【監修:青山健一】
目 次
不正咬合と言う言葉を聞いたことがありますか?わかりやすい言い方にすると「咬み合わせが悪い」という言葉に言い換えられます。
「咬み合わせが悪い」とあなた自身の体に何らかの不調を与えるなど不都合なことが出てくる可能性があります。
不正咬合の種類や原因、治療についてこれから説明をしていきます。
もし、読んでいただいたあなたに1つでも当てはまった場合や気になると感じたときは、最寄りまたは行きつけの歯科医院に相談してください。
不正咬合の概要
骨格や歯の生え方など、先天性な原因または後天的な要因により、上下の歯が正常に噛み合わない状態のことをいいます。
不正咬合は何種類もありますので、「見た目の問題」と「見た目ではわかりにくい問題」にわけて説明していきます。
不正咬合の種類(1)
ここでは、見た目でわかる不正咬合をとりあげていきます。
出っ歯
上顎前突というもので、日本人はこのタイプの不正咬合が多いです。
骨格には異常がなく上の前歯だけが前に出ているケースと、骨格的に異常があり上顎の大きさが下顎より大きく、上の歯が前に出て見えてしまうケースに分類されます。
出っ歯・上顎前突では、前歯でうまくものが噛みきれないという食事面での問題が起きることがあります。
また、うまく噛みきれないことで胃腸障害の発症、顎のバランスの悪さから頭痛や肩こりなどを引き起こすなど、ストレスの原因にもなりかねない身体的不調が現れることがあるため注意が必要です。
部分矯正、マウスピース矯正などの矯正治療で改善されるケースがほとんどですが、程度により治療方法が変わるためあなたに合った治療法を相談しましょう。
受け口
上の前歯より下の前歯が前方にある状態を受け口と言い、反対咬合とも呼ばれます。
これは骨格の問題と上の前歯の傾斜している角度の問題が複合して起きるケースがほとんどです。
前歯がうまく噛みあわないため、ものがうまく噛みきれないという問題が起きることがあります。前歯の傾斜の矯正治療で改善する場合が多いですが、重度の受け口と診断された場合は、下顎の手術というケースもあるようです。
乱杭歯・八重歯
乱杭歯は、歯が横一列に並ばずに前後にズレたり、重なったりしている歯並びのことです。これは叢生とも言われ、八重歯もこのなかに含まれる症状の1つです。
また、開咬や上顎前突などの不正咬合も伴うこともあります。八重歯は、アーチ状の歯列からはみ出た歯のことをいい、犬歯に起こりやすいものです。
八重歯に関しては、遺伝や食生活、歯の大きさの他に顎の小ささが関係していると言われており、日本人特有の症状であるといえます。
一般的には、マウスピースなどの矯正治療で改善することが可能ですが、八重歯の状態によっては抜歯が必要となることもあります。
長い間放置すると姿勢の悪さから腰痛など身体的な影響をもたらすこともあるため、気になる場合は、早めに診察を受けましょう。
切端咬合
正常な噛み合わせは上顎が下顎の歯にかぶさっている状態であり、切端咬合はかぶさっていない状態のことです。
これを放っておくと受け口などの症状に悪化していくのです。
原因としては、幼少時の舌癖、骨格の問題、口呼吸の他に一部の歯がガタガタに生えている叢生と呼ばれる症状から切端咬合になる可能性があります。
前歯の並び方が原因の場合は、骨格が問題の場合と比べ比較的早く改善することが可能ですが、舌癖が原因の場合は矯正治療となります。
切端咬合の改善に関しては、大人になってからの治療は難しくなるため、子供のうちに改善した方が特に良いといえそうです。
不正咬合の種類(2)
見た目ではわからない不正咬合をここでとりあげます。
あなたに該当する部分があるかもしれませんからその場合は放置せず、歯科医に相談しましょう。
すきっ歯
これは、上下の歯列のいずれかの歯と歯の間に隙間がある状態のことを言い、先天性、遺伝的な問題であることがほとんどです。
