【監修:青山健一】
目 次
近年、歯の矯正治療を行うときに注目を集めている「インビザライン」。1997年にアメリカの企業で開発され、目立ちにくい治療法としても知られています。
他人の視線を気にすることなく治療ができて便利な手法ですが、全ての症状に対応しているわけではありません。
インビザラインのみで対応が難しい症状に対しては、ワイヤー矯正との併用治療がおすすめです。これから歯の矯正治療をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
インビザラインとワイヤー矯正の併用治療の概要
インビザラインとワイヤー矯正の併用治療とは、透明なプラスティックのマウスピースによる矯正と、金属のワイヤーを用いた治療を併用した矯正治療です。
マウスピース矯正を中心に治療を進めていき、対応が困難な箇所や最後の仕上げのときにワイヤーを用います。
2つの手法を組み合わせることで、それぞれの利点を活かした治療が可能となり、さまざまな症状に対応できる治療方法です。
併用治療を用いるときは、マウスピースやワイヤー装置の調整が必要な場合があります。2つの治療装置を同時に使うため、パーツ同士がぶつかるとマウスピースが装着できなくなります。
特にブラケット装置が付いている箇所はぶつかりやすいため、歯科医院にてボタンカットなどの措置が必要です。
なお歯科医院によっては、患者様に調整をお願いするケースがあります。自宅にあるハサミなどを使って、途中からマウスピースを切る方法で対処が必要です。
インビザラインとワイヤー矯正を併用する目的
インビザラインのみでは対応が難しい治療、および対応が困難な箇所のリカバリーを目的としてワイヤー矯正が併用されます。
矯正治療を行うにあたり、症状によってはマウスピース矯正のみでは対応が困難です。
そのような場合には、幅広い症状に柔軟な対応ができるワイヤーで補うことにより、難しい症状にも対応できる可能性があります。
インビザラインとワイヤー矯正を併用すれば治療が可能な症状もあるため、かかりつけの歯科医院で診察を受け、事前に症状を把握しておきましょう。
インビザラインのみの治療が難しい症状
基本的に下記にある2つの症状に該当する場合には、インビザラインのみの治療が難しいとされています。
ご自身がいずれかの症状に該当する際には、併用治療を検討しましょう。
重度の叢生(そうせい)
歯のデコボコや重なりがひどい場合には、インビザラインのみでは治療が困難です。マウスピース矯正のみでは矯正する力が不十分なため、効果的な改善は見込めません。
改善を望む場合には、矯正する力が強いワイヤー矯正などによる補助が必要です。
左右の顎のずれ
左右の顎がずれており噛み合わせが悪い場合にも、インビザラインのみでの治療が難しくなります。
顎のずれが軽い症状であれば、ワイヤー矯正に用いるブラケット装置を着けることで治療が可能です。
しかし、中程度以上のずれである場合は、外科手術が必要となることがあります。
インビザラインとワイヤー矯正の併用でできること
インビザラインにのみによる治療は、できないことも存在し対応できない症例も多いです。
しかし、ワイヤー矯正を併用することで、できることが増え幅広い症例に対応できます。
インビザラインとワイヤー矯正の併用でできることを3つみていきましょう。
アンカレッジロスの改善
併用治療を取り入れると、奥歯が前方に傾く症状(アンカレッジロス)を防ぐことが可能です。マウスピースを装着すると隙間を閉じようとする力が発生します。
アンカレッジロスは、奥歯がマウスピースの隙間を閉じる力に対して、耐えきれなくなったときに見られる症状です。
一時的にワイヤーを使用することで、奥歯をもとの位置のまま固定できるため、前に倒れることを防げます。
必ずしもアンカレッジロスが起こるわけではありませんが、気になる方は保険として併用治療も検討しましょう。
掴みづらい歯が移動可能に
併用治療は、掴みづらい歯の移動にも役立ちます。マウスピース矯正の場合、歯をプラスティックのカバーでしっかりと掴むことが重要です。
掴む面積が少ないと動かしづらく、歯の動きをコントロールすることが難しくなります。
加えてプラスティックのカバーが被さっているだけの状態となるため、矯正する力が働きません。
ワイヤーを使用すると歯を引っ張り上げることができるため、プラスティックを掴む面積を増やせます。歯も動かしやすくなり、矯正力をきちんと働かせることも可能です。
マウスピースは長時間着けておく必要があるため、歯を動かしにくいとストレスを感じる方もいると思います。併用治療を用いれば歯が動かしやすくなり、ストレスの軽減にも役立ちます。
奥歯のねじれの改善
奥歯のねじれが見られるときも、併用治療を用いることで改善が見込めます。
インビザラインは、マウスピースを歯に被せて矯正を図るため、丸い形をした奥歯をしっかりと捉えることができません。
