【監修:青山健一】
目 次
気がついたら歯を食いしばっていた!そんなことに思い当たることはありませんか。それはTCHかもしれません。
TCHは聞きなれない言葉ですが、スマホやゲームに夢中になって、緊張や集中が続いているのが原因といわれています。
この記事では、TCHの特徴や原因、放置することのリスク、治療方法をご紹介します。スマホやゲームに集中していると思われる場合は参考にしてください。
TCHの概要
TCHは、病気という認識ではないため口の中や顎・首・肩などに違和感があっても格別に気にすることは少ないです。
知覚過敏があったり歯茎に腫れがあったり顎に痛みがあったりしても、単に歯の不調というくらいに思って歯科医院を訪れる人は少ないと思います。
しかし、TCHを放置すると口腔内や周辺に異常が出ることがあります。
新しい生活様式から生まれる体の不調について考える動きが出てきました。これまであまり注意が払われることがなかったTCHが注目されてきたのです。
TCHってなに?
TCHとは、Tooth Contacting Habit(歯列接触癖)の略で、上下の歯を接触させる癖のことです。さらにその癖から体への不調が出ることもTCHに含まれます。
通常、上下の歯は1~3ミリ程度離れているものです。食事をするときや会話をするときにわずかな時間接触する程度です。
このように歯が接触している状態が繰り返されているうちに脳がそのことに慣れて癖として定着すると考えられています。
TCHの場合は無意識のうちに上下の歯が接触している時間が長いだけでなく、歯軋り・食いしばり・こすり合わせ・上下のカチカチなどの強い力が働くこともあります。
TCHが注目される背景
TCHが注目されるようになったのは、TCHの治療方法が顎関節症の治療に大きな効果が認められたことがきっかけでした。
またTCHが注目される背景には、パソコンやスマホが必需品になっている現在の生活様式が大きく関係しています。
誰もが思い当たると思いますが、パソコンでのデスクワークやスマホを使っているときは、俯いた状態で長い時間集中しています。
パソコンやスマホに集中しているときは、気づかないうちに歯を食いしばっていることが多いのです。
TCHの何が良くないのか
TCHは歯の癖、あるいは歯に関わる病気のように思われがちですが、口腔内や顎などに影響があるだけでなく全身に症状が及ぶのです。
口腔内の症状には、なんとなくおかしいと思う違和感や知覚過敏があります。症状が進むと歯に痛みを感じることがあります。
常に噛みしめていることから顎や周辺の筋肉が緊張しっぱなしの状態になり、顎関節への負担が増加し、顎関節症のリスクも高くなるのです。
さらに、頭痛・肩こり・首の痛みといった症状になって現れます。
TCHの具体的な症状
TCHは上下の歯が接触している状況をいい、歯や顎などに違和感や痛みの症状が現れます。個人差はあるものの代表的な症状をご紹介します。
歯に出る代表的な症状は知覚過敏です。歯が接触している時間が長いと歯の神経が圧迫され過敏になるからだといわれています。
歯の症状では痛みを感じることもあります。痛みを感じたり感じなかったり、痛い日もあれば痛くない日もあるといった不規則に起きるのが特徴です。
顎関節症を発症することで顎関節に痛みを感じることや、噛みしめていることが多いことで頭や頬が痛くなることがあります。
他にも慢性口内炎・口腔内灼熱症候群・舌痛症など口腔内の症状や肩こり・首の痛みなど首から肩にかけての筋肉の緊張からくる症状が出ることもあります。
TCHが起こる理由
TCHが起こるのはパソコンやスマホに長時間集中して操作していることが大きな理由といわれています。
SNSやゲームに集中することで食いしばりの状態が続いていることが理由に挙げられているのです。
しかし、集中だけが理由ではありません。パソコンやスマホはどちらも俯いた姿勢が継続します。俯いた姿勢では下顎が上顎の方向に押し上げられて上下の歯が接触しやすいのです。
パソコンやスマホの操作だけでなく、俯いた姿勢を維持するような作業に従事している場合もTCHを起こす理由にもなります。
どういう時にTCHが起こるのか
TCHは緊張しているときと集中しているときに起こりやすいです。しかし、TCHを起こしているということを自覚するのは難しいです。
仕事や勉強でも、ココというときには緊張しますね。面接や試験前で緊張しているときには歯を食いしばっていることは経験があると思います。
パソコンやスマホを操作しているときは集中していることが多く、そのことが長時間続くようであればTCHを起こすリスクが高いです。
特にゲームでは没頭することが多いのでその傾向はさらに高くなります。
テレビで好きなドラマを観ているときはリラックスしているようでも、集中して観ているとTCHを起こしていることがあります。
リラックスしているときの正常な状態は?
一般的に上下の歯が接触しているのは、主に食事中や会話のときのわずかな時間だけなのです。その時間は1日に合計で20分程度といわれています。
リラックスしているときに口がどのようになっているか考えてみてください。唇は閉じている・上下の歯は少し開いている・舌は上顎に軽く当たっている、そして鼻呼吸をしています。
人がリラックスしているときは歯と歯は当たっていません。わずかですが1~3ミリの隙間があいていて、これを「安静空隙」といいます。
顎や口のまわりにある閉口筋群は、この安静空隙がゼロすなわち歯と歯が軽く触れた瞬間に緊張状態に入るのです。
TCHのチェック方法
TCHは無意識のうちにやってしまう癖だからチェックするのは難しいのでは?と思っているかもしれませんね。
意識しないとチェックできないため、これまでの歯の状態などを思い出しながらできる自己チェックの方法をご紹介します。
虫歯や歯肉炎がないのに口の中に違和感を感じる場合はTCHの可能性があります。早速チェックしてみましょう。
リラックスした状態で前を向く・軽く唇を閉じる・上下の歯が触れないように少しだけ離す、この動作で違和感を感じるようであればTCHの可能性があります。
初期症状は?
