【監修:青山健一】
目 次
歯並びが気になるお子様の歯列矯正にかかる負担を軽くする矯正方法として「インビザラインファースト」があります。
今回の記事ではマウスピース矯正「インビザライン」の子ども用である「インビザラインファースト」の概要のほか、気になる治療のタイミングや価格の相場などをご紹介します。
インビザラインファーストは子ども用マウスピース矯正装置
歯並びの矯正といえばワイヤーが目立つというイメージがありますが、インビザラインは非常に透明度の高い医療用のプラスチックを用いたアライナーという透明なマウスピースを装着する矯正装置です。
今までは「インビザライン・ティーン」という永久歯の生えそろった中高生対象の矯正装置はありましたが、インビザラインファーストの誕生によって乳歯と永久歯が混在する時期から装着ができるようになり、比較的短い期間での治療が可能となりました。
インビザラインファーストの概要
インビザラインファーストは、成長過程にある乳歯と永久歯が混合している混合歯列期用に2019年から使用されています。
欧米では日本より先に導入されていましたが、最近では日本国内でもインビザラインファーストでの治療が可能になりました。
これまでは永久歯の生えそろう第2期でインビザラインが使用されていましたが、インビザラインファーストで不可能だった生え変わり期の矯正が可能です。
この時期に矯正をすると、顎の正しい成長を促しながら歯並びをきれいにすることができるため、第2期治療の期間が短くてすむなどのメリットがあります。
成人用と同じく透明なため目立つことはなく取り外し可能です。普段どおり歯みがきもできて衛生的で、従来のワイヤー矯正とくらべ虫歯リスクが少ないことも特筆すべき特徴です。
食事も制限なく何でも食べることができて、さらに矯正中のチェックは1.5ヶ月~3ヶ月と、通院回数が少なくてすむため親御さんの負担も減らせます。
適応年齢
永久歯が生え始める6歳から12歳ぐらいが適応年齢になります。成長期にあたる年齢のため顎の大きさを広げられるからです。
インビザラインファーストが治療に使われる前は拡大床を使用していましたが、インビザラインファーストを使うことで第1期に顎の大きさを広げながら歯並びを治療することも可能になり、第2期の治療期間が短くなるメリットもあります。
生え変わり期に治療ができる
従来のワイヤー矯正は乳歯と永久歯が混在している時期の治療は歯の生え変わりがあるため困難でした。
しかしインビザラインファーストは使い捨てのマウスピースを使用するため、歯が生え変わっても新しくマウスピースを作成することで簡単に作り変えることができるからです。
インビザラインファーストのデメリット
従来の歯列矯正のイメージをくつがえすようなメリットがあるインビザラインファーストですが、一方でデメリットもあります。ここからはデメリットもご紹介します。確認をしてインビザラインファーストによる治療を検討しましょう。
まずは、1日20時間以上の装着が必要です。この時間より装着時間が短いと矯正期間が延びてしまったり、うまく歯並びが整わないということがあります。
次に、飲食をする場合はマウスピースを外さなくてはいけないということです。
歯とマウスピースの間に飲食物が付いてしまうと虫歯の原因になるため、マウスピースを取り外して飲食をしてください。食べ終わったら歯ブラシでみがいてお口の中に戻してください。
最後に、マウスピースを紛失してしまう可能性もあるということです。自由に取り外しができるため、管理をしっかりすることが必要になります。
子どもの矯正治療のタイミング
インビザラインファーストで歯列矯正をする前に、ぜひ知ってほしいのが矯正治療のタイミングです。従来の矯正治療と同様、治療は第1期治療と第2期治療に分かれています。
第1期治療
第1期とは乳歯と永久歯が混在する、小学校低学年の時期のことです。
小児矯正ともよばれるこの時期は顎の骨も成長途中なため、成長をコントロールして上下の顎のバランスを整えること、そして部分的な歯並びの矯正治療をします。
第1期で治療が終わってしまうこともありますが、もしも第2期治療に入ることがあっても、永久歯が生えそろってから治療を始めるよりは期間が短くすむ場合もあります。
第2期治療
第2期は小学校高学年から中学生以降の永久歯が生えそろう時期のことです。この頃は顎も成長して歯列のバランスがはっきりするため、歯並びをきれいにしていく治療をします。
この時期からは成人と同じインビザラインなどによる矯正です。第2期から矯正を始めるとなると、顎が成長しきっているため抜歯をしたり歯を削るなど、歯を並べるスペースを作る必要があります。
