【監修:青山健一】
目 次
冷たいものや熱いものを食べたり飲んだりしたときに歯にしみて痛みがでる知覚過敏。歯の矯正をする前はしみることがなかったのに、矯正したら知覚過敏になってしまったという人は多くいます。
実は歯列矯正中というのは知覚過敏が起こりやすい状況ではあるのです。
今回は矯正中に知覚過敏が起こりやすい理由を解説していきます。併せて知覚過敏の対処法や予防法もあるため矯正中で知覚過敏に悩んでいる人は試してみて下さい。
矯正中に知覚過敏になる理由
歯の矯正中は処置をするときの影響で知覚過敏が起こりやすい状態です。
まずは矯正をしているときに知覚過敏が起こりやすい原因についてお話ししていきます。
隠れていた部分が刺激を受けるようになった
歯の内部には象牙質という細かい管があります。外から刺激を受けると象牙質から歯の神経に刺激が伝わってしまい痛みが現れるのです。
普段、歯は硬いエナメル質で覆われ外部の刺激から守られているため象牙質に刺激が伝わることはほぼありません。
歯に痛みが起こるのは象牙質が何かしらの要因でむき出しになっているか、エナメル質の層が薄くなって刺激が伝わりやすい状態になっているからです。
歯の矯正は器具を使って歯を少しずつ動かして歯列を整えていく治療をしていきます。その歯を動かしたときに歯と歯茎の間に隙間ができてしまうのです。
歯茎との間に隙間ができると歯の根っこが露出してしまいます。
歯の根っこの部分はエナメル質に覆われていないため歯茎に覆われていないと象牙質がむき出しになった状態です。そのため外部からの刺激が歯茎との隙間から入ってくるとことで象牙質が刺激され歯がしみて痛みが出ます。
これが矯正中に知覚過敏になりやすい原因の1つになるのです。
また矯正の前は歯と歯が重なっていて他の歯で隠れていた部分が矯正で表に出てくることで普段刺激を受けていないぶん敏感になっている可能性もあります。
スペース確保のために歯を削った
歯の矯正をするときに歯を動かすスペースを確保するために歯を削る処置を行うことがありますが歯を削ったことが原因で知覚過敏が起こっている可能性もあります。
この処置で歯を守るエナメル質が少し削られることになるのですが普通は象牙質に届くまでの量を削ることはありません。
しかし歯を削ったときの刺激で一時的に刺激に敏感になってしまうことがあるため、その刺激を痛みとして感じてしまう可能性があります。
これが原因の知覚過敏は、あくまで一時的のため多くの場合は痛みが持続することは少ないです。
歯磨きの力が強い
歯磨きのときに力強く磨いてしまっていることが原因で知覚過敏が起こっていることも考えられます。
歯の表面が傷つくと歯を覆っているエナメル質が薄くなってしまい象牙質に刺激が伝わりやすくなりますし、歯茎を傷めてしまうと歯茎が縮んで下にさがってしまうのです。
歯茎が下がってしまうということは歯の根っこが露出することになってしまいます。このまま歯磨きのときに力強くこすってしまうと歯の根っこの象牙質も傷がつくことになってしまうためしみて痛みが出るのです。
知覚過敏の症状
次は知覚過敏の症状について詳しく解説していきます。
食べ物や飲み物が歯にしみる
知覚過敏は冷たいものを食べる・飲むといったときに歯がしみてしまうことが代表的な症状です。知覚過敏が重度になると温かいものや甘いものも歯にしみることがあります。
歯磨きのときに歯ブラシがあたると痛むのも知覚過敏の症状の1つです。人によっては冷たい空気が歯に触れただけでも歯にしみて痛みが出てしまうこともあります。
虫歯や神経の部分に炎症がないのに冷たいものや熱いものがしみるという場合は知覚過敏の可能性が高いですが、虫歯なのか知覚過敏なのかは自分では判断できないことが多いです。
一時的な歯の痛み
知覚過敏自体も痛むのはしみた瞬間だけか、続いても短時間で痛みがおさまることが多いです。矯正をしたときの処置が原因で起こる知覚過敏も基本的に長く痛むことはほとんどありません。
とくに矯正のときの処置が原因で起こっている知覚過敏であれば日にちが過ぎればしみることもなくなっていくため多くの場合は心配はいらないです。
矯正中に知覚過敏にならないための注意
実際、矯正中に知覚過敏になる人は多いです。だからこそ、できるだけ知覚過敏にならないようにするための注意点を紹介していきます。
まずは患者さん自身で気を付けてみて下さい。
口腔内を清潔に保つ
知覚過敏を予防するために大切なことは口の中を清潔にしておくことです。矯正器具をつけていると器具に食べ物が挟まりやすいうえに器具が邪魔して歯磨きもやりにくいため清潔を保つことが難しい状況ではあります。
しかし歯や矯正器具に汚れがたまったままだと細菌が発生しやすくなってしまうのです。
口の中はもともと細菌が多い場所ではありますが口の中が不衛生な状態だと増殖した細菌のせいで歯茎に炎症を起こすきっかけになってしまいます。
歯茎が炎症を起こすと歯茎が退縮して下がってしまい歯の根っこが露出することになってしまうため細菌が繁殖しないように注意をする必要があるのです。
