【監修:青山健一】
目 次
睡眠時に「ギリギリ」という音をたてて歯ぎしりをしてしまうことがあります。他人から指摘されないと気づかないものです。
この歯ぎしり、実は歯科検診で発覚することも。歯ぎしりで歯に負担がかかり、すり減りや欠損が見受けられる場合があります。
自覚がないまま歯ぎしりを続けていると顎関節が疲弊し、虫歯や歯周病ではないのに歯や顎に同じような痛みが出るようになります。
しかし、やめようとしてもやめられないのが歯ぎしり。有効な対策法とは?矯正治療との関係性は?
歯ぎしりについて理解を深め、対策を立てていきましょう。
歯ぎしりの特徴
歯ぎしりをしてしまうと歯や顎にどのような特徴が現れるのでしょうか。自分でチェックができる方法があるので試してください。
- 朝起きたとき口周り・顎の筋肉・関節に違和感がある
- 冷たいものや熱いものが歯にしみる
- 下の歯のアーチの内側にコブのようなものがある
- エラが張った顔つきになっている
- いつも頭痛や肩こりがある
このような特徴がある方は歯ぎしりの疑いが濃いです。家族に相談して寝ている間に歯ぎしりをしていないか確認してもらいましょう。
歯ぎしりの疑いがあれば、歯科を受診して歯や顎の状態をレントゲン撮影などでチェックしてください。
ストレスの多い生活をしていると寝ているときだけではなく日中も歯ぎしりや食いしばりをしてしまうことがあります。
歯ぎしりが疑われる症状が確認された場合は、日中も自分の癖に注意してみてください。
歯ぎしりによるトラブル
歯ぎしりは上の歯と下の歯をしっかりと噛み合わせ、横方向に強い力で擦り合わせる癖のことです。
その負荷は歯茎の境目にかかるため、歯がへこむように欠ける、歯茎が下がるといったトラブルを引き起こします。
また、顎の周辺の筋肉がこわばるため血流が滞り肩こりや頭痛に悩まされることも。慢性化する前に対策を考えましょう。
以下に歯ぎしりによる主なトラブルを解説します。
歯が欠ける
歯ぎしりは歯そのものに強い負荷がかかります。横に擦り合わせる力に耐えきれなくなると、欠けたり割れたりしますので要注意です。
神経治療をしていない歯であれば知覚過敏になります。治療していてもかぶせ物や詰め物が壊れたり取れたりして再治療が必要です。
割れ方によっては歯の根に達することもあり、抜歯するしかありません。そうなる前に対策を打っておきましょう。
歯肉に負担がかかる
歯ぎしりは歯だけでなく歯茎にも強い負荷がかかり、揺さぶられた歯の周辺の歯肉が少しずつ下がってしまいます。
歯を支えている骨も溶解してしまうと歯周病になるリスクが高まります。いったん発症すると進行が早いので気をつけましょう。
偏頭痛
歯ぎしりは顎の関節に強い圧迫を加えるため、関節がずれたり、中の軟骨に穴が開いたりする可能性があり要注意です。
悪化すると顎が動かしにくくなり、顎がだるく重いと感じます。周辺の筋肉や血管も機能不全になっていると考えましょう。
こわばった顎周辺の組織が脳への血流を阻害し偏頭痛を引き起こすことがあります。顎が重いと感じたら歯ぎしりを疑ってみましょう。
歯ぎしりに正しい対策をとれば、無駄に頭痛薬を飲まなくても済み、頭痛に慢性的に悩まされなくなります。
歯ぎしりと矯正の関係性
歯並びや噛み合わせを整える矯正治療では、歯の山と谷がきちっと合い顎が安定した位置に落ち着きます。
しかし歯ぎしりをすると矯正を終えた歯の位置が動いてしまいます。矯正治療には歯ぎしりを止める力は残念ながらありません。
また、歯ぎしりのために歯がすり減って顎の位置も不安定になりますし、顎が疲れていて咀嚼がうまくいきません。
睡眠時は本来鼻呼吸を行うため下顎が少し開き気味になり上下の歯が接触しないのですが、歯ぎしりでは接触してしまうことが問題です。
つまり、いくら歯並びや噛み合わせを矯正しても歯ぎしりのトラブルを根本から解決することはできないのです。
歯ぎしり対策として睡眠時に上下の歯を接触しないようにする「マウスピース」の使用を推奨します。
次にマウスピースの特徴や種類について見ていきましょう。
歯ぎしり用のマウスピースの種類
歯ぎしり用のマウスピースには大きく分けて2種類あります。ソフトタイプとハードタイプです。
歯ぎしりの負荷の大きさによってどちらが自分に合っているのかを選びます。それぞれについて、特徴を理解しておきましょう。
どちらのタイプも就寝時に使用しますが、日中でも食いしばりの癖がある方は日中も装着することをオススメします。
マウスピースを装着し続けていると、マウスピースに歯石がついたり菌が繁殖したりするので、毎日お手入れをしましょう。怠ると虫歯や歯周病になりますのでご注意ください。
ソフトタイプ
歯ぎしりの負荷が弱い人は「ソフトタイプ」を使用すると良いでしょう。目覚めた時に顎関節にだるさを感じる人に向いています。
装着感は軽く非常に良い一方、噛み合わせの位置の調整力は弱いです。壊れやすいことにも注意しましょう。
ハードタイプ
歯ぎしりの負荷が強い人は「ハードタイプ」を使用しましょう。目覚めた時に顎に痛みがあったり、音が出たりする人に向いています。
また、肩こりや偏頭痛がある人は顎関節の周辺への負荷を軽くする必要がありますので、ハードタイプを装着してください。
装着感は堅くよくありませんが、顎の位置の安定や噛み合わせの調整に優れた効果があり、壊れにくいことも長所です。
歯ぎしり用のマウスピースで得られる効果は?
