【監修:青山健一】
目 次
あなたは、先天性欠損という言葉を聞いたことがありますか?
生まれつき歯の本数が不足していることを指しますが、これを「放置するとどのようなリスクが生じるのか」など、先天性欠損のことを中心に矯正治療で保険が適用できるのかを含めて説明していきます。
先天性欠損や矯正治療で保険が適用できるケースについて不明な部分がある場合には、ぜひ参考にしてください。
歯が足りないと感じる原因
「歯が足りない」と言われたことがありますか?「歯が足りない」と言われるケースは、歯科検診を受けたときが多いです。
通常、乳歯は20本で永久歯は親知らずを除くと28本生えてきます。
子どもの歯がいつまでたっても生えてこないなど違和感をうける場面がさまざまありますが、歯が足りない原因はどこにあるのかを説明していきます。
埋伏歯
埋伏歯とは、歯の一部、もしくは全てが歯茎や歯を支える骨の中に埋まり、自然に生えることができない歯のことです。
この事象は、歯が生えるスペースの不足、子どもの頃の外傷などによっておきる可能性があります。
親知らずなどが、埋伏歯に分類されます。
先天性欠損
永久歯は、全部で28本ありますが、生まれつき永久歯の本数が足りない状態を先天性欠損といいます。
なぜ、本数が生まれつき足りないのかというはっきりした理由はわかっていません。
この事象は、胎児の時期に歯胚という歯の芽となるものがつくられないことでおこります。
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先天性欠損を発症している子どもは多い
本来の乳歯の本数は上下合わせて20本です。現代では、10人に1人の割合で、先天性欠損になっているといわれており、この形成異常は、乳歯の時点で本数が足りないこともありますが、永久歯に生えかわった時に多くみられます。
割合が大きく増えていますが、子どもや親が気付かず歯科医院や幼稚園・学校での歯科検診で初めてわかるケースが多いのです。
乳歯のみ生えそろっている人も
通常、乳歯の下には、将来生えてくる永久歯の準備がされています。
乳歯の下には永久歯の元になる、歯胚というものが確認できますが、乳歯が20本生えそろっていても、歯胚がなければ、先天性欠損と診断されます。
乳歯の時点で、歯が足りないケースがありますが、歯胚がみられない形成異常のケースが多いのです。
親知らずは含まれない
親知らずは、第三大臼歯とも呼ばれ、10歳あたりで形成されはじめ18歳以降にでてきます。
通常であれば、上下で合計4本生えてきますが、親知らず自体生えてこない人が多いため、先天性欠損には分類されません。
先天性欠損を放置する危険性
「歯の数が足りなくても、生活していて大きな問題がなければ大丈夫」という考え方になっていませんか?
先天性欠損をそのまま放置しておくと、将来の日常生活に大きな影響を与える可能性があるのです。
先天性欠損を放置すると、どのような危険を及ぼすのか説明していきます。
噛み合わせに影響する
乳歯は、永久歯に押されて自然に抜け落ちるという仕組みなのですが、先天性欠損の状態では、乳歯がそのまま残る、または乳歯が抜けても永久歯が生えてこないため、隙間ができるということになります。
歯は、できた隙間を無理やり埋めようとするために斜めに生える、または倒れたりする歯が出てくるため、歯並びが悪くなり噛み合わせが乱れ、将来的にあごに悪い影響を与えてしまいます。
虫歯や歯周病のリスクが高くなる
先天性欠損の影響で歯並びが乱れてくると、歯磨きでも磨き残しが出てきてしまい、菌が繁殖することにより虫歯のリスクが高まります。
また、噛み合わせが崩れると歯を支える骨などに影響を与えるため、いつの間にか歯周病が進行している可能性があるのです。
先天性欠損の対処法
はっきりとした原因がわかっていない先天性欠損ですが、永久歯に先天性欠損があると判明した場合の対処法はどのようなものなのでしょうか?
ここで、対処法を解説していきます。
乳歯を活かす
乳歯が永久歯に押される形で、徐々にグラグラして抜けて永久歯が生えてくるのは自然の流れです。
先天性欠損により、永久歯が生えてこない場合は、10~11歳になっても乳歯が自然に脱落することはほぼありません。
体の成長に伴い、噛む力が強くなってきますが、噛む力を維持させるためには、乳歯をどれだけ長期間持たせるかを考える必要がでてくるのです。
乳歯は、永久歯と比較すると歯根が短いのが特徴であるため、きちんとメンテナンスをしなければ、すぐに脱落してしまい長期間持たせることができません。
乳歯のメンテナンスにより長持ちしたとしても、30歳前後には抜けてしまうケースが多いですから、乳歯を活かす方法は、その後の治療のための時間稼ぎであることを覚えていてください。
矯正治療を行う
乳歯が抜けてしまった場合、抜けてできたスペースをどうするかについて考えなければなりません。
スペースを放置したままでは、両隣の歯が傾いて伸びてくるなどの問題が生じ、全体の歯列が整わず、その後の日常生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで、乳歯があった隙間を埋めるために、歯列矯正をするという方法があります。
乳歯がまだ残っている場合でも、乳歯を抜歯し、歯列矯正するというやり方もあるため、歯科医と相談しながら最適な方法を検討してください。
歯が足りない矯正治療で保険が適用される条件は?
