【監修:青山健一】
目 次
歯の矯正治療が終わって、歯並びが改善されてた後は保定期間があり、その間はリテーナーという保定装置を付けて過ごす必要があります。
実は、リテーナーは矯正後の歯の保定のために重要な役割を持っているのです。ところが、装置を付けるのが面倒くさくて、ついさぼってしまうという人もいます。
しかし、歯並びを保持するにはリテーナーは、さぼらずに装着することが大切なのです。
今回はリテーナーの役割や、さぼってしまうことで起こり得る問題について解説をしていきます。
リテーナーを付ける意味
リテーナーを付けることは、矯正後に大きな意味があるのです。まずは、リテーナーを装着する意味について解説していきます。
後戻りを防ぐために不可欠
矯正後にリテーナーを装着するのは、歯並びが後戻りをしてしまうのを防ぐためです。矯正治療は、歯を動かして歯列を整えていきます。
歯を動かした直後は歯の周りの骨が安定していません。そのため、矯正後に何もしないでいると歯は元の位置に戻ろうとします。これが後戻りです。
治療後は歯の骨が安定するまで、矯正後の状態を保持する必要があります。それがリテーナーの役割です。
また、リテーナーには噛み合わせを整えて、細かい調整をして、しっかり噛める歯にしていくという役割もあります。
必要な装着時間
リテーナーは長期間の装着が必要になります。期間は人によりますが1~3年…矯正と同じくらいの期間が目安です。
装着時間は矯正治療が終わった直後から、歯の状態がある程度安定するまでは1日20時間以上の装着が必要になります。
飲食の際は外しますが、それ以外の時間はリテーナーを付けっぱなしです。最初は、できるだけ長時間装着することが大切になります。
歯の状態がある程度安定したら、徐々に装着時間を短くしていくのです。2年目には夜間のみの装着になっていきます。
リテーナーをさぼったらどうなるか
リテーナーは、矯正後の後戻り防止のために長時間の装着が重要です。リテーナーを装着することをさぼってしまうと、問題が出てくる可能性があります。
リテーナーをさぼってしまうことで、どんな問題があるのかお話していきます。
治療直後は簡単に後戻りしてしまう
歯列矯正の治療が終わった直後は、歯を支えるための骨が固まっていません。そのため、矯正直後は歯が動きやすくなっています。
矯正が終わってすぐは半日~1日装着しないだけで、歯が動いて後戻りを始めてしまうのです。だからこそ、リテーナーの装着は重要です。
数日リテーナーの装着をさぼってしまうと、歯は簡単に後戻りをしてしまいます。
再装着が痛くなる
リテーナーの装着をさぼってしまうと、歯が動いてしまうため装置が歯に合わなくなってしまうのです。
そうなると、装着しない期間が続いた後に再度リテーナーを付けた際に痛みが出てしまいます。痛くて装着ができなくなってしまう可能性も出てくるのです。
少しキツイくらいなら、そのまま装着し続けることができます。しかし、痛くてはまらない場合は後戻りが進んでいる可能性があるのです。
装置の作り直しが必要になることも
リテーナーを装着しない期間が長くなってしまうと、歯の後戻りが進んでしまいます。
リテーナーをはめたときに、痛くてはまらない場合や浮いてしまう場合は、リテーナーの調整をしなければいけません。
場合によっては、リテーナーの作り直しが必要になります。どちらも有料になるため、余計な出費になってしまうのです。
後戻りが、かなり大きくなってしまった場合は、再矯正をする必要が出てきてしまうため、リテーナーの装着時間は守ることが重要になります。
リテーナーの正しい使い方
リテーナーには、取り外しができない固定式と取り外し可能なタイプがあります。取り外しが可能なタイプは自分で装着時間を管理する必要があるのです。
リテーナーは、付けるときは前歯から指で押してはめ込みます。外すときは奥歯からです。
歯で噛み合わせて押し込もうとすると装置の変形や、破損する可能性があるため指を使うようにして下さい。
さぼった後の対処法
リテーナーをさぼってしまうと、せっかく整えた歯列が元に戻ってしまう恐れがあります。そのため、さぼらずに装着することが重要です。
万が一装着し忘れてしまった場合や、長期間さぼってしまったときの対処法を紹介します。
以前通り装着できる場合
リテーナーを数日さぼってしまった場合は、まず歯に装着してみて下さい。
少しキツイと感じても普通に装着できる場合は、とりあえずは、そのままリテーナーを使用して大丈夫です。
リテーナーは、後戻りしかけた歯を正しい位置に修正する役割もあります。少しくらいの歯の動きであれば、リテーナーでリカバリーできることが多いです。
リテーナーをさぼってしまっても、装着ができた場合は、その後はさぼらずに装着するようにして下さい。
痛くて付けられなくなってしまった場合
リテーナーを装着してみたものの、痛くて付けられない場合や、奥まではまらずに浮いてしまう場合は、後戻りが進んでしまっている可能性が高いです。
この場合は、今あるリテーナーはもう合わなくなっています。そのため、歯科医でリテーナーの調整や作り直しをする必要が出てくるのです。
