ダウン症の歯並びの特徴を解説|ダウン症の人の歯科治療の特徴や矯正の種類もご紹介します

【監修:青山健一】

ダウン症の歯並びの特徴を解説|ダウン症の人の歯科治療の特徴や矯正の種類もご紹介します

先天性の疾患であるダウン症の方は、歯並びに問題があることが多いといわれています。
歯並びが悪いと噛み合わせのバランスが崩れ、口まわりだけでなく、さまざまな部分に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため早めの矯正治療が必要になる場合も多いです。歯列矯正はどうしても長期的な治療となってしまい、疾患を持っている方には負担が伴う可能性も高くなります。

そこで今回はダウン症の方に安心して歯列矯正を行ってもらうため、口腔内の特徴や治療方法などをご紹介していきます。

ダウン症とは

ダウン症とは

ダウン症は正式には「ダウン症候群」と呼ばれる遺伝子レベルでの異常が原因となる先天性の疾患です。
ヒトの染色体は2本を1対としたペアとなっており、それが1~22番まで存在します。ダウン症の方の場合21番目の染色体が1本多く3本存在すること(トリソミー)が原因で生じます。

このような染色体の異常は細胞分裂時に生じるとされていますが、トリソミーが生じる詳しいメカニズムは未だ解明されていません。
ダウン症候群の方は知的な発達に遅れがあったり、筋肉の緊張度が低いといった症状や心疾患といった持病を患っている場合も多いです。
またダウン症には大きく分けて「標準型」・「転座型」・「モザイク型」と3つのタイプがあり、それぞれ染色体の状態が異なります。

標準型

名前の通りダウン症候群内で最も多いタイプで、90%以上を占めています。
父親由来または母親由来あるいは両方の染色体分離がうまくいかずに染色体が3本になってしまうタイプです。

しかし親の染色体に異常がないことがほとんどで、標準型のダウン症は偶発的に生じるもので誰にでも生じる可能性がある疾患であるといえます。
実際ダウン症を罹患した乳児の出生率は1,000人に1人といわれており、決して低い割合ではありません。

転座型

転座型はダウン症候群全体の5%程度とされているタイプで、両親どちらかの21番目染色体の一部が他の染色体にくっついている状態(転座)で起こります。

そのため転座型の場合は親のどちらか、または両方が転座した染色体を保有していることで生じます。標準型と異なり、親の染色体の異常が子に遺伝するタイプです。

モザイク型

これまでご紹介した標準型と転座型は全細胞において染色体にトリソミー異常が生じますが、モザイク型は異常がある細胞と正常細胞が混在しているのが特徴です。

異常がある細胞と正常な細胞がモザイクのように入り混じっている様から、モザイク型と呼ばれているのです。
モザイク型は非常に少ないタイプで、上記の2つのタイプよりも症状が比較的軽い傾向にあります。

ダウン症の人の歯並びの特徴

ダウン症の人の歯並びの特徴

ダウン症の方は骨や筋肉といった身体的な発達が遅い傾向にあることと同様に、口腔内にも特徴が現れることがあります。
必ず現れるわけではありませんが可能性はゼロではないため、予め知っておくことでその後の対処が迅速に行えます。

受け口

受け口は上顎よりも下顎が前に出ている状態です。歯並びや噛み合わせの悪さから、骨格の歪みにも繋がります。
さらに受け口は食べ物の咀嚼や滑舌の妨げになったり、見た目の問題になったりとさまざまな悪影響があるのです。

特にダウン症の方は骨格の発達が遅い傾向にあるため、口腔内が小さいことや先に下顎が発達してしまうなどの骨格形成が原因で受け口を引き起こすリスクがあります。

歯の形の異常

ダウン症の方は歯の形に異常がみられることも知られています。骨格の発達が遅いことと同様に歯の成長も遅くなるためです。
歯根が短い歯や通常よりもとても小さい歯、隣の歯と繋がってしまう癒合歯が見られることが多いです。

