【監修:青山健一】
目 次
矯正治療は治療期間が年単位と長く、矯正期間中は矯正器具を装着し矯正を行います。
長い付き合いになる矯正器具ですが、食べかすや着色汚れなどのトラブルとも付き合っていかなければなりません。
毎日一緒に過ごす矯正器具のため、清潔な状態を保つためにはセルフケアが重要です。
今回は、矯正器具の汚れの落とし方のコツを解説していきます。矯正器具の汚れを放置する危険性も併せて紹介するので、参考にしてください。
矯正器具の汚れが気になる人は多い
矯正治療は、必ず矯正器具を歯に装着しなければいけないため、装着器具に付着した汚れが気になる方は少なくありません。
歯に装着させたブラケットをワイヤーで繋いで矯正を行うワイヤー矯正は、矯正装置を付けた状態で生活しなければいけません。
そのため、自分で取り外して、矯正器具に付着した汚れを落とすのは不可能です。また、ブラケットの構造上、普段の歯磨きでは落としきれない汚れも存在します。
マウスピース矯正で装着するマウスピースは取り外しが可能ですが、装着している間に付着した汚れは自分でお手入れをしなければいけません。
矯正器具についた汚れは、不快感があるだけでなく口臭や歯周病の原因にもなるため、汚れの落とし方のコツを覚えておきましょう。
矯正器具の汚れの種類
矯正器具には、食べかす・着色汚れ・唾液などの汚れが付着します。それぞれの汚れについて解説します。
食べかす
矯正器具やそのまわりは、細かい食べかすが残りやすいです。
人間は、朝・昼・夜と最低3回は食事をします。矯正器具には、食事をするたびに食べかすが残ってしまいます。
特にワイヤー矯正で装着しているブラケットは、食べかすがつきやすく歯ブラシだけでは汚れを完璧に落とせません。
矯正器具に付着した食べかすは、会話をしたときなどに見えて見た目が悪くなります。
また、マウスピース矯正の場合マウスピースを外して食事をして食べかすが残っている状態で、再び装着するとマウスピース内の汚れの原因になります。
矯正器具を装着しているときは、食事のたびに食べかすが残っていないか鏡でチェックしながらの歯磨きがおすすめです。
着色汚れ
着色汚れは、矯正器具にも付着します。矯正器具と聞くと、金属製のワイヤー矯正をイメージする方が多いと思います。
ですが、ブラケットやブラケットとワイヤーを繋いでいる器具などは、ゴムやプラスチック・セラミックなどを使用している場合もあるのです。
また、マウスピース矯正で装着するマウスピースの素材も、プラスチックの一種であるポリウレタンなどでできています。
ゴムやプラスチックは、食品に含まれる色素を取り込みやすい特徴があります。
タッパーにカレーなどを保存したときに、色移りしたのを見たことがあると思いますが、同じような現象が矯正器具にも起こるのです。
そのため、矯正器具を装着しているときは下記のような「色の濃い食べ物・飲み物」に注意してください。
- カレー
- ケチャップやトマトソース
- コーヒー
- 紅茶
- ワイン
また、タバコを吸っているとヤニ汚れが付き、矯正器具の着色の原因になります。ヤニ汚れは歯磨きで落とせないため、歯科医でのクリーニングが必要です。
着色汚れは矯正治療や歯の健康に影響は与えませんが、着色した矯正器具は見た目がとても悪いです。
とはいえ、矯正器具が着色してしまったという理由で、矯正器具の交換はできません。
着色しやすい食べ物や飲み物は矯正器具を交換する数日前に飲食するなど、矯正器具の着色を防ぐ工夫をしましょう。
唾液
唾液の汚れは、特にマウスピースを装着しているときは注意しましょう。
マウスピースは取り外し可能ですが外したとき、たくさんの唾液がついています。唾液にあるミネラル成分は口腔内の歯石を作り出します。
唾液の汚れを放置すると歯石が付き、透明なマウスピースが濁った色になるだけでなく悪臭の原因になるため、毎日のお手入れが重要です。
矯正器具の汚れを放置する危険性
矯正器具は、構造上汚れが溜まりやすいです。汚れを放置すると口臭や歯周病を引き起こす原因になるため注意が必要です。
矯正器具の汚れを放置した場合の危険性について解説します。
口臭が発生する
