【監修:青山健一】
目 次
歯並びがデコボコでお悩み方は多いのではないでしょうか。
デコボコの歯並びのことを叢生といい、見た目が良くないだけでなくお口の中の環境に様々な影響を及ぼします。
叢生を治療するためには歯列矯正が有効ですが、治療法や費用など不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
今回は、叢生の原因や治療法について、費用を交えて詳しく解説していきます。
叢生は日本人の不正咬合で最も多い
叢生という言葉を使うと難しく感じるかもしれませんが、簡単にいうと「デコボコの歯並び」です。
歯が重なっている八重歯も、この叢生に含まれます。
そして、程度の差はありますが、日本人の不正咬合の中で多いのが叢生です。
それだけ叢生で悩んでいる方は多く、治療を検討される方も少なくありません。
また、不正咬合の中で叢生が多いということは、様々な症例に対応してきた歯科医がいるということでもあります。
叢生の問題点
歯列が整っていない叢生は、決して良い歯並びとはいえません。
日本人に多い叢生ですが、デコボコの歯並びの状態には様々な問題点があるのです。
ここでは叢生の問題点を4つご紹介します。
虫歯や歯周病になりやすい
叢生の問題点として、虫歯や歯周病になりやすいことがあげられます。
歯並びがデコボコの状態ということは、しっかり歯磨きをしているつもりでも磨き残しが生じやすいからです。
歯間ブラシやフロスなどで汚れを取り除かないと、歯磨きだけではキレイにならない歯並びも少なくありません。
また、歯が重なっている部分はどうしても汚れがたまりやすく、虫歯を繰り返すケースがあります。
汚れをしっかりと取り除くことができず、歯周病になりやすいのも特徴です。
口臭の原因になる
叢生は口臭の原因になることもあり、日常生活を送る中で問題点といえます。
先ほどお伝えしたように、叢生は十分な歯磨きができないことが多いです。
歯と歯の間に汚れが残ってしまうリスクが高く、これが口臭の原因となります。
また虫歯や歯周病も口臭を引き起こすことになり、そのような状態では通常のブラッシングだけでは改善が困難です。
咀嚼効率が悪い
歯並びがデコボコの状態では、上下の歯が噛み合わず咀嚼効率が悪くなることがあります。
「食べるのが遅い」と悩んでいらっしゃる方の中には、実は叢生が原因だったというケースもあるのです。
さらに、しっかり咀嚼をせずに食べ物を飲み込んでしまい、消化が悪く内臓に負担をかけることもあります。
審美的にマイナスな影響を持つ
叢生は審美的にマイナスな影響を持つという問題点があります。
デコボコの歯並びという表現で想像がつくように、叢生は決して美しい歯並びとはいえません。
人と話しているときや笑ったときなど、歯は人に見えやすく印象を左右するものでもあります。
人の見た目のイメージを左右する歯並びだからこそ、デコボコであることにマイナスな影響を及ぼすのです。
叢生の原因
なぜ歯並びがデコボコになってしまうのか、その原因が気になる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは叢生の代表的な原因について解説していきます。
先天的要因
叢生の原因の1つとして先天的要因があり、その代表的なものが顎の大きさです。
上下の顎は歯の受け皿のような存在であり、顎の大きさと歯並びには大きな関連があります。
顎が大きすぎたり小さすぎたりすると、歯列とのバランスが取れずに叢生になってしまうのです。
反対に、顎の大きさに問題がなくても、歯の大きさが標準より大きかったり小さかったりすると叢生になることがあります。
歯の生え変わり期の要因
乳歯から永久歯への生え変わり期の要因によって、叢生になるケースも少なくありません。
歯の生え変わり期の要因で叢生になるケースには、以下のようなものがあります。
- 永久歯が生える準備ができる前に乳歯が抜ける
- 永久歯が生えかけているが乳歯が抜けない
乳歯から永久歯への生え変わり期はとても重要で、この流れが上手くいかないことで叢生のリスクを高めます。
叢生を防ぐためには、乳歯と永久歯の生え変わりをスムーズに進める必要があるのです。
生え変わりの時期は「永久歯が生えてこないけど大丈夫?」「乳歯がなかなか抜けない」など、不安を抱える方も多くいらっしゃいます。
この時期のトラブルが将来の歯並びに影響を与えることがありますので、不安があれば歯科医に相談することが大切です。
生活の要因
食習慣や生活習慣も、叢生の原因となることがあります。
例えば、柔らかいものを食べる習慣による顎の未発達や、舌で歯を押す癖といった習慣です。
また、何気なくやってしまう口呼吸や頬杖も、叢生を引き起こすリスクがあるため注意しましょう。
叢生の治療法
叢生に対してどのような治療法があるのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
デコボコの歯並びを治すにはいくつかの種類がありますので、代表的な治療法をご紹介します。
部分矯正
部分矯正は、気になるところを部分的に矯正する治療法です。
特に人に見られることの多い前歯に対して部分矯正が選ばれています。
