しく見ていきましょう。
遺伝
歯は、遺伝的に多かったり少なかったりする場合や、個性的な生え方をする場合があります。
犬歯はもともと尖った形をしているものですが、遺伝によっては必要以上に尖った形になっていることもあるでしょう。
また、犬歯が尖る原因の1つが、遺伝的に顎が小さく生えるために必要なスペースが十分にないという理由です。
生えるために必要なスペースがなければ、歯は埋没してしまいます。
埋没すると、歯が生えてくる向きや角度が変わるため、八重歯となるのです。
噛み合わせ
噛み合わせが悪いと犬歯が尖る場合があります。
噛み合わせが悪い状態とは、犬歯を含む前歯が噛み合っているのに、奥歯に隙間がある状態のことです。
噛み合わせが悪い場合、犬歯が尖る原因になる他、顎がずれて痛みを発したり食べ物をきちんと咀嚼できなかったりする原因にもなります。
その他
その他の原因として考えられるのは以下の2つです。
- スルメのような硬い食べ物を噛まないため顎が成長せず、犬歯が埋没する
- 外傷によって犬歯と歯ぐきがダメージを負って、犬歯の向きが変わる
近年増加しているのは、硬い食べ物を口にする機会の減少に伴う、顎の成長不足です。
顎の成長には食事の際の咀嚼が重要なカギを握っています。
柔らかいものばかりを食べていると、噛む回数が少なくなり、顎の骨や筋肉が十分に成長しないのです。
また、外傷によるダメージについては、長期的な観察が必要な点に注意が必要です。
外傷を負ったばかりの時点では問題ないように見えても、半年が経過してから徐々に曲がる場合もあります。
歯科医のアドバイスをもらいながら、的確な処置をしましょう。
尖った犬歯は治すべきか
尖った犬歯は、必ずしも治療が必要というわけではありません。
犬歯は本来尖っているものですが、人によっては尖った歯先が頬の内側などを刺激する場合もあります。
そういった支障がある場合には治療を検討した方が良いでしょう。
また、犬歯が尖りすぎていて歯並びも悪い見た目が気になり、それがコンプレックスとなる可能性もあります。
犬歯が原因で人前で笑ったり話したりするのが苦痛に感じる、という場合にも治療を検討すべきでしょう。
尖った犬歯を治療する必要があるかどうかは、歯科医師に相談してみるのがおすすめです。
犬歯の役割
前歯の中でも尖った形状をしている犬歯の役割とはどのようなものなのでしょうか。
犬歯の担う役割について紹介します。
物を噛み切る
犬歯は肉食動物の歯でいうところの牙にあたります。
歯ぐきに埋もれている部分が長く、食べ物を噛み切れるように丈夫にできているのが特徴です。
奥歯で効率よく咀嚼するためにも、食べ物を噛み切るために犬歯は重要です。
もし大きい塊のまま奥歯で咀嚼すると、噛みすぎて奥歯や顎が痛くなってしまいます。
食べ物を噛み切り、食事をより美味しく楽しむための大切な役割を犬歯が担っているのです。
奥歯を守る
犬歯は奥歯を守るという役割も担っている歯です。
人間が咀嚼する時は、顎を縦方法だけでなく、横方向にも動かしています。
しかし奥歯は歯ぐきに埋もれている部分が短く、横方向の動きには弱いのが特徴です。
犬歯は奥歯に加わる横方向の力を分散して、過度な負担を和らげる役割があります。
噛み合わせが良ければ、奥歯が長持ちして、年齢を重ねても残りやすくしてくれるのです。
あごを正しい位置に保つ
犬歯がサポート役としての機能を果たせなければ、痛みや口が開かなくなる症状が現れる顎関節症になる可能性があります。
噛み合わせが悪いと、下顎がずれてしまい、顎関節に負担を強いる原因になるためです。
犬歯が前に飛び足している状態(八重歯)の場合、犬歯が噛み合わずに、役割を果たせなくなるのが原因です。
犬歯は噛み合わせによって奥歯を保護し、顎のずれを予防する大切な役割があります。
尖った犬歯の治し方と費用・期間
尖った犬歯の治療方法は矯正治療と修復治療の2つあります。
それぞれのメリットやデメリット、必要な費用に合わせて選ぶのがおすすめです。
詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
矯正治療
主な矯正治療の方法は以下の3通りです。
- マウスピース矯正
- ワイヤー矯正
- 裏側矯正
マウスピース矯正は適用できる症例が限られているものの、取り外しができて費用が低く済む点がメリットです。
使用するマウスピースの形状を徐々に変えて、犬歯を矯正します。
矯正に使用される治療はコンピュータシミュレーション型と毎回型取り型の2種類があるため、予算や虫歯の有無に合わせて選びましょう。