永久歯の数が少ない

永久歯の数が少ない

永久歯の本数が少なくなる場合もあります。これはダウン症に限らず生じるリスクのある現象です。
しかしダウン症の方の場合は上記でお伝えしたように骨格の発達に異常がある場合が多いため、その影響から永久歯の数が少なくなる確率が高くなります。

歯が少ないことが直接的に問題になることはありませんが、必要以上にスペースが空くことで噛み合わせが悪くなることがあります。
経過をしっかり観察しておくことが大切です。

ダウン症の人の歯科治療について

ダウン症の人の歯科治療について

ダウン症の方は上記でもお伝えしたように歯並びや歯の形に問題がある場合があるため、状態に応じて歯科治療が必要になります。
ここではダウン症の方の歯科治療において大切なポイントを解説していきます。

早期治療と定期受診を推奨

もともとダウン症の方は口腔内にトラブルを抱えている可能性が高いです。いずれにおいても定期受診早期治療をおすすめします。
これはダウン症の方に限った話ではなく誰にでも当てはまることですが、ダウン症の方は心臓など他に持病をお持ちの場合もあります。

そういった方は特に慎重な治療が必要となるため、できるだけ状態が悪化する前に治療を行うことが大切です。
虫歯はもちろん歯並びなどの治療に時間がかかる内容は尚更といえます。
定期的な検診やクリーニングを行い、口腔内の経過を専門家に把握してもらっておくと精神的にも安心です。

心負担への配慮が必要

ダウン症の方は心臓などに持病を持っている場合が多いため、歯科治療の際は注意が大切です。
できるだけストレスを与えないような配慮やご本人が落ち着いて治療を受けられる環境を整える必要があります。

とても繊細で周りの状況を敏感に感じ取るため、特に初めて訪れる場所や経験に不安を感じやすいです。歯科医とよく相談しながら治療は焦らず少しずつ進めていきましょう。
また持病や過去に病院などで何かトラブルが生じた経験がある場合は、遠慮せずにきちんと歯科医へ伝えてください。

もしかかりつけの病院などがありましたら、歯科医へ行く前に医学的に注意した方がよいことなど専門医の観点から聞いておくのもおすすめです。
説明の内容が難しそうな場合は、紹介状のような形で書面を作成してもらうと安心です。

保険適用になるケース

一般的に、矯正治療は見た目の改善などを目的にすることが多いため自費治療となります。
しかし厚生労働省が定める疾患や条件に当てはまる場合、保険適用で矯正治療を受けられます。
ダウン症は厚生労働大臣が定める疾患に該当するため、保険適用で矯正治療を受けられる可能性が高いです。

ダウン症の人の矯正費用と期間

ダウン症の人の矯正費用と期間

ダウン症の方の治療で気をつけるポイントをおわかりいただけたところで、次は歯列矯正にかかる費用期間についてご説明していきます。
ダウン症の方の歯列矯正も治療方法は一般的な治療とそこまで大きな違いはありません。

費用相場

歯列矯正の治療費はかなり高額になるイメージの方が多いかもしれません。確かに歯列矯正は保険適用にならない場合が多いため、費用が高額になりやすいです。

歯科医院によってかなりの差がありますが、子どもの場合は大体30~50万円程度、大人の治療では70~100万円となります。
金額の幅は矯正治療の種類や口腔内の状態によっても変動しますが、およその目安として参考にしてください。

一方でダウン症の場合保険適用になる可能性も高いです。もし保険適用になる場合、大人の治療費は3割負担で済みます。
元々の金額が高額なだけに保険適用の有無でかなり負担額に違いがあります。

期間の目安

検査による治療方針の決定も含めたおおよその治療期間は、子どもで2~5年、大人では3年程度になります。
口腔内の状態によっては抜歯を行う必要があったり、子どもでは永久歯が生え揃うのを待ったりする場合もあるため、その場合はさらに期間が長くなります。
ダウン症の方も同様の期間がかかると考えていただければ問題ありません。

