【監修:青山健一】
目 次
歯並びや噛み合わせ全体を整えるのが全体矯正で、それに対して前歯の1部分だけを整えるのが部分矯正です。
全体矯正に比べて短期間で、費用も安くすむのがメリットです。1~2本から治療可能で、ほとんどの場合1年以内に治療が完了します。
しかし、奥歯の噛み合わせを整えることはできません。審美的な側面の強い部分矯正ですが、前歯の歯並びが気になる方にはメリットの多い治療法といえます。
部分矯正の治療法は全体矯正と同じく、ブラケット矯正やマウスピース矯正、裏側矯正などがあります。
部分矯正を検討している人は多い
矯正治療は、すべての歯を動かして歯並びと噛み合わせを整えます。しかし「見える部分だけをきれいにしてくれたらいい」と考える方も少なくはありません。
ほとんどの患者さんは、見た目を気にして矯正治療を始めるからです。このように審美的な目的で矯正治療を考える方には、部分矯正は歓迎されています。
部分矯正は前歯のみを動かすため「治療期間が短くて痛みを伴わない、費用も安い治療法」として捉えられています。
費用を気にしている方や、間近に迫った結婚式やイベントなどのために矯正治療を考えている方には、部分矯正を検討される方が多いのです。
部分矯正が人気な理由
子どもさんの場合は、ほとんどの方が全体矯正治療を選択します。顎の骨が完成していない子どもさんには、部分矯正は向かないからです。
部分矯正を選ばれる方のほとんどが大人の方です。これには、部分矯正の「安い・早い・簡単」という側面があります。
「全体を矯正するほどではないが、簡単にできるなら目立つ部分だけ」という方が増えているのです。ここでは、部分矯正が人気な理由を紹介します。
治療期間が短い
通常の全体矯正の場合、個人差はありますが1~3年程かかります。
部分矯正では1部の歯を動かすだけのため、治療期間は3ヶ月~1年というケースがほとんどです。
動かす歯が2~3本の場合は、平均的な治療期間は3~4ヶ月といわれています。このように、部分矯正の魅力は治療期間が短いことです。
そのため、進学や就活にあわせて部分矯正を始める方も少なくありません。
治療費が安い
部分矯正は、治療期間が短く通院も少なくなります。
また、矯正装置が少なくて済むため、部分矯正の治療費は全体矯正の半分以下というのが一般的です。
これまで「矯正治療は高額だから」と二の足を踏んでいた方も、始めやすいといえます。
部分矯正でもブランケット矯正・マウスピース矯正・裏側矯正など、装置の種類によって治療費は異なります。
クリニックや治療内容によって差はありますが、全体矯正の相場は70~100万円です。対して、部分矯正は20~50万円といわれ、かなりリーズナブルになります。
痛みや違和感が少ない
部分矯正では全体矯正のように、矯正装置でガッチリと口の中を固めることはありません。そのため、装置を装着したときの痛みは、ほとんどないと考えます。
また、部分矯正では奥歯に装置を付けることがないため、食事のときの違和感も少なくて済みます。
前歯のみのマウスピース矯正の場合は、矯正による痛みや違和感がほとんどない方も少なくありません。
部分矯正は10万円で受けられる?
最近では「部分矯正を10万円から」と謳っている歯科クリニックもあります。しかし、実際に10万円でできる部分矯正は、症例が限られます。
前歯2本のすきっ歯や、八重歯の矯正です。どちらにしても2本程度の簡単な矯正と考えます。
動かす歯の本数が少ない場合は、装置も小さくなり費用は抑えられるからです。また、歯を動かすスペースがある場合も、矯正は簡単になります。
しかし、上下前歯全体の部分矯正となると、それなりの費用はかかるはずです。
歯科クリニックの宣伝を見て「10万円でできる」と思っても、実際に10万円で収まる可能性は少ないと考えます。
低価格の部分矯正でできること
低価格の部分矯正では、治せる症例が限られます。部分矯正で対処できる症例は、前歯の軽度のデコボコと、すきっ歯です。
歯を動かすにはスペースが必要のため、歯が重なり合っているような重度の乱杭歯には対処できないのです。
部分矯正ではスペースを作るために、歯の側面のエナメル質を少し削ります。それで対処できない歯並びの場合は、奥歯を含む全体矯正でしか対処できません。
低価格の部分矯正でできることは、ごく軽度の2~3本の矯正と考えてください。
部分矯正を受ける前に確認すること
歯の矯正治療には少なくない時間とお金がかかります。それは部分矯正でも変わりません。
矯正治療をしたあとに不満を残さないため、施術前に確認すべきことは、しっかりと確認する必要があります。
矯正治療は失敗すると、やり直しは難しいからです。さらに、部分矯正には、全体矯正と異なる問題点もあります。
ここでは、部分矯正を受ける前に確認することを紹介します。
部分矯正が必要なのか
まず、歯科医師に自分の希望を伝えて、部分矯正が必要なのかを検討する必要があります。
本来、矯正治療は噛み合わせを治すなど、健康目的の治療です。それに対して部分矯正は、見た目だけの審美的目的で希望される方が多くいます。
部分矯正が本当に必要なのか、部分矯正で患者さんの希望が叶えられるのかが問題です。
