【監修:青山健一】
目 次
寝ている間に歯をギリギリと動かす歯ぎしりの癖を持つ方は少なくありません。
しかし、就寝中で無意識のうちに行っているため歯ぎしりをしていることに自身は気づいていない場合も多いです。
そのまま放置してしまうと歯に大きなダメージを与えてしまうこともあるので十分注意が必要となります。
今回は、歯ぎしりの原因と解決方法について解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
歯ぎしりの主な原因
歯ぎしりは主に就寝中に無意識のうちに行っていることであるため、自身でコントロールすることは非常に困難です。
明確な原因というのはいまだに解明されていませんが、要因として考えられるものはいくつかあります。
歯ぎしりの主な原因を3つご紹介しましょう。
噛み合わせが悪い
上下の歯の噛み合わせが悪いと歯ぎしりを起こしやすい傾向があります。
歯並びが揃っておらず噛み合わせた際に特定の歯だけ強く接触するような状態であると歯ぎしりの原因になるのです。
また、虫歯の治療などで詰め物を行うとそれまでの噛み合わせが崩れ歯ぎしりをするようになることもあります。
上下で正しく噛み合わせができず一部が突出またはすり減っていると、それに対応するために歯ぎしりを行うという説もあるのです。
ストレス過多になっている
歯ぎしりの原因として一番多いのがストレスです。
歯ぎしりを解消するためにまず行う必要があるのは、ストレスを減らすことであるといっても過言ではありません。
就寝中に溜まったストレスを解消するために無意識で歯ぎしりを行うともいわれています。
裏を返せば日中の生活の中でストレスを解消できていないため、就寝中に無意識のうちにストレスを発散させているのです。
平日だと、日中は仕事をし通勤でも時間を取られるためストレスを発散させる時間を確保することが容易ではありません。
それでも、就寝前に意図的に心を落ち着けるような時間を取ることや休みの日にゆっくりできる時間を作ることは非常に大事なことです。
余裕がある時には公園などに出掛けて、運動やストレッチで身体を動かすとストレスの発散と共に運動不足も解消できます。
また、寝る前に気分をリラックスさせる音楽を聴くことやアロマテラピーなどもストレス軽減に大きな効果があるのです。
生活習慣
歯ぎしりは就寝中だけでなく普段の生活習慣の中でも無意識のうちに行っている場合もあります。
日中に歯を食いしばるような癖があると筋肉が記憶してしまい、寝ている間にも習慣として歯ぎしりを行うようになるのです。
必要な時以外には上下の歯を接触させないように心がけることが重要となります。
また、飲酒や喫煙といった習慣も歯ぎしりの原因となる可能性があるのです。
お酒の飲みすぎは睡眠の質を低下させてしまい、タバコは覚醒があるためこれも安眠の妨げとなってしまいます。
コーヒーなどに含まれるカフェインも覚醒作用があるため、就寝前には避けたほうがよいでしょう。
就寝中の歯ぎしりを意図的に防ぐ方法はありませんが、原因となる生活習慣を見直すと歯ぎしりを抑制する効果が期待できます。
歯ぎしりのパターン
歯ぎしりは上下の歯を擦り合わせる行為ですが、その動かし方にはいくつかのパターンがあります。
歯ぎしりの動かし方のパターンについて解説していきましょう。
グラインディング
グラインディングはもっとも一般的な歯ぎしりの動かし方です。
上下の歯を強くギリギリとこすり合わせるような動きをするのが大きな特徴になります。
歯を強く左右に動かし、ほとんどの場合大きなギリギリとした音が出るので周りの人も歯ぎしりに気がつきやすいです。
クレンチング
クレンチングは歯を動かすのではなく強く噛みしめるのが大きな特徴です。
噛みしめるだけでは音がすることはないので周りが気づくケースは少ないでしょう。
しかし、噛みしめることによってグラインディング同様に歯やあごに大きく負担がかかってしまいます。
クレンチングにより負荷をかけ続けてしまうと、歯やあごへの負荷だけでなく肩こりなどの原因となる場合もあるのです。
タッピング
タッピングは歯を上下に動かして歯をカチカチと音を鳴らす歯ぎしりです。
歯ぎしりというとギリギリと力を入れて動かすグラインディングのイメージが一般的でしょう。
このタッピングはグラインディングほど力を入れて動かすことはありません。
その分歯への負担は比較的小さいのですが、癖として無意識のうちに歯を上下に動かしてしまうのが特徴です。
歯ぎしりによる影響
歯ぎしりによって歯を食いしばったり強くこすり合わせてしまったりすると、身体に大きな影響を与えてしまいます。
その力はかなりのものであり、人によっては1トン以上もの力がかかる可能性もあるのです。
それだけ大きな負荷がかかるので、歯がすり減ったり割れたりすることや神経が傷つけられて痛みが出ることも少なくありません。
歯の一部分に強い力が継続してかかると歯のエナメル質が破壊され、虫歯や歯周病の原因になることもあります。
また、影響は歯やあごだけにとどまらず筋肉が緊張することによって頭痛を引き起こすこともあるのです。
筋肉はつながっているため、顔付近だけでなく肩や腰の筋肉も緊張状態となる場合もあり肩こりや腰痛の原因にもなります。
