【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正に欠かせない装置の1つとして、マウスピースがあります。審美性の高い矯正方法として、透明なマウスピースを使った治療もあります。
さらに、マウスピース矯正以外でも、矯正後の保定に使うリテーナーもマウスピースの一種です。こうした装置は、自分でつけ外しをしながら使います。
そのため、しっかりとしたお手入れや管理が求められます。この記事では、矯正に必要なマウスピースの洗浄方法をみていきましょう。
矯正中の生活について詳しく知りたい方は必見です。
マウスピースの洗浄方法を解説
矯正用のマウスピースは、装着している時間が長いほど早く治療の効果が表れ効率的です。
しかし、ずっと着用していると、どうしても装置に汚れが付着してしまいます。
マウスピースの汚れを放置すると、この記事でも後程紹介するような様々な悪影響があります。
矯正中の口内環境を整えるためにも、適切な洗浄が必要です。
しかし、誤った方法で洗浄すると、装具にダメージを与えてしまう場合もあります。勝手な判断はせず、適切な方法で洗浄するのが重要です。
マウスピースにはさまざまな種類があり、それぞれにおいて多少の違いはあります。
ここでは、各装置に共通する基本的なお手入れ方法を押さえていきましょう。
マウスピースの洗浄方法
ではまず、マウスピースの具体的な洗浄方法を確認します。
水洗い
普段の簡単なお手入れであれば、水洗いで問題ありません。水道水で洗い流しながら、指で汚れを落とすことでお手入れできます。
目立った場所以外にも汚れがついている場合があるため、チェックしましょう。汚れの取れにくい隙間は特に入念に磨く必要があります。
指で汚れが落ちなければ、毛先の柔らかい歯ブラシを使用しましょう。また、食器を洗うのに使用する中性洗剤も使えます。
水洗いが終わったら、そのまま装着するのではなく乾かしましょう。吸水によって装具が変形しやすくなってしまうためです。
専用の洗浄剤を使う
水洗いで取れない汚れには、専用の洗浄剤も使用してみましょう。マウスピース洗浄剤は歯科医院やドラッグストアで購入できます。
マウスピースの洗浄剤には、主に下記の2タイプがあります。
・泡スプレータイプ
マウスピースに直接スプレーで吹きかけ、指でこすって洗浄するタイプです。
1~2分の最短で洗浄できる方法で、ボトル形式が多く持ち運びができるのがメリットです。
・漬け置きタイプ
洗浄剤を入れた水やぬるま湯を洗浄液としてマウスピースを漬けて洗います。
泡タイプに比べ洗浄に時間はかかりますが、漬けるだけで磨く必要がないのがメリットです。
どちらのタイプにも、除菌力や使用方法の違う様々な商品があります。
コストや使用場面を考えながらご自身に合った商品を選びましょう。
この2つの専用の方法以外にも、市販の入れ歯用の洗浄剤を使うというやり方もあります。
専用の洗浄液と同程度の除菌効果で、漬け置きタイプとほぼ同じやり方で洗浄できます。
また、超音波洗浄機での洗浄も可能です。お手入れの時間がないという方は、購入を検討してみてください。
マウスピースの着色が気になる場合は、ハイターの使用もできます。
マウスピースを洗浄する頻度
水洗いは、基本的に毎日習慣的に行うよう心がけましょう。食事の際には外すのが一般的なため、食事が終わった後に洗います。
さらに、就寝前に何もつけず柔らかい歯ブラシでもう一度磨くのが理想です。洗浄剤を使うのは、1週間に1度程度で十分です。
水洗いと洗浄剤を組み合わせ、こまめに洗浄しましょう。
マウスピースの汚れを放置するリスク
毎日こまめにお手入れするのは大変な場合もあります。しかし、装置の洗浄を怠ると、口内環境に対するリスクが発生します。
ここでは、洗浄せず放置した場合どうなるかを押さえておきましょう。
虫歯や歯周病
汚れが付着したままのマウスピースを装着すれば、その汚れが歯にも付着します。
マウスピースは長い間はめているもののため、汚いままだとお口への影響があります。
歯が汚れた状態が続くと発生するのが虫歯や歯周病のリスクです。見た目ではわからない汚れでも、実は細菌の温床になっている場合もあります。
このリスクを回避するためにも、水洗いと洗浄剤の併用がおすすめです。
また、装置をはめていないときと同じようになるべく糖分を避けるといった対策もしましょう。
もちろん、マウスピース洗浄だけでなく歯磨きも重要です。矯正中は唾液も出にくいため、特にきれいに磨きましょう。
矯正中に虫歯や歯周病が発生すると、治療期間が長引きます。手間のかかる治療を短く終えるためにも、こまめな努力が大切です。
口臭の原因になる
マウスピースを汚いまま放置しておくと、口臭の原因になります。汚れのせいでカビや細菌が繁殖することが、口臭のもとです。