空回りする状態となり、うまく歯をねじることができないため、奥歯のねじれを改善するときには苦戦してしまいます。
ワイヤー矯正に使うブラケット装置を用いれば、丸い形の奥歯でもしっかりと掴むことが可能です。歯をねじる力も十分に加えることができるため、奥歯のねじれを改善できます。
奥歯の噛み合わせが悪いと感じたときは、併用治療を検討しましょう。
インビザラインとワイヤー矯正の併用がおすすめな人
インビザラインとワイヤー矯正の併用による治療には、さまざまなメリットがあります。特に下記のような方は、併用治療を検討しましょう。
治療期間を短くしたい人
できる限り治療期間を短くしたい方におすすめです。インビザラインのみの治療では、症状によって改善に時間がかかる場合があります。
ワイヤー治療を併用すると、インビザラインの欠点を補うことが可能です。効率よく治療ができるため、短期間で治療したい患者様に向いています。
見た目や滑舌が気になる人
他人の視線が気になる方にもおすすめです。併用治療であれば治療期間が短く済むため、できる限り早期の改善が望めます。
加えて、白色のワイヤーを治療に使用する歯科医院もあります。シルバーのタイプと比べると目立ちにくいため、治療中の見た目も気になりません。
また、滑舌の改善も見込めます。症例によっては歯並びが原因で滑舌が悪いケースもありますが、歯並びがきれいになると滑舌の改善も期待できるため、知人との会話を気兼ねなく楽しめます。
抜歯が必要と診断された人
矯正治療で抜歯をしたくない方にも、インビザラインとワイヤー矯正の併用治療を検討することがおすすめです。
抜歯が必要と診断されたときでも、併用治療を用いることで抜歯が必要なくなるケースがあります。
矯正治療とは、歯の隙間を利用して歯をきれいに並べ直すことが主な治療です。歯の隙間を作る方法には、5つの手法が挙げられます。
その手法の中でもインビザラインは、「奥歯を後ろに移動させる」ということにとても適した手法です。
インビザラインが対応できる範囲の乱れやデコボコな歯並びであれば、抜歯せずに矯正治療ができます。
どうしても抜歯に抵抗がある患者様は、インビザラインとワイヤー矯正の併用治療を検討しましょう。
歯のトラブルは早期治療が大切になるため、気になる症状がある際には、早い段階で歯科医院へ相談することをおすすめします。
インビザラインとワイヤー矯正の併用の注意点
併用治療を希望する場合、気を付けておくべきことが2つあります。きちんと把握しておかなければ、後でトラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。
後悔することがないように、しっかりと理解したうえで治療を進めていきましょう。
金属アレルギーがある場合は難しい
金属アレルギーがある方は、併用治療を受けることが困難です。
ワイヤー治療に使用するワイヤー部分には、素材に金属が使用されているため、アレルギー反応を引き起こす恐れがあります。
場合によってはアナフィラキシーショックのような、重篤な症状に陥る危険性もあるため、必ず主治医に相談してください。
セカンドオピニオンを活用する
理想的な歯並びを目指すときは、適切な治療を受けることが大切です。正確な診断にもとづき適切な矯正治療を受けることで、効果的な歯並び改善が期待できます。
しかし、歯科医院の設備や担当医の経験およびスキルによっては、診断が異なる場合があるため注意が必要です。
診断によって治療方針も異なるため、「治療費が予算より高くなった」など、思いもよらぬトラブルへ発展する可能性があります。
矯正治療におけるトラブルを回避するためにも、セカンドオピニオンを視野に入れることがおすすめです。
複数の医師に診断をしてもらうことで、診断結果の精度を上げることができ、トラブルに発展するリスクを抑えられます。
結果的には、適切な矯正治療を受けることにもつながります。大切な歯を守るためにも、セカンドオピニオンをうまく活用しましょう。
インビザラインとワイヤー矯正の併用を希望するなら
インビザラインとワイヤー矯正の併用は、患者さまの希望だけでなく歯科医の判断が必要になります。
そのため、まずは歯科医に希望を伝えて適応するかどうか確認しなければなりません。
もし インビザラインとワイヤー矯正の併用に興味があるようでしたら、矯正相談を活用することをおすすめします。
下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができますので、ぜひご活用ください。
まとめ
インビザラインとワイヤー矯正の併用治療には、さまざまなメリットがあります。
スムーズに治療が進めば効率よく歯並びの改善ができる一方で、対策を誤ってしまうと後悔することになりかねません。
併用治療は、正確な診断を受け適切に治療をすることが大切です。セカンドオピニオンを積極的に取り入れ、信頼のおける歯科医院を見つける必要があります。
適切な矯正治療を受け、理想的な歯並びを目指しましょう。