ワイヤー矯正の矯正器具に食べかすなどの汚れが付いたまま放置すると、菌が繁殖し口臭を発生させます。
マウスピース矯正の場合も同じで、マウスピースに付着した汚れを落とさずに脱着を繰り返すと汚れがどんどん溜まり、口臭を発生させてしまうケースも珍しくありません。
また、マウスピースの装着時間は1日20時間以上と長いため、唾液がマウスピース内に溜まりやすいです。
唾液には、口臭の原因菌の繁殖を抑える作用がありますが、マウスピースを装着していると十分な唾液が口腔内に行き届きません。
そのため、マウスピースを装着していると口臭の原因菌を繁殖させ口臭が発生しやすい環境を作ってしまいます。
口臭は、自分では気付きにくいですが周囲にいる人は敏感に感じ取るため、不快感を与えかねません。
矯正器具の汚れを放置すると口臭を引き起こす原因になってしまうため、普段から矯正器具の汚れを落とすのが重要です。
歯周病の原因になることも
矯正器具の汚れを放置すると、歯周病の原因になることもあります。
矯正器具や歯に付いた食べかすなどの汚れを放置すると、菌が繁殖し歯周病の原因となる歯垢を作り出します。
歯周病は進行すると歯茎や歯を支えている骨が溶けてしまい、重度になると歯を失ってしまう恐ろしい病気です。
矯正治療中に歯周病になると、治療を中断し歯周病治療を優先させなくてはいけません。
矯正治療を中断すると、治療期間の延長や予定外の治療費の支払いなどマイナス要素が発生します。
そのため、矯正治療中は歯周病にならないための予防も必要です。
矯正器具の汚れの落とし方のコツ
矯正器具の汚れは自分で落とせます。普段から矯正器具の汚れを落とすことで、口臭や歯周病などを予防できます。
矯正器具の汚れの落とし方の4つのコツをみていきましょう。
歯磨き粉は使わない
マウスピースやリテーナーの汚れを落とすときは、歯磨き粉を使わないでください。
歯磨き粉には研磨剤が含まれているため、使用するとマウスピースやリテーナーの表面を傷つけてしまい、細菌が付く原因になります。
マウスピースやリテーナーを洗浄するときは、水を流しながら歯ブラシでよく磨いてください。
汚れが気になる場合は、中性洗剤を1~2滴垂らして洗浄したあとよく洗い流す、または矯正器具用の洗浄剤を使って洗浄しましょう。
ワイヤー矯正の場合の歯磨きでは歯磨き粉を使用しても大丈夫ですが、つけすぎると泡で口の中が見えなくなってしまうため、少なめにつけて磨きましょう。
隅々まで丁寧に磨く
矯正装置の汚れを落とすコツは、隅々まで丁寧に磨くことです。
マウスピースやリテーナーは、磨き残しがないかしっかり確認しながら磨いてください。
矯正装置の汚れを隅々まで丁寧に磨くことで、口臭や歯周病などのトラブルを防げます。矯正治療は治療期間が長く年単位になるため、毎日のお手入れが大切なのです。
ワイヤー矯正の場合は、念入りな歯磨きを心がけましょう。歯ブラシの他にデンタルフロス(糸ようじ)を使うとより汚れを落とせます。
また、ブラケットやワイヤーに付いた汚れは目立つため、鏡を見ながらの歯磨きをおすすめします。
ぬるま湯で洗う
ぬるま湯は水に比べて汚れが落ちやすいため、矯正装置はぬるま湯を使って洗浄しましょう。
熱湯には殺菌作用があるため、矯正装置を熱湯消毒や煮沸消毒したいと思う方もいると思います。
ですが、マウスピースやリテーナーなどを熱いお湯で洗うと素材が変形してしまうため、熱湯は使わずぬるま湯で洗ってください。
マウスピースやリテーナーが変形すると歯に合わなくなり、作り直しが必要です。
矯正器具を作り直すには時間がかかるため、治療期間が予定よりも長くなる恐れがあり、新たに作り直すと予定外の出費がかかります。
マウスピースやリテーナーはぬるま湯を使い、変形しないよう注意しながら洗浄を行いましょう。
専用の洗浄剤も併用する
マウスピースやリテーナーは毎日の洗浄でも汚れは落とせますが、専用の洗浄剤を併用するとでより清潔を保てます。
矯正器具の専用洗浄剤は、ドラッグストアやインターネット・歯科医で購入可能です。
専用洗浄剤は、つけ置きタイプ・泡タイプなど種類があります。使いやすさは人それぞれのため、自分の使いやすいタイプの洗浄剤を購入しましょう。
