【監修:青山健一】
目 次
ハーフリンガル矯正は、表面矯正と裏側(舌側)矯正との特徴を併せ持ったワイヤー・ブラケット矯正のひとつです。
そんなハーフリンガル矯正の特徴やメリットを中心に、ハーフリンガル矯正をおすすめできる人、さらには費用相場や治療期間の目安などについて、気になるポイントをご紹介します。
今現在、矯正歯科治療を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
ハーフリンガル矯正の特徴
矯正装置を歯の表側に取り付ける「表側矯正」と、歯の裏側に取り付ける「裏側(舌側)矯正」とを組み合わせたものが、ハーフリンガル矯正と呼ばれる矯正治療です。
ワイヤー・ブラケット矯正のひとつ
ワイヤーとブラケットを用いた矯正治療のことをワイヤー・ブラケット矯正と呼びますが、ワイヤー・ブラケット矯正には、下記のような3種類の方法があります。
- 表側矯正:歯の表側に矯正装置を取り付ける
- 裏側(舌側)矯正:歯の裏側(舌側)に矯正装置を取り付ける
- ハーフリンガル矯正:上の歯は裏側に、下の歯は表側に矯正装置を取り付ける
以上のとおり、ハーフリンガル矯正はワイヤーとブラケットを用いるワイヤー・ブラケット矯正のひとつです。
上の歯は裏側矯正・下の歯は表側矯正
ワイヤー・ブラケット矯正のうち、矯正装置を歯の表面に取り付けるのが「表側矯正」、逆に矯正装置を歯の裏側(舌側)に取り付けるのが「裏側(舌側)矯正」です。
ハーフリンガル矯正は表側矯正と裏側(舌側)矯正とを組み合わせ、上の歯は裏側に、下の歯は表側に矯正装置を取り付けて矯正治療を行います。
ハーフリンガル矯正のメリット
ハーフリンガル矯正は、
- 矯正装置が目立ちにくい
- 裏側矯正に比べて費用を抑えられる
- 矯正装置の違和感を減少できる
- 裏側矯正よりも短期間
- 矯正装置が発音に与える影響が少ない
以上のように、多彩なメリットを持っているのが特徴です。
矯正装置が目立ちにくい
ワイヤー・ブラケット矯正のうち、表側矯正では笑った際に矯正装置が目立ってしまうほか、矯正装置の厚みがそのまま口元の厚みにも影響してしまいます。
笑ったときによく目立ってしまうのは上の歯ですが、ハーフリンガル矯正では上の歯列に裏側(舌側)矯正を施すため、矯正装置が目立ちにくいメリットがあります。
また、歯の表面に矯正装置を取り付けるのは下の歯列だけのため、表面矯正に比べて口元の厚みも抑えられるため、矯正装置による影響が少なくて済みます。
裏側矯正よりも費用が安い
なるべく費用を抑えて歯並びを矯正したい人にとっても、ハーフリンガル矯正にはメリットがあります。
矯正装置をできるだけ目立たないようにするには裏側(舌側)矯正が効果的ですが、歯の裏側(舌側)に矯正装置を取り付けるのは表側に取り付けるのと比べて手間がかかります。
上記の理由から、裏側(舌側)矯正では表側矯正よりもコストが高めになりがちになってしまうデメリットが生じてしまうのです。
ハーフリンガル矯正なら上の歯だけに裏側(舌側)矯正を施すため、上下の歯を裏側(舌側)矯正で治療するよりもコストを抑えることができます。
矯正装置の違和感が少ない
裏側(舌側)矯正ですと、どうしても舌に矯正装置があたってしまうため、人によっては常に口中の違和感に悩まされることがあります。
ハーフリンガル矯正なら、裏側(舌側)に矯正装置を取り付けるのは上の歯だけのため舌に矯正装置が当たりにくく、口中の違和感がかなり抑えられます。
裏側矯正より短期間で済む
一般的に、裏側(舌側)矯正と表側矯正を比較すると、裏側(舌側)矯正の方が治療期間も長めだと言われています。
ハーフリンガル矯正は下の歯だけに表側矯正を施すため、上下の歯を裏側(舌側)矯正で治療するよりも短期間で済むメリットがあります。
発音への影響が少ない
舌の歯にも裏側(舌側)矯正を施すと、先述しましたように矯正装置が舌にあたってしまうため、発音にも影響を及ぼすことがあります。
ハーフリンガル矯正では上の歯にしか裏側(舌側)矯正を施さないため、舌に違和感を覚えることもなく、発音に与える影響も最小限に抑えられます。
ハーフリンガル矯正がおすすめな人は?
