【監修:青山健一】
目 次
歯を矯正したいと考える人の多くは、噛み合わせが悪いことが原因でおきるさまざまな不調に悩んでいるか、見た目の悪さを何とかしたい人にわけることができます。
また、治療する過程で装着するワイヤー装置などが目立ってしまうことで矯正することを躊躇してしまう人も少なくありません。
今回はそんな矯正に対するハードルを低くすることが期待できるインビザラインと呼ばれる施術についてわかりやすくお話していきます。
インビザライン矯正の流れ
インビザライン矯正は、患者に合わせてつくられた半透明のカスタムマウスピースをつかった施術方法でも、ワイヤー方式のリテーナーより装着器具が目立ち難いという特徴があります。
また、インビザライン矯正ではアライナーという言葉を耳にすることがありますが、それはこのカスタムマウスピースと同じものだと覚えておいてください。
ここでは、そんなインビザライン矯正の概要を理解するために、治療の流れについてお話しします。
1.初診及び検査
症状確認とカウンセリングをへて必要な検査をおこない、問題点を踏まえた治療方針を立案してから患者に対して充分な事前説明が行われます。
この場合に患者の歯をどのように動かしていくのかをクリンチェックと呼ばれる三次元CGシミレーションソフトウエアをつかって説明していくのです。
2.型取り
次に歯列と噛み合わせの型をとりますが、型取りには接触タイプと非接触タイプのふたつの方式があり、施術を受ける歯科医によってつかい分けられています。
接触タイプは専用の印象紙をつかって複数枚の型をとり、非接触タイプは光学3Dカメラをつかって歯と周辺データを取得するのです。
3.アラインテクノロジー社にデータを送る
インビザライン矯正用のマウスピースの製造はすべてアラインテクノロジー社が対応しており、歯型データと治療計画が電子媒体をへて同社に送られます。
アラインテクノロジー社はシリコンバレーの企業で、1997年にマウスピースをつかった矯正治療システムであるインビザラインを開発していて、現在もその製造と開発を一手に担っているのです。
4.アラインテクノロジー社で製造
アラインテクノロジー社は送られていた歯型データと治療計画をもとに専用マスピースを製造します。その間も何度となく日本の歯医者とのやりとりすることで精度を高めるのです。
この患者に合わせたカスタムマウスピースは、厚さ0.5ミリ程度のポリウレタンで成型されます。患者ひとり分として矯正に合わせて順次交換するされるのです。
日本からデータなどを送ってからマウスピースが戻ってくる期間は概ねひと月半からふた月が必用となっています。
5.矯正治療の開始
カスタムマウスピースが届いたら、患者に装着して矯正治療が始まります。
患者は歯科医の指示にもとづいて、1日20時間以上装着しながら2週間ごとに自分自身で指定されたマウスピースに順次交換していきます。
マウスピースの装着が始まった患者は、ひと月半から3カ月の間隔の歯科医による診察をうけて矯正の進行状況を確認してもらうことになるのです。
このときに、歯科医が想定したとおりに矯正が進んでいないと確認された場合は、補助的な矯正をふくめた追加処置が施されます。
インビザライン矯正のゴムかけ(顎間ゴム)の効果
ワイヤー矯正する場合でもよく聞く言葉にゴムかけがあります。インビザライン矯正でもゴムかけをおこなうことで矯正の効果を高められるのです。
ほとんどの場合にゴムかけは患者自身でおこなうことになるため、矯正施術をうける人は必要性や効果について充分に理解することが大切になります。
通常、ゴムかけは上の歯と下の歯を引っ張るように装着するため、矯正器具にフックを設置したり直接歯にボタンと呼ばれる小さな突起物をつけたりします。
種類としては金属製のリンガルボタンや樹脂製で目立ち難いクリアボタンがあり、歯の裏側専用のものとしてキャプリンフックと呼ばれるものもあって場所によってつかい分けられるのです。
