【監修:青山健一】
目 次
反対咬合(受け口)の治療方法は子供のうちに施術した方が体への影響が少なくなります。
治療せずにいると大人になってから骨・滑舌・歯並びの状態が悪くなることもあるからです。
子供のうちに治療すればマウスピースなど軽度の矯正で終わることもあります。
ただし受け口の治療は大人になっても可能ですし、成長する中で改善するケースもあるためお医者さんと相談してみてください。
今回は受け口の矯正治療の流れ・原因・改善方法を解説します。
反対咬合の特徴
反対咬合は歯の噛み合わせにより、下顎が上顎より前に出ている状態をいいます。
上下の骨の成長がアンバランスのために起こる症状で乳歯が生えそろう3歳ぐらいから起こるといわれていますが、成長期の12才~15才頃に顎のずれが目立つこともあります。
受け口のまま成長しても死に至ることはありませんが、日常生活でさまざまな問題を抱えるため下記の点に注意が必要です。
- 話し方や食べ物の咀嚼などで歯がうまく噛み合わない
- 叢生 (そうせい)や出っ歯などにもなる
- 顔の見た目の変化
- 歯並びが悪くなる
- 歯がぐらつきやすい、前歯が抜ける
こうした症状を成長期に放置すると噛み合わせがより悪くなり、最悪の場合下顎を切断しなくてはならないときもあります。
下顎が前方に出ている場合、治療を検討するうえで歯科医に1度診てもらうことをおすすめします。
反対咬合の原因
受け口の原因には遺伝と環境の2つがあります。
受け口は上顎と下顎がずれていることで起こる状態です。
遺伝による場合は矯正治療が必要ですが、環境による場合は幼少期であれば生活習慣を見直すと改善することもあります。
詳しくみていきます。
遺伝
家族や親戚に受け口・出っ歯・歯並びが悪い人がいれば遺伝の可能性が高くなります。
遺伝が原因の場合、生まれつき下顎が大きかったり上顎が小さかったりすることでずれが生じて起きます。
受け口でなくても、出っ歯や歯並びの悪い人が親戚にいれば受け口になりやすい骨の構造になっているかもしれません。
遺伝による受け口は将来下顎が伸びていく可能性があります。
下顎が伸びるほど障害も出やすいため小さい頃から矯正治療するのが大切です。
環境要因
環境が原因の場合、上顎と下顎がずれやすい生活をすることで受け口になります。
家族や親戚などに受け口や歯並びが悪い人がおらず、受け口になる方は環境による可能性が高いといえます。
生活環境におけるさまざまな要因により骨の成長にずれができるからです。
こうした環境から起こる受け口は生活習慣・癖によるものが主な原因です。
例えば、鼻詰まりが原因で炎症部分が周りの骨の成長を遅らせ違顎にずれを生じさせることがあります。
他にも自律神経や睡眠の乱れは成長が不安定になるため骨にずれが生まれやすくなります。
主な環境の要因をあげておきますから参考にしてください。
- 姿勢の悪さ
- 幼い頃からの鼻詰まりなどの炎症
- 自律神経の乱れ
- 呼吸方法
- つばの飲み込み方
- 睡眠の乱れ
- 指しゃぶり
- 丸のみ
- 頬杖
環境による要因は大人になってから起こることも多く、生活習慣を見直してトレーニングすることで改善できる部分も多いのが特徴です。
反対咬合の問題点
反対咬合の問題点は日常生活に支障が出やすくなることです。
通常は前方に来ている上顎が後方にくるため、顎だけではなく体や精神にも負担がかかり、ストレスのある生活になってしまいます。
大人になってからの治療は可能ですがストレスを取り除くには早期治療をおすすめします。
主な反対咬合の問題点をみていきましょう。
食事がしにくい
受け口は食事がしにくくなるためストレスを感じやすくなります。
上顎を後方に置いて食べる動作ではうまく食べ物がつかめず、食べ物を噛み切るときも前歯に力が入りにくいため咀嚼に大きな影響を及ぼします。
代わりに奥歯を使用するようになりますが、奥歯を酷使するため負担がかかり将来歯を失うことになりかねません。
奥歯を失えば食事ができる歯を失うため、食欲減退にもつながります。
顎関節症になりやすい
