【監修:青山健一】
目 次
人の歯の本数は基本決まっていて乳歯は20本・永久歯は28~32本ですが、通常の歯の本数より多く歯が生えてくるケースがあります。
通常よりも多く生えてくる歯のことを過剰歯と呼び、女性よりも男性に多く見られる現象です。
今回は過剰歯の原因について解説していきます。過剰歯の影響や治療方法についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
過剰歯の概要
過剰歯の概要について解説していきます。
過剰歯の特徴
通常生えてくる歯の数は乳歯であれば20本、永久歯であれば28~32本です。永久歯の数に幅があるのは親知らず4本が生えてこない場合もあるためです。
過剰歯は、この数以上に生えてきた歯を指します。20~40人に1人の割合で見つかる現象でありとりわけ珍しいことではありません。
過剰歯として生えてくるのはほとんどが永久歯で、生えてくる場所で多いのが上あごの前歯の間と上下の親知らずの後ろです。
歯の生えるスペースは決まっており、本来生えてくる本数の歯で基本的にはスペースが埋まってしまいます。そのため、過剰歯が生えてくると通常の歯列を圧迫し歯並びが悪くなる原因となるのです。
過剰歯に気づくのは子供の時に乳歯から永久歯に生え変わる時が多く、乳歯が抜けたのに永久歯が半年以上生えてこない場合に気づくケースがあります。
これは、過剰歯の影響で正常な永久歯が成長できず生えてこないことが考えられるのです。また、前歯が大きく八の字で広がってしまう場合も過剰歯の影響が考えられます。
過剰歯の生えてくる場所が悪いと正常な永久歯の根本を溶かしてしまうこともあるため過剰歯は多くのケースで抜歯が必要になるのです。
発生頻度
過剰歯の発生頻度は3~5%ほどであり、女性よりも比較的男性に多く見られる症状です。数としては20~40人に1人の割合であり決して珍しいものではありません。
過剰歯が生えてくる箇所は上の前歯と奥歯に多く見られます。サイズは通常の歯と同じくらいの大きさのものからごく小さなものまでさまざまです。
過剰歯は大きく分けて2つの種類があり「順正」と「逆性」に分けられます。順正は通常の歯と同じ向きで生えてくるもので、逆性はあごの骨の中に埋まった形のものです。
逆性の状態だと骨に埋まっているため見た目では気づきづらくなっています。レントゲン写真で初めて気づく場合もあるため異変を感じたら歯科医に相談してみましょう。
過剰歯の原因は?
過剰歯の詳しい原因というのは実際のところまだ判明していません。
現在分かっている主な原因は、歯が作られる段階であごの骨の中に「歯胚」と呼ばれる歯の卵が作られ、これが余分に作られた時に起こると考えられています。
しかし、歯胚に異常が発生し分裂したり余分に作られたりする根本的な原因は現状解明されていません。
過剰歯発見のパターン
過剰歯を発見するパターンについてご紹介します。
自分で気づく
過剰歯の大きさはさまざまあり、大きなものであれば通常の歯と同じくらいの大きさで生えてきます。そのため、自分で過剰歯の存在に気付くことも可能です。
特に前歯の部分に生えてくる場合も多いため、目につく箇所に生えてきた場合には気づきやすくなります。
しかし、過剰歯には大きく分けて「順正」と「逆性」の2種類があり、逆性の場合は骨の中に埋没しているため気づきづらいです。
また、奥歯に生えてくるケースも見た目では気づきにくくなります。
過剰歯に気づくパターンとして、乳歯から永久歯に生え変わる時に乳歯が抜けたのにいつまでも永久歯が生えてこないケースが挙げられます。
通常の歯列を過剰歯が圧迫して永久歯が生えてこない可能性が考えられるため、異変を感じたら歯科医で診てもらうことがおすすめです。
受診時に指摘される
過剰歯は自分で気づく場合もありますが、歯茎に埋まっているものやごく小さなサイズのものは歯科医の受診時に気づくケースも多いです。
過剰歯の種類の1つである逆性過剰歯は、通常の歯とは異なる向きで生えてきます。そのため、歯茎に埋まっていることが多くそのまま生えてこない場合もあるのです。
その場合は、歯科医の受診時にレントゲン写真を使って初めて見つかるケースが多くなります。
過剰歯の存在には気づかなくても、永久歯がうまく生えてこないことや歯並びが極端に悪くなることで歯科医を受診して気づく場合もあります。
過剰歯が及ぼす他の歯への影響
過剰歯が及ぼす他の歯への影響について解説していきます。
永久歯の萌出を阻害
過剰歯があると、永久歯がうまく生えてこなくなる場合があります。
通常乳歯が抜けた際には、3ヶ月程で永久歯が生えてきますが過剰歯があると邪魔になり生え代わらなくなってしまうのです。
最悪のケースでは過剰歯が骨の中で埋まったまま成長してしまい、正常な永久歯の根本を溶かしてしまう可能性があります。