ゴムかけの効果としては、上下間での正中のズレを適正化することや噛み合わせを改善することがありますが、インビザライン矯正では歯の移動を補助する目的でつかわれます。
これらのゴムは太くて短いものほど強い力で引っ張るため高い効果が得られ、太さとしては6ミリと9ミリのもの直径としては5ミリから10ミリのものが主流となっているのです。
インビザライン矯正のゴムかけを上手くかける方法
インビザライン矯正が始まると患者はマウスピースを1日に20時間以上装着することを求められていますが、脱着するたびにゴムかけも自分自身でおこなうことが求められるのです。
ゴムかけが上手くできないとインビザライン矯正の充分な効果が得られない可能性もあるため、ちゃんとできるようにコツをつかんでおく必要があります。
2級ゴムのかけ方のコツ
不正咬合を診断するときにつかわれる指標としてアングル分類というものがあって、上顎前出の場合は2級に、下顎前出の場合は3級に分類されます。
つまり、2級ゴムかけとは上顎前出をインビザラインで矯正するときに必要になるもので、一般的には上顎の犬歯近辺と下顎の大臼歯近辺の間で引っ張るのです。
ゴムかけする順番はありませんが、2級の場合は上顎側を後ろ側に引くようにすることで上下間の差を少なくするとかけやすくなります。
慣れるまでは鏡をみてゴムかけするようにしたり、専用のエラスティックホルダーをつかったりすると誰でも自分でゴムかけができるようなれるのです。
3級ゴムのかけ方のコツ
受け口やしゃくれなどの下顎前出を矯正するさい3級のゴムが必用になり、その場合は2級のときとは逆の上顎の大臼歯近辺と下顎の犬歯近辺で引っ張ります。
つける場合も2級とは逆に、下顎側を後ろに引くようにするとかけやすくなり、同じように鏡やエラスティックホルダーを利用することで装着性を高めることが可能です。
クロスゴムのかけ方のコツ
クロスバイトやシザースバイトなどの上下の歯の噛み合わせが左右にずれることでおこる挟状咬合を矯正するときに施術されるのがクロスゴムです。
クロスゴムによる矯正は、上下で同じ位置にある歯のそれぞれの裏表にゴムを交差させるゴムかけで、最も奥にある第二大臼歯に施術するさいは装着する難度が高まってしまいます。
クロスゴムの場合はマウスピースを装着してからのゴムかけは困難であるため、あらかじめクロスゴムをかけたマウスピースを装着することでも難易度を低くできるのです。
鏡を見ながら上顎からゴムをかけたマウスピースを装着しますが、ゴムがはずれた場合はやり直しが必要となるため、慣れるまでは少し手間取る患者も少なくありません。
垂直ゴムのかけ方のコツ
上側の歯と下側の歯が噛み合わずに浮いてしまう開咬とよばれる症状の矯正にもゴムかけがつかわれ、上下の同じ歯の表側に引っ掛けて引っ張ります。
ゴムが立って見えるため垂直ゴムといわれていて、見やすい前部であるため装着の難易度は高くないのが特徴です。
但し、審美的に目立ちやすいことから少しでも改善するために半透明のプラスチック製のゴムを希望する患者も少なくありません。
インビザライン矯正のゴムかけ期間
インビザライン矯正でのゴムかけは最初からすることは希で、マウスピースを始めてからの最初の定期診察を受けるひと月半頃から始めることが多くなっています。
マウスピースは2週間ごとに次のものに交換するため4番目のマウスピースからゴムかけが始まることになり、症状によって期間にばらつきができますが2カ月から3ケ月程度が多くなっているのです。
ゴムかけでよくある悩みと対処法
インビザライン矯正でのゴムかけは、マウスピースを脱着するたびに自分自身でおこなわなければならず、特に始めたばかりの頃は不慣れなこともあってさまざまな悩みを訴える患者も少なくありません。
ここでは、よくある3つの悩みについて紹介します。
ゴムをかけるのが難しい
インビザライン矯正でのゴムかけで、最も多いのはゴムかけ自体が難しく上手くできなくて時間がかかるというものです。
小さなゴムを狭い口の中にある小さな突起に引っ掛けるのはとても大変で挫折しそうになる人も少なくありません。
