【監修:青山健一】
目 次
矯正治療前に検査が多いことに驚く人がいますが、考えてみてください。逆に何も調べずに新たな治療を開始する病院の方が不安になりませんか?
歯科矯正治療は患者様に個別の治療方法を提供しますから、詳しく正確な情報を集めるために全て必要な検査です。
患者様によっては別に必要な検査を追加で行うこともあります。自分に合った治療方法を選ぶために必要な情報を集めることが大切です。
そこで、今回は歯の矯正治療前に行われる検査について詳しく解説していきます。
矯正治療の前は検査が多い?
一般的に病気の治療の前には、必ず検査を行います。それは、治療前の検査が治療の方針を決めるために体の状態など正しい情報を集めるのに必要な検査だからです。
医師は患者様との話だけで治療の方針を決めることはありません。自分に合った治療の方法を決めるためには、たくさんの患者様の体の情報が必要となります。
外部から見える症状が同じでも、体の状態によって病気の原因が同じとは限りません。歯科治療では口の中が見えないことも他の治療と違います。
歯の病気の原因は口の中にあるとは限らず、顔の骨格・体全体のバランスが影響している場合もあります。ですから様々な視点からの情報が必要です。
それぞれの検査は形式的に行うわけではなく、必ず意味と目的があります。検査結果は、患者様に合った治療を選択するために必要な情報です。
では、順に検査の種類と目的、その費用について詳しく説明します。
矯正前に行う検査の種類
矯正前に行う検査はこれからの治療を続けるのに必要な情報を得るために行なわれます。その結果をもとに治療方針を決める大変重要な情報を得ることが目的です。
矯正治療は歯並びやかみ合わせを変えるため、外見だけでなく顔全体のバランスにも影響することがあります。治療前後の状態を比較しながら治療するために写真は不可欠です。
写真は口の中や顔全体を撮影します。レントゲン写真は見えない内部の情報を得るために必要です。他に歯の型取りなどの検査があります。
これら矯正治療前の検査のそれぞれの目的について説明していきましょう。
口腔内写真
口腔内写真は、正面・噛み合わせ左右2枚・噛む面上下2枚の5枚撮影することが一般的です。歯科医師と患者様が口の中の状況を共通理解する意味もあります。
虫歯の有無・被せ物の確認・歯垢の付着状況を写真映像から確認し、治療部位の特定につなげます。虫歯の治療や被せ物の取替の判断が可能です。
口腔内写真は治療後にも撮影し、前後の写真を比較することで治療の確認ができるとともに、治療後の新たな状態の変化が出た場合の資料になります。
顔貌写真
顔貌写真は治療前に撮る顔全体の写真です。治療前に顔のゆがみがある場合は、その原因を考えて治療方針を決めなければなりません。
歯科矯正は歯を正しい位置に動かす治療ですから、歯が動くことにより顔全体の骨格の変化も考えられます。その変化の確認のために顔の写真が必要です。
顔貌写真を一度撮影すると治療後の新たな変化にも気づきやすくなるメリットが生まれます。継続的に笑顔を大切にするためにも大変重要な資料です。
治療前は顔全体のバランスを確認し治療方針に生かし、治療中も矯正部分だけでなく全体のバランスを考えながら治療します。
レントゲン撮影
歯科用レントゲンは一般的な胸部レントゲンより弱い放射線量で照射範囲も口の周りだけと限定されているため安心です。
レントゲンで外部から分からない歯や歯茎の内部の状態を確認するために有効です。部位や目的によって使うレントゲンが異なります。
デジタルX線は2~3本の歯の部分を撮影するときに使用し、隠れた虫歯の発見や特定の範囲の状況を確認することが目的です。
パノラマX線は顎全体を撮影するときに使用し、虫歯・歯周病・親知らず・歯の生え変わりなどの確認をします。腫瘍や顎関節の確認に不可欠です。
セファロX線は横顔の骨格を撮影するときに使用し、口元の出っ張りを確認します。
歯の型取り
