【監修:青山健一】
目 次
噛み合わせ異常の症状の1つとして下あごが突き出ている状態である受け口があります。
受け口は見た目に与える影響も大きいためコンプレックスを感じる人が多い症例の1つです。
受け口の矯正というと大がかりな外科的手術などのイメージも強いですが、軽度の場合であればその限りではありません。
この記事では受け口の矯正方法についてご紹介します。
受け口となってしまう原因や自力で治す方法などについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
受け口の症状
受け口は下あごが上あごより前に突き出ている状態であり、専門用語では下顎前突や反対咬合と呼ばれるものです。
本来であれば上の前歯は下の前歯より前の位置にあるはずですが、受け口ではそれが逆になっています。
そのため、見た目だけでなく食べ物をうまく噛み砕くことができないことやしゃべりづらいなどの日常生活にも支障が出るのです。
また、噛み合わせがズレた無理な状態を続けているとあごなどの関節にも悪影響を及ぼします。
過度に力がかかりすぎると、骨が溶けてしまう可能性もあり虫歯や歯周病のリスクも高まってしまうのです。
受け口になる原因
受け口になる主な原因について解説します。
遺伝
受け口になる原因の1つとして遺伝によるものがあります。
親の上あごが小さかったり、下あごが大きかったりするとそれが遺伝して受け口となってしまう場合があるのです。
親の受け口が必ず子どもに遺伝するとは限りませんが、顔や背丈などが遺伝するのと同様に子どもが受け口になる要因の1つとなります。
骨格だけでなく歯の大きさも遺伝するものであり、さまざまな要因により受け口となってしまう場合があるのです。
骨格
受け口の多くは骨格が大きな原因となって引き起こされます。
日本人は上あごよりも下あごの骨格が大きいケースが多いため比較的受け口になりやすい傾向があるのです。
骨格も成長と共に形成されていくため、年を追うごとに受け口がより顕著になってしまう場合もあります。
2歳までの受け口は自然治癒することもありますが3歳以降であると骨格が形成されているため自然治癒の可能性が低くなるのです。
また、幼少期に受け口の矯正を行って症状が改善されても下あごが成長すると元の受け口の状態に戻るケースもあります。
癖
幼い子どもは指しゃぶりなどの癖で無意識のうちに下あごを前に突き出してしまうことがあります。
こうした癖を続けてしまうと、下あごだけが成長しやすくなり受け口になることがあるのです。
他にも、鼻呼吸ではなく口呼吸の癖があると口を開けていることが多くなり舌の位置が不安定になりやすくなります。
舌の位置が安定しないと、これも無意識のうちに下の前歯を押し出してしまうケースが増えてしまうのです。
こうした癖を日常的に続けてしまうと、本来の骨格などとは関係なく受け口になる可能性があります。
受け口を放置した場合
受け口は幼少期のうちはそれほど目立たない場合もあるため治療を行わないケースも少なくありません。
受け口を放置した場合について解説していきましょう。
受け口が目立つ
幼少期の頃は受け口であっても自然治癒する場合もあります。
しかし、3歳を過ぎて骨格の成長も進んでいった場合の受け口は自然治癒の可能性は少なくなりあごのズレも顕著になりやすいです。
治療をせずに放置してしまうと骨格の成長と共に受け口が目立つようになってしまいます。
特に思春期の頃に身体が成長するのと同じように下あごも急激に大きくなることもあるのです。
骨格が完全に形成されてしまうと治療も難しくなるため、早い段階で矯正などの治療を行うことが重要になります。
咀嚼機能が低下する
受け口になってしまうと上下の歯の噛み合わせが悪くなり咀嚼機能が低下します。
食べ物を噛む時に無理な力がかかるようになり、あごへの負担が大きくなるのです。
また、受け口は前歯で食べ物を噛み切るのが難しくなるため十分に咀嚼をせずに食べ物を丸飲みするようになってしまいます。
噛まないで丸飲みするような癖がついてしまうと、胃にも大きな負担がかかり胃潰瘍や胃がんの原因にもつながるのです。
正常な状態で噛み合わせを行えないと身体のさまざまなところへ負担を掛けてしまう可能性があります。
発音障害が出てくる
受け口はしゃべり方にも悪影響を及ぼします。
噛み合わせに隙間が出やすくなるため、歯と舌が触れる発音を行うサ行やタ行の発音がしづらい傾向があるのです。
舌足らずなしゃべり方が癖づいてしまうと、受け口の矯正を行っても滑舌の悪さは改善されない場合もあります。
