【監修:青山健一】
目 次
子供の矯正治療で抜歯をするかどうかは気になるポイントだと思います。健康な歯を抜くことには抵抗があり、できれば抜きたくないと考えるのは当然です。
しかし、抜歯をしないと治療が上手くいかなくて後悔をしてしまうケースもあるため、難しいところだと思います。
そこで今回は子供の矯正での抜歯について紹介していきます。
子供の矯正を行うタイミング
子供の矯正治療を行うタイミングは3歳から12歳くらいの乳歯が永久歯に生え変わるまでと、中学性から高校生の永久歯が生えそろったタイミングが一般的です。
3歳から12歳までの治療時期を「一期治療」と呼び、まだ生え変わっていない永久歯を正しい位置に誘導したり上下の顎の状態を整えて理想的な歯並びを作れる治療を行います。
中学生から高校生までの治療時期を「二期治療」と呼び、生えそろった永久歯の歯並びを改善していく治療を行ないます。
成長期が止まってからの治療のため、基本的には大人の歯列矯正と治療法は同じです。
治療は早いほうが効果的なイメージがある歯列矯正ですが、症状によっては一期治療では治療の必要がない場合があります。
子供の歯並びが気になる人は早めに歯科医に相談をして、一番効果的なタイミングで治療を進めていきましょう。
子供の矯正で抜歯後によくある症状
抜歯はあまりよいイメージを持たれていないことが多いですが、歯があごに収まりきらず歯並びが悪い場合は、スペースを作るのに有効な方法です。
また、抜歯をしないことにこだわりすぎると矯正治療中に歯並びが戻ってしまう「後戻り」が起きる可能性があるため、必要な場合は抜歯も検討していきましょう。
ここでは子供の矯正で抜歯後によくある症状について紹介していきます。
顎関節症
顎関節症とは顎関節に痛みが生じたり口が開けづらかったり、口を開くときに音が鳴るなどが一般的な症状です。
これにより強く噛めなかったり、大きな食べ物がたべられないなどのストレスを感じる人も少なくありません。
抜歯をするとしばらくの間違和感や痛みがあり、歯磨きをしなかったり無理に口を開いたりしてしまうことがあります。
その結果炎症が悪化し、筋肉が硬くなって顎関節症になってしまうケースがあります。
そのため、抜歯後に痛みがあるときこそ適切なケアが必要です。歯科医の指示をしっかりと聞いて顎関節症にならないように注意しましょう。
一時的な頭痛・肩こり
抜歯をすることで炎症が起こります。炎症は傷を治そうとしたときに起きる症状で発熱・発赤・腫脹・疼痛・機能障害といった兆候があります。
抜歯後の発熱や肩こりは炎症が要因で、誰でも起こり得ることです。抗生剤や消炎剤などを服用して安静にしていれば回復していくため、心配はいりません。
しかし、体調不良などの場合は服用を控えましょう。体に副作用が起きたり薬が体に合わないことも考えられるため、薬を服用する場合には注意が必要です。
薬を服用する前には歯科医に相談をしてから治療を進めましょう。
噛む力が落ちる
抜歯は今まであった歯が無くなるということであるため、噛む力が落ちます。例えば奥歯であれば、噛む力は30%~40%も低下するといわれています。
さらに抜歯後の痛みで強く噛むことができなくなってしまうため、抜歯後は今まで通りの食事がとりにくく、ストレスを溜めてしまいがちです。
歯によっては食べ物をしっかりと噛み砕くことができなくなるため、胃腸の負担にもつながってしまいます。
子供であればそこまで負担にはならないかもしれませんが、念のため注意しましょう。
抜歯後は噛む力が落ちることを考慮しながら生活をしていく必要があります。
子供の矯正で抜歯が必要な場合
子供に限らず、矯正治療をしていく中で抜歯をしなくて済むなら、できればしたくないと考える人は少なくありません。
特に親の立場であれば健康な歯を抜くことには抵抗があり、わが子に痛みを伴う治療はできれば避けたいと考えると思います。
しかし、矯正治療を進めていく上で抜歯をしたほうがスムーズに治療できるケースが多くあるのも事実です。今回は代表的な2つの理由について紹介していきます。
歯を並べるスペースが足りない
顎に十分な広さがないと歯を並べるスペースが足りなくなってしまいます。そうなると歯並びをキレイにするために整列させることが難しくなり、歯列矯正ができません。
歯を並べるスペースが足りれば歯を移動したり歯を削るなどしてスペースを確保し、歯列矯正を進めていくことが可能です。
しかし十分なスペースがない状態で無理に抜歯をせずに治療を進めていくと、噛み合わせに支障がでたり歯茎が下がるなどのトラブルにつながります。
あらかじめ歯科医にあごの広さや歯の状態を確認してもらい、治療の方法を検討しておきましょう。
口を自然に閉じることができない