虫歯の治療でも歯型を取ります。歯型は被せ物や入れ歯の作製のため作りますが、矯正治療の場合は矯正装置を制作することを目的に作成します。
歯型をもとに口内模型を作ることにより、患者様が帰った後でも歯並びの確認をしたり治療の方法の検討をすることができ患者様の負担軽減が可能です。
歯型をもとに矯正装置を作ることで、患者様の負担を軽減し治療期間を短縮することにつながります。
歯型取りはやわらかいペースト状の材料を固まるまで噛み続けるため、不評でした。最近は3Dスキャナーを使った歯型取りが可能になりました。
CT検査
歯科用CTは一般検査のCTを歯科専用として開発された検査機器で、今まで不鮮明だった親知らずの根の先の向きなども鮮明な立体画像を撮影できます。
鮮明な3D画像は詰め物など取り外さなければ確認できなかった部位も、処置前に観察でき明確な治療方針を決定できるようになりました。
歯科用CTは口腔内の見える部分やその内部まで画像を撮れるため患者様の負担が大きく軽減されます。保険適用があるため費用の面でも安心です。
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型取りではなくスキャナーを導入している歯科医も
従来の型取りはピンク色の柔らかい材料を口に入れ固まるまでじっとして歯型を取りました。治療のために必要ですが患者様にとって不快でした。
歯型から入れ歯や矯正装置を作る場合に多少の技術的な誤差により、作り替えや調整が避けられなく治療の期間が延びることもあります。
そのような不具合を解消するために歯科用3Dスキャナーを導入する歯科医院が増えてきています。そのメリットをご紹介しましょう。
歯科用3Dスキャナーは口の中に小さいカメラを入れて動画を取る装置です。不快感も少なく短時間で口腔内上下の歯の様子を撮影できるようになりました。
詳細なカラー画像は歯や歯周組織までをも再現できるため、制作される入れ歯や矯正装置も精精度が上がり作り直しが減少しています。
この装置のメリットは歯型取りの不快感が減り矯正装置のフィット感が向上することで安心して治療を進められ、治療期間の短縮が見込めることです。
なぜ矯正前に精密検査が必要なのか
治療前に歯科医師は患者様と面談をし、患者様が不快に感じる症状と治療したい部位について聞き取ります。しかし、それだけでは原因までは把握できません。
患者様が感じている症状に合致する病名を面談だけでは限定できませんから、歯科医師は可能な限り正確な歯の情報を得ようとします。それが治療前の精密検査です。
歯科医師は矯正治療を始める前に、歯並びや歯の状況だけでなく顎の骨格や大きさなどの顔全体の情報も得たうえで治療方針を決めていきます。
治療中にも治療の状況・患者様の負担感・痛みの発生などに留意し、必要に応じての精密検査や治療方法の見直しも必要です。
治療計画を立てるため
歯科治療のときに気を付けることは、患者様が感じている症状を生み出す原因が違うと治療方法が全く変わるということです。
歯科医師は治療計画を立てるために、患者様の意見や希望を聞くだけでなく症状の原因となる根拠を治療前の精密検査から読み取らなければなりません。
治療計画は1つとは限りません。患者様の要望に合わせるためにも矯正前の精密検査から複数の手段を探し出し、最善の治療計画を提案します。
噛み合わせの確認
矯正治療前の精密検査では噛み合わせの状態と原因を追究しなければなりません。噛み合わせによって顔かたちのバランスに影響が出ることがあるからです。
生活習慣や食嗜好など精密検査で得られない情報は患者様からのヒアリングが不可欠です。古い写真などから変化を判断することもあります。
矯正治療が長期にわたり効果を持続するためには、口腔内の治療だけでなく根本的な生活改善に取り組むことも必要です。
虫歯の早期発見
歯科矯正前から虫歯がある人は矯正前に治療を終えておくことが一番ですが、矯正治療中に虫歯治療が可能です。
詰め物や被せ物がある人は矯正治療に影響が出ない新しいものにより変えることもあるため、医師の指示に従ってください。
