【監修:青山健一】
目 次
特に口元にコンプレックスを抱きやすいのが出っ歯やすきっ歯です。審美性の問題だけでなく、全身の健康に関わることもあります。
ところで、出っ歯やすきっ歯は何が原因で起こるのでしょうか。また、原因が分かれば自力で対処できるものなのでしょうか。
今回は出っ歯やすきっ歯の原因・改善方法についてご紹介します。あわせて自力で歯並びを治すリスクにも触れています。
歯並びにトラブルを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
出っ歯とすきっ歯が及ぼす影響
出っ歯やすきっ歯は、審美性・身体機能の両方にリスクがあります。代表的なリスクは下記の2つです。
身体のバランスが悪くなる
出っ歯やすきっ歯は、身体の均衡を崩すことがあります。たとえば、まっすぐ立っているつもりでも身体が斜めに傾いているケースが代表的です。
重篤なケースでは、神経や内臓に重大な支障をきたす場合もあります。では、なぜ歯並びが悪いと全身のバランスが崩れるのでしょうか。
答えは、噛み合わせの悪化が筋肉・骨格の歪みを誘発するためです。出っ歯やすきっ歯では、上下の歯がうまく噛み合わなくなります。
噛み合わせの悪化は顎周辺の筋肉を緊張させます。具体的には、余計な負担がかかることで顎の筋肉が前後左右のバランスを保てなくなるのです。
全身の筋肉は互いに引っ張り合うことで均衡を保っています。もしどこか1つでも筋肉のバランスに異常が出ると、悪影響は全身に広がります。
結果として頭部が自然と傾いたり、左右で骨格の発達に差が出たりするわけです。なお、骨格の歪みは神経や内臓の圧迫につながります。
結果、心身には様々な不調があらわれやすくなります。たとえばめまい・ふらつきの他、喘息・不眠・生理痛などの不定愁訴が代表的です。
コンプレックスを抱きやすい
出っ歯やすきっ歯の代表的なリスクは、やはり審美性です。特に前歯の歯並びトラブルは目立つため、口元にコンプレックスを抱く方は少なくありません。
そのため、人前で笑ったり話したりすること自体にコンプレックスを持つ方もおられます。
つまり出っ歯やすきっ歯は、性格や人付き合いにも深刻な影を落としかねないのです。
出っ歯とすきっ歯の原因
出っ歯やすきっ歯の原因は、先天的なものと後天的なものの2種類に分けられます。具体的な内容をみていきましょう。
口元の癖
実は、出っ歯・すきっ歯の原因は後天的なものであるケースは少なくありません。典型的なのが口元の癖です。
- 舌の先で前歯を押す
- 指をしゃぶる
- 唇を噛む・巻き込む
いずれも前歯には外側の圧力がかかります。結果歯が動きやすくなるため、前方にせり出したり、ねじれて隙間ができたりするわけです。
特に成人は舌癖に注意しましょう。無意識に舌で前歯を押しているケースは少なくありません。
たとえば舌の位置が下がっている方は、舌の先が前歯につきやすくなります。
結果として前歯に内側からの圧力がかかり、出っ歯・すきっ歯を招きやすくなります。
歯周病や虫歯
歯周病や虫歯も出っ歯・隙っ歯の後天的な原因です。歯周病や虫歯が重症化すると、炎症はやがて顎の骨に及びます。
すると歯を支える土台が脆くなるため、歯がグラついたり抜けたりしやすくなります。その結果、歯が所定の位置から動いてしまい、出っ歯やすきっ歯に至るわけです。
遺伝
先天的な原因としては遺伝が挙げられます。代表的なのは、生まれつき顎と歯のサイズが合っていないケースです。
たとえば歯に対して顎が小さい場合、歯が収まり切らずに前方にせり出すことがあります。
あるいは、もともと上顎が下顎より前に出ている場合も、出っ歯になるリスクが高いです。
一方、顎に対して歯が小さい場合は、歯と歯の間に隙間ができやすくなります。生まれつき歯のサイズが小さすぎるケースもすきっ歯の要因です。