コンピュータシミュレーション型では歯の移動過程に合わせたマウスピースをまとめて作成します。
費用が20~85万円で通院回数が少ないのが特徴です。
一方、毎回型取り型は歯の移動に合わせて、通院のたびにマウスピースを作り直します。
矯正中も虫歯治療が可能で、費用は25~50万円と低めです。
ワイヤー矯正では歯の表面にワイヤーを渡して治療します。
ワイヤーを通すためのブラケットを歯に設置する必要がありますが、幅広い症例に対応できるのがメリットです。
ブラケットは金属製の他にも透明色があり、白色のワイヤーと合わせると目立ちにくくなります。
矯正力が高いのが特徴の1つですが、その分痛みを感じやすいのがデメリットです。
ワイヤー矯正の一種に裏側矯正があります。
これは舌側矯正とも呼ばれており、矯正に使うブラケットやワイヤーを、歯の裏側に装着するのが特徴です。
多くの費用と時間が必要で、慣れるまでは喋りにくい点がネックですが、外から見てもわかりません。
接客業なら、歯の矯正と仕事の両立がしやすくなります。
修復治療
修復治療は、すり減った犬歯に対して、金属やプラスチック素材を用いて元通りの形にする治療法です。
虫歯になった歯の、削った後に埋めて被せものをする様子をイメージして頂けるとわかりやすいのではないでしょうか。
犬歯の修復に使用される素材は非金属系素材の「コンポジットレジン」と金属系素材の「メタルインレー」の2種類です。
コンポジットレジンは金属アレルギーの心配がない素材のため、安全性に優れています。
しかし割れやすいというデメリットもある素材です。
メタルインレーはいわゆる銀歯であり、強度が優れていて、長年の使用に向いています。
しかし、金属のため噛み合う歯を痛める可能性があり、さらに見た目が悪いと感じる人もいるでしょう。
費用については、検査の方法や使用する素材が歯科医院によって違いがあるため、目安となる金額はありません。
犬歯の修復治療に関する費用について詳しく知りたい場合は、歯科医院に電話で問い合わせるのが確実です。
同時に犬歯の修復手順についても尋ねられる機会になるため、治療前の不安も和らぎます。
犬歯の矯正の効果
犬歯の治療は費用も時間も必要です。
しかし、治療にはそれだけの価値があるのか、と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで犬歯の矯正がどのようなメリットをもたらすのか、得られる効果を紹介します。
好印象になる
歯並びの悪さは人の印象を左右するものです。
笑った時に尖った犬歯が見えると人によってはあまり良い印象を持たないということもあり得ます。
しかし犬歯を治療して歯並びが整えば、笑顔を向けた相手に「明るい・清潔感」などの好印象を与えられるでしょう。
ショップ店員や飲食店など、お客様に対して笑顔を向ける機会が多い方なら、特にメリットが大きくなります。
虫歯や歯周病のリスクが減る
犬歯の歯並びが悪く、尖っている方に多く見られるのが犬歯の虫歯や歯周病です。
生える角度が違えば、両脇の歯との隙間が埋まってしまい、磨き残しの原因になります。
磨き残しがあれば、虫歯や歯周病の原因となるため、虫歯や歯周病につながるのです。
犬歯の矯正治療によって歯並びが整えば、歯磨き後の磨き残しが減り、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。
虫歯や歯周病のリスク減少は口臭対策にもなり、一石二鳥です。
噛み合わせが良くなる
犬歯があるべき位置に戻れば、食べ物を噛み切りやすくなります。いわゆる噛み合わせが良くなった状態です。
しっかり噛み切れれば、奥歯の負担が減って、口に入れた食べ物をより細かくできます。
これによって消化器官への負担を減らすことができ、体全体の健康維持にもつながるのです。
尖った犬歯が気になったら信頼できる歯科医に相談を
尖った犬歯は見た目だけでなく、健康にも被害を与える可能性があります。
顎関節症もいい例ですが、虫歯になった状態で放置すると、激しい痛みを伴う骨髄炎を発症するリスクもあります。
尖った犬歯が気になるのであれば、早々に歯科医師に相談し、治療に取り組みましょう。
まとめ
今回は尖った犬歯の治療について紹介しました。
犬歯の治療は必ず必要という訳ではありませんが、尖った犬歯は奥歯や顎に負担をかけてしまうことがあります。
その場合には治療がおすすめです。
犬歯の治療方法としては矯正と修復の2種類があります。
どの治療方法が自分に合っているのかは、専門の歯科医師に相談して決めることで後悔のない治療ができるでしょう。
尖った犬歯で悩んでいる方は、ぜひ歯科医師に相談してみてください。