【監修:青山健一】
目 次
歯科矯正の治療には、矯正治療後に歯の後戻りを防ぐ保定という期間が必要になります。そのために使われる装置がリテーナーです。
リテーナーには取り外し式と固定式の2タイプがあり、それぞれに特徴に合わせて使い分けたり併用したりして使われます。
異なる種類のリテーナーを併用する場合も単体で使う場合も、矯正治療後の後戻りを防ぐという目的は同じです。
今回は、その中の固定式リテーナーについて詳しく説明します。
固定式リテーナーの役割
歯科矯正の治療後に後戻りが起こると今までの治療が無駄になってしまうこともあるため、リテーナーの装着が不可欠です。
リテーナーには治療が終わった歯の後戻りを防ぐための働きを持たせていますから、固定式リテーナーはとても適した装置といえます。
一般的には、後戻りを防ぐためには矯正治療後約3年間の装着が望ましいとされています。
固定式リテーナーを使うメリット
固定式リテーナーは歯の裏側に細いワイヤーを取り付け後戻りを防ぐ装置ですから、装着している間は後戻りは起こりません。ここが1つのメリットです。
固定式リテーナーは取り外せないことこそがメリットになります。外せないから保定を継続できるということです。
一般的には取り外し式リテーナーの方を採用する歯科医院が多くあります。その歯科医院の悩みは、リテーナーをちゃんと継続してつけてくれないための後戻りが多いということです。
固定式リテーナーのその他のメリットについても詳しく説明します。
費用が安い
リテーナーの費用は矯正治療の全体費用に含む歯科医院が多く、リテーナーだけの費用は比べられません。一般的に固定式は費用が安く、取り外し式の数分の1といわれています。
取り外し式リテーナーは、紛失や破損が多くリテーナーの作り直しに追加費用がかかるケースがあります。固定式リテーナーは取り外さないためこのようなリスクはありません。
歯科医院によって矯正治療費用の中にリテーナーの分も含まれている場合がありますから、治療前の説明のときに確認しましょう。
審美性が高い
固定式リテーナーは歯の裏側にワイヤーを固定する装置ですから、装置を装着していることは目立ちにくく気づかれることはありません。
まわりの人から見える口元は矯正治療後の整った歯ですから、美しく口元が整っている状態です。自信をもって笑顔になってください。
この審美性を保つためにも、固定式リテーナーを装着し後戻りの状態を作らないようにしていくことが大切です。
後戻りのリスクが低い
後戻りが起きると今まで取り組んできた矯正治療の結果が治療前の状態に戻ってしまいます。短期間リテーナーの装着を怠けたために後戻りが起きると、矯正治療のやり直しになります。
固定式リテーナーは取り外せないため、ワイヤー装置が外れなければ後戻りのリスクはほとんどありません。
固定式リテーナーで注意することは、装置が歯の裏側にあるため自分で確認ができにくくリテーナーの破損やワイヤーのはずれに気づかないことです。
定期的なメンテナンスを怠らないことと不具合を感じたらすぐに歯科医に相談することを忘れないでください。
固定式リテーナーを使うケース
固定式リテーナーを使うケースは患者様の不安を解消することや矯正治療の内容によって決められることが多くあります。
小さなお子様の場合は、矯正治療を継続させるために取り外しができない固定式リテーナーを選択することも必要です。
固定式リテーナーのメリットである目立ちにくいという特徴は、人と接することの多い仕事の方には精神的な負担軽減につながります。
その他にも後戻りが強く出る矯正治療をした場合には、固定式リテーナーを使って矯正治療の効果を長く持続させる対応が必要です。
裏側矯正をした
裏側矯正では歯の裏側でワイヤーの強い力を使って歯を動かしていましたから、急にその力がなくなると後戻りを起こしてしまいます。
せっかく矯正治療した整った歯を後戻りさせないためにも、24時間後戻りを防げる固定式リテーナーの装着が最適です。
固定式リテーナーの装着期間は、矯正治療にかかった期間とほぼ同じ期間を考えます。この期間は装着を継続しますが、装着している間は後戻りが起こりませんから安心です。
前歯にねじれ・スペースがある
矯正治療で前歯にねじれがやスペースがあった場合は、後戻りが強く出ることが予想されるため固定式リテーナーを装着します。
前歯にねじれがある場合は、ねじれが元に戻ろうとして後戻りが発生することがあるため固定式リテーナーを選択します。後戻りがなくなったと医師が判断するまで装着することが必要です。
歯と歯の間にスペースがある場合は、矯正治療後に歯がスペースに動こうとします。この後戻りを止めるために固定式リテーナーを装着します。歯の動きが止まるまで継続しなければなりません。
固定式リテーナーの注意点
固定式リテーナーは後戻りを防ぐためにとても有効な装置です。しかし、いかに有効な装置でも取り外さないことからくる不具合もあります。
いろいろな不具合について事前に知っておくことは、素早い対応をするためにも保定の効果を高めるためにも必要なことです。歯科医師と連携しながら上手にリテーナーを使っていきましょう。