歯ぎしりは無意識に行ってしまうため改善することが難しい癖のひとつです。睡眠時に行っているため問題が出ないと気づきません。
歯ぎしりのサインを見逃さず、マウスピースを装着してトラブルを未然に防ぎ、歯や顎の問題を悪化させないようにしましょう。
それぞれのトラブルに対してマウスピースがいかに有効なのかをご説明します。
歯・歯茎を守る
マウスピースを装着すると、歯同士を擦り合わせなくなるので歯がすり減らなくなります。
また、歯にかかる負荷を分散させるので、歯が折れる、欠ける、割れることを防止。歯科治療済みの歯であれば破損を防ぎます。
顎にかかる負担を減らす
マウスピースを装着すると、歯の位置が安定する位置に固定されます。歯の位置が決まると顎が安定するので、朝起きたときに楽です。
顎関節の負担が軽くなるので、関節内部の軟骨のすり減りを防止し、音を立てることもなくなっていきます。
筋肉の緊張を和らげる
顎の位置が安定すると顎周辺の筋肉の緊張がほぐれます。ちょうど良い下顎の緩みが維持されバランスも改善されるのです。
身体が傾いている人や姿勢が悪い人、肩こりや偏頭痛に悩んでいる人には、症状の改善が期待できます。
顎の動きも良くなりますので、日常生活で顎を使う時のストレスも軽減され、歯ぎしり自体の改善も期待できるでしょう。
歯ぎしり用マウスピースの費用相場
歯ぎしり用マウスピースは就寝時に装着するのが一般的なので「ナイトガード」という別名があります。
ナイトガードは歯型をとる場合には歯科医院で製作しますが、安価な市販のものもあるのでよく調べましょう。
歯科医院と市販のマウスピースの違いやお値段について次に説明します。
歯科医院で作る場合
歯科医院で歯ぎしり用マウスピースを製作する場合には、まず虫歯などのトラブルを治療しましょう。
その後、歯型をとってよくフィットするマウスピースを製作します。できあがりにはおよそ1週間を見ておきましょう。
このようなナイトガードは保険が適用されますので費用は一般的に5000円程度です。
市販の場合
市販マウスピースは、歯科医院にかかる諸費用を抑えられることや通販でも買えるお手軽さが魅力です。
費用は数千円から数万円まで幅広いため、各商品の仕様をよく読み込み、扱いやすいものを選びましょう。
歯科医院で製作されたマウスピースと比較すると、やはり市販のものは精度が劣っています。
合っていないマウスピースを使うと、歯に悪い影響が及ぶことがありますので、注意してください。
また市販マウスピースには歯科医のフォローはありませんので、自己責任でお使いください。
歯ぎしりをマウスピースで解決する際には専門の歯科医に相談
歯ぎしりは癖であるため、マウスピースでその癖を改善することはできません。マウスピースはあくまでも対処療法です。
とはいえ、自分に合わないマウスピースを使うと、歯並びに影響が出たり顎の位置がずれたりして逆効果となります。
ですので、マウスピースで歯ぎしりを対策する場合には自分の歯にぴったりと合うものを歯科医院で製作することをオススメします。
歯ぎしりが原因で虫歯や歯周病になっている人は、マウスピースを製作するための歯型をとる前に問題部分の完治が必要です。
また、保険適用条件についても詳しく調べてもらいましょう。ムリ・ムダのないパーフェクトフィットのマウスピースにしてください。
まとめ
歯ぎしりの特徴やトラブル、マウスピースで問題を軽減することなどを詳しく説明してきました。
歯ぎしりの原因は、その多くがストレスにあります。癖を直すことは簡単ではありませんが、ストレスと向き合うことは可能です。
歯ぎしりがストレスの高さのバロメーターであると考えて、これ以上悪化しないように、できれば改善するように取り組みましょう。
マウスピースはストレスを軽減させる効果もありますので、全身の緊張がほぐれて頭痛・めまい・肩こりが改善されます。
そして顎関節周辺の血流も良くなり、脳が活性化して機能も向上することが期待できるのです。
そして軽やかな気持ちで目覚める快感を味わいましょう。
それはやがて歯ぎしりの主な原因であるストレスの改善にもつながる好循環に繋がります。