ハーフリンガル矯正は、できるだけ矯正装置を目立たせたくない人や、出っ歯など歯列の見た目を治したい人におすすめです。
矯正装置が目立たない方がよい
歯の矯正をしたくても、取り付けた矯正装置が目立ってしまうことに対して、大きな不安を覚える人も少なくありません。
特に、歯の表側に矯正装置を取り付ける表側矯正を選択してしまうと、笑った際に矯正装置が目立つなどデメリットが大きいです。
しかし、ハーフリンガル矯正ならよく目立つ上の歯には裏側(舌側)に矯正装置を取り付けるため、表側矯正に比べて目立ちにくくなります。
できるだけコストを抑え、かつ矯正装置を目立たせたくない人におすすめの矯正治療です。
出っ歯を治したい
ワイヤー・ブラケット矯正のうち、裏側(舌側)矯正は歯の裏側に矯正装置を取り付けることにより、歯を内側へと引き込みやすい矯正治療として知られています。
ハーフリンガル矯正も、上の歯の裏側に矯正装置を取り付けるため、上下の歯を裏側(舌側)矯正で治療するケースと同様に、出っ歯を矯正したい人に対して効果を発揮してくれます。
ハーフリンガル矯正の費用相場
厚生労働大臣が定める疾患に起因した矯正歯科治療などの特別な例を除き、一般的には矯正歯科治療は保険適用外です。
保険の適用が認められるのは国が定めた疾患に該当し、かつその疾患の影響によって歯列に異常が認められる場合など、ごく少数の例に限られます。
そのため、審美目的で歯並びを治療するケースでは保険の適用を受けられません。矯正歯科治療のひとつであるハーフリンガル矯正の費用相場も、通常の歯科治療よりは高くなります。
ハーフリンガル矯正の費用相場は全体矯正で100万円前後
矯正歯科治療では、全体矯正をするのか、それとも部分矯正だけで済むのかによって、かかる費用にも開きがあります。さらに、歯並びの状態によっても費用にはばらつきがあります。
当然ながら、歯並びの状態が悪ければ矯正歯科治療の費用が高くなりますし、歯並びの異常が比較的軽微であれば、総体的な費用も安くて済みます。
まず、ハーフリンガル矯正で全体矯正を行う場合の費用相場は、100万円ほどが目安となります。部分矯正はもう少し安く、50万円ほどが目安です。
もちろん、治療先歯医者によって料金設定が異なりますし、使用器具によっても価格帯には若干の差が発生します。その点も考慮した上で、あくまでも目安の相場として参考にしてください。
裏側(舌側)矯正よりも20%ほどコストを抑えられる
ハーフリンガル矯正は、上の歯列だけに裏側(舌側)矯正を施すため、上下裏側(舌側)矯正にするよりも低いコストで済みます。
どれだけコストが抑えられるかは個人によって差がありますが、概ね20%ほどのコストを抑えられます。
ハーフリンガル矯正の治療期間
ハーフリンガル矯正を始めた時期は同じでも、個人の歯の状態によって治療が完了する期間には大きな開きがあります。
早ければ1年ちょっとで効果が現れる人もいますが、治療期間が2年を超えるケースも珍しくありません。
治療期間の目安は最長で2年半ほど
ハーフリンガル矯正による矯正治療では、治療完了までに最長で2年半ほどかかります。これを長いと考えるか、短いと考えるかは個人の価値観にもよります。
短期間で済ませたいなら裏側矯正よりもおすすめ
メリットでもお伝えしましたとおり、上下の歯をフルで裏側(舌側)矯正するよりも短期間で済むのがハーフリンガル矯正の特長のため、期間にこだわりたいなら上下裏側(舌側)矯正よりハーフリンガル矯正をおすすめします。
ハーフリンガル矯正以外の選択肢
歯の矯正治療には、ハーフリンガル矯正以外にも選択肢があります。矯正歯科を検討しているなら、別の選択肢も含めて総合的に判断するようにしましょう。
部分矯正
ハーフリンガル矯正よりもさらに費用や期間を抑えたい人や、前歯だけなど部分的に矯正できれば十分という人は、部分矯正という選択肢があります。
部分矯正は、その名のとおり前歯の気になる部分だけに限定して矯正を施す治療方法で、治療範囲が限定的な分だけ費用が抑えられるほか、期間も短くて済みます。
こうした理由から、部分矯正のことをプチ矯正と呼ぶこともあります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の矯正装置を使用した矯正治療です。ワイヤーやブラケットを使用した矯正治療に比べて矯正装置が目立ちにくいのがメリットです。
また、マウスピース型のため歯磨きの際は簡単に取り外しもでき、ワイヤー・ブラケット矯正よりも衛生的に使用できます。
もちろん食事の際にもマウスピースを取り外すことが可能で、口中の違和感を覚えることなく食事を楽しめます。
一方で、簡単に脱着できてしまうことによる甘えが発生してしまい、総体的に装着時間が短くなりがちになってしまうのがマウスピース矯正のデメリットです。
矯正を成功させるには、長時間マウスピースを装着し続けるという本人の努力が不可欠です。
ハーフリンガル矯正のお悩みは歯科医に相談
歯並びの矯正は子供の頃にするものというイメージがありますが、大人であっても矯正治療が可能です。
むしろ、歯の生え変わりなど、成長に伴うさまざまなタイミングを計りながら治療を進めていく必要のある子供に比べて、永久歯の生えそろっている大人の方が矯正治療を進めやすい一面もあります。
費用や期間など納得の上でハーフリンガル矯正を始めよう
歯並びなど見た目のコンプレックスが解消されるメリットこそあるものの、ハーフリンガル矯正をはじめとした矯正治療には、相応の費用と期間も必要です。
ハーフリンガル矯正に対する不安や悩みごとは一人で抱えていても解決することはありません。まずは専門の歯科医に相談し、十分に納得した上で治療をするかどうかを検討しましょう。
まとめ
ハーフリンガル矯正は、100万円前後の費用がかかってしまうことや、最長2年半ほどの治療期間を要するなど、費用面・時間面での負担も相応に必要となりますが、上下裏側(舌側)矯正よりも低コストで、しかも短期間で済むなどの特長もあります。