矯正治療で歯を削る理由を歯科医が解説|矯正で歯を削る目的とメリットについても紹介します

【監修:青山健一】

矯正治療で歯を削る理由を歯科医が解説|矯正で歯を削る目的とメリットについても紹介します

矯正治療で歯を削るの?と疑問だと思いますが、歯並びをよくするために治療で必要なこともあるのです。もちろん多くの患者様が、怖い・痛いなどと不安と恐怖心を抱きます。
矯正治療は症例に合わせてさまざまな方法で、歯を動かすための隙間を作ります。短時間で終わる治療や時間がかかる治療、年齢によっても違いがあるのです。

なぜ矯正治療で歯を削るのか?メリットはあるのかなど、患者様が安心して治療ができるように説明していきます。

歯を削る必要がある理由は

歯を削る必要がある理由は

矯正治療は歯並びをキレイにするために、歯に力をかけてゆっくりと動かしていきます。前歯が飛び出ている出っ歯や、歯並びがデコボコしている叢生は歯が並ぶ隙間を作る必要があるのです。
隙間を作るためには抜歯や顎を広げる治療の他に、歯を削ることもあります。歯は全部で28本生えていて前歯だけでも12本です。

1つの歯を少しずつ削るだけで、結構な隙間が確保できます。
矯正治療で歯を削る場所は、歯と歯が接している隣接面と歯の先端です。隙間を作る以外にも歯の大きさが上下左右でアンバランスなときは、歯の形を整えるために少し削ります。

デコボコを解消

デコボコを解消

顎が小さくて歯が並びきらずにデコボコしている状態を叢生といいます。顎が小さい方や歯が大きめの方が叢生になりやすい状態です。
叢生の治療には歯を並べるために隙間の確保が必要です。8歳から12歳くらいの成長期だと顎を広げる治療ができます。

叢生が強く顎を広げる適齢期が過ぎている患者様は抜歯をするケースが多くみられます。
しかし叢生の度合にもよりますが、抜歯をしなくても歯を少しずつ削ることで隙間の確保が確実にできるのです。抜歯すること無く矯正治療ができれば、治療の負担も少なくて済みます。
注意したいのは矯正治療において歯を削る治療は、全ての叢生に適応ではありません。叢生が強い場合は、抜歯することが1番歯と歯の隙間を確保できるのです。

上下の歯の大きさのアンバランスを解消

上下の歯の大きさのアンバランスを解消

上の歯が大きすぎたり左右で歯の大きさが違う症例がありますが、見た目にもアンバランスで噛み合わせが悪い状態です。歯の大きさのアンバランスは削ることで解消できます。
歯をキレイに並べるだけでは、歯の大きさのアンバランスは改善できません。上下左右でバランスのよい歯の大きさは、矯正治療後の歯並びをより一層キレイにみせてくれます。

ブラックトライアングルを改善

ブラックトライアングルを改善

歯の隣接面と歯茎を結んだ三角形の隙間が大きく黒く陰になってみえるのを、ブラックトライアングルといいます。
ブラックトライアングルは加齢によって歯茎が下がり、歯ブラシ圧が強い場合にできます。

しかしブラックトライアングルは、少し歯を削るだけで改善できるのです。隣接面の面積を広げれば、三角形の隙間も小さくなり黒い影も消失します。
特に前歯はブラックトライアングルが出やすく目立ちやすい場所です。ブラックトライアングルは少し老けた顔の印象になり、隙間が広いため唾や空気ももれます

ブラックトライアングルが解消されると顔の印象が若々しくなり、歯の汚れが挟まりにくく歯周病や虫歯予防にもなります。

歯列の安定性を向上

歯列の安定性を向上

歯と歯の接触している部分はほとんどが点接触です。点接触をしている所を少し削るだけで点から面に接触が変わります
歯と歯が接触している面積が増えることで安定して歯を支えます。支える面が安定すると、矯正治療後に後戻りするのを防げるのです。

歯は年齢を重ねると動きやすく、もともと悪かった歯並びは加齢とともに更に悪くなります。歯列の安定は歯並びの良さをキープするために重要です。

歯を削る方法

歯を削る方法

患者様にとって歯科治療は音が苦手で、痛いという恐怖心があると思います。矯正歯科で削る治療が必要なときは、痛みが出たりしみることがないように治療するのです。
削る方法としては、やすり・バー・ディスクを使います。この3つの道具を使い分けて歯の隙間を作り出し形を整えます。

やすり

やすり

矯正治療で使うやすりは、手で動かすタイプとエンジンで動かすタイプの2つの方法があります。やすりは細長い形で金属の紙やすりのようなものです。
手でやすりをかけるタイプは、やすりにハンドルを装着して動かします。自動のタイプはタービンというエンジンにやすりを装着して動かすのです。

どちらも同じように治療ができますが、エンジンの音や振動が苦手な患者様は歯科医に相談し手動タイプを使ってもらうとよいですね。
手動タイプもエンジンタイプも同じように、正確に隙間を作り厚さを調整できます

バー

バー

タービンの音が苦手な患者様もいますが、バーには沢山の種類があり使い分けることで正確に歯の隙間や形を調整します。バーは足で踏むフットレストで、エンジンの回転数を調整します。
実際に削る量は安全が確認されていて、痛みも無く歯にダメージを与えません歯科治療が苦手だと「安全」と頭で分かっていても、エンジンの音や振動が治療の恐怖心を強くさせることもあります。

