【監修:青山健一】
目 次
インビザラインとは透明なマウスピースを使用して歯列矯正を行う手法です。
ワイヤー矯正と同様に歯列矯正に有効なものの1つとして既にご存知の方も多いかもしれません。
このインビザラインですが、実は歯列矯正だけでなく噛み合わせの改善効果があることでも注目されているのをご存知でしょうか。
今回の記事ではインビザラインと噛み合わせ改善の関係性について解説していきます。
インビザラインで噛み合わせを治せる?
インビザラインで噛み合わせを治せるか、その答えは端的に言うとYESです。
実のところ、これはなにもインビザラインに限った話ではなくワイヤー矯正でも同様のことがいえるのですが、歯列矯正を行うとそれに伴い噛み合わせも良くなることが多いといわれています。
というのもそもそも歯列矯正とは歯並びを良くするために行う治療のため、歯並びが改善するとそれに従って自然と噛み合わせも改善していくためです。
いわば歯並びを治した副次的な効果として噛み合わせも良くなるということです。
インビザラインで噛み合わせを治せる理由
次に、なぜインビザラインで噛み合わせを直せるのか解説していきます。
インビザライン矯正で使用するマウスピースを作る際には、まずレントゲンなどで採取したデータに基づいてコンピューター上で3Dシミュレーションを作成します。
その3Dシミュレーションに従いつつ、実際の口腔内の状況に合わせてマウスピースを作成するわけです。
そしてその際には当然ながら審美的な歯列矯正を行った結果、上下どの位置に歯が移動してくるかも計算することになります。
このようにインビザライン矯正では設計段階から治療後の噛み合わせまできちんと視野に入れているため、歯並びだけでなく噛み合わせまで治せるのです。
良い噛み合わせの条件
つづいて、良い噛み合わせの条件とは何か、一般的な判断基準について解説していきましょう。
前歯の真ん中の位置は?
一般的に歯並びが良いといわれる基準の1つに、上下の前歯の中心(正中線)が合っている、というのがあります。
この正中線がずれると顎自体ずれて見えてしまうことがあり、パッと見ただけで歯並びが悪いのがわかってしまうため非常に気にされる方も多いです。
歯の大きさの違いや生え方の問題などで起こることが多いとされていますが、これらについてもインビザライン矯正で治せる可能性があります。
正中線が真っすぐになっているということはある程度歯並びが良いということになるため、必然的に噛み合わせも良いということになります。
上下の前歯の重なりは?
上下の前歯の重なり具合とは一体どういうことでしょうか。
通常は下顎の前歯が上顎の前歯の内側に収まっているのですが、人によっては前歯の生え方が上下入れ替わったようになってしまっていることがあります。
これらの症例は「クロスバイト」といわれることもあり、基本的には上下どちらかの歯が部分的に下がっているか反対に前に出てしまっているために起こるのです。
この場合は前から見たときに上下の歯が互い違いに生えているのがわかりますが、これも噛み合わせを悪くする原因となります。
したがって下顎の前歯が上顎の前歯の内側に収まっていればクロスバイトのような状態にはならず噛み合わせも正常といえます。
奥歯のズレはないか?
噛み合わせが良いとされる条件とは何も前歯ばかりではなく、奥歯にもあてはめられるものがあります。
奥歯の場合は上の歯のとがっている部分と、下の歯のくぼんでいる部分が点で接触していることが良い噛み合わせの第一条件とされているのです。
食べ物を咀嚼する際に、ちょうどそのとがっている部分とくぼんでいる部分がすり鉢とすりこ木のような関係となり食べ物を消化しやすいよう細かくしていきます。
しかし、ここで噛み合わせが悪いと食べ物を細かくできず、結果として消化にも悪い状態のまま胃へと送り込むこととなってしまい内臓にも負担をかけてしまうのです。
噛み合わせに関係する歯並び
それでは、そのような噛み合わせに関係する歯並びには一体どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、噛み合わせに関係する4つの歯並びをご紹介します。
すきっ歯
これは読んで字のごとく歯と歯の間に隙間が空いている状態のことで、専門的には空隙歯列(くうげきしれつ)というものになります。
単に隙間が空いているだけで噛み合わせにさほど影響があるとは思えない方もいらっしゃるかと思いますが実はそうではありません。
先程の項目でも少し触れましたが、すきっ歯の場合も咀嚼がうまくいかず、内臓に負担をかけてしまうことがよくあります。
歯に隙間があることで上下の歯がうまく噛み合わず、食べ物が歯の隙間を通り抜けてしまうためにこういったことが起こるとされています。
またそれ以外にも噛み合わせが悪いために歯にかかる力がうまく分散されず特定の歯や筋肉に異常な緊張状態が発生し、頭痛や肩こりの原因となることもあるのです。
出っ歯
出っ歯の場合はどうでしょうか。
上顎の前歯が完全に前に飛び出しているいわゆる「上顎前突」の場合は噛み合わせどころか、そもそも上下の歯が全く噛み合わないことも往々としてあります。
また、前歯が出てしまっているために他の歯も少しずつずれてしまい結果として全体の噛みあわせにも重大な影響を及ぼしてしまうのです。
叢生
叢生(そうせい)とは、簡単に説明するとすきっ歯の反対で狭い範囲に歯が密集して生えてしまい乱杭歯となってしまっている状態を指します。
叢生は多くの場合過蓋咬合など他の不正咬合と同時に起こり、歯並びや噛み合わせに深刻な影響を及ぼすのです。
受け口
受け口とはいわゆる「しゃくれ」の状態を指しますが、専門用語では「反対咬合」や「下顎前突」などという呼び方をします。
受け口となる原因はさまざまありますが、成長段階での顎の発達度合いの違いや子どものころの指しゃぶり、意外なところでは舌の使い方の影響などもあるのです。
下の歯が部分的、あるいは下顎ごと前に出てきてしまっているので、この場合も噛み合わせには悪い影響を与えます。
自分の歯並びや噛み合わせがどのような状況なのか、それによってどのようなリスクがあるのか知りたい場合には、無料相談を利用するのも有効な手段です。
過蓋咬合もインビザラインで治療できる?
