子供の床矯正で知っておきたいことを医師が解説|床矯正の費用や特徴・注意点もご紹介

【監修:青山健一】

子供の床矯正で知っておきたいことを医師が解説|床矯正の費用や特徴・注意点もご紹介

子供をかかりつけの病院へ連れて行った際に歯科医から床矯正について打診されたという保護者の方が多いです。
いきなり打診されても矯正に関する知識が不足していたり費用がネックだったりと色々不安になってしまうものです。中には治療を急かされている、といった方も多くいます。

しかし、歯の矯正は子供の今後の生活に大きく関わってくるものです。安易に決めては後々トラブルに繋がる場合もあります。
それを防ぐために床矯正についての知識はある程度もっておきたいものです。今回はそんな保護者の方に子供の床矯正の費用や特徴、メリットなど詳しく紹介します。

床矯正の特徴

床矯正の特徴

床矯正とは入れ歯のように床がある装置を使い、顎のスペースを広げて凸凹した歯並びを矯正する取り外し可能な矯正治療です。
1期治療ともよばれており、6歳11歳が治療する時期として望ましいとされています。

大人でも治療できる矯正方法ですが、顎の発育が活発な幼少期に行った方が効果が得られやすいとされていることから、歯科医から床矯正を奨められることも珍しくありません。
床矯正の治療は、緩徐拡大装置急速拡大装置といった装置を使用して行います。

レジンで作られているプレート状の床にスクリューやスプリングなどが埋め込まれており、スクリュー部分を回して器具の形状を変化させます。
そして顎の横幅を広げて歯を外側へ傾斜移動させ、正しい位置に配置するようにする仕組みです。

ただし、効果を得られるかどうかは子供によって個人差があるため、必ずしも効果が得られるというわけではありません。床矯正だけでは矯正しきれないことはよくあることです。
歯並びの細かな調整や歯の位置を大幅に移動させるなど通常の矯正治療のようなものはできません。

そのため、大体の歯科医は床矯正(一期治療)後にワイヤー矯正やマウスピース矯正などの二期治療を治療方針に盛り込んでいます。

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床矯正を子供のうちに行うメリット

床矯正を子供のうちに行うメリット

床矯正は手入れがしやすく、費用が抑えられるというメリットがありますが、他にも通常の矯正治療と大きく違う下記3つのメリットが挙げられます。

抜歯せずに矯正できる

抜歯せずに矯正できる

通常の歯列矯正では抜歯が必要となるケースがありますが、床矯正は抜歯せずに矯正できます。
成人した後など将来的に歯の矯正が必要となった際に、床矯正をしておくことで抜歯をしなくても矯正できるケースがあります。

永久歯が生えそろってある程度顎が成長した状態だと、顎に歯を整列させるスペースがないケースが多いです。
そういった場合に抜歯という措置をとることがあります。また、上下の顎の位置が正常な位置でない場合も抜歯という措置をとることが多いです。

もちろん抜歯の有無はそのときの歯の状態や人によって変わります。
幼少期に床矯正することで、ある程度顎が発達した年齢に矯正する場合に大掛かりな治療を回避することが可能です。

取り外しが自由にできる

床矯正の最大の特徴ともいえるのが取り外し可能なところです。通常の歯列矯正は歯の表面や裏側に固定することが殆どのため、取り外しができません。
しかし、床矯正は歯磨きのときや音楽の授業のような矯正器具を装着しているとやりづらいとき、食事をとるときに外すことが可能です。

取り外しが可能なことでしっかりとした手入れもできるため、口内を清潔に保て虫歯や歯周病などの心配もありません。
また、通常の矯正治療では矯正装置が目立つため見た目を気にする子供が多いですが、床矯正の矯正器具は目立たないというメリットもあります。

一方で床矯正はマウスピースと同様に装着時間が決まっています。頻繁に外してしまうと改善がみられず治療期間が長くなることもあるため、外しすぎには注意が必要です。

痛みがほとんどない

通常の矯正は矯正器具が頬にあたったり、矯正により歯が動くことで痛みが生じます。
痛みといっても常に続くわけではなく、食事をとる際や噛むときなど歯に力がかかると痛むことが多いです。一方、床矯正はそういった痛みがなく無理なく矯正できます。

床矯正のデメリット

床矯正のデメリット

床矯正はメリットだけではありません。デメリットは下記3つあります。

後戻りする可能性がある

床矯正は人にもよりますが、後戻りしやすい傾向にあります。先ほど少し触れましたが、歯の細かな調整を行える治療方法ではないためです。
確実に調整するには、通常の矯正治療に切り替える必要があります。床矯正を検討している場合はそのことを念頭に置いてから決めるのがおすすめです。

装着時間を自己管理する必要がある

装着時間を自己管理する必要がある

床矯正は装着時間が定められており、1日8時間以上装着している必要があります。これを守らないと歯並びは改善せず、治療期間が長くなってしまうのです。
特に床矯正は矯正器具を取外しできるため、子供が邪魔だから、違和感があって嫌だといった理由で外してしまうことも考えられます。
こういったことを防ぐために、しっかりと装着時間を守るためのルールを設けるなどの工夫が必要です。

噛み合わせが悪くなる場合がある

床矯正は、顎を広げて歯並びを整える方法ですが、場合によっては歯が斜めに広がってしまうトラブルもみられます。
上顎の骨自体が動くわけではないため、拡大されずに元の歯並びよりも悪化してしまうケースがあるため注意が必要です。

