【監修:青山健一】
目 次
子どもの歯が生えそろってくると、成長していることを実感でき嬉しい気持ちになります。しかし、歯並びで気になるところはありませんか。
歯の並び方・色・角度・大きさなどに問題があると、見た目だけでなく噛み合わせの良し悪しにも大きく影響します。
この記事では、子どものうちに歯科矯正を検討したい方のために、費用・タイミング・治療方法について詳しく解説しましょう。
子どもの歯科矯正はなぜお金がかかる?
子どもの歯科矯正は費用が高いといわれますが、それには理由があります。基本的に子どもの歯科矯正には保険がきかないためです。
また、矯正装置にもよりますが、数十万円の治療費がかかります。治療が長びけば、矯正装置を装着し続ける費用を考慮しましょう。
子どものことですから装置を壊してしまう場合もありますのでご注意下さい。装置は作り直せますが費用が加算されます。
このようなわけで、子どもの歯科矯正にはお金がかかりますが、治療のタイミングによって費用が抑えられることをご存じですか?
それでは次に子どもの歯科矯正のタイミングについて考えてみましょう。
子どもの歯科矯正のタイミング
子どもの歯科矯正を始めるタイミングは大きく2つに分けられます。3~12歳の「第1期」、12歳以降の「第2期」です。
子どもの歯の生え替わる時期によって歯科矯正を始めるタイミングが分かれています。ただし、これはあくまでも目安です。
子どもの成長の速度・性差・骨格の状態によっては第1期から第2期まで継続的に治療しなければならないこともあります。
では第1期と第2期にはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説します。
1期治療
「第1期」は、おおよそ3歳から始まります。乳歯が生えそろう時期です。そして12歳ごろには永久歯へ生え替わります。
つまり、第1期の子どもの歯は、乳歯と永久歯が混在しているのです。では、永久歯に生え替わってから治療を始めるべきでしょうか?
実は、この混在期に歯並びを整える治療は最も重要な効力を発揮します。ポイントは「骨格」です。
発達中の顎の骨格は、歯科矯正でバランスをうまく整えられます。永久歯が正しい位置に生えるための健やかな骨格の成長を促すのです。
理想的な永久歯列が第1期の治療で獲得できれば、歯科矯正治療は終了します。第2期や大人になってからの矯正は不要です。
このように第1期から治療を始めれば、その後の矯正の必要性をなくし費用を抑えられる可能性があります。
2期治療
「第2期」は、おおよそ12歳から始まります。永久歯が生えそろって顎の発達も進み、大人の矯正と同様の治療が主です。
第1期は骨格がポイントでしたが、第2期は「歯並び」がポイントになります。矯正するのは歯間の幅や歯のねじれ・ズレです。
骨格に問題がない子どもには、永久歯が生えそろってからの第2期治療が推奨される場合があります。叢生が典型的な症例です。
第2期に的を絞った効果的な治療を行うことで期間が短縮できる場合があります。早期に歯科矯正を考慮した経過観察を始めましょう。
子どもの歯科矯正の治療方法
子どもの歯科矯正には、成長に合わせた矯正装置を使用します。主な装置は下記の3つです。
- ワイヤー矯正
- マウスピース矯正
- 床矯正
どれも口の中にいったん装着したら、長い間入れっぱなしになります。痛みも伴うため、子どものストレスに注意しましょう。
次にそれぞれの装置について特徴や注意点を解説します。
ワイヤー矯正
一般的な歯科矯正治療に「ワイヤー矯正」があります。歯に力を加えて動かし、歯並びを理想の位置に導く治療法です。
具体的には、歯の表面に「ブラケット」という器具を付けてワイヤーで連結し、それぞれの歯の間隔や位置を時間をかけて移動させます。
適用症例の範囲が広く効果的ですが、子どもにとっては次のようなストレスがかかるため注意しましょう。
- 痛み
- 歯磨きがしにくい
- 取り外せない
- 目立つ
このような不快感や痛みを理解した上で、治療の必要性や、いつもとは違う口内ケアの方法を子どもに説明して下さい。
歯磨きが特に難しいため、大人が適切に補助し、虫歯などのトラブルを防ぎましょう。
マウスピース矯正
透明な「マウスピース」という装置を使った治療法も、子どもの歯科矯正に有効です。ただし、上記のワイヤー矯正よりは高額になります。
子どもひとりひとりに合わせるため、歯型をスキャンしたり、マウスピースをカスタマイズ製作する費用がかかるのです。
費用がかかるデメリットを除けば、透明で目立ちにくく、取り外しもでき、通常の口内ケアで無理なく治療を続けられます。
しかし、適用範囲が狭く対応できない症例もあるためご注意下さい。
床矯正
乳歯と永久歯が混在している第1期に効果的とされる治療法が「床矯正(しょうきょうせい)」です。
永久歯が生えそろう土台となる骨を成長に合わせて整えるため、抜歯することなく歯並びを矯正できます。
ただし、床矯正は歯列の幅を拡げて永久歯の生えるスペースを確保できますが、顎などの骨格治療はできません。