そうなると、永久歯の根本の組織を損傷させて神経が死んでしまうこともあるのです。
歯並びが悪くなる
過剰歯の影響で歯並びが悪くなることもあります。
過剰歯の多くは前歯と奥歯の箇所に生えてきますが、前歯の間に過剰歯ができると歯の間に隙間ができやすくなるのです。
本来永久歯が生えるスペースを過剰歯が圧迫することで、永久歯がまっすぐ生えてこれなくなってしまい歯並びが崩れやすくなります。
そのまま放置してしまうと永久歯に生え変わらない可能性があるため、早めに過剰歯を抜歯することが必要になるのです。
痛みが生じる
過剰歯があると痛みが生じるケースもあります。骨の中に埋まっている過剰歯が歯の神経を圧迫すると痛みが発生するのです。
正常な永久歯の神経を傷つけると、痛みが発生するだけでなく神経が死んでしまう可能性があります。
そうなった場合は正常に生えている永久歯を抜かなければならないこともあるのです。
歯の痛みは虫歯が原因のこともありますが、骨の中に過剰歯がある可能性も考えられるため早めに歯科医に診てもらいましょう。
過剰歯の治療方法
過剰歯の治療方法について解説していきます。
経過観察
過剰歯が見つかった場合でも他の歯に影響を及ぼしていない場合は経過観察になることもあります。
通常の歯と同様に生えてくるようであれば、多くのケースで抜歯しますが歯茎の内側深くに埋まっている場合もあるのです。
その場合他の歯の神経と接触しないようであれば経過観察になることがあります。
無理に抜歯しようとすると歯茎を深く切開しなければならず、かえって体に負担がかかってしまうからです。
しかし、経過観察となった場合でもその後神経に当たってしまう可能性もあるため定期的に医師の診断を受けることが重要になります。
抜歯
過剰歯が生えてきた場合、多くのケースで抜歯をして取り除きます。
歯の生えてくるスペースは決まっており、過剰歯が生えてきてしまうと通常の歯列を圧迫する可能性が高いです。
そうなると歯並びの乱れや永久歯が生えてこない原因となるため、通常過剰歯は抜歯します。
早期に抜歯が行えれば歯列に与える影響も少なくなるため、早い段階で処置することが重要です。
矯正治療
矯正治療を行う際にも過剰歯があると治療を進めることができません。また、過剰歯が通常の歯列を押し出すことで歯並びが乱れ矯正が必要になるケースもあります。
過剰歯は前歯に生えてくるケースが多く、生えてくる場所によっては前歯を押し出してしまい出っ歯になってしまうこともあるのです。
そうした場合には通常の矯正治療を行っただけでは根本的な原因が解決されないためきれいな歯並びになりません。
まずは、歯列に影響を与えている過剰歯を取り除いてから矯正治療を行います。
また、大人になって永久歯がすべて生えてきた状態で過剰歯を取り除く場合でも矯正治療が必要になるケースがあるのです。
過剰歯がある場合多くのケースで通常の歯列に影響を与え歯並びが乱れていることが多くなります。
過剰歯を抜歯するなど取り除いた後に、乱れた歯並びを矯正によって整えることが必要です。
子供の過剰歯は早めに治療することが大切
子供の過剰歯は早めに治療することが大切です。過剰歯を放置してしまうと最悪の場合、健康な永久歯を抜かなければならないケースがあります。
また、乳歯との生え変わりのタイミングで過剰歯が邪魔をして永久歯が生えてこないこともあるのです。
過剰歯は通常の歯と同じようにまっすぐ目に見える形で生えてくることもありますが、骨の中に埋まったまま出てこないこともあります。
その埋まった状態のまま他の歯の神経を圧迫して痛みが発生することもあるため、異変を感じたらすぐに歯科医に相談する必要があるのです。
早い段階で見つけることができれば、他の歯に与える影響も少なく問題なく治療することが可能になります。
過剰歯は放置せず信頼できる歯科医に相談しよう
過剰歯は単純に歯の数が多いというだけでは済ませられず、他の歯並びを圧迫してしまうことが多いです。
そのため、放置してしまうと隣接する歯に影響を与え歯並びが崩れることや永久歯を抜かなければならないケースがあります。
過剰歯について悩みがあれば信頼できる歯科医に相談することがおすすめです。
過剰歯は前歯に生えてくることも多いのですが、骨の中に埋まったままであることも珍しくありません。そうした場合では目視では見つけられずレントゲンでの診察が必要になります。
少しでも異変を感じたら歯科医の診察を受けて専門医の判断を仰ぎましょう。
まとめ
過剰歯はあまり馴染みのない言葉ではありますが、3~5%の確率で発症するもので特別珍しい症例ではありません。
過剰歯のまま放置してしまうと通常の歯列を圧迫し、最悪の場合健康な永久歯の神経が死んでしまう可能性もあるのです。
見た目では判断が付きづらい場合も少なくないため、少しでも異変を感じたら早めに歯科医に相談しましょう。