顎の骨格異常の原因は、多くの場合遺伝です。
つまり両親のどちらかに顎の発達異常などがみられる場合は、子どもも出っ歯・すきっ歯のリスクが高くなります。
出っ歯やすきっ歯を自力で治す危険性
インターネット上などには出っ歯・すきっ歯を自力で治す方法が紹介されています。たとえば指で歯を押す方法や、輪ゴムを使う方法が代表的です。
しかし、自力での歯並びの矯正は非常に危険です。誤った方向・力加減で歯に圧力がかかると、歯並びが余計に悪化することがあります。
あるいは無理やり歯を動かした結果、歯肉などを痛めるケースも少なくありません。最悪の場合は歯が抜けることもあります。
歯列矯正は、歯科医に依頼するのが1番です。多少お金・時間はかかるものの、安全にきれいな歯並びを手に入れられる可能性が高まります。
歯科医院の中には、無料相談や無料カウンセリングを行っているところも多いです。費用などが気になる方は、ぜひ下記のリンクから無料相談をご予約ください。
出っ歯とすきっ歯の矯正方法
出っ歯やすきっ歯は矯正治療で改善が見込めます。代表的なのはマルチブラケット矯正およびマウスピース矯正です。
マルチブラケット矯正
マルチブラケット矯正は、いわゆるワイヤー矯正です。歯列矯正の中では最もポピュラーで、かつ歴史が長い方法でもあります。
マルチブラケット矯正では、ブラケットという小さな装置を歯につけ、ワイヤーでつないで固定します。
マルチブラケット矯正は、ほぼすべての症例に対応できるのがメリットです。また、歯列矯正の中では比較的安い方法でもあります。
一方、デメリットとしては見た目の悪さが挙げられます。ワイヤーを使用するため、口を開いたときに矯正装置が目立つのは否めません。
そのほか、ワイヤーによる口内の痛みや、歯磨きのしづらさも代表的なデメリットです。
【メリット】
- ほぼすべての歯並び・噛み合わせに対応できる
- 歯並びの微調整ができる
- 矯正治療の中では治療が比較的安い
- 治療に対応している歯科医院が多い
【デメリット】
- 矯正装置が目立つ
- ワイヤ―による歯・口内の痛みがある
- 歯磨きしづらいため、歯周病・虫歯のリスクが高い
マウスピース矯正
透明なマウスピースを装着する方法です。マルチブラケット矯正と比べて、矯正装置が目立ちにくいというメリットがあります。
また、患者様がご自身で取り外しできるため、歯磨き・食事での煩わしさもほとんどありません。
一方で、装着時間を守らないと矯正の効果が出にくいというデメリットがあります。
クリニック間での技術差が大きいのが難点で、治療するクリニックによっては対応症例が限られることも多々あります。
重度の出っ歯・すきっ歯の場合は、マウスピース矯正では対応できないクリニックがあります。
【メリット】
- 矯正装置が目立ちにくい
- 歯磨き・食事中は取り外せる
- 樹脂製の装置のため、歯・口の痛みが発生しにくい
【デメリット】
- 重度の出っ歯・すきっ歯には対応できないクリニックがある
- 噛み合わせの改善には適応できないクリニックがある
- 装着時間が短いと矯正の効果があらわれない
外科矯正
出っ歯・すきっ歯の治療には外科矯正が選択されることもあります。外科矯正とは外科手術を伴う矯正方法です。
外科矯正を行うのは、従来の歯列矯正では改善が見込めない場合です。より具体的には、骨格に問題がある場合が該当します。
外科矯正では、顎の骨を削る・動かすなどして、噛み合わせの改善を図ります。手術後、従来の矯正治療で歯並びを整えるケースもしばしばです。
出っ歯やすきっ歯には部分矯正という選択肢
歯列矯正には、全体矯正と部分矯正の2種類があります。全体矯正は歯列全体を整える方法です。
対して部分矯正は歯並びの一部のみを整える方法です。多くの場合、上下の前歯6本の矯正を行います。