ワイヤーの破損・ズレを放置しない
固定式リテーナーは歯の裏側にワイヤーを取り付けますから、状態の確認が難しく破損に気づかないことがあります。歯科用の小さな鏡を使うなど定期的にワイヤーの状態を確認しましょう。
歯の裏側にあるワイヤーに触れるなどのことから、ワイヤーを止める部分がずれてしまうことがあります。口の中の違和感を感じたら、すぐに歯科医に相談しましょう。
ワイヤーの部分は固定式リテーナーの大切な部分ですから、後戻りを避けるためにも不具合には早めに対応することが大切です。
定期的に歯科クリーニングを行う
固定式リテーナーは取り外しができないため清掃ができませんから、歯科医院の歯科クリーニングで定期的にメンテナンスが必要です。
リテーナーの清掃とともに破損や亀裂の有無・ワイヤーの接続状況などもしっかりと確認することで安心して継続装着ができます。
日常の歯磨き指導をしてもらうことで、リテーナーの清掃がうまくできているかどうかも確認することが可能です。口の中の清掃についても進んで取り組みましょう。
虫歯のリスク
固定式リテーナーは外せませんから歯磨きがとても難しく、磨き残しや歯周の清掃などがうまくできません。
そのため、通常の歯磨き以上に丁寧な歯磨きが必要になりますから、定期健診でご自身の歯磨き状況や歯石の除去と歯周病の有無などの衛生指導を受けましょう。
虫歯のリスクはご自身の努力で減らすことができますから、積極的な治療参加が大切です。
固定式リテーナーのよくある質問
固定式リテーナーは保定期間ずっと装着しなければなりませんから、装着に不安を感じる方もおられます。装着することの意味や必要性を理解して矯正治療の完成を目標に継続することです。
リテーナーの装着前に不安に思われていることやわからないことを少しでも解決し、安心した気持ちで固定式リテーナーの装着を始めていただきたいと思います。
発音・滑舌が悪化するか
固定式リテーナーは前歯の裏側にワイヤーを固定しますから、舌がワイヤーに触れるなど不快感もあり発音しづらいことがあります。
しばらく固定式リテーナーを装着し続けると、次第に慣れてきて気にならなくなることが多いです。発音や滑舌は、リテーナーを外した後は以前の状態に戻ります。
固定式リテーナーを装着していることで発音や滑舌に不安がある場合は、取り外し式リテーナーに切り替えることも可能です。歯科医師に相談してみましょう。
使用期間はどのくらいか
リテーナーの装着期間は3年程度ですが、矯正治療を終えて最初の1年間は後戻りが出やすい時期で後戻りを防ぐためにリテーナーの装着が不可欠な時期といわれています。
固定式リテーナーは取り外しができないため医師が後戻りがないと判断するまで装着することになりますが、リテーナーを装着している間は後戻りが起こりませんから安心です。
固定式リテーナーの装着期間は歯磨きがしづらいなどのデメリットもありますから、虫歯リスクを避けるためにも丁寧な歯磨きを続けましょう。
別医院でも作成できるか
固定式リテーナーを他の歯科医院で作れるかどうかについては「作れる場合もある」というお答えになります。
一般的には固定式より取り外し式のリテーナーの利用が多く、歯科医院によっては固定式を全く扱っていない歯科医院もあるためです。
転勤や引っ越しなどの事情で歯科医院を変えなければならない場合があり、保定の継続やリテーナーの作成が可能な医師を探すことがとても大切です。
事前にお近くの歯科医院に電話などで相談してから、ご希望に合った歯科医院に治療を依頼しましょう。
固定式・取り外し式の併用も可能
固定式・取り外し式の併用については患者様のご希望もありますが、歯科医師として後戻りがないようなリテーナーの選択という点から決めることがあります。
リテーナーの装着期間も矯正治療と同じくらい長い期間ですから、しっかりとリテーナーを装着し矯正治療の結果を普段の生活に生かすためにもリテーナーの装着は大切です。
固定式・取り外し式の併用については患者様の負担の軽減やリテーナーの継続装着という面から、歯科医師と相談して決めましょう。
固定式リテーナーの不安は歯科医に相談しよう
歯科矯正で保定期間のリテーナーは大切だということをご説明してきました。しかし、長期間の矯正治療の後に同じくらいの期間リテーナーを装着しますから不安が出て来るのは当然です。
後戻りしないためのリテーナーですから、長い期間装着することの不安な点等を担当医にご確認ください。
まとめ
今回は、固定式リテーナーの特徴について説明してきました。
矯正治療は長い治療期間で確実に歯並びを整えますが、その歯並びを維持するためには矯正治療後にリテーナーを使った保定期間が必要です。
リテーナーを使った保定には、後戻りをさせないためにリテーナーをしっかり装着し続けるという患者様の強い意志が欠かせません。
固定式リテーナーの外せないというデメリットをプラスにとらえて、リテーナーの装着を継続しましょう。リテーナーを外すときにきれいに整った歯並びのあなたの笑顔が待っています。