重度の叢生や顎の位置などの矯正には、床矯正と他の矯正装置を併用するのが一般的です。最終的な目標を定めて治療計画を練りましょう。
子どもの歯科矯正のメリット
子どもの歯科矯正には、さまざまなメリットがあります。永久歯になる前に矯正を始めることで、成長に合わせた無理のない治療が可能です。
子どもの歯並びの問題を放置しておくと、次のような問題が深刻化するため注意しましょう。
- 悪習癖が絶ちきれない
- 骨格の発達をコントロールできない
- 抜歯が必要になる
これらの問題を回避できることが、子どもの歯科矯正の最大のメリットです。下記に詳しく解説します。
悪習癖の改善
歯並びに影響する悪い癖はありませんか。指をしゃぶる・爪を噛む・長時間口を閉じないなど、さまざまな癖があります。
癖の原因として口の中の筋肉のバランスが悪い・顎に不具合があるなどが考えられるため、癖に気づいたら歯科医に相談しましょう。
癖を放置しておくと、出っ歯や受け口などを引き起こします。そのような症状を未然に防ぐには、予防型矯正がおすすめです。
例えば「マイオブレースシステム」と呼ばれるマウスピース治療法は、歯と顎の健やかな発達を支援し、悪い癖の矯正に効果を発揮します。
顎骨の発育がコントロール可能
子どもの歯科矯正は、顎の成長をコントロールしながら歯並びが悪化するのを防ぎます。これは審美性というよりは機能を改善する治療です。
上顎の幅を広げてやることで、鼻腔が広がり口呼吸が改善されるだけでなく、ぜんそくやひきつけにも効果があります。
そして、永久歯が生えそろうためのスペースが十分に確保でき、自然な流れで美しい歯列に導くことが可能です。
きちんと噛める噛み合わせを獲得して、栄養を十分に摂りましょう。また、鼻呼吸で十分な睡眠を取れば健全な全身の発達につながります。
将来的に抜歯が避けられる場合も
子どもの歯科矯正では、骨の成長に合わせて歯並びの悪化を食い止め、理想的な噛み合わせを実現することを目的としています。
例えば前歯に問題がある子どもは、奥歯の生え方に問題がある場合が多いのです。まず奥歯がきちんと生えそろうための歯科矯正を行いましょう。
奥歯を動かして全顎歯列を正しい位置に矯正すれば、将来抜歯することなく美しい歯並びが手に入ります。
歯科矯正のお金が足りないときは?
子どもの歯科矯正はほとんどの症例が保険適用外のため、治療したくても高額な治療費に足踏みをしがちです。
高額ですが医療費控除の対象になります。1年間で10万円以上の医療費があれば、所得金額から一定額が控除される制度です。
それでは、子どもの歯科矯正治療の費用をまかなうための持ち合わせがない場合はどうしたらいいでしょうか。
下記にお金が足りないときの対処法を解説します。
分割払い
子どもの歯科矯正治療費を歯科医院の窓口で支払う際に、分割払いを申し込めます。
歯科医院によりますが、窓口での現金払いを分割納入できるオプションがあるかどうか調べてみましょう。
あるいは、クレジットカード払いにして決済のときに「分割払い」を選択してください。カード会社によって分割回数や年数が違うため注意しましょう。
デンタルローン
矯正治療費を支払うため「デンタルローン」を組むことも可能です。クレジット会社のウェブサイトから自分で申請できます。
クレジット会社にもよりますが、3回から120回まで回数が選べ、連帯保証人は原則不要の立替払契約です。
満20歳以上の安定収入がある方であれば申込可能で、医療費控除の対象になります。レシートなどの記録は大切に保管しておきましょう。
適切なタイミングで矯正治療をしよう
子どもの口内の状態や噛み合わせ・顎の歪みに気づいたときには、乳歯・永久歯のどちらかにかかわりなく歯科矯正医に相談してください。
骨格に問題があるなら第1期が治療のタイミングですし、歯並びだけに問題があるなら第2期まで経過観察しながら良いタイミングを見つけましょう。
無理なく永久歯を理想的な歯列にするために、成長する骨をうまく利用して美しい歯並び・正しい噛み合わせを目指して下さい。
子どもの歯科矯正のお金で困ったら歯科医に相談
子どもの歯科矯正は自由診療がほとんどで、歯科医により治療方法や方針が異なります。治療装置や期間について事前に調査しましょう。
歯科医によって治療費にはバラツキがありますが、高額であることには変わりないため、治療費だけでなく支払い方法についても調べて下さい。
治療費の総額・利率・ポイントの付与の有無・クレジット会社の選択について歯科医からできるだけ情報を引き出しましょう。
まとめ
子どもの歯科矯正のお金の問題を軸に、矯正の時期や治療方法について詳しく解説してきました。
子どもの歯科矯正を始めるタイミングや事前に調べておいた方が良いことについてご理解いただけたと思います。
子どもの将来の健全な噛み合わせと理想的な歯並びは、教育と同様に子どものこれからの人生の質に影響を及ぼす重要事項なのです。
歯科矯正には子どもの身体的な痛みだけでなく、大人の経済的な痛みも伴います。痛みを共に乗り越え、良く噛める健康的な歯並びを手に入れましょう。
そして、曇ることのない晴れやかな笑顔にきれいな歯並びが光り輝くよう子どもを導いてあげて下さい。