主に歯が多い、少ない、小さい場合がすきっ歯になる要因です。
この他に舌で前歯を押す癖や指しゃぶり癖などがすきっ歯の原因に挙げられることもあります。
マウスピースやワイヤーブラケットによる部分矯正やセラミックによる審美的な治療により改善していきます。
しかし、癖がなおっていないまたは矯正器具を医者の指示通りに装着していないとなるとせっかく綺麗になった歯並びが元に戻ってしまうため注意が必要です。
開咬
噛み合わせのときに、前歯または奥歯の方で上下に隙間ができてしまう症状のことです。
開咬の原因は遺伝的な原因と後天的な原因の2つに分けられますが、後天的な原因は、幼少時の指しゃぶりや口呼吸などが関係しているとみられています。
指しゃぶりが4~5歳まで続くと歯並びが悪くなり、指しゃぶりが7歳まで続いてしまうと永久歯に生え変わった後でも開咬になってしまう場合が多いです。
口呼吸の場合は、唇まわりや頬の筋肉などを正常な状態で使えないことにより口まわりの筋肉のバランスが乱れてしまい、唇を舐めるなどの癖により症状が出ることもあります。
これは、金属製のワイヤーや金具などを装着するブラケット矯正で改善する方法が一般的ですが、歯並びの状態によってマウスピース矯正で治療するケースもあります。
交叉咬合
これは、上下の歯の噛み合わせが横にずれてすれ違っている症状のことをいいますが、左右の奥歯全体がずれている場合と、左右どちらかのみがずれている場合があります。
片側だけにこの症状が出ている場合は、噛み合わせが横にずれている状態で、前歯の中心線がずれていることが特徴で、歯並びの他に上下の顎もずれて見えてしまうのです。
先天性の原因としては遺伝が挙げられ、舌癖、柔らかいものしか食べない、片方だけで食べ物を噛むなどが後天性の原因として挙げられます。
放っておくと肩こりや頭痛を引き起こしたり、顎関節症の原因にもなってしまいますが、見た目ではわかりにくい症状であるため、治療が遅れてしまうこともあります。
大人になってからの治療の場合は、外科手術を伴う矯正治療となってしまうため、手術を伴わない幼少期のうちに早期治療を行うことが望ましいです。
深いかみ合わせ
奥歯を噛み合わせたときに上の前歯が下の歯に覆いかぶさって下の前歯が見えないことをいい、正式には過蓋咬合と呼ばれます。
これは、骨格や遺伝、指しゃぶりや噛みしめ癖などの習慣の問題、奥歯を虫歯などで失ってしまったというような歯の問題と3つの原因に分けられます。
子供も大人も矯正治療で改善することが可能です。主にブラケットによるワイヤー矯正が一般的ですが、マウスピースによる矯正も選択できます。
不正咬合の原因
ここから不正咬合の主な原因となるものをみていきます。
遺伝や全身的な原因
不正咬合の先天的原因は遺伝が挙げられます。髪や目の色などの特徴が遺伝されるのと同じく、噛み合わせや、歯並び、骨格も遺伝していきます。
特に受け口といわれる不正咬合は、骨格が原因になることもあるため、遺伝の影響を受けやすいという考え方が一般的です。
また、親が歯の生える本数が少ない場合も子に遺伝するため、空隙歯列も遺伝の影響を受けやすいといえます。
大人になるまでに不正咬合がある場合は舌癖などの後天的な原因が挙げられます。
乳歯が早めに抜けた
乳歯のときに歯並びが悪い場合には矯正治療を通じて歯並びの改善をする必要があります。
しっかりと矯正治療を受けるには乳歯を抜く必要がある場合もあるのですが、乳歯を抜くのがベストとは限らず、必ずしも抜かなければならないわけではありません。
乳歯を抜くかどうかの選択の決め手は乳歯の下に控えている永久歯の存在です。
永久歯というのは乳歯の歯根を壊しながら徐々に生えてくるものなのですが、このときに生えるスピードが遅くなる、または永久歯の生え方に悪影響を与える可能性がある場合には永久歯のために乳歯を抜くことがあります。