矯正治療中に歯が動いて隠れていた虫歯が新たに見つかることもありますが、その場合も矯正治療をしながら虫歯の治療が可能です。
いずれにしても、矯正治療の進み具合を考えて歯科医師から治療の順序の変更や時期の選定の提案があります。ここでの治療計画の相談が大切です。
検査費用と所要時間
精密検査費用は矯正治療全体の費用の中に含んで支払う場合と精密検査費用だけを支払う場合があり、歯科医院によって違いがあります。
治療前の歯科医師との話し合いのときに大体の費用と支払いの方法について相談できますから、ご希望があれば率直にお話しください。
一括支払いの約束でスタートしますと、検査が終わった段階で何らかの都合で矯正治療をやめても、精密検査分の支払いはしなければなりません。
支払い方法は様々な方法がありますから、分からないことやお困りのことは歯科医院に相談することが大切です。
検査費用の相場
矯正治療は自由診療ですから健康保険の適用が受けられません。精密検査費用も病院によって費用が異なるためしっかりと確認することが大切です。
一般的な価格でも1万円~6.5万円と大きく異なります。支払いの時に困ることの無いように事前に確認しておきましょう。
当初予定していた精密検査に追加の検査が加わる場合もあります。その都度追加の目的と金額を確認し、他の検査に変えられないかの相談も可能です。
支払い方法は精密検査費用と矯正治療を別にする場合と合算する場合がありますし、一括支払い・月払い・通院ごとの支払い方法の選択できます。
デンタル・ローン(長期間の分割払い)もありますから、できるだけ負担が軽くなるように気軽に歯科医院に相談してください。
検査にかかる時間
治療前の精密検査・診断は矯正治療の方針が決まる大変重要な検査です。検査には1時間~1時間半程度かかります。
精密検査が数種類連続するため不安に感じられる場合は、検査を数回に分けて行うことも可能ですから我慢せずにご相談してください。
精密検査で得られた歯の情報をもとに歯科医師が矯正方針を決め、検査後の診断日に検査結果の説明を受けることができます。
この診断日の説明の中で費用や治療期間が決まりますから、しっかりと確認することが大事です。
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検査を受けるのは矯正の前だけ?
矯正治療前の精密検査は歯科医院によって大きく変わりません。しかし、治療中に別の検査が必要なときは追加で行うことで治療の精度を上げることができます。
治療中に新たな症状が出た場合も検査は必要です。これにより治療への影響や患者様の体への負担を軽減することができます。
治療後に治療前の状態との比較が必要になる場合は新たに検査を追加します。治療方針の変更やよりよい治療につなげるための必要な検査です。
安心して矯正治療を受けるなら
矯正治療の前に確かな精密検査をしてから治療に入ることは、患者様と歯科医院の安心と信頼関係につながる大切な治療のスタートです。
矯正治療は長い治療のため多くの患者様が不安に感じながら治療をスタートします。歯科医師の根拠ある提案が患者様の安心への一番の近道です。
このように、精密検査から得られた治療のためにデータを歯科医師と患者様が共有しながら治療に取り掛かれることが一番の安心につながります。
まとめ
今回は、歯の矯正前に行う検査について解説してきました。
歯科矯正は1~2年もかかる長い治療です。その間に、不安や焦りもあると思います。その不安を軽くするためにも、矯正前の精密検査は不可欠です。
検査の目的を知り、検査の結果を歯科医師と共有することで歯科医師の治療方針を理解できるため一緒に治療を進めることになります。
治療は一人で進めることはなく、必ず歯科医師があなたを支えます。一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
歯科矯正について不明なことがありましたら、矯正歯科の専門医にご相談してください。