後戻りが大きい場合は、矯正自体をやり直す必要もあるため、早めに歯科医で歯の状態のチェックをしてもらうようにして下さい。
リテーナーのよくある悩みと対処法
リテーナーを使用している間には心配なことや疑問も出てくるものです。ここでは、よくある悩みについての対処法を紹介していきます。
飲食の際の装着
リテーナーを装着しているときの飲食は気になる人も多いです。
基本的に飲食の際はリテーナーは外して下さい。リテーナーを装着したまま硬いものを食べると、装置が変形してしまう可能性があります。
リテーナーを付けたまま食事をすると、食べかすや汚れがリテーナーと歯の隙間に入り込んで虫歯や口臭の原因になるのです。
飲み物は、ジュースなどの糖分や酸性の強いものでなければ、リテーナーを装着したまま飲んでも問題ありません。お茶や水、ブラックコーヒーなどは大丈夫です。
ただ、お茶やコーヒーは装置に色がつく可能性はあるため、気になる人はリテーナーを外して飲むようにして下さい。
忘れや紛失
リテーナーをどこかに置き忘れることや、失くしてしまうという人も意外と多いです。
間違えて捨ててしまう人や、外食時に紙ナプキンにリテーナーを包んでいたら店員さんにお皿と一緒に下げられてしまったという体験談もあります。
リテーナーを失くしてしまった場合は、新しく作り直さなければいけません。そのため、早めに歯科医に連絡をして下さい。
また、新しいリテーナーが出来上がるまでの間、後戻りをしないように歯科医で処置をしてもらう必要があります。
リテーナーはできるだけ失くさない工夫が大切です。外したらケースに入れておくようにして下さい。家の中なら置き場所を決めておくよいです。
お子さんの場合は、保護者の人も管理を気にかけてあげて下さい。
お手入れ
リテーナーは長期間使用し続けるものですから、毎日お手入れをすることが大切です。
お手入れの方法は、普段は毛先がやわらかいタイプの歯ブラシを使って、中性洗剤で優しく洗います。
リテーナーは熱を加えると変形してしまう可能性があるため、熱湯ではなく水かぬるま湯を使って洗浄するようにして下さい。
歯磨き粉は研磨剤が入っているため、リテーナーに傷がついてしまいます。傷がつくとそこに汚れが溜まりやすくなってしまうため、歯磨き粉はNGです。
週に1回だけでよいので、矯正器具用の洗浄剤を使ってリテーナーの洗浄をすると、殺菌ができるため嫌な臭いを防ぐことができて、おすすめです。
リテーナーの洗浄には、入れ歯用の洗浄剤は使わないようにして下さい。
歯は一生動く
矯正ありなしにかかわらず、歯というものは少しずつ動きます。実は、歯は支えている骨を溶かしながら自由に動くのです。
矯正では、歯が動くことを利用して歯並びを整えていきます。矯正の場合は意図的に動かしますが、そうでなくても歯は動くのです。
無意識に歯ぎしりや、食いしばりをしていると歯並びに影響します。また、虫歯や歯周病で噛み合わせが変わることもあるのです。
また、加齢によっても歯や歯茎、顎の骨は変化をします。歯は、生まれてからずっと動き続けるといわれているのです。
矯正が終わって、保定期間を過ぎた後も定期的に歯科医でチェックをしてもらい、キレイな歯並びをキープするようにするのをおすすめします。
矯正後は、特に歯が動きやすい状態のため、リテーナーによる保定期間は必要不可欠なのです。
保定期間が過ぎても歯が動くことが心配であれば、リテーナーを付け続けることを推奨されることがあります。
リテーナーのことで悩んだら
保定は矯正治療と同じ期間か、それ以上の期間続けていくことになります。歯科医から言われたことを、しっかり守っていく必要があるのです。
保定期間のトラブルは、問題の内容によって歯科医で調整や処置をしてもらう必要があります。
もし、リテーナーが変形や破損をした場合や、装着時に痛みがある場合などは早めに歯科医に相談をするようにして下さい。
そのためにも矯正治療を受けるときは、矯正専門の歯科医が常駐するところを選ぶことが大切です。
まとめ
リテーナーは、矯正後のキレイな歯並びを維持する重要な役割を持っています。やっと矯正が終わったと思ったのに…と思ってしまうかもしれません。
しかし、だからといってリテーナーをしないでいると、せっかく整えた歯並びが後戻りしてしまう可能性があるのです。
少しの期間なら、リテーナーをきちんと装着することで、後戻りしかけた歯を修正できる可能性があります。
しかし、歯の動きが大きくてリテーナーが合わなくなってしまったら、装置の作り直しが必要になってしまうのです。その分、お金が余分にかかります。
矯正治療は保険適用外ですから、決して安価ではありません。リテーナーの作り直しだけじゃなく、場合によっては再矯正が必要になることもあります。
そうなると、また矯正の費用が必要になってしまうため、さらに費用が上乗せされることになってしまうのです。
矯正治療をした後に歯並びを保持するためには、リテーナーを決められた時間装着して、後戻りをしないようにすることが大切です。
そのため、歯科医で指示されたことをしっかり守るようにして下さい。