出っ歯・すきっ歯の治療は、部分矯正が選択されることが一般的です。出っ歯・すきっ歯を部分矯正で治療するメリットを2つご紹介します。
短期間で治療できる
部分矯正は、全体矯正に比べると治療期間が比較的短めです。全体矯正の場合、治療期間は平均2~3年ほどかかります。
対して部分矯正は、多くの場合、数か月~1年で治療完了です。矯正期間が短いと、さまざまな面でメリットがあります。
たとえば、矯正装置のストレスが比較的小さくなります。矯正装置には、見た目や装着時の違和感といった問題が少なからずあるものです。
装着中は食事や歯磨きにも気を遣わなければなりません。装着期間が長引けば、当然ながらストレスも大きくなります。
部分矯正は1年以内に治療が終了することがしばしばです。多少の不自由さはあれど、全体矯正に比べるとストレスを感じる期間はグッと短くなります。
そのため「矯正装置をつけるのに抵抗がある…」という方は、部分矯正を視野に入れるのもおすすめです。
費用を抑えられる
部分矯正は全体矯正に比べると費用が安い点が魅力です。部分矯正は歯並びの一部のみを整えます。
そのぶん使用する矯正装置の大きさ・数が少ないため、費用は安くなります。治療期間の短さも低コストの理由の1つです。
部分矯正は費用・期間が短いため、プチ矯正などとも呼ばれています。
比較的安価できれいな歯並びが手に入れられるため、若年者でも取り組みやすい治療方法です。
出っ歯やすきっ歯の矯正治療の注意点
出っ歯やすきっ歯を部分矯正で治療するには、デメリット・注意点も存在します。
- 重度の出っ歯・すきっ歯には対応できない
- 根本的な歯並び・噛み合わせの改善ではない
- 治療後に後戻りのリスクがある
- 健康な歯を削ることがある
部分矯正は、口元の見た目を改善する意味合いが強い治療法です。歯並び・噛み合わせの根本的な改善には向いていません。
そのため、歯並び全体でみると理想的な仕上がりにならないこともあります。
前歯の見た目を重視した結果、奥歯の噛み合わせに問題が出るケースも否定できません。さらに対応症例が少ない点にも留意しましょう。
部分矯正は、歯を移動できる距離が限られています。そのため、歯を大きく動かすような歯列矯正には向いていません。
簡単にいえば、歯並びが極端に悪い場合は利用できません。対応できる場合でも、健康な歯を削ったり抜いたりするケースがしばしばです。
理由は、前歯をきれいに並べるスペースを確保するためです。また、治療後に歯の後戻りなどの問題が起こることも珍しくありません。
部分矯正は全体矯正と比べると手軽に取り組みやすいぶん、矯正効果をさほど期待できないこともあります。
実際にどのような矯正治療を行うかは、歯科医と相談しながら決めるのがベストです。下記のリンクから無料相談の予約ができます。ぜひ活用してください。
出っ歯やすきっ歯で悩んでいる方は専門医に相談を
出っ歯やすきっ歯に悩んでいる方は、まず歯科医の診察を受けましょう。理由は、出っ歯やすきっ歯の原因は患者様ご自身では判断しにくいためです。
さらに、歯並びの乱れが全身に思わぬ悪影響を全身に及ぼしている可能性もあります。現状を正しく把握するためにも、専門医の診察が重要です。
出っ歯やすきっ歯は多くの場合、矯正治療で改善できます。
スムーズな治療につなげるためにも、歯科医院を選ぶときは、矯正歯科専門医院を選びましょう。
まとめ
出っ歯やすきっ歯の原因はさまざまです。舌癖・口元の癖などの後天的な原因で起こることも少なくありません。
出っ歯やすきっ歯は見た目だけでなく、全身にも悪影響を及ぼします。心身に重篤な不調が出ることもあるため、早い段階での治療が望ましいです。
なお、自力での治療はやめましょう。かえって歯並びが悪くなったり、歯の寿命を縮めたりするおそれがあるためです。
ご自身の歯の状態を知るためにも、まずは歯科医のチェックを受けましょう。