上あごと下あごの噛み合わせが悪い場合、抜歯をせずに治療を進めると歯並びがよくならず、口を自然に閉じることができなくなってしまいます。
特に、無理矢理治療を進めると最悪外科手術が必要になってしまうため注意が必要です。
抜歯によって歯を大きく移動させることができればあごの噛み合わせは改善できるため、早めに歯科医に相談をして治療を進めていきましょう。
子供の矯正で抜歯をしない方法
ここまで抜歯の必要性や抜歯を行う理由について紹介してきましたが、それでも子供には抜歯をせずに矯正治療を受けさせたいと考える親御さんもいると思います。
矯正治療の中には抜歯をせずに治療を進めていく方法もあるため、治療を開始する前にさまざまな治療法の説明を歯科医に聞いておきましょう。
ここでは抜歯を必要としない矯正治療について紹介していきます。
床矯正
床矯正(しょうきょうせい)とは歯列を広げることで歯を動かすスペースを作り、抜歯をせずとも歯列矯正がおこなえる治療法です。
子供のうちはあごの骨が柔らかく成長の見込みがあるため、装置で歯列を拡大して歯列を整えていきます。
この治療法は抜歯をせずに治療ができるというメリットがありますが、症状によっては治療できない場合もあります。
あらかじめ歯科医に相談した上で治療を進めていきましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着することで歯を動かしていく矯正方法です。この治療法の特徴は、目立たず治療を進めることができるという点です。
また、簡単に取り外しができるため食事中はいつも通りの食事をとり、ストレスを軽減できます。
基本的には抜歯をしなくても治療が可能ですが、症状によっては抜歯を必要とする場合もあります。
使用するかどうかは歯科医に相談しましょう。
子供の非抜歯矯正でよくある誤解
一般的に、矯正治療は抜歯をして治療を進めることが当たり前とされてきました。
そのため過去の経験から抜歯に抵抗があり、子供の治療を決断できずに矯正治療のタイミングを逃す人も少なくありません。
しかし子供の歯列矯正は大人に比べて歯が動かしやすいため、非抜歯矯正で対応できる場合もあります。
子供の歯並びが気になる人は早めに歯科医に相談することで、抜歯をしない治療を選択できる可能性があります。
子供の矯正治療で後悔しないためのポイント
子供の歯並びは親にとってとても気になるポイントだと思います。しかし、慌てて行うことで思っていた仕上がりにならなかったり、期間が延びて後悔することがあります。
歯並びが悪いと子供はさまざまな原因で苦しむことがあるため、しっかりと検討をした上で治療を進めていかなければなりません。
ここでは子供の歯列矯正で後悔しないためのポイントを3つ紹介していきます。
実績のある歯科医院を選ぶ
歯列矯正を成功させる際に重要なポイントは、実績のある歯科医院に依頼をすることです。
歯列矯正は一般の歯科医院とは違うため、しっかりと吟味した上で歯科医院を決める必要があります。
1つの選択基準としては、矯正治療の症例数が多いクリニックが安心です。
2つ目の選択基準としては、Googleなどの口コミを参考にするのがお勧めです。その際には、良い口コミよりも悪い口コミを読んで、その口コミの内容が受け入れられるものかどうかで判断するのがいいと思います。
さらに対応実績も確認してから信頼できる歯科医に依頼をすることで、安心して治療を進められます。
しっかりと検査をしてもらう
実績のある歯科医院を見つけることができたら、予約をして初診相談をします。このとき、要望がある場合は伝えておきましょう。
そして治療前に治療計画用に検査を受けますが、このときにしっかりと検査をしてもらう必要があります。
この検査で説明が理解できなかったり、検査をしっかりやってくれないと感じた場合は治療を考え直して別の歯科医院に相談してみましょう。
しっかりと検査をして親身になってくれる歯科医院を探すことが重要です。
子供の矯正治療での抜歯を後悔しないために
矯正治療は歯並びや噛み合わせを改善させるために受ける治療です。抜歯や非抜歯にこだわることで歯列矯正が上手くいかないと本末転倒となってしまいます。
子供の矯正治療での抜歯で後悔をしないためにも、治療前は納得がいくまで歯科医と話し合い、治療計画を理解した上で治療を進めていきましょう。
まとめ
今回紹介したように、できれば非抜歯で矯正できれば理想ですが、どうしても抜歯が必要であれば、抜歯をするのも仕方ないでしょう。
そのために、歯列矯正を始める前はしっかりと検査を行ない、歯科医と治療計画について話し合った上で治療を進めていきましょう。
また、歯列矯正は歯科医とともにゴールを目指さなければ治療を成功させることは難しいです。自分にとって選択で後悔のない矯正治療にしましょう。