【監修:青山健一】
目 次
矯正治療を始める前は歯並びや噛み合わせなど治療後の姿をイメージして治療を申し込むと思います。
しかし、様々な理由で治療を途中でやめてしまう人も中にはいます。では、なぜ治療を途中でやめてしまうのでしょうか。
今回は治療を途中でやめてしまう理由や、やめた場合の費用やリスクについて紹介をしていきます。
矯正を途中でやめる場合の費用はどうなる?
矯正治療は一般的に保険適用外になることが多く、高額な治療費になってしまいます。
歯列矯正は事前に装置代と精密検査の費用を払っていることが多いため、その費用が戻ってくるのか気になるところだと思います。
契約内容によって一概にはいえませんが、ワイヤー・ブラケット矯正の場合は治療の進捗によって返金をすることができるかもしれません。
ただし、マウスピース矯正の場合は返金対応が難しいことが多くあります。これは治療開始時の精密検査後にマウスピース(アライナー)を全て作ってしまうからです。
製作してしまったマウスピースの費用は払う必要があり、そのマウスピースを利用して別の歯科医で治療を続けることは系列医院でない限り難しいため、無駄になってしまいます。
矯正を途中でやめるケース
歯列矯正は長期間に及ぶ治療のため、治療をしていく過程でやむを得ず治療をやめなければいけないケースがあります。
長い治療期間で不測の事態が起きる可能性は十分に考えられ、さまざまな理由があるかもしれません。ここでは矯正を途中でやめるケースについて紹介していきます。
留学
お子様の場合、進学に伴い留学をしてしまうことがあり、通院することが難しくなり治療を継続することができなくなってしまいます。
保定期間であれば年に数回だけの通院でも対応が可能なケースもあり、お子様の予定次第では対処できる場合もあります。難しいようであれば転院も検討しなければなりません。
留学が決まった際は早めに歯科医に相談をして、治療の継続ができないか検討をしていきましょう。
転勤
転勤なども遠方に引っ越さなければいけないことが多く、治療の継続が難しくなってしまいます。留学の場合のように遠方で通院が難しいことも理由の1つですが転勤は違う理由も考えられます。
それは、転勤に伴い生活スタイルが変化するからです。矯正治療は月に一度の間隔で調整やメンテナンスが必要となるため、生活スタイルが変わると今までどおりの通院が難しくなってしまいます。
転勤で通院間隔が空き過ぎたことが原因で歯並びを整える意欲が薄れてしまい、中断してしまうという人も少なくありません。
転勤などで生活スタイルが変わると感じた際は早めに歯科医に相談してみましょう。
治療中のトラブル
矯正治療中は基本的には矯正装置が口の中に入ったままになり、痛みや違和感がありストレスを感じてしまうため注意しましょう。
歯磨きや食事にも制限が掛かってしまうため、治療前に説明があっても想像していたのと違うと感じ治療を断念してしまう人もいます。
他にも歯科医と相性が合わなくて毎月の通院やブラッシングの指導が嫌になり通院をしたくないと感じる人もいるようです。
通院している歯科医に相談ができないような内容の場合はセカンドオピニオンなどを利用して他の歯科医院に相談をしてみましょう。
途中でやめる前に確認すること
矯正治療を途中でやめたいと考えた際に、どうすればいいのか分からない人がほとんどだと思います。
しかし考えもなく途中解約を伝えることは、歯科医に優位な状態になってしまう可能性があるため危険です。
これから紹介する内容を確認して可能であれば専門家に相談をしてから歯科医に治療を途中でやめたいと伝えましょう。
契約書の内容
矯正治療を開始する前に契約書に記入をしていると思います。契約書には中途解約の場合について記載があるため、途中でやめる前には必ず確認しなければなりません。
そこには費用だけでなく治療の内容についても記載があるため、どちらかに契約違反がないかを確認しておきましょう。
歯科医院側に契約違反があればそれを理由に優位に途中解約ができる場合があるため、途中でやめることを歯科医に話す前に必ず契約書の内容の確認が必要です。
支払い方法
歯科医院によっても様々ですが治療費を前払いしている場合には、既に完了している治療費の差額を返還してもらえます。
しかし、中途解約の際には治療費を返還しないと特約が入っていれば返金を受けられない可能性もあるため、注意が必要です。
また、前払いをしていなかったり分割で支払っている場合は、追加でどれくらい費用が必要なのかしっかりと歯科医と話し合わなければいけません。
その際には見積書や請求書を確認しながら内容に不備がないかしっかりと確認をしていかなくてはなりません。
途中で矯正治療をやめると返金される?