歯の生え変わり期に治療できる理由
インビザラインファーストは、萠出タブという完全に永久歯が生えていない場所に過剰な歯牙の萠出を防ぐ空間や、永久歯が将来生えてくる歯に萠出スペースを設定することができます。
このような早い時期に歯列矯正することにより生え変わりを正しく導くほか、以前は別々に行っていた顎の成長の誘導と歯並びの矯正が同時にすませられることもあり、従来より短期間で治療できるようになりました。
第1期治療でインビザラインファーストを使うメリット
まずは治療期間が短くなるということです。インビザラインファーストは第1期のうちに治療が終わってしまえば第2期治療を行う必要はありません。
マウスピース矯正は、今まで別々に治療していた顎の成長の正しい誘導と歯並びの矯正を同時進行で治療することができます。
顎の成長をコントロールできる
お子様の歯並びの悩みの原因は顎の骨が小さいことです。第1期治療期は顎も成長しており、この期間に顎の大きさを広げ成長に導くことがインビザラインファーストでは可能です。
以前は歯並びの矯正とは別々に治療していましたが、インビザラインファーストはマウスピースを装着するだけで両方を同時に治療することができます。
抜歯せずにすむ
第1期は顎の骨の成長を利用することで歯並びの悪さを直したりかみ合わせの悪さをよくしたりします。
しかし、第2期治療から矯正を始めると顎の成長が止まっているため、治療に時間がかかり歯を並べる場所を作るための抜歯などの手術はお子様にとっては苦痛です。
第1期で治療が終えてしまえば強い痛みを感じることなく、きれいな歯並びに整えられます。
虫歯のリスクを減らせる
第1期治療期は虫歯になることが多い時期ですが、インビザラインファーストは取り外しが自由で普段どおりに歯みがきが可能です。
口腔内を衛生に保つことができることがメリットでもあります。虫歯の予防をしながら治療を行うことができるため、ワイヤー矯正より虫歯リスクを減らせます。
ワイヤー矯正より痛みが少ない
インビザラインファーストでも歯の動く痛みはまったくないわけではありません。しかし、ワイヤー矯正の痛みよりは少ないと証明されています。
ワイヤー矯正はどうしても器具が歯肉や唇に当たってしまいますが、マウスピースはとても薄くて透明度が高く口の中の違和感も少ないです。
インビザラインファーストの費用相場と治療期間
インビザラインファーストは保険対象外になり、クリニックによって料金にばらつきがあります。
ホームページに料金を掲載していたり無料でカウンセリングをしてくれるクリニックもあるため、事前に確認するなどして検討することをおすすめします。
費用相場
第1期だけで650,000円前後が相場です。
第2期の費用は第2期治療の金額から第1期治療の料金を引いた差額だけを患者が負担するクリニックや、第1期と第2期のセット価格となっているなどクリニックによって違いがあります。
クリニックのドクターやスタッフとよく相談して、お子様の後悔のないように治療計画を立てることが重要です。
治療期間
インビザラインファーストは1年半をめどに第1期治療を終了して永久歯が生えそろうまではリテーナーを使って経過観察を行い、必要があれば第2期治療を開始します。
第1期で治療を終わることができればワイヤーによる矯正に比べて短期間で終了できます。
子どもの矯正治療に悩んだら
もしもお子様の歯並びについてお悩みなら、早めに矯正歯科のドクターに相談してください。将来の歯並びに影響を与える生活習慣やくせを改善したり、治療を始めるのに適切な時期やお子様の症例に合った治療方法をアドバイスします。
歯並びに問題があるのなら6歳頃から治療を開始して骨格的な異常を改善することで第2期の治療期間が短くなったり、早いうちに矯正をして抜歯や骨格の手術などをしなくてすむようになれば第2期治療を正しく行うことができます。
最終的にはきれいな歯並びを手に入れることが可能です。
まとめ
お子様の歯並びの矯正は将来的なことを考えると、とても大切な問題です。子どもは大人よりも虫歯のリスクが高く、矯正することで顎の成長やこれから生えてくる永久歯に影響がないか心配事も多いと思います。
インビザラインファーストは従来のワイヤー矯正よりも目立たず安全で衛生的です。しかし適応条件があるため、ドクターにご相談ください。
お子様がまだ永久歯の生えそろっていない小学校低学年なら、第1期治療で終了すれば治療期間も1年半と短くてすみます。もしもお子様の歯列矯正にインビザラインファーストをお考えならば、ぜひ矯正歯科にご相談ください。