過蓋咬合はディープバイトとも呼ばれ、上の歯が下の歯に覆いかぶさって下の歯が見えない状態のことを指します。
歯科医院での診察の際に「噛み合わせが深い」といわれて疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
過蓋咬合の問題点としては下の歯が上あごの歯肉に常にあたってしまうため歯肉炎ができたり、発音に問題が出てくるといったことが挙げられます。
過蓋咬合となってしまう原因として代表的なものには
- 上下の顎の骨のバランスが悪い
- 本来あるべき奥歯が生えなかった、もしくは何らかの理由により抜けてしまった
というものがあります。
この厄介な過蓋咬合、以前はインビザラインでは治療することはできないといわれていましたが、現在は技術の進歩により治療できるようになりました。
マウスピースの内側(舌側)に「バイトランプ」と呼ばれるアタッチメントをつけた上で通常のマウスピース同様に装着する手法などがそれです。
バイトランプとは、「ここより深く噛まないように」という目印をマウスピースにつけるものとなります。
実際にマウスピースに出っ張りができるためそれ以上は深く噛まないようになり、過蓋咬合が改善するという仕組みとなっています。
噛み合わせが悪い状態を放っておくリスク
噛み合わせが悪いと実際にどのようなリスクがあるのか、いくつか代表的な例を挙げて解説していきます。
肩こりや頭痛
噛み合わせと肩こりの関係については広く知られていますが、ここで少しおさらいしておきましょう。
物を咀嚼するときに必要となる下顎の筋肉と肩回りの筋肉は繋がっており、物をかむときに歯にかかる力は体重の2倍ほどにもなるとされています。
噛み合わせが悪いと、この大きな力が偏ってかかってしまい、筋肉に異常な緊張状態が発生し肩こりの原因となるのです。
頭痛に関してもこの肩こりを発生源としたり、過度な力による食いしばりが原因となって血流が阻害されることによって起こるとされています。
歯並びの悪化
悪い噛み合わせは歯並びにも悪い影響を及ぼします。
噛み合わせが悪いということは物を噛む際の力が均等にかからないということにもつながります。
先ほど物を噛むときにかかる力は体重の2倍ほどにもなると書きましたが、これはなにも食事の際に限った話ではありません。
食いしばりや歯ぎしりの癖のある方の場合は、そういった場合も常にそのような力が掛かっているのです。
その均等でない大きな力が常にかかることによって、歯が異常な方向に押されてしまい結果として歯並びも悪くなってしまうのです。
顎関節症のリスク
顎関節症も噛み合わせの悪さに由来する症状の典型的なものとして知られています。
顎関節というのは頭蓋骨と下顎をつないでいる関節のことですが、この関節はぶら下がった状態で下顎を支えているため非常に不安定なものです。
悪い噛み合わせの影響で下顎がずれている場合でも関節は機能するため、無理な力がかかってしまい顎関節症を誘発してしまいます。
インビザラインで噛み合わせを治したいなら
インビザラインで噛み合わせを治したい場合はどのようにすればよいでしょうか。
まずは、矯正専門の歯科医院に診察を受けに行き、自分が抱えている問題とそれをどのように解決したいかをしっかりと相談する必要があります。
その際にワイヤー矯正ではなくインビザラインで治療したいことを伝え、その歯科医院でご自身が希望する施術が受けられるかどうかを確認しましょう。
歯科医による無料相談を上手く使うのも有効な方法です。
まとめ
今回の記事ではインビザラインと噛み合わせについて解説しました。
記事の内容をまとめると次のようになります。
- インビザラインで噛み合わせは治せる
- 噛み合わせと歯並びは密接な関係がある
- 噛み合わせが悪いと全身に不調が出る
- 叢生や過蓋咬合もインビザラインで治療できる
実際のところは歯科医自身の得手不得手もあって、インビザラインの経験の少ない医院では、インビザラインだけでは治療できないと言われてしまう場合も出てくることがあるかもしれません。
そのような場合は本文中でもご紹介した無料相談を利用して、納得のいく治療を受けられる歯科医を探してください。
この記事が皆さんの矯正治療を成功に導く助けとなれば幸いです。