このように、全身に悪影響を及ぼす可能性があるので大きな症状が出る前に歯ぎしりに対する対策が必要になるのです。
歯ぎしりの解決方法
歯ぎしりは就寝中に無意識で行っていることであるため、自身でコントロールすることは困難です。
ですが、歯ぎしりでかかる歯への負担を軽減することや歯ぎしりを起こしづらくする工夫を行うことで改善させることもできます。
歯ぎしりの解決方法について解説していきましょう。
スプリント療法
スプリント療法は就寝中にスプリントと呼ばれるマウスピースを装着し歯ぎしりによる負担を分散させる効果があります。
スプリントを装着することによって、あごの関節にかかる力を軽くし負担を軽減することが可能です。
また、噛み合わせを正しい位置へと誘導することでバランスを整え全身の安定を図ることができます。
スプリントにもさまざまな種類があり、奥歯まですべての歯を均等に接触させるものから前歯だけの部分的なものまであるのです。
症状に合わせてスプリントを使い分け、最適なスプリントを使うことであごへの負担を軽減し噛み合わせの改善効果が期待できます。
腹式呼吸法
スプリント療法のように器具を使うもの以外にも、自分でできる対策として腹式呼吸があります。
腹式呼吸には気持ちをリラックスさせる効果があり、寝る前に行うことで就寝中の歯ぎしりを緩和させる効果が期待できるのです。
歯ぎしりは一種の緊張状態に陥ることで行われる可能性があります。
そのため、ゆっくりと呼吸を行う腹式呼吸によって気持ちを落ち着かせることで歯ぎしりを予防することができるのです。
歯ぎしりを解決する際の注意点
歯ぎしりの原因は完全には解明されておらず、他の病気を治療する際使われるような特効薬というのはありません。
スプリント療法などの歯ぎしりに対して行われる一般的な対処法はありますが、それは負担を軽減することが主な目的です。
そのため、歯ぎしりの根本的な解決までには至りません。
ですが、歯ぎしりの原因は1つではなくさまざまな要因が絡む場合も多く、その中でストレスも大きな原因となることがあるのです。
そして、治療を進め負担が軽減され気持ちが落ち着いていくとストレスも抑制できる可能性があります。
歯ぎしりを解決するためには、さまざまな要因の可能性を考慮し身体的な負担だけでなく心の負担も軽減する必要があるのです。
歯ぎしりを放置するリスク
歯ぎしりは就寝中に無意識に行っている行為であるため自身では気づかず放置してしまう場合があります。
しかし、歯ぎしりを放置し歯やあごなどに負荷をかけ続けてしまうと大きなダメージにつながることもあるのです。
歯ぎしりを放置するリスクについて解説していきます。
顎関節症の原因となる
歯ぎしりによって強い圧力をかけ続けると、歯だけでなくあごの関節にも大きな影響を与え顎関節症の原因となる場合もあります。
顎関節症はあごの関節から音がしたり口を開けると痛みが発生したりする病気です。
あご周りの関節に負荷がかかることや、筋肉が緊張することによって引き起こされる可能性があります。
痛みがひどくなると口を開けるのがつらくなり、食事にも支障をきたすこともあるので日常生活に大きな悪影響があるのです。
歯が摩耗し欠ける可能性がある
歯ぎしりが日常的に習慣化してしまうと、徐々に歯が摩耗していき欠ける可能性があります。
基本的には歯はとても硬い組織であり、通常の食事で使うくらいでは簡単に欠けることはありません。
しかし、歯ぎしりによって毎日のように歯をこすり続けてしまうと歯の表面を覆うエナメル質や象牙質が摩耗しすり減ることもあります。
歯がすり減ってくるともろくなってしまい、歯が欠けたり折れたりするリスクが出てしまうのです。
また、虫歯などの治療で詰め物や被せ物をしている場合でも歯ぎしりによって強い力がかかると取れてしまうことがあります。
継続して歯を摩耗させてしまうと、その下の神経まで傷つける可能性もあるので早めに対処する必要があるのです。
歯ぎしりをしていると気づいたら信頼できる歯科医に相談
歯ぎしりは主に就寝中に無意識のうちで行っていることも多いので自分では気づいていないこともあります。
また、初期の段階であれば大きな痛みなどもないため放置されるケースも少なくありません。
しかし、そのまま歯ぎしりが習慣化してしまうと歯の摩耗につながり悪化すると歯が欠けたり折れたりする可能性もあります。
そこまで悪化させてしまうと、歯の修復が難しくなるため歯ぎしりに気づいたら早めに歯科医を受診したほうがよいでしょう。
歯ぎしりの原因を自分で特定することは難しいので、信頼できる専門医に診てもらい適切な処置をすることが必要になります。
まとめ
歯ぎしりは決して珍しい病気ではなく、人口の5~15%は就寝中に歯ぎしりを行っているといわれています。
就寝中に無意識で歯を強く食いしばったりギリギリとすり合わせたりすることで歯をすり減らしあごへ
大きな負担をかけてしまうのです。
放置して歯ぎしりが習慣化してしまうと、最悪のケースでは歯が欠けたり顎関節症の原因となったりしてしまいます。
また、身体のバランスを崩す要因となってしまうこともあり顔周りだけでなく肩こりや腰痛を引き起こしてしまう場合もあるのです。
少しでも気になる症状があれば、早めに専門医の診断を受け適切な処置を行うようにしましょう。