また、マウスピース装着中は唾液が出にくいのも口臭に影響します。唾液には洗浄作用があり、分泌が損なわれると口内環境を保ちにくくなります。
口臭は、病気を引き起こす兆候です。口臭が強いということは、口内の環境が悪化している証拠です。
自分だけでなく、対面する相手にも不快感を与えます。ニオイが気になってくる前に、しっかり洗浄するよう心がけましょう。
マウスピース洗浄の注意点
ここでは、マウスピースを洗うにあたって注意すべきことをみていきましょう。
自分でお手入れする必要があるため、誤った対処をすると矯正治療の妨げになってしまいます。
失敗をしないためにも、下記の4点には気を付けましょう。
ここでの注意を守らないと、洗浄しているつもりがかえって逆効果になってしまう場合もあります。
研磨剤入りの歯磨き粉を使わない
研磨剤が入っている歯磨き粉を使った洗浄はNGです。この成分が入っているとマウスピースの表面が傷ついてしまうのが理由です。
見えないような小さな傷でも、傷ついた部分には汚れがたまりやすくなります。
また、傷があるとこの記事で紹介した洗浄方法でも汚れが取りにくくなってしまいます。
汚れがたまると、細菌が増殖してニオイの元にもなりかねません。装具に傷がついてしまうと、そこから悪循環が生まれます。
歯磨き粉には研磨剤が含まれている場合がほとんどのため、使用を避けるのが無難です。汚れが取れない場合は専用の洗浄剤を使用して磨きましょう。
歯ブラシで磨く際も、何もつけずに優しく磨きましょう。
煮沸消毒をしない
消毒のためといってマウスピースを沸騰したお湯に漬けてはいけません。装置が変形し、最悪の場合は溶けてしまいます。
沸騰したお湯に限らず、マウスピースは熱に弱い素材で作られています。熱いお湯で洗うことや、直射日光に当てることも避けましょう。
熱を遮るために専用のケースで保管するのがおすすめです。冬場で冷たい水が使いにくいときは、ぬるま湯程度なら使用可能です。
歯ブラシは柔らかいタイプを使う
歯ブラシを使って水洗いするときは、かたい歯ブラシを使うことは避けましょう。歯磨き粉を使ってはいけないのと同じ理由で、マウスピースが傷ついてしまうからです。
マウスピースを傷つけないようにするには、指洗いがおすすめです。歯ブラシを使いたいなら柔らかい商品を使い、優しく洗うことを心がけましょう。
マウスピース矯正で気を付けること
ここからは、マウスピース矯正中に装置を汚さないために気を付けるべきことをお伝えします。
飲食には気を付ける
飲み物を飲む場合にはなるべくマウスピースは外しましょう。
特に糖分の多いスポーツドリンクやジュースは要注意です。糖分が付着したままのマウスピースを装着すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、見た目を気にするならお茶やコーヒーなど着色しやすい飲み物も注意してください。
水を飲むときは、マウスピースをしたままでもあまり大きな影響はありません。
おやつを食べる際も、取り外した方が無難です。ガムや飴も付着の可能性があります。
マウスピース矯正中は、水以外を口に入れるときは基本的に装具を外すものだと考えましょう。
装着したままタバコを吸わない
マウスピースを装着したままタバコを吸うのは極力避けましょう。見た目的に問題はなくても、タバコに含まれるニコチンが付着してしまいます。
喫煙の習慣がある方は、面倒ですが、タバコを吸う際は装置を外してください。
余計な物質を付着させ、マウスピースにダメージを与えることはできるだけ防ぎましょう。
マウスピースをしっかり洗浄してトラブルを防ごう
矯正用のマウスピース洗浄は、面倒ではありますが矯正治療には欠かせません。しっかり洗浄することにより、トラブルを防げます。
洗浄方法についてわからないことが出てきたら、積極的に歯科医に相談しましょう。万が一装置にトラブルが起きてしまった場合は、放置せずに担当医に伝えてください。
治療を効率的に進めるためにも、こまめなお手入れと早めの相談を心がけましょう。
まとめ
この記事では、マウスピース矯正装置の洗浄についてお伝えしました。こまめに洗浄することは、矯正治療を成功させるために必要な努力です。
初めは面倒に感じますが、習慣化して治療完了まで付き合っていきましょう。汚れが落ちないときは、専用の洗浄剤も試してみてください。
また、この記事で紹介した注意点もしっかり守りましょう。誤った方法で洗浄すると、逆効果になってしまう場合があります。
矯正の目的や症例によって、使用するマウスピースにはさまざまな種類があります。
具体的にご自身の装具に合った洗浄方法については歯科医に相談してみてください。
マウスピース矯正を検討中の方にとってこの記事で少しでもお役に立てたら幸いです。