【監修:青山健一】
目 次
「オトガイ」を気にしている方は多くいらっしゃいます。オトガイは歯と同様によく見える部位なため、コンプレックスを抱きやすい傾向にあります。
美容整形などを検討される方もおられますが、オトガイの形や歪みの悩みは矯正治療で治せる場合もあるのです。
今回はオトガイで悩んでいる方へ向けて、矯正治療分野から見たオトガイが与える影響について、またその解消方法を解説します。
オトガイの悩みは矯正で治せる?
オトガイとは人間の「下顎」または「下顎の先」の部分を表す名前です。
漢字で「頤」と表記することもありますが、解剖学的には「オトガイ」とカタカナ表記するのが一般的です。
オトガイの悩みはその形によってさまざまありますが、これらの悩みは矯正治療で改善できる場合があります。
美容整形の分野でもオトガイの治療は可能ですが、矯正治療におけるオトガイの治療は美容整形とは少しアプローチの仕方が違います。
美容整形は骨や歯を削るなどして「形」を変えて美しくすることがメインです。
一方、矯正治療はあくまでご自身の歯や骨を「活かす」ことを前提に、並びを整えて正しい位置へ戻すことによって綺麗に見せる治療です。
矯正治療におけるオトガイの治療は基本的にオトガイの骨を削ることはなく、元の位置に戻し形を整えることが目的となります。
切開などの手術が怖い、不安といった抵抗のある方はまず矯正治療で治せないか選択の一つとして入れていただくとよいです。
オトガイで悩むケース
はじめにオトガイのどのような状態に悩むケースが多いのかについて、具体的な例をご説明します。
もしオトガイについて悩んでいる方はまず、ご自身がどのケースに当てはまるのかを確認して、どのような状態なのかをしっかり把握しましょう。
オトガイの突出
悩みとして多いのはオトガイの突出です。オトガイ部分が通常よりも前の位置に飛び出ている状態で、よく「しゃくれ」という言葉で表現されることもあります。
オトガイの突出の原因には大きく2種類あり、1つ目はオトガイの骨が大きく前へ出ているように見えている骨格が原因になります。
もう1つは下顎全体が上顎よりも前に出ている状態である、下顎前突(かがくぜんとつ)という状態が原因になる場合です。
前者の場合で下顎の位置に問題がない場合、オトガイの大きさを変える必要があるため形成手術が必要になる可能性が高いです。手術は口腔外科や形成外科で行うことになります。
しかし後者の場合であれば、歯並びを整えて正しい位置で噛み合わせられるように矯正治療を行うことで、オトガイの突出を改善できるケースがあります。
オトガイの後退
オトガイが後ろに後退している下顎後退(かがくこうたい)と呼ばれる状態も、オトガイを悩んでいる方にとって原因の一つです。
一般的に、「顎がない」「顎が小さい」と表現することもあります。
この下顎後退の状態は噛み合わせなどへ影響するだけでなく、気道が狭くなりやすいために睡眠時のいびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めてしまう恐れがあり危険です。
下顎後退の詳しい原因はわかっていませんが、遺伝的な要因や指しゃぶり、舌を前に出す舌突出癖があるとなりやすいといわれています。
また歯科矯正の範囲内で治療ができる状態と、外科的な治療も併せて行う必要がある状態もあります。
梅干しシワ
あまり耳慣れない言葉に感じる方もいるかもしれませんが、オトガイの悩みには梅干しシワと呼ばれるものもあります。
梅干しシワとはオトガイの先部分に梅干しのようなボコボコとした細かいシワまたは凹みのことです。このシワが梅干しの表面に似ていることからこの名前が付けられました。
梅干しシワができる原因はオトガイ部分にあるオトガイ筋という筋肉が過度に緊張していると起こります。
みなさんも口を閉じて前歯と舌唇を触れさせてグッと顎から口まわりに力を入れてみてください。梅干しシワができるはずです。
歯並びが悪かったり噛み合わせが歪んでいたりすると、オトガイ筋を含めた口まわりの筋肉が必要以上に緊張し、梅干しシワができてしまいます。
そのため、梅干しシワの改善には、原因となっている歯並びや噛み合わせを矯正治療で正しくする必要があります。
オトガイが気になる理由
オトガイの悩みのケースについておわかりいただけたところで、この状態の何が気になるのか?その理由についてご説明していきます。
Eラインへの影響
オトガイが正しい位置にないと、Eラインが崩れてしまいます。Eラインとはエステティックライン(esthetic line)のことで、横顔の整った綺麗な状態の指標です。
理想的なEラインは鼻の頭からオトガイの最も高い部分を線で結んだ際に、その線に唇が触れるか触れないギリギリのラインに来るのがよいといわれています。
しかし、オトガイが突出または後退していると綺麗なEラインができなくなってしまいます。
オトガイに悩んでいる理由の一つにこのEラインが崩れることで、横顔の印象を悪くしていることが挙げられるのです。
口元の印象
オトガイに悩んでいる方の中には、口元の印象にコンプレックスを抱いている方もいます。特に正面の顔は鏡で常にご自分でも目に入るため、Eライン以上に気にされる方も多いです。
オトガイに悩んでいる方は噛み合わせにも問題がある場合もあり、口を閉じられない状態の方もいらっしゃいます。