でも、このゴムかけはインビザライン矯正システムの中にあって重要なものであり、しっかりできるか否かが矯正治療の結果に大きく反映されてしまうことを理解して挫折しないようにしてください。
鏡やエラスティックホルダーを活用しながら、自分でやりやすい方法を見つけるような工夫が大切なのです。
痛い
ゴムかけは20時間以上が必須なため長時間装着になり痛みを感じる人もいます。また痛みの種類も人によって違いがあるのです。
特に多いのがゴムかけを始めたばかりのときと、マウスピースの脱着にともなうかけなおしの痛みですが、多くの場合は時間の経過とともに慣れて感じにくくなります。
ゴムが切れた
食事をするときはマウスピースを外すことを前提に、装着時間が1日20時間以上となっています。
ゴムかけしたままでは食べにくいという理由もありますが、咀嚼したことでゴムが外れたり食べ物に含まれる成分で劣化したりすることを防ぐ意味もあるのです。
ゴムかけをしたまま食事をしたことでゴムが切れてしまう事例も報告されており、強い力で引っ張っているゴムが口の中で切れると怪我をする危険性もあります。
やはり食事中はマウスピースとゴムを外すようにしてください。
インビザライン矯正におけるゴムかけの注意点
インビザライン矯正でゴムかけをする場合には、口の中で外れたり切れたりさせないようにする以外にも注意したいことがいくつかあります。
ここでお話しする注意ポイントは3つです。
毎日新しいものに交換する
ゴムかけを始めるときに歯科医からゴムは毎日あたらしいものに交換するようにと必ず言われます。
口腔内にはさまざまな雑菌が繁殖していて唾液がそれを抑制してくれていますが、唾液がまわりにくい場所に装着するゴムは細菌が繁殖しやすいのです。
また、専用ゴムは唾液に対しての耐久性を考慮して開発されていますが、さまざまな成分を含む唾液に長時間さらすことは劣化の可能性を拭えません。
インビザラインのゴムかけ用ゴムは毎日きまったタイミングで必ず交換するようにしてください。
装着を忘れないように工夫する
これまで、インビザライン治療においてゴムかけはとても大切な役割を担っていることを説明してきましたが、装着しにくいとか不快感があるからとやめてしまいたくなることがあります。
でも、それらを我慢して続けることが最終的には綺麗な歯並びとなって自分にかえってくることを信じて続けるようにしてください。
装着忘れなどを防ぐ方法はひとそれぞれの工夫によりますが、お勧めしたいのはルーティーン化と確認復唱の履行があります。
例えば、食事後の歯磨きをしたあとに必ずマウスピースとゴムかけをおこない、鏡に映った自分の口もと見てちゃんと承着されていることを確認復唱するのです。
悩みは歯科医に相談する
よくある悩みごとについては既にお話ししましたが、口の中に異物であるマウスピースやゴムを入れておくインビザライン治療では他にもさまざまな悩みがでてきます。
そんなときは、自分勝手な判断で対処せずに必ず歯科医に相談するようにしてください。経験豊かな歯科医は多くの患者から相談を受けているため多くの解決策を持っているのです。
また、悩み事や懸念がわいてきたときはメモをとるようにしてください。そうすることで定期診断なので相談したときに漏れがでるのを防ぐことができます。
インビザライン矯正を確実に成功させるなら
ここまで、インビザライン矯正とゴムかけについてお話してきました。繰り返しになりますがゴムかけはインビザライン矯正を成功させるために欠かせない施術であることを忘れないでください。
また、歯科矯正する歯科医には豊富な経験と知識が必要で、矯正が成功するか否かの大きなポイントとなっています。
インビザライン矯正する歯科医を選ぶときは、インビザラインの症例数の多い医院と口コミでの評価が高い医院がお勧めです。
まとめ
いかがでしたか?今回はインビザラインという矯正施術とそれを支えるゴムかけについてお話しました。
矯正治療に不安を感じて躊躇していたり審美的な観点から悩んでいたりする人に対して、少しでもお役にたつことができたなら幸いです。