しかし治療環境に慣れる時間が必要な場合もあるため、その際はもう少しペースを落とすこともあります。念のためやや長めにイメージしておくとよいです。

ダウン症の人の矯正治療の種類

ダウン症の人の矯正治療の種類

ダウン症の罹患に関わらず矯正治療方法に大きな違いはありません。
治療方法によって金額や治療期間、痛みの度合いが異なるため、そういった違いをよく理解しておくとダウン症の方の歯科治療に役立ちます。
実際に治療をご検討の方もぜひ参考にしてください。

ワイヤー矯正

矯正治療でも一般的な治療方法が「ワイヤー矯正」です。
歯の表面にブラケットと呼ばれる矯正装置を取り付けて、そこへワイヤーを通し固定することで、歯を正しい位置へ戻すための力を加えていきます。
適用範囲が非常に広くさまざまな症例で治療が行えるため治療効果が得やすい点がメリットです。

一方、ワイヤーやブラケットによる見た目の問題や、装置の隙間に食べかすが挟まりやすいため日々のお手入れをより丁寧に行う必要がある点がデメリットでもあります。

歯の裏側にブラケットを装着する裏側矯正という方法や白い装置を使用することで目立ちにくくできます。
また日々のお手入れもきちんと定期的にメンテナンスを行っていれば、歯科医で歯石除去なども行ってもらえるため安心です。

マウスピース矯正

マウスピース矯正

ワイヤー矯正の他にも透明なマウスピースを使用して治療する「マウスピース矯正」という方法もあります。
その方に合わせたマウスピースを作成し、毎日マウスピースをはめて歯を少しずつ動かしていきます。

マウスピース矯正はワイヤー矯正とは異なり目立ちにくく、取り外しも可能なためどうしても外したい場面などでは気軽に外すことが可能です。

しかし歯並びによってはマウスピース治療が行えない場合もあり、必ずしも誰もがマウスピースで治療できる訳ではない点は注意が必要です。

ダウン症の人の矯正治療リスク

ダウン症の人の矯正治療リスク

ダウン症の方が矯正治療を行うためにはストレスなどの負担を考慮しながら、ご本人に合わせたペースで行っていくことが大切です。
ここでは矯正治療中に配慮していただきたいリスクについてお伝えしていきます。

歯周病や虫歯になりやすい

上記でもご説明したように、ダウン症の方は歯の形や骨格にトラブルを抱えている場合が多いです。
磨きにくい凸凹が生じやすくなったり、受け口などの噛み合わせの歪みが原因で口呼吸をしやすくなります。
そしてこれらの問題は歯周病虫歯のリスクを高める原因です。

矯正治療中は装置を装着することも相まって、食べかすが口腔内の残りやすくなります。そのためいつも以上に口内環境を清潔に保つ必要があります。

心負担がかかりやすい

矯正治療は年単位で時間が掛かる上に、これまでに見たことのない装置を口に入れるといった経験をすることになります。
痛みや口腔内の違和感を感じてイライラしたり、ストレスが溜まりやすい状態になってしまいます。

ストレスは心負荷にもつながるため、特に心疾患がある場合には配慮が必要です。
好きなことで気を紛らわせるといった、ストレスを軽減できるような工夫や周りの方のサポートを忘れないようにしてください。

まずはダウン症に理解のある歯科医に相談しよう

まずはダウン症に理解のある歯科医に相談しよう

ダウン症を患っている方はとても繊細で周りの変化を敏感に感じ取ります。そのため治療の際にはさまざまな面から配慮理解が必要になります。

まとめ

まとめ

今回はダウン症の方の歯並び矯正治療について解説してきました。
ダウン症の方は骨の発達に遅れが生じることがあるため、歯の形・噛み合わせ・歯並びに問題がある可能性が高くなります。
そのためできるだけ早期の矯正治療が望ましいですが、何よりもまずはご本人の体調への負担や治療に対する気持への配慮が大切です。

焦らず歯科医ともしっかりと相談した上で、納得のできる治療方法を決めてください。矯正治療にはさまざまな方法があるため、きっとよい治療方針がみつかります。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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