こうしたトラブルによって、歯並びを整えるはずが逆に噛み合わせが悪化してしまう場合もあります。
経験のある歯科医は通常の矯正の補助として床矯正を取り入れることが多いです。

子供の床矯正を行う最適なタイミング

子供の床矯正を行う最適なタイミング

顎の発育が活発なのは4歳~12歳といわれています。
序盤でも触れましたが、大体床矯正を始めるのであれば6歳11歳が望ましいといわれています。
3歳くらいから始められるという方もいますが、あまり早くから矯正をし始めてもトラブルに繋がったり逆効果である場合も多いです。

また、これまでにきちんと検査をしないまま治療を開始されてしまうケースもあり、後々トラブルの原因になることも多いです。
経験の浅い一般歯科医による判断で頭部のX線検査をせず装置を取りつけられたり、必要のない抜歯をされたりと余計な治療をされて悪化したケースも中にはあります。

矯正専門の歯科医がいる病院を選ぶなど、病院選びも慎重に行いましょう。
最近では治療を急かされるケースもあるため、信頼できないなと感じた場合はセカンドオピニオンを視野に入れておくことをおすすめします。

床矯正の費用相場

床矯正の費用相場

床矯正は通常の矯正治療に比べて費用が安いです。初診相談・カウンセリングは無料~約5000円、精密検査・診断料は無料~約5万ほどになります。
歯科治療スタート前のトータル費用は無料~約5万5000円ほどです。
これらの費用は歯科医院によって、矯正の治療費に含まれるケースもあるため受診予定の歯科医院に確認しておくことをおすすめします。

また、最近ではカウンセリングは無料という病院もあります。床矯正治療には約10万円40万円、一装置につき約3万円5万円ほどです。
治療費に関しては子供の歯の状態や病院によって費用は異なるため、相談した際にしっかり確認しておくと良いです。

床矯正を子供に受けさせる際の注意点

床矯正を子供に受けさせる際の注意点

床矯正を子供に受けさせるのであれば、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
以下4つの注意点があります。治療を検討している場合はこれらの注意点を踏まえて決めるのがおすすめです。

必ず歯並びがきれいになるとは限らない

先ほども説明しましたが、床矯正をしたからといって必ず歯並びがきれいになるとは限りません。
これは、人によって骨格や顎の成長状態も異なるためです。床矯正で一時的にきれいになっても戻ってしまったり、床矯正だけでは歯並びが整わなかったりするケースもあります。

出っ歯になってしまう可能性がある

出っ歯になってしまう可能性がある

床矯正は歯を外側に傾斜移動させて歯列を拡大し、歯並びを整える手法です。
そのため、人によっては歯のみが外側に傾斜してしまうことで出っ歯になり口元を突出させてしまった事例もあります。

顎の発達具合で治療期間が変動する

顎の発達は人によって異なるものです。
床矯正にかかる期間は最短で1年で終わるケースもありますが、最長になると4、5かかってしまうこともあります。
治療期間が長くなるほど子供への負担や費用面での負担も大きいです。

また、床矯正後にワイヤー矯正などを行う場合が多いため、さらに治療期間が長引く可能性があります。ワイヤー矯正では11歳以上が1年半~2年半の期間を要します。

顎の骨格自体を広げる治療ではない

床矯正は顎の骨格自体を広げるものではなく、あくまで歯を外側に傾斜させる治療方法です。
顎の骨格そのものが変わるわけではないため顎に問題がある場合や歯が凸凹し過ぎている、出っ歯などの場合、床矯正以外のそれぞれの治療が必要になります。
床矯正については病院や担当歯科医によって対応が変わってくるため、主治医としっかりと相談しておくのが重要です。

床矯正を子供に受けさせるか悩んでいるなら歯科医院に相談

床矯正を子供に受けさせるか悩んでいるなら歯科医院に相談

床矯正は簡単に判断できるものではありません。床矯正では矯正後にさまざまなトラブルに繋がることも多いです。
歯の生え替わりの途中で矯正治療を開始すると、顎の成長が止まった際に歯列に歯が並びきらず、結局抜歯して広げた歯列を縮める必要が出てくるケースもあります。

矯正治療によって歯並びや噛み合わせが悪化して、子供の今後の人生に影響が出る恐れがあります。
悩んでいるのであれば、一度かかりつけや受診予定の歯科医に相談するのがおすすめです。

相談する際には上記のようなリスクなど、気になっている部分や決めかねている理由を明確にして伝えることをおすすめします。
床矯正に最適な時期は6歳~11歳のため、そこまで急ぐ必要はありません。医師としっかり相談した上で慎重に決めて対処するのがおすすめです。

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まとめ

まとめ

床矯正は通常の矯正より費用面でも手軽です。
そのため、歯科医に奨められるがまま安易に治療を決めてしまう親御さんも多く結果、子供の歯の矯正に失敗してしまうケースも多くあります。
歯は子供の今後の人生において大切なものです。

一度の失敗で今後の生活に支障をきたす恐れもあり、失敗した部分をまた矯正して治すといっても完全に元に戻るわけでもありません。
床矯正は必ずしもしなければいけないものではないため、しっかり歯科医と相談して治療する必要があるかどうか決めてあげることをおすすめします。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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