【監修:青山健一】
目 次
ふと鏡を見たときに、顔が左右対称でないことが気になったりしたことはありませんか?左右対称でない自分の顔を自覚してしまうと気になって仕方ないものです。
左右対称でないのは歯並びが原因かもしれません。
一度歯が気になってしまうと、笑い方が不自然になってしまう人もいます。そんな人は、自然な笑顔を取り戻せるのでしょうか。
また、さほど気にならないと感じている人は、このまま放置しておいても問題ないのでしょうか。
前歯の正しい位置
歯の中でも存在感があり、人の目にも付きやすい前歯。この前歯の正しい位置をご存じでしょうか。歯医者さんで見かける歯の模型が正解なのでしょうが、なかなか自分の歯と比較する機会がありません。
ここでは自分でチェックできる3つのポイントを説明します。あなたの前歯はどうでしょうか。鏡を見ながらチェックしてみてください。
上の歯と下の歯の正中線が一致している
左右の真ん中にあたるラインを正中線といいます。上の歯の正中線、下の歯の正中線が一致しているかを確認してみてください。
歯の形や数がそろっていない、骨格の形が左右非対称の場合、正中線がズレます。
歯の角度が適切
見落としがちなポイントになりますが、上の前歯の傾斜の角度も大切なポイントになります。
上の前歯の先端部と下の前歯の平な部分の隙間が2~3mmが理想とされています。
5mm以上、大きくなると出っ歯の傾向になり食事の際に噛み切るのが困難に感じたり、呼吸も鼻呼吸ではなく口呼吸をするようになります。
上の歯と下の歯の重なり具合
鏡の前で口を「イー!」の形にすると、大きく分けて4つのパターンになります。
1つ目は、下の前歯が上の前歯に少し重なって見えない。2つ目は、上の歯と下の歯の間に隙間ができている。3つ目は、下の歯が上の歯で隠れて見えない。4つ目は、受け口とも言われる下の前歯が上の前歯より出ているパターンです。
この中で、正しい重なり具合は1つ目になります。更にいうと、その重なり具合は2~3mmが理想とされています。では、なぜ他はよくないのでしょうか。
ピザを食べるときを想像してみてください。2つ目は、隙間があるため噛み切るのが難しくなります。3つ目は、必要以上に深く噛み切りすぎて効率が悪くなります。4つ目も前歯で噛み切るのが困難で、奥歯の使用頻度が増します。
正中線のずれが起こる原因
上下の歯の正中線が一致しているのが理想ですが、ズレの原因はなんでしょうか。それについて説明します。また、その原因によって、予防できるのでしょうか。
歯の大きさ、数
歯の大きさ、数は人によって違います。ここで「数も違うの?」と思った人もいるのではないでしょうか。
乳歯は20本、永久歯は親知らず含めて32本と基本の数はありますが、親知らずの生え方、親知らずを含めて永久歯を抜いた数などは人それぞれです。
また、「先天性欠如歯」といって、もともと歯が1~2本生えず、足りない人もいます。
これは、将来永久歯になるための芽のような歯胚が、何らかの原因によってできないため永久歯が生えてこないものです。
欠如の場所は人によって違いますが、欠如よって左右対称でなくなることは容易に想像できます。
歯の大きさについては、遺伝や日常生活の癖によるため、結果的に人によって違います。
歯の生え方
歯の生え方がでこぼこしていると、左右対称ではなく、正中線がズレてしまいます。それでは、なぜ歯の生え方がでこぼこしてしまうのでしょうか。理由はいくつかあります。
遺伝も大きく関係していますが、日常生活の癖や食事、乳歯から永久歯への生え変わりの時期や歯周病なども原因とされています。
あごの骨
あごの骨が上下で大きさが違っていると正中線がズレることがあります。
例えば下あごが極端に小さいと歯が生える場所が狭く、歯並びも悪くなり中心がズレます。反対に上あごが大きすぎてもバランスが悪く中心がズレるのです。
あごの骨格や歯の大きさなどは遺伝など先天性のものも大きく関係しています。
しかし、就寝時にいつも同じ方を下にして寝ている、いつも頬杖をついている、噛むときに左右どちらかばかり使っているなど、日常生活の癖により後天的にあごの骨のバランスが崩れることもあるようです。
顔の歪み
顔の歪みと聞くと少々驚くかもしれません。しかし、左右の目の大きさや高さが違う、あごのエラの張り方が左右で違う、ほうれい線が左右で違う、など思い当たることはありませんか。
人間の顔は100%左右が対象ではないため気にしすぎる必要はありませんが、一度気になってしまうと気になって仕方ありません。
顔の歪みは、頭蓋骨とあごがズレている場合や、歯の噛み合わせが悪いためにずらさないと噛めないといった場合に表れます。
顔の歪みも、遺伝の要素が大きい骨格が関係していますが、就寝時にいつも同じ方を下にして寝ている、いつも頬杖をついている、噛むときに左右どちらかばかり使っているなど、日常生活の癖による場合も原因として考えられるのです。
正中線が揃っていることのメリット