ディスク

ディスク

ディスクは丸い円盤のような形をしていて、バーと同じでタービンに装着します。沢山のサイズと種類があり、調整の度合で使い分けて歯を整えるのです。
円盤状なため削るときは口元や隣りの歯に当たらないように細心の注意を払います。ただ矯正歯科の先生は専門的な技術があるため、ディスクを使った治療が危険ということはありません。

ディスキングの目的

ディスキングの目的

ディスキングとは矯正治療で隙間の確保をし、バランスを整えるために歯を削ることが目的です。心配かと思いますが、ごく薄くエナメル質だけを削るため安全です。
ディスキングは抜歯をしなくても、短時間で隙間の確保ができるメリットがあります。隙間の確保には抜歯が必要な症例もあるので、全てディスキングが適応ではありません。

歯の大きさを整える

歯の大きさを整える

歯の大きさを比べてみると、上下左右で大きさが違う場合があります。アンバランスな大きさの歯では矯正治療をしても歯並びがキレイにはみえません。
また歯の大きさがアンバランスなため、噛み合わせも悪くなっています。ディスキングで歯の大きさを整えれば、見た目と噛み合わせの両方の治療ができます。

前歯の出っ張りを改善

前歯の出っ張りを改善

出っ歯の治療をするためにディスキングをして隙間を作り、前歯を移動させて後ろに引っ込めます。少し引っ込めるだけで、出っ歯が改善され口がポカンと空く口呼吸も解消されます。
出っ歯による口呼吸は虫歯や風邪になりやすいため、健康のためにも矯正治療がおすすめです。
ディスキングは軽度な出っ歯に適応ですが、出っ歯の度合が大きい場合は抜歯をして矯正治療の隙間を確保したり、場合によっては外科的な処置が必要だったりすることがあります。

ストリッピングの方法

ストリッピングの方法

ストリッピングとディスキングは同じことでIPRともいいます。ストリッピングでできた隙間を利用して歯科矯正をします。
ストリッピングはやすり・バー・ディスクの3つの方法があり、全てレントゲンでエナメル質の厚みを確認しながら削るため歯にはダメージがありません。

ストリッピングのメリット

ストリッピングのメリット

矯正治療では歯を動かすための隙間を確保しますが、ストリッピングをすることで抜歯せずに済むメリットがあります。
矯正治療で抜歯をすることは虫歯や歯周病ではない歯を抜くため、健康な歯が失われることがデメリットです。

ストリッピングの時間ですが1本削るのに30秒未満です。抜歯をすると傷口が治るまで矯正治療が本格的に始められないのと、抜いた隙間が埋まるまで見た目も悪くなります。
ストリッピングのメリットは、短時間で患者様の負担も少なく隙間を作れることです。また歯の大きさを整えバランスのよい歯並になります。

歯を削るデメリットはない?

歯を削るデメリットはない?

矯正治療で歯を削る安全性は確保されていますが削った刺激でしみたり、一時的に知覚過敏のような症状が起きることもあります。
治療後はフッ素を塗布して歯を強化させることで、時間が経つにつれてしみなくなります。フッ素は矯正治療中の虫歯予防にも効果があるため、患者様には是非とも使って欲しいですね。
またタービンの音と振動は頭に響きやすく、恐怖心を強くするため削る時に痛いと感じるデメリットもあります。

エナメル質が安全に削れる範囲

エナメル質が安全に削れる範囲

エナメル質は全体の半分まで安全に削れます。虫歯の治療で歯を削るのと、ストリッピングは全く違う方法で麻酔も使わないし短時間で歯を整えます。
実際に治療でストリッピングをすると、思った以上に簡単に終わるのが分かるのです。ストリッピングする量は0.5mm以内と微量なため安全が確保されている範囲です。

なぜ1本あたり0.5mmなのか

なぜ1本あたり0.5mmなのか

エナメル質は日本人と外国人とで厚みが違い、エナメル質を安全に削る研究や論文では白人が対象に書かれています。
日本人のエナメル質は白人よりも薄いため、安全性を考えて0.5mm以内でストリッピングします。
エナメル質の厚みは個人差があるため、レントゲンをみて厚さを確かめながら慎重にストリッピングを行うのです。

矯正で歯を削ることで悩んだら専門医に相談

矯正で歯を削ることで悩んだら専門医に相談

歯を削ることは患者様にとって不安や恐怖心を強くします。治療する音や振動が苦手だったり、歯にダメージが出ないか心配ですよね。
矯正歯科ではレントゲンをみて安全にストリッピングする量を把握します。矯正歯科専門医ですから技術もあり安心です。

心配な治療があれば相談することで、患者様の不安も消えて納得がいく治療ができます。歯の治療は患者様の同意のもとにすすめるため、歯科医が勝手に削ることはありません。

まとめ

まとめ

歯を削ることは安全性も確認されていて、歯の寿命にも問題ありません。抵抗ある患者様もいますがメリットも沢山あります。
バランスがよくなり噛み合わせが改善され歯並びがキレイにみえます。

他にもよい点としてブラックトライアングルがなくなり、歯周病や虫歯予防もできます
隣接面の支えが安定することで、矯正治療の後戻りも防げるのです。
もちろん削ることは矯正治療で必要な場合だけですが、抵抗があり不安なときは歯科医に相談しながら納得して治療を進めましょう。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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