矯正治療は、多くのケースは自由診療ですから医療保険を使うことはできませんが、2020年4月より先天性欠損の場合の医療保険適用条件が改定されました。
1つ目の条件は、先天性欠損が6歯以上あること(生まれつき6本以上の歯が欠損している)、あるいは前歯の永久歯に3歯以上存在が確認できるが、生えてこない歯があるという条件です。
2つ目の条件は、先天性欠損が4歯あるいは5歯以上連続してあること(歯列矯正後も4~5本以上歯が欠損している部分があること)のどちらかに当てはまると保険適用が可能となります。
2つ目の条件に該当する場合は、インプラント治療を医療保険適用可能な状態で受けることができるということになりますが、医療保険を使ってインプラント治療を受けることが可能な病院は多くありません。
医療保険を使ってインプラント治療を受けることができる病院の条件は?
- 病院であること
- 歯科または歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること
- 当該診療科に係る5年以上の経験および当該療養に係る3年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること
- 当直体制が整備されていること
- 医療機器保守管理及び医薬品に係る安全確保のための体制が整備されていること
以上のような施設の基準があり、これを満たした歯科または歯科口腔外科のみで医療保険適用での治療を受けることが可能なのです。
医療保険を使ってインプラント治療を受ける場合は、医療保険を適用しての治療が可能な病院かどうかを確認することが必要となります。
先天性欠損が気になる場合の注意点
先天性欠損は、第3者はもちろん本人や家族でもなかなか気づくことができません。気付かないまま年齢を重ねていくと、多くのリスクを背負うことになってしまいます。
何気なく歯科医院で診察してみると結果的に先天性欠損だったというケースもあるのです。ここでは、先天性欠損が気になる場合の注意点をみていきます。
できれば7歳までにレントゲンを
先天性欠損は、レントゲン写真により、あごの骨の中にきちんと永久歯があるかどうか確認することができます。
子どもの時期で乳歯から永久歯への生え変わりの際に問題があり、レントゲンを撮って発見されることが多いことから、日本臨床矯正歯科医会では、永久歯の先天性欠損の有無を早期に発見できるよう、7歳までにレントゲン写真撮影することを推奨しています。
治療開始のタイミングは人それぞれ
子どもの段階から矯正治療で計画的に乳歯を抜歯して欠損部を埋める場合と、成人後もなるべく乳歯を残してダメになってから補綴治療で治すという2通りがあります。
治療を開始する年齢や患者さんの考え方によってタイミングや治療法が異なるケースがあるため、早期発見することにより治療の選択肢は大きく広がります。
発見が遅くなってしまうと、悪化した部分を治すために時間や費用が余計にかかってしまいますから、先天性欠損を早期発見し、計画的な治療を受けましょう。
下記から先天性欠損についての無料相談ができます。
永久歯の数が足りないと悩んでいるなら
乳歯が抜けた後でも永久歯が生えてこない、または乳歯がいつまでも抜けてこないというケースや永久歯に生えかわったときに、本数が足りないと感じたときには1度歯科医院へ行き相談することをおすすめします。
先天性欠損は、永久歯に生えかわった後の方が治療時間や費用がかかり、負担が大きくなる可能性があります。
矯正が大変であることや先天性欠損によるコンプレックスなどにより、日常生活に影響を与えることも考えられるため、早めに対処しましょう。
まとめ
ここまで、先天性欠損と矯正治療で保険が適用となる条件について説明してきました。
先天性欠損は、歯が生えかわるまでは、家族でも気づくことがとても難しいものです。
先天性欠損の有無に関わらず、他の症状が出ている可能性があるため、6~7歳までには1度歯科医院でチェックしてもらうことが必要です。
永久歯に生えかわった後の治療は、多くの負担がかかりますから遅くても7歳までには診察を受け、先天性欠損と診断された場合は、放置せず早めに治療をはじめましょう。
先天性欠損の治療を保険適用できる状態で受ける場合には、先天性欠損が6歯以上あることなどさまざまな適用条件があります。
保険適用条件を満たしているかをあらかじめ調べたうえで、担当医に相談することがおすすめです。