正中線が揃っていることのメリットとして、1つ目は見た目です。顔の中心に正中線がまっすぐ通っているということで、違和感はなく、コンプレックスも感じることもないですよね。
2つ目は健康面です。正中線が揃っていないということは、歯並びに問題があることや骨格のズレなどが想像されます。
また、歯並びが悪いということから、虫歯や歯周病になりやいなど、更に健康なイメージから離れていきます。
歯並びの治療方法
歯並びは見た目だけでなく、健康面にも影響を及ぼします。治療をすることにより、自信のある笑顔と一緒に歯の健康、身体の健康を手に入れられるため、歯並びの治療はおすすめです。
しかし、治療といっても方法はいくつかありますし、矯正にしてもいくつか種類があるのをご存じでしょうか。ここではワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の特徴を紹介します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、馴染みのある矯正で、歯にブラケットと呼ばれる装置を接着させ、そこに正しい形をしたワイヤーを通していきます。それにより、歯に少しずつ力を加え理想の歯並びにしていくのです。
ワイヤー矯正は、矯正器具が目立ったり、虫歯になりやすい、痛みが伴うなどのデメリットもありますが、適応範囲が広く、治療期間を短く済ませるといったメリットもあります。
また、通常のメタルブラケットより金額は高くなりますが、審美ブラケットとしてプラスチックブラケット、セラミックブラケットなど目立たないものもあるため、選択が可能です。
裏側矯正
歯の裏側にブラケットを装着し、ワイヤーをつける矯正です。一番の注目ポイントは目立たないことです。
しかし、この技術は外側につける通常のワイヤー矯正に比べ、難易度が高く、高い技術と豊富な経験が必要になります。
また、治療期間をワイヤー矯正と比較すると、同等か多少長くなるようです。更にデメリットとして金額が高くなることと発音がしにくくなることがあります。
そのため、目立たない下の歯と奥歯は通常のワイヤー矯正、上の前歯など目立つ箇所だけ裏側矯正にするなどアレンジもできます。
マウスピース矯正
目立たない矯正として生まれたのがマウスピース矯正です。一人一人の歯に合わせて作られた透明なマウスピース(アライナー)を装着する矯正方法です。
ワイヤー矯正のようには目立たず、痛みもないのがメリットです。
しかし歯並びによっては使用できない人もいます。
飲食後は、口の中を清潔にしてからアライナーを装着し直します。この一連の流れを面倒に感じ、アライナーを途中から装着しなくなる人もいるようです。アライナーは長時間装着しなくてはならないため、このような人はマウスピース矯正は向かないのかも知れません。
歯並びが悪いまま放置した場合
歯並びの悪さは先天性のものもありますし、日常生活の癖によるものもあります。歯並びが悪くても外見をあまり気にしない、食事も問題なく食べられている、そんな人はわざわざ治療しようと思わないかもしれません。
しかし、そのまま放置しておくといろいろと問題が起きてきます。たとえば、歯並びが悪く歯磨きできれいに磨きにくい歯は、磨き残しから虫歯や歯周病になるリスクが高まるのです。
また口臭の原因にもなります。更に特定の発音ができないこともありますし、食事もきちんと食べられているつもりでもしっかり噛めていないということもあります。
毎回の食事でしっかり噛めていないのであれば、胃にも毎回負担がかかりますよね。
歯並びで悩んでいるときは歯科医に相談
大人になると歯並びを指摘されることはあまりありません。そのため放置してしまいがちですが、悩んでいるなら、プロである歯科医に相談してみましょう。
もし、定期検診や虫歯の治療などでかかりつけの歯科医に行くタイミングであれば、その場で相談してみることも可能です。歯科医から矯正治療を行っているところを紹介してもらえます。
また、そのようなタイミングでない場合は、まわりの矯正経験者やネットから情報を集めて、まずは電話で相談してみましょう。相談したから必ず矯正しなければいけないわけではありません。
余裕があればいくつか問い合わせをしてみることをおすすめします。矯正治療が必要になった場合は、納得のいくところで、納得した治療法で矯正をしましょう。
まとめ
日本人は歯並びに対する意識が低いと言われています。それを裏付けするように、日本人は矯正に対して「不自由で辛そう、痛そう、高そう」と、マイナスなイメージをもち、避けたい気持ちが強いようです。
一方アメリカでは、矯正に対して「きれいになる、うれしい」というプラスのイメージが強く、また矯正できることは「裕福な家庭」のステータスでもあるようで、矯正していることをアピールしたいと、目立つ矯正器具を好む人もいます。
整った歯並びは、見た目はもちろん、健康面にも大きく関係してきます。歯並びに関して気になる点があれば、まずは口の中のプロである歯医者さんに相談してみましょう。