しかし、乳歯というのは永久歯が生えるのに必要なスペースを確保する上でも非常に重要な役割を果たしているため、必ずしも乳歯を抜くのがベストな選択ではありません。
日頃の癖・習慣
歯並びや噛み合わせに関する悪習慣を挙げていきます。
・指しゃぶり
長期間指しゃぶりをしていると、出っ歯や開咬になってしまいます。
早い時期にこの悪習癖を改善すれば、歯列の形態も改善する可能性はありますが、年月が経ってしまうと骨格性の出っ歯と開咬になってしまいます。
・唇をかむ
これも出っ歯の原因の1つです。
下唇が上の前歯と下の前歯の間に入ることで、上の前歯は外側に出て、下の前歯は内側に倒れてしまうことによりひどい出っ歯になってしまいます。
・爪をかむ
歯がガタガタになる叢生や開咬の原因になります。
・舌突出癖
つばを飲み込むとき、上と下の歯の間に舌を挟んで飲み込んでしまう癖です。
・頬杖
多少なら問題ありませんが、頬杖が習慣化している場合は注意しなければなりません。
片側に持続的な力が加わると顎が曲がってくるケースがあります。
いったん曲がってしまうと通常の矯正治療だけでは、改善できなくなる可能性があります。
顔が著しく非対称になってしまった場合、外科矯正適応となります。
不正咬合の治療の必要性
不正咬合の治療が必要なケースをみていきます。2つのケースをとりあげますのでぜひ確認してください。
骨格的なズレが著しいケース
上下の顎の位置関係のズレと言い換えることが出来ます。
例えば下の顎が前に出過ぎてしまっている場合、見た目の他に「上手く噛めない」といった生活に支障が出てしまうケースです。
食事に影響が出てしまうことは、生活全体に他の悪影響を与える可能性が大きくなりますから、日常生活に影響が生じるケースは治療が必要な不正咬合といえます。
見た目を改善するための治療
不正咬合の症状の中で、大きいものが「見た目」への悪影響です。少なからず他人の目を気にしていくものですが、歯並びの見た目に対する感じ方は人によって異なります。
その見た目が、その人にとって「改善したい」と思うのであれば、どんなタイプの歯並びであっても、治療が必要な不正咬合と言えます。
治療の開始時期
開始時期の目安としては6~7歳と11~12歳です。第1期治療と第2期治療に分けて行われます。
第1期治療は乳歯が生え揃った時期である3~5歳から、永久歯に生え変わるまでの時期である11~12歳までの時期に行なう治療です。
この時期は、本格的な歯の矯正は行なわず、成長発育を利用した上下あごの位置のバランス、大きさを整えるなどが中心となります。
第2期治療は永久歯が生え揃う11~12歳から行なう本格的な治療で、大人の矯正治療と同じ治療方法です。
一部またはすべての永久歯の位置を、さまざまな器具などで整えていきますが、状態次第では手術を行なうこともあり得ます。
6歳までには1度歯科医院で歯の健康状態を確認してもらうことがおすすめです。
不正咬合で悩んだら専門医の相談
不正咬合は多種多様であり、その症状が起こる原因も多岐にわたっています。
知識と技術を持った専門医でなければ、うまく改善されないという可能性もありますため、矯正治療は細かく治療してくれる専門医にお任せしてください。
また行きつけの担当医が専門医であればそのまま治療するという選択もあります。
まとめ
いかがでしょうか。
不正咬合の種類、原因や治療法などを書いてきましたが、遺伝によるところも大きいです。意外と無意識でやっている行動が歯に影響を与え、悪化すると体全体に影響を及ぼすということがわかります。
治療は矯正治療が中心になります。
これを読んでいただいたあなたに、何か気になる症状があれば、最初は相談だけでも良いですから1度歯医者に行ってみましょう。