また歯磨きだけじゃなくマウスピース型の矯正器具など取り外しができるものは器具も毎日洗浄をしてキレイにしておくことを心がけて下さい。
歯磨きは力を入れすぎない
歯磨きのときに虫歯にならないようにとついゴシゴシ磨いてしまいがちですが、歯の健康を守るためにも強く磨きすぎないように優しく磨くことが知覚過敏を予防するポイントになります。
歯ブラシは鉛筆と同じように持つと力を入れすぎることなく適切な力加減で歯を磨くことが可能です。歯ブラシを動かすときは大きくゴシゴシ動かさずに毛先を歯にあてたらあとは小刻みに動かすほうがキレイになります。
ヘッドの小さいブラシの部分が硬くない歯ブラシがおすすめです。
歯科医に行くと正しい歯磨きのやり方を詳しく教えてくれますから、歯の磨き方に自信がない人は歯科医で相談をしてみて下さい。
知覚過敏になった時の対処法
知覚過敏を予防するための注意点と方法はお伝えしましたが現時点で知覚過敏に悩んでいる場合は痛みを軽減するための対処法を知りたい人も多いはずです。
ここでは知覚過敏の痛みを軽減するための対処法を紹介します。
知覚過敏用の歯磨き粉を使う
知覚過敏の人には知覚過敏用の歯磨き粉を使うことが望ましいです。
普通の歯磨き粉には歯の汚れを落とすために研磨剤が入っています。普通の人であれば研磨剤が入っていても問題はありませんが、知覚過敏の人には刺激が強すぎるのです。
それなのに普通の歯磨き粉を使い続けると痛みを軽減するどころか知覚過敏の症状がひどくなってしまいます。
その点、知覚過敏用の歯磨き粉であれば研磨剤は入っていませんから歯を傷めることもなく刺激も少なくなっています。
さらに知覚過敏用の歯磨き粉には硝酸カリウム・乳酸アルミニウムという知覚過敏による痛みを抑える成分が含まれていて歯磨きのときに歯がしみることを軽減することができるのです。
知覚過敏用の歯磨き粉はネット通販やドラッグストアでも買うことができるようになっていますから知覚過敏の人は試してみて下さい。
優しく丁寧にブラッシングをする
知覚過敏を悪化させないためには口腔内を清潔に保つことが大切で歯磨きもしっかりすることが大切です。
知覚過敏にならないための注意点の部分でも解説しましたが、知覚過敏になってしまっている人はとくに優しく歯磨きをするようにして下さい。
強く磨くと余計に痛みが出てしまいます。痛いと歯磨きもキチンとできなくなるため歯を優しくブラッシングすることを心がけることが重要です。
やわらかめの歯ブラシを使って優しく丁寧に1本ずつブラッシングをしていくようにして下さい。痛みが出る場合は無理なく休憩をしながら少しずつ磨くようにして下さい。
歯科医に相談をする
歯の矯正が原因の知覚過敏で痛みが強くない場合は上の方法を試しながら様子をみても、日にちが過ぎればおさまっていきます。
しかし歯磨き粉を知覚過敏用のものに交換して歯磨きも優しくやっているけど知覚過敏が改善されないときや痛みが強い場合は我慢をしないで歯科医に相談をして下さい。
歯科医で虫歯や炎症がないことを確認してもらい知覚過敏だと判断されると歯にコーティング剤を塗ってくれるため歯がしみる状態が改善されます。
コーティング剤は日にちがたつと落ちてしまいますが歯の矯正が原因の知覚過敏は一時的なことが多いためコーティング剤が落ちてしまう頃には知覚過敏の症状もなくなっている可能性が高いです。
矯正中の口腔内のトラブルは歯科医に相談
ただの知覚過敏だと思っていたものが虫歯や歯茎の炎症が原因で痛みが起こっていることも考えられます。判断をする目安はありますが自己判断だけでは難しいところがあるのです。
虫歯などが原因であれば歯科医で対処をしてもらう必要がありますし、知覚過敏だったとしてもひどい場合は処置が必要になることもあります。
知覚過敏の痛みは人それぞれです。我慢できない痛みがある場合は無理をしないで歯科医に相談をすれば、適切に対処をしてくれるはずです。
知覚過敏だけではなく歯の矯正中に歯に痛みを感じる場合や器具に違和感があるなど口腔内にトラブルが起こった場合は、放っておかずに早めに歯科医で相談をして対処をしてもらうようにして下さい。
まとめ
今回は歯の矯正中に起こりやすいトラブルの1つである知覚過敏についての解説をさせていただきました。
矯正で知覚過敏が起こるのは歯を動かしたときに普段は隠れている場所が表に出てしまい、そこが刺激に対して過敏に反応をすることが原因になります。
矯正で起こる知覚過敏は基本的には一時的なものですから痛みが強くない場合はいずれおさまっていくものです。矯正を始めてすぐであれば知覚過敏用の歯磨き粉を使って歯磨きのやり方も注意しながら様子をみても良いです。
しかし、しばらくたっても痛みが続く場合や刺激も受けていないのに痛みがある場合は重度の知覚過敏になっている場合や知覚過敏ではなく違う原因で痛みが出ている可能性があります。
我慢できない痛みが出てきた場合は無理をせずに早めに歯科医に相談をして適切な処置をしてもらうようにして下さい。