【監修:青山健一】
目 次
矯正治療の中でも人気の高いマウスピース矯正。取り外し可能な点や、見た目が目立ちにくい点が人気の理由です。
実はマウスピース矯正には、「キレイライン」と「インビザライン」という2種類があるのをご存じでしょうか。
キレイラインとインビザラインはよく似た治療法ですが、得意な歯並びや対応できる治療範囲が異なります。
本記事ではキレイラインとインビザラインの特徴を紹介します。マウスピース矯正を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
「キレイライン」と「インビザライン」はマウスピース矯正のひとつ
キレイラインとインビザラインは、ともにマウスピース矯正の1種です。透明なマウスピースを用いて歯並びを矯正します。
ワイヤー・ブラケット矯正と比べた場合のメリットは以下の通りです。
- 矯正装置が目立ちにくい
- 痛みが比較的少ない
- 治療期間が比較的短い
- 食事・歯磨きの際に取り外せる
- 口の中に傷ができにくい
もちろんデメリットもあります。たとえばマウスピース矯正はブラケット矯正より治療期間が長くなるケースがあります。
汎用性もあまり高くなく、歯並びの状態によっては使用できないかもしれません。
ただし、対応できる歯並びはキレイラインとインビザラインによって異なります。それでは、各治療法の特徴をみていきましょう。
キレイラインの特徴
まずはキレイラインの特徴をご紹介します。簡単にいえばキレイラインは、前歯周辺をきれいに見せるための矯正方法です。
適応する歯並び
キレイラインが適応できるのは以下のような歯並びです。
- 軽度のガタガタ(叢生)
- 八重歯
- 出っ歯(上顎前突)
- すきっ歯(空隙歯列弓)
- 受け口
- 歯の中心がズレている
- 噛み合わせのときに前歯が閉じない
- 噛み合わせが深い(過蓋咬合)
上記のケースでも状態が深刻な場合は、キレイラインでは対応できないこともあります。
基本的にキレイラインは、矯正のために歯を抜いたり削ったりはしません。そのため大がかりな矯正には向いていないのです。
大がかりな矯正とは、たとえば奥歯の矯正などです。適応できるとしても、多くの場合追加料金がかかります。
前歯12本が治療対象
キレイラインの治療対象は、原則として上下前歯の12本のみです。前述のとおり、奥歯矯正や抜歯が必要な矯正には対応できません。
つまりキレイラインとは、基本的に見た目重視の矯正治療だと認識してください。
歯並びの根本的な改善はできませんが、目立ちやすい前歯周辺だけをきれいにしたい場合には、十分な結果を期待できます。
噛み合わせの改善は期待できない
キレイラインでは、噛み合わせの根本的な治療はできません。もちろん治療に際しては、噛み合わせもある程度は考慮されます。
たとえば前歯の歯並びをきれいにするために、奥歯の噛み合わせを代償にするような治療は行われません。
しかし、もともと噛み合わせが悪い場合、全体の噛み合わせを改善する治療はできないのです。
理由は、噛み合わせの改善には抜歯や歯を削る治療を伴うためです。前述のとおり、キレイラインは大がかりな矯正に向いていません。
噛み合わせを根本的に改善したい方は、他の治療法を選択しましょう。ただし軽度であれば、キレイラインで対応できるケースもあります。
インビザラインの特徴
インビザラインの特徴を紹介します。インビザラインは、キレイラインより幅広い歯並びに対応できる点が特徴です。
適応する歯並び
インビザラインが対応できる歯並びは、基本的にキレイラインと同じです。ただしキレイラインより重度な症例にも対応できます。
- 軽~重度のガタガタ(叢生)
- 八重歯
- 出っ歯(上顎前突)
- すきっ歯(空隙歯列弓)
- 受け口
- 歯の中心がズレている
- 噛み合わせで前歯が閉じない
- 噛み合わせで歯がすれちがう
- 噛み合わせで何本かの歯が交差する
- 噛み合わせが深い(過蓋咬合)
- 奥歯の矯正
インビザラインは、抜歯や歯を削る矯正にも対応しています。
多くの場合、インビザラインではマウスピースとアタッチメントを併用します。アタッチメントとは、歯に1つずつ装着する小さな突起です。
具体的には、アタッチメントの上からマウスピースを装着します。歯への負荷が大きくなるため、大規模な矯正が可能なのです。
ワイヤー矯正を併用する場合もあります。たとえば、抜歯後に大量の歯を移動させるケースなどがあてはまります。
ワイヤー矯正は汎用性が高いのが特徴です。インビザラインと併用することで、より効率のよい矯正治療が期待できます。
部分矯正・全体矯正が可能
インビザラインは、部分矯正だけでなく全体矯正にも対応可能です。部分矯正は多くの場合、キレイラインと同じく前歯のみの矯正です。
前歯のみの矯正や軽度な歯並び改善であれば、「インビザライン・ライトパッケージ」という治療法が適用されます。
治療が7ヶ月または14ステージ以内に完了する場合の矯正方法です。後戻り矯正にも対応しています。
対して全体矯正では、「インビザライン・コンプリヘンシブパッケージ」という治療法が適用されることが多いです。
抜歯を伴う症例にも対応しており、奥歯を含めた歯並び全体の矯正に向いています。
噛み合わせの改善もできる
インビザラインでは、噛み合わせの改善も可能です。たとえば噛み合わせが深すぎる「過蓋咬合」などの治療によく用いられています。
その他の噛み合わせが悪い症例にも対応しています。症例にあわせて、ワイヤー矯正を併用することも多いです。
マウスピース矯正の特徴
マウスピース矯正の特徴をメリットの面から紹介します。
取り外しが可能