部分矯正できる歯並びか
患者さん本人が「部分矯正をしたい」と希望しても、部分矯正ができない歯並びもあります。軽度の歯並びの悪さなら、部分矯正できれいな歯並びにすることは可能です。
しかし、前歯が重なり合っているような重度の乱杭歯の場合は、部分矯正で完全にきれいにすることは不可能です。
また、前歯のデコボコを治療する場合、部分矯正なら前に出ている歯に合わせて歯並びを整えることになります。
その結果、歯並びはきれいになったが、全体に出っ歯になるということも起こります。
歯科医師に自分の希望の仕上がりを伝えて、仕上がりのイメージを共有することが大切です。
治療内容・料金について
矯正治療は、矯正治療専門の歯科医師にしてもらうことをおすすめします。特に部分矯正は、まだまだ大きくは普及していない治療法です。
部分矯正を多く扱っている、信頼できる歯科医師のもとで治療を始めましょう。
治療内容は症状によって個人差がありますが、全体矯正と同じくブランケット矯正かマウスピース矯正が一般的です。
どの装置を選ぶかによって、治療期間も費用も異なってくるため、歯科医師とよく相談してください。
通院等のスケジュール
矯正治療においては、通院は1ヶ月に1度くらいが一般的です。歯が動かないと治療が進まないため、頻度を上げて通院する必要はありません。
治療を始めるさいに、歯科医師の方から治療スケジュールが提示されます。そのスケジュールに沿って、適切に通院することをおすすめします。
提示されたスケジュールに不審点があるのなら、遠慮なく質問しましょう。不審点を解消しないと、あとあとトラブルに発展する可能性があります。
矯正治療で不安のある方は、無料の矯正相談を活用してください。下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
低価格の部分矯正の注意点
前述したように、最近は低価格の部分矯正を宣伝しているクリニックも存在します。矯正治療は保険適用外治療のため、明確な適正価格はありません。
しかし一般的な相場はあり、20~50万円といわれています。「10万円の部分矯正」は、問題ないのでしょうか。
ここでは、低価格の部分矯正の注意点を紹介します。治療を始めてから、トラブルにならないよう、事前にチェックが必要です。
別途費用がかかる
矯正治療費の支払いには、別途費用がかかることがあります。これは矯正治療費用以外に、毎月の費用が発生するからです。
矯正装置の調整や、マウスピース代が別途請求されることもあります。低価格の部分矯正治療には、別途費用がかかることが多いと考えます。
必要な費用ですが、不安があるのなら、矯正治療費にすべてが含まれる総額制のクリニックがおすすめです。
総額制の場合は、最初に提示された費用のみで毎月の調整費用や装置代は発生しません。また、提示された金額が消費税込かどうかも確認しましょう。
専門医ではない場合も
矯正治療を、一般の歯科医師が担当することもあります。低価格の部分矯正では、専門医ではない場合もあると考えます。
しかし、安心して矯正治療を進めるためにも、部分矯正治療の経験と知識が豊富な専門医にかかることがおすすめです。
部分矯正治療を検討しているのなら、まずクリニックの矯正無料相談を活用してください。自分と同じような症例を多く扱っているクリニックが安心です。
後戻りのリスク
部分矯正といっても、矯正治療終了後にそのままにしておくと、後戻りのリスクがあります。矯正装置が外れた後は、保定装置(リテーナー)を付けなければなりません。
歯の裏側にワイヤーを固定するタイプと、取り外し可能なタイプとがあります。
部分矯正でマウスピース矯正をした場合は、リテーナーもマウスピースタイプがおすすめです。マウスピースタイプは、食事や歯磨きのときには取り外しが可能です。
自己管理となるため、歯科医の指示通りに使用しましょう。通常は、1日20時間以上の装着が必要です。
部分矯正を検討している方は専門医に相談を
部分矯正を検討している方は、経験豊富な専門医に相談をしてください。部分矯正にはメリットがありますが、デメリットもあります。
もし完璧な歯並びを求めるのなら、部分矯正では無理なこともあります。治療を始める前に話し合い、仕上がりのイメージを共有することが大切です。
矯正治療で不安のある方は、無料の矯正相談を活用してください。下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
まとめ
審美的な目的で矯正治療をする方は少なくありません。特に社会人の方は、ほとんどの方が口元のコンプレックスを解消するために治療を始めます。
本人のコンプレックスが大きい場合には、全体矯正が最適です。
しかし「見えている部分だけきれいにしたい」と考えているのなら、短期間で安くできる部分矯正がおすすめです。
最近では「10万円でできる部分矯正」という宣伝も目立ちます。しかし、矯正は1度すると、やり直しは困難です。
担当医とのコミュニケーション不足からくるトラブルを避けるためにも、値段の安さだけに囚われず、信頼できる専門医のもとで治療を始めましょう。