TCHが適切な治療をせずに放置されやすいのは、自分でその症状に気がつかないからです。
特に初期の症状はTCHの症状かどうかの判断が難しいです。知覚過敏や虫歯治療の詰め物が取れかかっているなどのことがあれば、TCHを疑って一度歯科医院に相談をしてみましょう。
進行するとどうなるのか
TCHの初期段階は見逃されることが多いため、気がついたときには症状が進行していることがあります。
症状が進行したときは夜間の歯ぎしりや食いしばりになって現れます。大きな力が継続してかかるため、歯が欠けることもあるのです。
また歯周病を患っている場合にTCHがあると、歯肉や歯槽骨への力が加わるため歯周病の進行が加速することも考えられます。
自己チェックでTCHが疑われる場合は歯科医に相談してみましょう。相談は無料でWeb予約もできます。
TCHのある人の口の中はどうなっている?
TCHのある人でも歯と歯の当たり方はさまざまです。軽く当たっている程度の人もいれば食いしばっている人もいます。
軽く当たっている程度であっても緊張が続いているようなら、歯だけでなく舌も緊張状態です。舌が奥に引き込んでいて上顎や頬、舌にも圧痕ができることがあります。
また、食いしばりや歯軋りがひどくなると、歯がすり減っていたり部分的に欠けていたりして歯に変化もみられます。
放置すると歯を失うリスクがある?
食いしばりや歯の接触を軽く考えていませんか。放置すると大切な歯を失うことになるのです。
TCHによって引き起こされる顎関節症や顎周辺筋の緊張状態の継続などで、神経の圧迫や血流障害が起きます。
その結果、歯周組織にダメージを与え歯周病の進行・歯槽骨の減少が起きて最悪の場合歯を失うことになるのです。
TCHは癖であるためなかなか自覚できず、いつの間にか症状が進行していることもあります。TCHはできるだけ早く気づくことが大切です。
TCHの治療方法
症状が歯軋りや顎関節症に進行していて治療が必要な場合はボトックス注射が有効な治療法です。
初期の場合はTCHの原因となる癖を治すことで症状を改善することができます。しかし、癖を治すことは簡単なことではありません。
TCHを自覚して治そうとする意思があれば有効な方法もあります。TCHの取り組みや具体的な治療方法をご紹介します。
TCHに対してどう取り組むか?
TCHは病気としての自覚が少ないため単なる癖としての認識が強いです。しかし、癖では済まされない部分もあり体全体へのリスクとして取り組むことが大切です。
癖だから直すのが難しい!と考えていませんか。そんなことはありません。東京医科歯科大学のグループが推奨する「リマインダー」という方法が有効だと分かってきました。
リマインダーは自己認識を習慣化する訓練ですが、決して快適な方法ではありません。意識しすぎることでかえってストレスを感じてTCHが悪化するリスクもあるため注意が必要です。
具体的な治療方法
TCHを治す方法はとてもシンプルです。歯と歯が触れないように気をつけるだけで次第に症状は改善していきます。
しかし、無意識のうちに歯が触れ合っているため、常に気をつけることは簡単ではありません。
具体的な治療方法として意識化の訓練が行われます。「歯を離す」「リラックス」などの張り紙を日常生活で目につくところの貼っておきます。
トイレ・洗面台・テレビのリモコン・パソコンやスマホの背景など視線がいくところが効果的で、3~4カ月くらいは続けるのがおすすめです。
TCHの予防方法
TCHは噛みしめの癖ですが、その癖が起きる原因のひとつが俯く姿勢にあります。俯く姿勢をなくすることは難しいですが、なるべく時間を短くすることを意識しましょう。
デスクワークではどうしても俯く姿勢になってしまいます。スマホを操作しているときは集中してしまいます。
パソコンやスマホのタイマー機能を使って、一定時間で「休憩」を促すように設定するのも良いかもしれません。
また、ストレスを溜めないことも大切です。ストレスを溜めても発散できる方法も身に付けておくのも予防法になります。
TCHの症状がある場合は専門医に相談
自己チェックしてTCHの症状がある、あるいは疑いがある場合は専門医に相談することをおすすめします。
初期の場合はなかなか気がつかないこともあり、また軽症だから病院までは必要ないと思うかもしれません。
しかし、放置すればだんだんと症状は進行していきます。TCHを治すには専門医の手助けが必要です。
TCHについて気になる方は、無料相談をご活用ください。
まとめ
TCHは自覚のない病気といっても差し支えないかもしれません。しかし、影響は全身に出ているかもしれません。
何も症状が出ていなければ単に癖ですまされますが、気がつかないうちに顎が痛い・首が痛い・肩がこる・頭が痛いなどの症状になって現れます。
なんとなく体が不調という場合は、TCHが進行していることを疑って専門医に相談してみましょう。