自分で矯正装置を取り外せます。そのため、ワイヤー矯正と比べて食事や歯磨きに不便が少ない点がメリットです。
たとえば食事時に外しておけば、食べかすが矯正装置に挟まるのを防げます。咀嚼が邪魔されないため、食事を楽しめるのも魅力です。
マウスピースを外せば普段通りの歯磨きも可能です。よって、ワイヤー矯正と比べると歯周病・虫歯リスクを低く抑えられます。
矯正装置そのものを自分で洗浄できる点も、口腔環境を保つ上で役立ちます。他にも、面接や結婚式といったピンポイントでの取り外しも可能です。
ただし、マウスピースの装着時間があまりに短いと、思うような矯正効果が発揮できません。治療期間が長引くこともあります。
マウスピースの装着時間は1日20時間前後です。取り外すのは、本当に必要なときだけにしましょう。
透明で目立ちにくい
マウスピース矯正は、「アライナー」という透明の装置を利用します。
ワイヤー矯正のように金属を使用しないため、口を開いたときに見た目の違和感がさほどありません。
見た目が目立ちにくい点は、マウスピース矯正最大のメリットです。接客やイベントがある方にもおすすめです。
ワイヤー矯正より痛みが少ない
マウスピース矯正は、矯正治療の中では比較的痛みがありません。理由は、金属を使用しないためです。
歯列矯正が痛む理由は多くの場合、矯正装置の金具やワイヤーが口の中を傷つけることです。
たとえば金具が口腔内のずっと同じ箇所に触れていると、口内炎になったり、傷がついたりします。
あるいは転倒などによって衝撃が加わった拍子に、金具が口の中を傷つけることも少なくありません。
その点、マウスピースには金属が使用されていません。よって、口腔内を傷つけるリスクが低いのです。
さらにマウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて、歯が動くときの痛みもさほど感じません。
理由は、ワイヤー矯正ほど強い負荷がかからないためです。ただし、痛みの感じ方には個人差があります。
マウスピース矯正であっても、まったく痛みが出ないわけではありません。歯を動かす以上、多少の痛みがあることは留意してください。
同じマウスピース矯正でも得意な歯並びが違う
キレイラインとインビザラインは同じマウスピース矯正ですが、それぞれ得意な範囲や歯並びが異なります。
効率よく歯列矯正するためにも、自分にあった治療方法を選択しましょう。
【キレイラインが向いているケース】
- 軽度なガタガタを矯正したい
- とにかく安く仕上げたい
【インビザラインが向いているケース】
- 奥歯を含む歯並び全体を整えたい
- 噛み合わせを改善したい
- 重度のガタガタをきれいにしたい
それぞれの費用相場は?
一般的にはキレイラインのほうが費用が安めです。ただしオプションを追加した場合、インビザラインより高くつくこともあります。
キレイライン
キレイラインは1回あたり2万円が相場です。回数制であるため、料金計算しやすい点が特徴です。
矯正完了までにかかる回数は個人差があります。治療のゴールは、基本的に患者様が満足できた時点です。
5回で満足できることもあれば、10回以上治療を行うケースもあります。回数が増えるほど料金が高くなる点はくれぐれも留意してください。
【キレイラインの費用相場】
- 軽度の矯正:10万~15万円
- 中程度の矯正:15万~20万円
- 重度の矯正:20万~30万円
インビザライン
インビザラインの費用は、治療の範囲で異なります。ただし複雑な歯並びに対応している分、キレイラインに比べると費用は高めです。
平均的な費用は以下の通りです。
【インビザラインの費用相場】
- 部分矯正(インビザライン・ライトパッケージ):30万~40万円
- 全体矯正(インビザライン・コンプリヘンシブパッケージ):70万~100万円
キレイラインかインビザラインかで悩んだら?
結局のところ、マウスピース矯正ではキレイラインとインビザラインのどちらを選ぶべきでしょうか。選び方のポイントを紹介します。
治したい部分が適応するか
まず第一に考えるべきは、「どの部分をどのように治したいのか」です。たとえば前歯周辺を軽く整える程度なら、キレイラインがおすすめです。
歯並び全体を根本的に改善したいなら、複雑な治療ができるインビザラインを選択しましょう。噛み合わせの改善も同様です。
もちろん治療部位とあわせて、治療期間や費用も検討すべきポイントです。
できるだけ費用を抑えたい方にはキレイラインが向いています。
ただしその分、見た目を整える程度の矯正しかできないことは念頭においてください。
キレイラインとインビザラインのどちらかを選ぶときは、治療対象部位と、費用・治療期間からトータル的に判断しましょう。
歯科医に相談
治療法を選ぶのに迷ったら、まずは歯科医に相談しましょう。口腔内の様子や歯並びの状態にあわせて、適切な治療法を選択してもらえます。
歯科医に相談するときは、最終的にどのような口元を目指したいのか具体的なビジョンを伝えることが大切です。
明確なゴールを決めておけば、自分の理想イメージと歯科医の治療方針がかけ離れにくくなるためです。
もちろん、費用の予算や治療期間についても詳しく相談してかまいません。
まとめ
マウスピース矯正にはキレイラインとインビザラインの2種類があります。それぞれ得意な歯並びや費用が異なります。
どちらが向いているかは、実は患者様が自身で判断するのは難しいです。まずは歯科医に口腔内や歯並びをチェックしてもらいましょう。
そのうえで、希望するイメージや予算にあわせて最適な治療法を選択してください。まずは一度、歯科医院でカウンセリングを受けましょう。