成長し発音障害が根付いてしまうと修正するのが難しくなるため、なるべく早い段階で治療を行ったほうが良いでしょう。
受け口の治療方法
受け口の主な治療方法についてご紹介します。
ワイヤー矯正
受け口の矯正でもっとも一般的なのはワイヤー矯正です。
ワイヤー矯正では歯の表面にブラケットと呼ばれる器具を取り付け、そこへワイヤーを通して歯を正しい位置へと動かします。
治療で使われることの多い矯正方法ですが、歯の表面に取り付けた器具が目立つため見た目が気になる人も少なくありません。
最近では目立ちづらい透明のブラケットや歯の裏側から器具を取り付ける方法なども考えられています。
他の矯正方法よりも比較的安く治療が行えることも特徴の1つです。
マウスピース矯正
マウスピース矯正はブラケットなどの器具は使わずに、透明のマウスピースを使って歯を動かしていく治療方法です。
そのため、目立つことなく治療を進めることが大きな特徴になります。
また、ワイヤー矯正では自分で取り外すことはできないため歯磨きなどがしづらくなります。
その点マウスピース矯正は簡単に付け外しができるため、歯を清潔に保ちやすく食事もしやすいです。
しかし、簡単に取り外しができる分歯を動かす力はワイヤー矯正より弱くなります。
セラミック
セラミック矯正はセラミックでできた被せ物を使って治療を行っていきます。
これはワイヤー矯正のブラケットに似ていますが、セラミック矯正では歯を動かしません。
歯を動かす代わりに歯を削ってセラミックの被せ物をすることで矯正を行います。
ワイヤー矯正のように歯を徐々に動かすわけではないため、治療にかかる時間は短く急ぎの場合でも歯並びを整えることが可能です。
ただし、自分の健康の歯を削るというリスクがありセラミックは時間と共に劣化するため交換が必要になる場合があります。
他の矯正であれば自分の歯を残した状態であるため、交換などが必要になることはありません。
短期間で歯並びを整えることができる便利な治療方法ではありますが、相応のリスクを伴うことは理解しておく必要があります。
輪郭形成
これまでの治療方法は歯列矯正での治療でしたが、美容整形で輪郭形成を行い改善させる方法もあります。
歯並びだけでは矯正できない重度の受け口などで選択される治療方法で下あごの骨を切ったり削ったりして骨格ごと改善させるのです。
輪郭形成では通常の歯列矯正だけでは修正できない顔全体のラインもきれいに整えることもできます。
ただし、歯列矯正のように器具を使ったものではなく大がかりな手術を行わなければなりません。
場合によっては術後に入院が必要になることもあり、費用も高額になることも注意する必要があります。
受け口の治療の必要性
受け口は幼少期ならば自然治癒の可能性があるため様子を見る選択もあります。
しかし、成長が進んで骨格が形成されてきても改善傾向が見られない場合では自然治癒の可能性は少ないです。
そして、骨が成長していくとあごのズレも顕著になっていき治療も難しくなる場合もあります。
できれば成長が進む前の早期の段階で治療を行うほうが良いでしょう。
骨が成長した状態での治療は矯正だけでは改善できない場合も多く外科的な治療が必要になるケースが多くなります。
少しでも気になるようであればなるべく早い段階で歯科医に相談することがおすすめです。
受け口の治し方について悩んでいるときは歯科医に相談
受け口の治療方法はさまざまあり、受け口になっている原因によっては治療方法が異なり骨格が形成されてしまってからでは治療が困難になることもあります。
受け口の治し方について少しでも悩みがあれば、信頼できる歯科医に相談することがおすすめです。
専門知識を持った歯科医であれば、症状に合わせた治療方法を提案することができます。
早い段階であれば大がかりな外科的な治療を選択しなくても修正できる可能性が高まるため、なるべく早く相談したほうが良いでしょう。
まとめ
受け口は見た目に与える影響が大きくコンプレックスにもなりやすいものです。
そして、見た目以外にも受け口で噛み合わせがズレていると咀嚼機能の低下や滑舌にも悪影響を及ぼします。
子どものうちはそれほど気にならない状態でも、身体が成長すると共に骨も大きくなっていくため受け口が顕著になる場合もあるのです。
少しでも気になるようであれば、早い段階で歯科医に相談することをおすすめします。
近年では治療方法も増えており、治療中の見た目が気にならない方法や短期間で治療が終えられる方法なども選択可能です。
歯科医と相談して自身の症状と照らし合わせながら治療方法を選択していきましょう。