口が常に開いていると口元の印象が少しだらしなく見えてしまいがちです。さらに口呼吸をしがちになったりと、健康面に対する影響もあります。
オトガイに影響する歯並び
悩みに繋がっている可能性がある、オトガイに影響する歯並びの例をご紹介していきます。
これからお話する状態に当てはまる方は矯正治療をすることで、オトガイの悩みも解消される可能性があります。
ご自身に当てはまる歯並びはないか確認してみてください。
上下顎前突
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)とは上下の歯または歯茎が前へ出ている状態のことで、オトガイの歪みをもたらす原因になる可能性があります。
上下顎前突では正しい角度で噛み合わせができないため、歯に負担がかかるのはもちろん、口まわりの筋肉、延いてはオトガイにまで負担を掛ける歯並びです。
口まわりの筋肉を正しく使えず梅干しシワができる原因にもなり得ます。
さらに前歯で唇を切ってしまったり、口が閉じられずに乾燥してしまうというようなオトガイ以外の点にも悪影響を及ぼします。
出っ歯
出っ歯は上の歯または歯茎から前に出ている状態です。出っ歯の原因は遺伝的な要因や指しゃぶり、口呼吸などの生活習慣が影響しているとされています。
中には下顎が小さいため、噛み合わせのバランスが取れず上の前歯だけが前に出てきてしまい出っ歯になることもあります。
下顎の発達にも影響してくるため、出っ歯もまたオトガイの形成に影響を与える歯並びの一つです。
開咬
開咬(かいこう)とは奥歯をしっかりと噛み合わせたときに、前歯に本来はないはずの隙間ができてしまう状態をいいます。別名「オープンバイト」とも呼びます。
開咬であると噛み合わせたつもりでも前歯に隙間ができてしまうため、食べ物がきちんと噛めなかったり、通常よりも口まわりに力が入ってしまいやすいです。
そのため、梅干しシワや噛み合わせの歪みを悪化させてしまう可能性が高い状態になります。
オトガイの悩みを歯列矯正で解消する方法
オトガイを実際に歯列矯正で解消するにはどのような方法があるのか、その治療方法についてご紹介します。
ワイヤー矯正
一つはワイヤー治療です。ワイヤー治療は歯一つ一つにブラケットと呼ばれる小さい装置を取り付けます。
そのブラケットを繋ぐようにしてワイヤーを通し、そのワイヤーの力を利用して歯を並べて行く治療です。
ワイヤー治療はさまざまな歯並びにも対応でき、もっとも多様性のある治療方法といえます。
オトガイに影響を与える上下顎前突や出っ歯などもワイヤー矯正で治療可能です。
インプラント矯正
インプラント矯正はワイヤー矯正に比べて新しい治療方法です。歯科矯正用の「アンカースクリュー」と呼ばれるネジを歯茎に埋め込み固定しておく柱にします。
このアンカースクリューがあるおかげで、動かしたくない歯を固定したり、歯を動かす力の源にできるのです。
イメージとしては大きな物を吊り上げようとするときに、後ろを木や柱などの支えに紐をくくりつけることがありますが、インプラントはその木や柱の役目を担います。
一口に矯正治療といってもたくさんの治療方法があるため、ご自分の状況やニーズに合わせた治療をオーダーメイドで行えます。
希望する形を目指したいのかを歯科医にしっかりと伝えて、治療の提案をしてもらいましょう。
無料相談をご希望の方は下のボタンを押してください。
骨格に問題がある場合の治療方法
ご説明したきたような歯並びに問題がある場合は歯列矯正で改善させることが可能ですが、骨格そのものに問題がある場合は別の治療も考慮に入れる必要があります。
例えば、オトガイが長い場合や逆にオトガイが後退しすぎている場合、または左右どちらかに歪んでいる状態を指します。
上記のようなときは歯並びを改善してもオトガイ自体の問題の解消は難しいです。そのため、改善するには「オトガイ形成術」などの外科的治療を行います。
オトガイ形成術は骨を削ったり、切除したりすることで綺麗な形に整える手術です。
オトガイ形成術は対応していない歯科もあるため、外科的治療も考慮に入れている方は予め対応しているかを確認するとよいです。
オトガイの悩みを歯列矯正で治したいなら
オトガイの悩みは残念ながら黙っていても自然に治ることはありません。そのため、ご自身の状態に合わせた改善治療が必要になります。
ネットを見ているとオトガイの形を自分で治したというような内容のものもありますが、自力で治すことは多くのリスクを伴います。
オトガイを無理やり治そうとすると、顔まわりの筋肉や骨格に負担を掛けてしまう可能性も高く、さらに状態が悪化する恐れもあるのです。
オトガイを治したいという方はまず専門家の意見を聞くことをおすすめします。前述したようにオトガイ治療は矯正歯科だけでなく、口腔外科、整形外科などでも行えます。
まずはさまざまな専門家から意見を聞き、ご自身が納得できる治療方法を選ぶとよいです。
無料相談をご希望の方は下のボタンを押してしてください。
まとめ
今回は「オトガイ」の悩みについてのご説明から歯並びに及ぼす影響や治療方法まで話してきました。
オトガイ治療は多岐に渡って行われる治療であるため、どこを受診すればよいのかアプローチがわからない方も多いです。
そんな方の手助けになっていましたら幸いです。治療が完了して、ご自身が大好きになれるご自分になれますように。素敵な笑顔で楽しくお過ごしください!