治療費を前払いしていた場合に矯正治療を途中でやめると診療契約の法的性質は準委任(民法第656条)になります。
そこには受任者(歯科医院)の責めに帰することができない事由によって中途解約がなされた場合にはすでになされた履行(治療)の割合に応じて報酬請求権が発生することになります(民法第648条3項)。
つまり、治療が済んでいる費用は返金しなくてよいことになるため、返金の際には確認が必要です。
治療の進行度に応じて返金
治療の進行度に応じての返金となりますが治療法によっては返金ができない場合があります。
ワイヤー・ブラケット矯正の場合は、治療の進捗状況に応じて途中清算が可能ですがマウスピース矯正は返金対応が難しいことがあります。
それは、治療初期の状態で全てのマウスピースの製作を進めてしまうためで、一度製作が進んでしまったマウスピースはキャンセルすることはできず返金もできません。
このような注意事項は治療を始める前に説明があるため、しっかりと聞いておかなければなりません。
全額返金は難しい
矯正治療を途中でやめた場合に全額返金は難しいです。これは前述でも紹介したとおり、歯科医院側に責任がない場合はそれまで掛かった治療費は支払わなければならないからです。
しかし、歯科医院側に途中解約の原因がある場合は全額返金の可能性があります。例えば、治療に不手際があり状況が悪化してしまった場合などが該当します。
このような場合は、専門家に依頼をして手続きをしなければならないため、早めに相談をしなければなりません。
矯正を途中でやめるリスク
矯正治療を途中でやめること費用面以外にも様々なリスクが存在します。
当然ですが治療を途中でやめるということは理想の歯並びになることはできません。
それだけでなく「後戻り」という現象が起きて、元の歯並びに戻ってしまう可能性もあるため注意が必要です。
さらに、治療を再開したいと考えてもすぐに治療を始めることができません。まずは精密検査をするところからやり直さなければならないため、再開するまでに時間が掛かってしまいます。
また、矯正装置を装着したまま中断していると虫歯や歯周病のリスクが高まります。途中でやめる場合でも一度歯科医に相談をして装置を取り外しておきましょう。
矯正治療を途中でやめるとこのようなリスクがあるため、やめる前には歯科医に相談をしてリスクを理解して進める必要があります。
矯正を途中でやめないために
前述でも紹介したとおり、矯正治療を途中でやめてしまうと様々なリスクやトラブルがあることがわかりました。
しかし、自身が考えていたものと違うと治療が嫌になってやめてしまいます。ここでは矯正治療を途中でやめないために注意をしておきたいポイントについて紹介していきます。
是非、参考にして治療を根気よく続けて理想の歯並びを手に入れましょう。
カウンセリングを受ける
矯正治療を受ける前に必ず初診相談を受けることがありますが、その時にしっかりとカウンセリングも受けておきましょう。
カウンセリングを受けることで矯正治療の仕組みや目的を理解することで、治療に対してストレスを軽減することができます。
それでも治療を開始してから不満や不安を感じた際はセカンドオピニオンを利用してみましょう。通院している歯科医院とは別の歯科医院に話を聞いてもらうことで不満を解消することにつながります。
話を聞いてもらったり内容を理解することで現在の治療に意欲を持てるようになります。
疑問や不安を解消しておく
矯正治療は長期の通院が必要になるほか、様々な制限がありストレスを感じてしまいます。特に、聞いていた話と違うことが起きると治療を続けていく意欲がなくなってしまいます。
疑問や不安をそのままにしておくと治療自体が嫌になってしまい継続していくことが難しくなってしまいます。どんな些細な疑問や不安でも早めに解消して治療を続けていけるようにしましょう。
実績のある歯科医を探す
歯列矯正を成功させる重要なポイントとして実績のある歯科医院に依頼をすることが挙げられます。
矯正治療は一般的な歯科医院では治療ができないため、しっかりと吟味したうえで歯科医院を決めることが必要です。
その基準として日本矯正歯科学会から矯正医療の水準の維持と技術の向上を目的とした「認定医制度」が創設されています。
認定医は一定の知識と臨床経験を積んでいるという目安になるため、歯科医院のホームページで認定医がいるかを確認しておきましょう。
信頼できる歯科医の下で安心して矯正治療を進めることで矯正治療を粘り強く続けることができます。
矯正治療に関する不安は歯科医に相談しておこう
矯正治療に関する不安は歯科医に相談しておきましょう。歯科医に相談をすることで不安を取り除けるほか、相談をしていく中で信頼関係も築くことができます。
信頼できる歯科医であれば通院も苦にならず、大変な治療も歯科医と共に乗り越えていけます。矯正治療を続けいていく上でなんでも相談できる関係性も重要です。
まとめ
今回は矯正治療を途中でやめた場合の費用やリスクに紹介してきましたが、矯正治療は基本的に始めた歯科医で最後まで治療をすることをおすすめします。
途中でやめてしまうと費用だけでなく歯並びもよくならないため、全くメリットはありません。
留学や転勤などやむを得ない場合は歯科医に相談をして系列医院を紹介してもらうか、信頼できる歯科医院を紹介してもらうなど治療を進められるように考えていかなければなりません。
一度始めたら最後まで治療をして理想の歯並びを手に入れましょう。