受け口が原因で顎関節症になると慢性的な頭痛・顎の痛み・疲れなどで悩まされることが多くなります。
本来は後方にあるはずの下顎が、通常とは違う位置で酷使されるため筋肉や神経に負担がかかり顎関節症になります。
顎関節症になると体のさまざまな部分で慢性的な変化が起きるため無意識にストレスを感じやすくなるため注意が必要です。
全身に負担がかかる
噛み合わせが悪いことで歯周りだけでなく、体の健康面にもさまざまな影響を及ぼします。
歯そのものは体に影響を与えないものの、第二次症状として多くの弊害が起こります。
例えば、食べ物が思うように噛めず内臓に負担をかけてしまい、消化不良などが起こりやすくなるため注意してください。
顎関節症は肩こりや腰痛だけではなく、過剰な力が顎に入ることで骨を溶かして歯周病を起こす原因です。
その他にも歯の位置が変わったことによって舌の位置が下がることで、舌が気道側へと落ちて気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になる可能性が高くなります。
また口が開きやすくなり、口呼吸が増えアレルギーや鼻炎を引き起こすなど顎への負担が健康な体を次第にむしばんでいきます。
見た目に影響する
受け口は見た目が悪くなることから外見に自信が持てなくなる人も多くいます。
見た目への影響としては下記の症状が顕著に現れるようになります。
- 笑ったときに顎が出る
- 笑ったときに歯茎が出る
- 噛み締めすぎたため、すきっ歯になる
- 前歯が出ている
- 叢生(そうせい)により歯並びがバラバラ
- 口が開きやすい
- 寝ているときにヨダレが出やすい
こうした症状が現れ始めると人前で笑ったり話したりしたくないと思う人も出てきます。
周りの目が気になると生きづらくなり、自分が人にどう見られているかを気にするあまり対人関係にも影響を与えます。
反対咬合の治療方法と費用
反対咬合の治療方法と費用は症状の深刻さによって変わります。
基本的に健康保険は適用外ですが、先天的な疾患や手術が必要で大変な治療の場合は保険が適用されやすいです。
治療方法はワイヤー・ブラケット矯正・マウスピース矯正・手術のいずれかで40万円~150万円ほどかかります。
使っている機器や治療方法によっても価格は変動します。
矯正方法について詳しくみていきましょう。
ワイヤー・ブラケット矯正
ワイヤー・ブラケット矯正は受け口治療方法の中でメジャーな治療方法です。
まずは模型分析し必要であれば抜歯をし、模型分析に従ってワイヤーやブラケットを取り付ける矯正治療をします。
ワイヤーやブラケットは2~3年ほど取り付けたままにし、歯の配列が終了したら撤去しまて、そこから保定を開始し歯が元に戻らないように細くて丈夫なワイヤーを前歯の裏側に止めます。
この一連の流れで60万円~150万円ほどかかりますが、定期的にかかるワイヤーの調整費用も必要になるため歯科医に確認してください。
歯医医院を選ぶ際は値段だけでなく内容も含めて検討して後悔のない治療方法を選択してください。
マウスピース矯正
受け口が軽度である場合マウスピース治療がおすすめです。
まずは歯型をとり自分の歯に合わせたマウスピースを作成します。
1日のうち約20時間ほどつけ、約1〜2週間ごとに新たなマウスピースを作成しつけ替えなければなりません。
歯並びがよくなったらこの一連の流れを止めます。
治療期間は6ヶ月~2年ほどで費用は40万円~110万円位かかります。
部分的な矯正であれば10万円ほどで収まるマウスピースもありますが、受け口の治療費が高額になるのは全体矯正だからです。
大抵の場合はワイヤー・ブラケットよりも安くすみますが、歯が複雑であればより費用がかかります。
理由は複雑であるほど診察が増えマウスピースを作成する回数も増えて費用がかかるからです。
重度の受け口であればワイヤー・ブラケット治療をおすすめします。
外科手術
骨格的な問題がある場合は外科手術が必要になります。
上下いずれかの顎が大きすぎる・小さすぎる・前にですぎているなどの場合は上下の歯が噛み合うように骨をずらしたり削ったりする必要があります。