専用洗浄剤のほかに入れ歯洗浄剤も効能が同じなため、使用しても問題はありません。
専用洗浄剤は、毎日使うと費用がかさみます。普段は水洗いして、週に1度専用洗浄剤を使うといった使い方がおすすめです。
歯科医の指示どおりに矯正器具を洗浄しよう
矯正器具の洗浄は、歯科医の指示に従い正しく行いましょう。
矯正治療を行う際、矯正器具の洗浄方法について必ず歯科医から説明があります。
洗浄の仕方は歯科医によって多少違いがありますが「汚れを落とす」「汚れを残さない」という観点に違いはありません。
歯科医の指示どおり洗浄を行わないと、口臭や歯周病などのトラブルが発生する恐れがあります。
矯正治療中に口腔内でトラブルが発生すると、途中で治療を中断する場合もあるため、計画通りに治療が完了しないだけでなく予想外の出費も考えられます。
歯科医の指示通りに矯正器具を洗浄し、矯正中は口腔内のトラブルを発生させないよう心がけましょう。
矯正器具を清潔に保つために
矯正器具の汚れは口腔内のトラブルだけでなく、見た目にも影響を与えます。矯正器具を清潔に保つためには、毎日の歯磨きや歯科医院での定期的なクリーニングが必要です。
矯正器具を清潔に保つための、2つのポイントをみていきましょう。
毎日の歯磨きが大切
矯正器具を清潔に保つためには、毎日の歯磨きが大切です。
矯正器具の主な汚れは食べかすのため、食事ごとの歯磨きが理想的です。
ですが、仕事をしていると昼食後の歯磨きは、時間がなく大変なときもあると思います。昼食後の歯磨きができないときは、朝と晩ご飯の後の歯磨きを入念に行いましょう。
また、夜寝ているときは口腔内の菌が繁殖しやすいため、夜は丁寧な歯磨きをおすすめします。
歯科医院でのクリーニングも効果的
歯科医院でのクリーニングは、矯正器具を清潔に保つために効果的です。
歯科医では、手動や超音波のスケーラーという器具を使い歯垢や歯石・着色を除去するクリーニングを行っています。
矯正器具の調整を行うときにクリーニングしてくれる歯科医と、矯正器具の汚れ具合によってクリーニングを行う歯科医があるため、治療前に確認しておきましょう。
クリーニングは、歯ブラシが届かない場所の汚れまできれいに除去できるため、定期的に行えば口臭や歯周病に悩まず矯正治療が行えます。
歯磨きなどのセルフケアで矯正器具の汚れが落とせているか心配な方は、歯科医へ相談しクリーニングの回数を増やし矯正器具の清潔を保ちましょう。
矯正器具の汚れが気になったら歯科医に相談しよう
矯正器具の汚れが気になったら歯科医に相談しましょう。
ワイヤー矯正は、ブラケット・ワイヤー共に歯ブラシが届かない場所があるため、毎日の歯磨きだけでは汚れを落としきれません。
マウスピース矯正でも、セルフケアだけでは汚れがしっかり落とせているか心配という方もいると思います。
矯正器具の汚れを放置すると、細菌が増殖し口臭や歯周病を引き起こすだけでなく、見た目にも不潔な印象を与えます。
矯正器具の汚れに関しては、専門知識のある歯科医に相談するのがベストです。
「うまく相談できるか不安」「小さいことでも相談して大丈夫なのか」と、歯科医への相談を後回しにしている方もいると思います。
ですが、相談せずに疑問や不安を抱えているうちに、口腔内でトラブルが発生してしまう可能性も否定できません。不安や疑問があったら、早めに歯科医へ相談してくださいね。
まとめ
今回は、矯正器具の汚れの落とし方のコツや、矯正器具の汚れを放置する危険性を解説してきました。
矯正器具の汚れは、毎日の歯磨きがとても大切ですが、矯正装置の構造上落としきれない汚れがあるのも事実です。
矯正器具の汚れを放置したり洗浄方法を間違えたりすると、口臭や歯周病の原因である歯垢がどんどん溜まってしまいます。
矯正器具の汚れは、矯正中の口腔内にトラブルを引き起こすだけでなく、見た目も悪く周囲に不快感を与えてしまいます。
矯正器具の汚れが気になるときは、セルフケアを行うとともに歯科医でのクリーニングを行い清潔を保ちましょう。
また、矯正器具の汚れについて不安や疑問があるときは、早めに歯科医へ相談しながら矯正治療を行ってくださいね。