ただし希望すれば必ず治療ができる訳ではありません。
例えば全体的に歯並びがデコボコになっている場合や、噛み合わせが悪い場合などは部分矯正では治療困難なケースもあるのです。
非抜歯の全体矯正
叢生の治療には、お口の中の歯列全体を整える全体矯正という方法があります。
部分矯正は気になるところを治療しますが、全体矯正は噛み合わせを含めた全体的な治療です。
歯並びのデコボコがひどい場合、歯列を整えようとしてもスペースの確保が難しいケースがあります。
そこで全体矯正は抜歯を伴うケースもあるのですが、できれば抜歯をしたくないという患者様もいらっしゃいます。
抜いてしまった歯は再び生えてくることも、元に戻すこともできません。
抜歯をすることによるデメリットも少なからずあるため、抜歯をしない全体矯正という方法が増えてきました。
例えば歯列を側方に広げる方法や、歯の表面にやすりをかけて歯と歯の間に隙間をつくる方法があります。
しかし、非抜歯矯正をやっている医院が少ないことと、非抜歯矯正を行なっているクリニックのレベルにも大きな違いがある事は知っておいてください。
抜歯する全体矯正
先ほどお伝えしたように、全体矯正ではスペース確保のために抜歯をすることがあります。
歯が前後に並んだり重なったりしている重度の叢生では、抜歯をしてスペースを確保することも少なくありません。
全体矯正で抜歯をする場合、左右の第1小臼歯を抜くケースが多いです。
第1小臼歯は歯の中央から4番目の歯で、犬歯の隣に位置します。
また、親知らずが横向きに生えている場合は、これ自体が歯並びに影響を及ぼしかねません。
そのため、親知らずを抜歯して他の歯に負荷がかからないようにします。
様々な矯正方法と費用・治療期間
ここまで叢生の治療法について、3種類の矯正方法をご紹介しました。
様々な矯正方法がある中で、費用や治療期間が気になるという方も多いのではないでしょうか。
治療を受けるにあたり、費用はどれくらいかかるのか、どれくらいの期間要するのかは重要なポイントです。
まず、費用の目安をそれぞれご紹介します。
- 部分矯正:20~60万円
- 全体矯正(非抜歯・抜歯):80~140万円
全体矯正は歯の動かし易さによって費用が大きく変わり、抜歯の有無によっても異なります。
また、ワイヤー矯正の場合は矯正装置を歯の表側・裏側のどちらにつけるかによって、費用が異なるのが特徴です。
一般的に、裏側に装置をつける裏側矯正の方が費用は高くなります。
次に治療期間についてはこちらです。
- 部分矯正:数か月~半年
- 全体矯正(非抜歯):1年~3年
- 全体矯正(抜歯):2年~3年
部分矯正は、動かす歯の本数が少ない分、全体矯正よりも治療期間が短くなります。
全体矯正は非抜歯と抜歯で治療期間が異なる場合があるのが特徴です。
非抜歯の全体矯正は1年半~3年とお伝えしていますが、矯正の難易度が易しい場合は1年で完了することもあります。
どの矯正方法でも、治療を開始すると長い間装置をつけ続けることになります。
そのため、費用や治療期間について理解したうえで、矯正治療を開始するようにしてください。
叢生の予防方法
永久歯がデコボコの歯並びになると、治すためには矯正治療しかありません。
そのため、できるだけ早い段階で叢生を予防したいという方も多いでしょう。
また歯は何らかの負荷がかかることで動くこともあります。
つまり、意識することで叢生の悪化を防ぐこともできれば、さらに歯並びを悪くしてしまうこともあるのです。
そんな叢生の予防方法として、以下のことをおすすめします。
- 固いものを食べる
- 咀嚼をしっかりとする
- 鼻呼吸をする
- 姿勢を正しくする
- 頬杖をつかない
- 舌で歯を押さない
乳歯から永久歯に生え変わる頃の予防方法は、原因のところでお伝えした通りです。
永久歯に生え変わってからの予防方法は、上記から分かるように日常生活における習慣と関連していることです。
歯並びに影響を及ぼす口呼吸や姿勢の悪さ、そして舌癖は意識して改善するようにしましょう。
叢生をしっかり治すなら
叢生を予防することや悪化させないことはできますが、日常生活の見直しによってデコボコの歯並びを治すことは困難です。
もし叢生をしっかりと治したいと考えるのであれば、矯正治療を受けることを検討しましょう。
そのためには、まず矯正治療を行っている歯科医院を受診しなければなりません。
どの歯科医院がいいか迷う方も多いですが、実績や経験が豊富な歯科医院をおすすめします。
実績や経験が豊富な歯科医院なら、様々な叢生を治療しているはずです。
部分矯正や非抜歯の全体矯正にも対応できる可能性がありますので、まずは相談してみることをおすすめします。
まとめ
今回は日本人の不正咬合の中でも数多い叢生について解説しました。
デコボコの歯並びである叢生は、コンプレックスに感じ悩む方も少なくありません。
また、見た目だけでなく虫歯や口臭のリスクがあるのも問題です。
叢生の治療には部分矯正や全体矯正など様々な治療方法があり、費用や治療期間は患者様の歯並びの状態によって異なります。
気になることは信頼できる歯科医に相談して、理想の歯並びを手に入れてください。