まずは術前検査・麻酔科診察など手術に向けた準備をしなければなりません。
当日は全身麻酔を行い、手術を終えると歯のワイヤー・ネジ・ゴムなどで噛み合わせを固定した状態にします。
更に骨が綺麗につくためにワイヤー治療と保定も行い、入院する期間も含めて10日から2週間程度かかります。
精密検査や経過観察も含めれば3~4年程度で治療が終わり、費用は保険が適用されるため入院費も含めて25万円~50万円程度です。
ワイヤー・ブラケット治療やマウスピース治療よりも安くなりますが、保険が適用されるのは手術するほど重い受け口になったときのみです。
反対咬合の矯正治療の流れ
反対咬合の主な矯正治療方法は一般的にはワイヤー・ブラケット矯正・マウスピース矯正・手術のいずれかになります。
軽度の場合は生活習慣の見直し・トレーニングで矯正治療することもあります。
生活習慣からくるものであれば、日々の生活を見直すだけで治療が可能です。
ただし、遺伝的に骨格が受け口になりやすいまたは生活習慣で悪い癖を長年続けていた場合は一般的な矯正治療が必要です。
機能的な反対咬合の場合
子供の時には、日常の癖・姿勢・身体機能が要因で反対咬合になっている場合、生活習慣を見直すことで矯正できることもあります。
姿勢を正し・よく噛んで食べ・頬杖をつかないといった習慣をつけるだけで変わることも多いです。
また、受け口がよくなるトレーニングを歯科医から教えてもらい家庭で行うのも効果的です。
特に3才~7才の間であれば生活習慣を見直すだけで受け口が大きく改善することも報告されています。
既に長く習慣化されている場合は歯列矯正としてワイヤー・ブラケット矯正やマウスピース矯正をした上で生活習慣の見直しやトレーニングが必要になります。
骨格的な反対咬合の場合
遺伝的に骨格が原因で受け口となった方はワイヤー・ブラケット治療や手術が必要です。
骨格による受け口は人為的に正しい位置へ顎を持っていきます。
まず歯の模型をとって、詳しく症状を診断しワイヤー・ブラケット治療や手術が必要かを見極めます。
軽度であればワイヤー・ブラケット治療で改善しますが深刻な場合は手術が必要です。
反対咬合を改善するトレーニング
反対咬合を改善するトレーニングとしてはMFT(筋機能療法)があります。
MFTは口周りの筋肉を鍛えることで噛み合わせを調整するトレーニングです。
- ディップ
- ベロ回し
ディップとはスティックを口の前に垂直にもち、舌を前に出し舌先でスティックを3秒間押し合い5~10回繰り返すトレーニングです。
ベロ回しとは口をおちょぼ口にして前に突き出し引っ込めて50回繰り返すトレーニングです。
家庭でも簡単にできるトレーニングで時間をかけて行うことで悪い癖を治していけます。
MFTの他にも指しゃぶりや頬杖をやめさせることもトレーニングの一環として効果的です。
反対咬合は早期の治療が重要
受け口は子供のうちに治した方が身体への影響が少ないです。
消化不良や慢性的な頭痛は矯正すれば治りやすいですが、中には大人になっても残るものがあります。
例えば発声がうまくいかず変な喋り方が癖になると大人になって治療を受けても改善しにくくなります。
また、顔面頭蓋の形も受け口に合わせて変化するため、大人になってから受け口の矯正はできても顎がつき出た外見は変わりません。
できればまだ成長しきっていない幼少期の3才から小学生低学年の間に治した方が外見・体にも影響がありません。
まとめ
反対咬合の矯正治療の流れや費用を解説してきました。
反対咬合は早期治療することで、大人になってから身体的・精神的にも負担がかかりません。
矯正治療は大人になってからもできますが、長い間身についた癖は直しづらいといえます。
3才ぐらいから受け口が目立つようであれば、早めに歯科医院を訪れることをおすすめします。
矯正治療を受けなくてもトレーニングや環境を見直すだけで反対咬合を治せるため、気軽に歯科医に相談してみてください。
歯科医と治療の方法・費用なども含めて相談すれば矯正治療に対する不安も消えます。
是非この機会に反対咬合の矯正治療について考えてみませんか。